病弱な私と聖人な貴方と。   作:カブトムシの相棒

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先生だって、大人である以前に一人の人間。
病弱なその女性も、大人であり一人の人間。

ただの人間が、生身の人間が生きていくには厳しい世界で、二人は出会った。

片方は戦禍の中を指揮し、生徒の為に命を張る狂った男。
片方は突如としてキヴォトスに転移した病弱で不幸な女。

ヘイローの無い二人が織り為す、甘い交流。

大人の、甘酸っぱい……儚い物語が、始まろうとしていた。



では、本編です。


先生と病弱な大人。

 

 

 

 

────目が覚めたら、私は見知らぬベンチの上で横たわっていました。

 

本当です。少しベンチで心を落ち着かせて居て、目を数秒閉じていたら、変な所に居たのです。

 

周りを見渡します。私は今どこに居るのか、此処は何処なのかを確認する為に。

 

 

 

「……どこですか?此処」

 

 

 

結局分かりませんでした。

 

別に酔っていた訳ではありません。私はお酒が飲めるほど、身体が丈夫ではないので。

 

先ず、私は一人では真面に歩ける状態では無かった筈です。今年で23に成りますが、ずっと病院で生きて来ました。

今年からリハビリを始めて、弱っていた脚等の筋肉を刺激させ、サポートあり気でやっと歩ける程度までの身体なのに、どうして私は今外に居るのでしょう?

 

だから、こうやって外に出ているのが可笑しな話なのです。

 

 

 

「夢?……それにしては、嫌に現実的ですけど……」

 

 

 

頬を抓ります。痛いです。

 

セミの声と風切り音が耳に鳴り響きます。

私の呟きがそれ等に掻き消されます。嗚呼、何がどうなっているのでしょうか。

 

寝そべっていたベンチから起き上がり、思考を安定にさせる為周りを見渡します。私が座るベンチ以外にも複数のベンチが在り、その他には遊具や水飲み場が有ります。察するに、此処は公園の様です。

 

 

 

「綺麗な場所……でも、こんな公園、私が居た病院付近にありましたっけ?」

 

 

 

天気が快晴な事もあって、私が居る公園は非常に様に成っています。

周りでは子供達や二足歩行の猫さんが歩いたり走って遊んだりしていm………へ?

 

 

 

「ん?……ぇ、ん?」

 

 

 

目を擦って、確認します。

 

ふぅ……改めて確認すると、この公園には幼い子供達と二足歩行の猫さんや犬さんが────居るんですよ。

 

 

 

「え、え、え……き、着ぐるみ?いやでも、それにしてはリアルで、普通に笑って喋っていますし……ぇ??」

 

 

 

状況が読み込めません。流石に夢ですね、そうに違いありません!

 

だ、だって!二足歩行のワンちゃんやネコさんを見た事があるかと言えば、私はありませんもん!それに人間サイズの!

 

 

……もしかして私。

 

 

 

「……異世界転生、でしょうk」

「おい、そこのオネーサンよォ」

「ひゃっ!ひゃい!?」

 

 

 

目の前に広がる謎の光景を注視していると、真横から誰かに話しかけられました。

変な声が漏れて恥ずかしいですが、急いで横を向いて声の主を視認します。其処には……ヘルメットを被った3人組が『銃を持って』立って居ました。

 

 

 

「へ?じゅ……銃?……え、えっと?」

「突然話しかけてごめん何だけどさ、あたし達いま腹減ってて~。でも金が無い訳なんだけどさ?貸してよ」

「え……?」

「いや、え?じゃなくって、金、貸してよ」

「あ、あわわ……」

 

 

 

急展開です。私は不思議なヘルメットをお被りになる方々からお金をせがまれてしまいました…。

こんな事、本当にあるのですね……。

 

ここは一度、お金を差し渡した方が賢明なのでしょうが……生憎と、私は病院生活の身でしたので、財布は持ち合わせていないのですよね。

 

うぅ……怖いですが、ここは謝って何とか許して頂くしかないですね。

 

 

 

