モンスターストライク 〜大星痕:グランドクロス〜 作:犬社長
「…………凄まじい有り様だな。」
……彼の目に写り込むのは、大地に刻まれた巨大な十字架───〈
そしてその周辺には無数の〈
溢れ出した〈星のセラム〉は風に乗って飛び、煌めく星雲の様になりながら空と地の狭間を漂っている。
『いったい何が起きてるっていうんです?』
無線通信越しに呟く仲間の声を聞きながら、戦闘機の操縦席に座る男は眉を顰めた。
「何が起きてるのかは知らん。…だが、あと3時間もすれば〈再建連邦軍〉による一斉攻撃が始まるだろう。」
『……そうですよね。この数相手に勝てるんでしょうか…。』
男は再び視線を
「……俺達の任務はこの状況を観測し、報告をする事だ。…勝てる勝てないは軍が判断するだろう。」
そう男は仲間へ声を掛け、戦闘機の高度を上げた。僚機が3機、彼の後に続いて高度を上げる。
…男達は、世界再建連邦の偵察部隊だった。〈禁踏地〉での異変を受け、状況を把握すべく〈アステール〉から
そこで見たのは、変わり果てた『禁踏地』と無数の〈ノーマン〉達。再建連邦とリアルタイムで情報通信が行われている実地調査は、連邦に所属する全ての人々へ多大なる衝撃を与えた。
──〈ノーマン〉と〈星のセラム〉によって半年前まで存亡の危機に立たされていた人類は、再び現れた脅威を前にして、今度こそ徹底的に戦う準備を進め始める。
…しかし、誰も気付かなかったのだ。なぜまた〈ノーマン〉が現れたのか。大地に刻まれた
それに誰も気付くこと無く、戦いの準備は進められていた。
──だが、それについて人類を責めることは出来ない。何故ならば、これから始まるのは誰にも知りようが無い事だったのだから………
再建都市アステールは大混乱に包まれていた。
地震の影響による建物の倒壊。
〈星のセラム〉と〈壊獣〉の再出現。
都心の混乱は抑えようが無く、人々は半ばパニックとなっていた。
「なんてことだ……。」
アステールの中心に建つ〈世界再建連邦本部〉。その『最上階』から地上を見下ろしていたニュウは、困惑の呟きを漏らす。
火災が起きたのか、街の至る所で黒い煙が上がり始めていた。そして鎮火の為に繰り出した消防車の警笛が、彼方此方から木霊して聞こえる。
「……一刻を争うな。」
ニュウの近くで、アーク総統が空を見上げつつ呟く。そこには無数の〈壊獣〉の群れが佇んでいた。
だが不思議な事に、〈壊獣〉達は一向に空から降りてこない。彼等は皆、人類への興味を無くしたかの様に、ただ其処に浮かんでいるだけだ。
「ネオ。───〈星〉はお前に、何か語りかけたか?」
不気味な沈黙を守る〈壊獣〉達を横目に、アークはネオに話しかける。その瞳の中には幾百幾千もの思考の火花が散り、絶えず微かに揺れていた。
「うん。………時が来る、抗え、って。」
ネオは顕現したセラムキューブを手に持ったまま、短く答える。
「そうか。やはりシグナル受信も再開しているのだな。」
アークは1人納得したかのように頷くと、ネオを静かに指差す。それはまるで、この場に居る誰かに指図をする様な仕草だった。
「やむを得ん。───悪いが身柄を拘束させてもらうぞ。ネオ。」
「は?」
「え?」
あっと言う間もなく、ネオの両腕が後ろ手に縛られる。
その時になって始めて、ネオとニュウはこの部屋に自分達とアーク以外の人間が居る事に気が付いた。
「───悪いねネオ。コレが命令なんだ。多分最善のね。」
ネオの背後の景色が音も無く歪み、人が1人、景色から滲み出すように現れる。
───それは女性だった。
赤茶色の髪に、鷹の様に鋭い目つき。
少し露出多めな衣装の上に、肩周りに羽毛の様な装飾を施したコートを羽織っている。
そして彼女の背中には、戦闘機の翼を思わせる機械パーツが付いていて、足にも機械的な装甲が装着されていた。
「誰だ!?一体いつから───」
ニュウの誰何に、彼女は落ち着いた声色で答える。
「……私は『ナイトホーク』。因みに、最初からずっと部屋の中に居たよ?ネオのワンコ君。」
「………光化学迷彩か。」
苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるニュウへ、女性──改めナイトホークは小さく頷いてみせた。
「その通り。誰も私を見つけられやしない。」
少し誇らしげな言葉を放つ彼女へ、ネオは手を縛られたまま尋ねた。