「あ、ぁ……あの、その…ごめんなさい。私、お金は持っていなくって……」

「は?んな冗談が罷り通るとでも思ってんのか?お前」

「じょ、冗談では…っ」

「そんな高貴な服装でよくホラが吹けたな?」

「え?あ……こ、これは……」

 

 

 

私の服装は、見た目こそ華やかなものですが、どれも今は亡き母の御下がりです。

少し前は患者衣で長い年月を過ごしてきました。ですが、今は段々と身体が落ち着いて、リハビリを重ねる度に衣服の着用が出来る様になりました。

 

母の御下がりで、少し……結構、大きいですけど私のお気入りです。所々、傷は見えますけど。

 

 

 

「なぁあんた、余り私等をイラつかせんなよ?やろうと思えば貧弱そうなあんたなんか暴力で圧制出来るんだからな」

「最後のチャンスだ。さっさと金目のモン寄越しな……じゃねぇと」

 

 

 

”カチャッ…”

 

 

 

「ぁ…」

「これで痛い目に遭わしちまうかもな~?」

 

 

 

そう言って、その子は私のお腹に銃口を突きつけます。

嫌にリアルで、布越しでも分かる程に冷たい感覚が私に襲います。

 

 

────まさか、本物?

 

 

怖い……怖い怖い怖い…っ。

 

 

 

「う、ぅうぅぅっ……ゆ、ゆるして、下さい……私、本当に何も持って居なくって…っ」

 

 

 

私は、その銃が本物であると思い込み、思わず泣いてしまいます。

 

正直、色々と限界です。急に見知らぬ場所で目を覚ましたかと思えば、ヘンテコなヘルメットを御被りに成っている方々に凄いせがまれて……。

 

誰でも良いので、私に説明をしてほしいです…。

 

本気で怖がっている私に、その方々は苛立ちを隠せない様子です。

 

 

 

「……チッ!おい!」

「はいはい~っと。わりーけど触るぞ、ポケットとか、まー最悪身ぐるみでも剥がして売れば儲かるだろ!余り見た事ねぇ服だしなー」

「あ、う…っ」

 

 

 

強い力で引っ張られ、ベンチから降ろされます。

 

そして、私は尻餅を着いて服周りをくまなく探られます。

 

 

 

「あー?……リーダー、この女ホントに何も持っていないっすよ。このハンカチとティッシュと、変な……んだこれ、薬?みてーの以外」

「んだよ、つまんねぇなァ……じゃあいい、その上着だけでも剥がせ。いい値で売れるかもしれん」

「あーい」

「あ、ま…だめっ!こ、これは……っ」

 

 

 

流石にこれは渡せません。これだけは、だめです。

 

私の宝物です。どなたにも渡せません。

 

私が抵抗の意思を見せると……。

 

 

 

”ドオンッ!!!”

 

 

 

「ひっっ……!」

「なぁ、口答えすんなって言ったよな?あ?」

「は、は、あ、ぁぁ……」

 

 

 

銃弾が、私の足元に跳んできました。

地面を見ます。銃弾の後が確りと残されています。

 

本物だ。本物の銃だ。やっぱり此処は私が居た日本じゃないんだ。

 

怖い、怖い怖い怖い……こ、殺されるっ。

 

 

 

「────ッ!」

 

 

 

”ズキンッ!!”

 

 

 

突如、私の胸に強烈な傷みが襲います。

しかし私は、この痛みを知っています。

ずっと、私の身体を蝕んできたものですもん。

 

持病が、私の無茶を許す筈が無かったのです。

 

心臓病……特に私のコレは質が悪いのです。痛みは暫く続くでしょう。

あぁ、いたい……痛いよぉ…。

 

 

 

「は、はぁ、は、ぁ……はぁ…ッ」

「お、おい?なんだ?」

「どうした?急に息が荒くなったぞ」

「な、なぁ、これヤバいんじゃねぇか…?」

「胸抑えてるけど、これ……もしかして私達、病人を襲っちまったのか!?」

「な、なにぃ!?」

 

 

 

私が苦痛に悶えていると、皆さんが急に慌て始めます。

 

あ、もう……だめ、です。意識が、おち………────。

 

 

 

「う、ぁ……────」

 

 

 

 

 

 

「あ、おっオイ!!」

「ちょっ、た、倒れちまったぞ!?」

「こ、ここっここーいうとき、どーすりゃいいの!?」

 

 

意識を失い、血色の無い顔で倒れる目の前の女性。

 

ヘルメット団は大慌ても大慌て。まさか、こんな事になるとは思っても居なかったのだ。

 

 

 

「ど、どうする!?どうしたら良いんだ!?」

「きゅ、救急車!え、えっと、それと、なんだ!?ケーサツか!?取り合えず呼べ!!」

 

 

 

慌てふためくヘルメット団、その後ろには……。

 

 

 

 

「────大丈夫かい?」

「うわあぁ!?」

「……ってあんたは!!」

「先生!!」

「何やら騒がしい様だけど、一体何が────ッ!これは…!」

 

 

 

目の前に立つ大男、それはキヴォトス外の大人であり、連邦捜査部シャーレの顧問である『先生』であった。

 

 

 

「せ、先生!たの、たのむ!この人、私の所為で、倒れちまって……ッ」

「……話は後にしよう、今はこの方を救出する。救急車とヴァルキューレには?」

「れ、連絡するぞ!!」

「頼むね。君、あそこにAEDがあった筈だから持ってきて」

「わ、分かった!!」

「ふぅ………すみません、失礼します」

 

 

 

先生は女性の首元に触れ、脈を図る。

 

脈は脆弱、呼吸も浅い。

 

 

 

「大丈夫ですか!大丈夫ですかッ!」

「ん、ぁ…………────」

「意識がッ……マズいな」

 

 

 

女性の意識が、遂に途切れる。

 

身に触れる。華奢な体躯だ、顔を見るに元来の脆弱気質なのだろう。

 

数秒経ち、足音が響き渡る。どうやら生徒がAEDを持ってきてくれたようだ。

 

 

 

「はぁ、はぁ!先生っ!!AED持ってきたぞ!」

「ありがとう。よし……皆、円状になって私を隠してくれ」

「え、え?」

「早くッ!!其処でスマホを取っている貴方達も!今はこの方の命が最優先です!!」

”「あ、はい!」”

 

 

 

先生の怒号が響き、4名のヘルメット団員と住民が急いで駆けて行く。

 

珍しい先生の焦燥を滲ませた怒声に、各々がたじたじに成るが、目の前の女性を見れば酷く苦しそうな顔で……スマホで撮影をし、様子を伺っていた自分を恥じる。

 

総数6名が集まり、先生と女性を隠す。

 

 

 

「今から応急処置を始めます……淑女の衣服を脱がすと云う御無礼を、お許しください…ッ」

 

 

 

そうして、救急隊が来るまで、先生は女性に応急処置を施した。

 

数分後に救急車が到着。女性は運ばれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ん、ぅ……」

 

 

 

眩しい光が私を襲います。

顔に当たる優しいそよ風、カーテンが靡く影が見えます。

 

 

 

「んぅ……~~~っ……あれ?ここ、は?」

 

 

 

上体を起こします。温かい布団が掛けられている事に気付き、理解します。

 

此処は……病院であると。

 

 

 

「……変な夢ですね」

 

 

 

嫌にリアルな夢だったと、そう思います。

でも色々と可笑しい話です。

 

犬や猫の様な見た目の人が普通に二足歩行で歩いて、ロボットみたいな方々も一杯居て、そして不思議な格好をした女の子が銃を持って恐喝してくる。

 

……不思議な夢でした。えぇ、すっごく。

 

 

 

「っ……胸が、痛い……怖い夢は、見るものじゃありませんね」

 

 

 

今まで怖い夢を何度か見て来たけど、ここまで鮮明に怖かった夢は在りませんでした。

それも、現実、私の持病を刺激する程の夢なんて……思い出すだけで震えてきます。

 