「………待って。何で私を?貴方達には、どういう意図があるの?」
「──それについては我から少し説明しよう。誤解は避けるべきだ…。」
ネオの疑問には、アーク総統が答える。
そして、彼は背後の混乱などまるで存在していないかの様に、王座の様なデスクチェアに座り直すと、両手を組んで話し始めた。
「──これは逆にキミの安全を守る為にある。………〈軍部〉からな。」
「軍部……。」
「そうだ。」
鸚鵡返しに呟いたネオへアークは頷き、話を続けた。
「知っての通り、半年前まで〈軍部〉は〈連邦政府軍〉として、お前達新人類勢力と戦闘を繰り返していた。──混乱の時代が終わっても尚、軍の過激派は新人類へ敵対の意思を示している。
奴らが過激な行動に移らないのは、総統たる私が抑え込んでいる事と、世界で最も強力な力を持った新人類であるネオが、その力を星に返還し、ただの人間に戻ったからだ。
彼等は新人類の持つ『力』を恐れている。特にネオの力をな。〈星の花〉と交信できる世界で唯一の存在は、それだけで旧人類全ての運命を左右する。だがネオが力を星に還した事で、恐れる理由は無くなった。………5分前までは、だがな。」
その話を聞いたニュウの顔が益々険しくなる。
「───軍部がネオに危害を加えようとしてくる…って事ですか??ネオの力が戻ったから?」
「…世界が半年前の状態に戻ったのも問題だ。奴ら過激派は、ネオにその原因を見出そうとするだろう。ネオが否定しても、それを認めないかもしれん。最悪の場合、彼女の生命が脅かされる。」
「なんだよソレ…!言い掛かりにも程があるだろ!!ネオにそんな意思が有るとでも?!こんな状況を生んだのが、ネオだって言うつもりなのか!?」
抑えきれないニュウの怒声が、静かな部屋の中に木霊した。アークは表情1つ変えずに淡々と話を続ける。
「混乱の時代の間に旧人類に根付いた恐怖と偏見は、抜けない草の根の様な物だ。半年…僅か半年でソレが消え失せる筈も無い。──新人類と戦っていた軍の人間なら、特にな。ネオ本人に痛い目を見せられた者も多いだろう。……我もその1人だった訳だが。」
そう言って、ほんの僅かに自虐的な笑みを浮かべたアーク。そんな彼へ、今まで黙っていたネオが話し掛けた。
「私を守るとして、ナイトホークと貴方はこれから私をどうするつもりなの?」
「軍部の手が届かないようにする。…処置としては、軟禁が妥当だろう。お前達の仲間を余り騒がせたくない。手を貸してもらう事になりそうだからな。」
アークがそう答え、背後のナイトホークも頷く。
「…ああ。変な様にはコッチもしたくない。軍部にアンタが捕まれば、イースターと再建連邦に不和が生まれる。軍部に抵抗した場合、大なり小なり争いが起きるだろうし、穏便に済ませるにはコレが一番なんだよ。」
「……………。」
それを聞いたネオは先ずニュウを、次にアーク総統を、最後に空に佇む〈ノーマン〉を順番に見つめた。そして、静かに思考を巡らせる。
(私を守る為の軟禁──デメリットは行動の制限──メリットは軍部との衝突が避けられる事──。この事態に、人類同士で争ってる場合じゃない──軍部がどう来るか、状況がどう転ぶか、誰にも分からない──でも悩んでる暇は無い。…だったら…?)
暫しの逡巡の内、ネオはゆっくりと頷く。
「………分かった。…貴方達の言う通りにする。それが一番穏やかな方法なら。」
「………良い判断だ。」
アークはコクリと頷き、ナイトホークは微かに安堵したような吐息を漏らした。一方、ニュウの方は複雑極まりない表情を浮かべて立っている。
そんな彼を安心させるべく、ネオは彼へ〈ハローワールド〉を繋ごうとして、ふと気付いた。
(あれ?……
微かに眉を顰め、ネオは何度か再試行を試みたが、〈ハローワールド〉はネオに応えない。
……ネオが創り出した心のネットワークは、突如として音信不通となってしまっていた。
彼女は心の聲を取り上げられてしまったのだ。
───〈ハローワールド〉の機能停止は、ネオ個人だけでなく世界中で発生していた。
人によって気付くのに時間差こそあれど、〈
ヒトの心と心の繋がりは、この日、神によって奪われた。
人類は
ネオ軟禁の流れはこうするしか無かった……
あとナイトホーク好き。星墓で使えるの良いよね(勝てないけど)
……さて、投稿頻度終わってますけど、コレ実は新作モンストアニメが始まるまでに完結させたいんですよね……行ける?