 

 

「うぅ、怖いですね………ん?」

 

 

 

『────どうか、お許しください…ッ』

 

 

 

「……そういえば私、確か男性の方に助けられていた様な?」

 

 

 

そう、少し曖昧ですが、私は倒れた時に男性の方に救出させて頂けたのですよね。

 

凄い手際で私の服を脱がし、AEDを施して頂けた……ような気がします。AEDは1回受けた事があるので、少しの羞恥ですみました。夢とはいえ、しかも男性の方が女である私にAEDを施して下さるなんて凄い勇気が必要だったはずです。なのに、あの方は私を助けて下さいました。

 

 

 

「(夢なのが惜しいです……また眠ったら、会えるでしょうか…………ん?)」

 

 

 

ふと、周りを見渡します。何だか……い、いえ、やはり変です。

 

布団もそうですが、部屋の構図が……全然違います。

あ、あれ?いつのまに部屋が変わって……い、いえ、そんな筈はありません。だったら私に一度は連絡と言うか相談はする筈ですもん。

 

……目を擦ります。はい、夢じゃないみたいです。

手の感触もあります。

 

 

 

「あ、え……ま、まさか────」

 

 

 

私が発語しようとした、瞬間です。

 

 

 

”コンコンコン……ガチャ────”

 

 

 

「失礼し……ッ!おぉ!起きましたか」

「ひゃっ……あ、へ?」

 

 

 

突如部屋へと入室する大柄な殿方。

 

白と青を基調とした制服を着込み、その背丈はまるでバスケット選手のように大きい男性。入り口を少し屈んで入室するぐらいには身長が大きいです。

 

少し吃驚してしまいました────が、その顔を見た瞬間、私は驚愕する事になります。

 

 

 

「あ、貴方は……」

「目を覚ましたようですね、本当に良かった。直ぐに医者をお呼びしますね」

「え?あ、ま、待っ……い、行っちゃいました」

 

 

 

入って、私が起きた事を確認した瞬間、直ぐに退出してしまいました。

あの様子だと、お医者さんを呼ぶようです。とても有難いですね。

 

……いや、いやいやいや!そうじゃないんですけど!?

 

え?そうですよね、私を救って下さった殿方ですよね?先程の男性。

へ?ゆ、夢じゃ、無かった?あ、あれ?じゃ、じゃあ……やっぱり、私、異世界に居る……のですか?

 

この布団も、部屋の間取りも違います……これだけでも、何よりの証拠、ですが、何より────。

 

 

 

”ガチャ……”

 

 

 

「失礼します……っと、これはこれは、お目覚めに成られたのですね。先生、ご報告感謝いたします」

「いえ、当然の事を為したまでですので」

「あ、あわわわ……」

 

 

 

目の前に、居る方……白衣を纏う人型の犬を見れば、嫌でも納得してしまいます。

 

あぁ、やっぱり私は────別の世界に居る様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私は少しの検診を受けました。

 

心拍数、血圧、身体の異常など無いかを人型の犬さんに診て頂きました。

 

病弱な体質なので、色々と聞かれました。なので私は【先天性心疾患】である事を医者と救って下さった殿方にお話ししました。

 

もうほぼ治っていますが、それでも過度な運動は駄目な事も。なので、先程の……ヘルメット団?という方々の行為は、脆弱な私には刺激が強かったのです。特に銃なんて初めてですし、撃たれる何て以ての外です。当たらなかったとはいえ、怖かったですね……えへへ。

 

その事を一通り話した後、私は1週間の休養期間が必要との事で、入院生活を強いられてしまいました。

 

無論、最初はお断りしました。だってお金がないんですもん……両親の遺産で何とかなっていた入院費が、この世界にはありません。私は根本的にこの世界で生きる術がないんですよね……。

 

 

少し情報を頂きました。どうやら此処は【キヴォトス】と云う学園都市みたいです。

 

学園都市……そういう感じの小説は何度か聞いた事が有りますが、まさか私がそういった世界にいくとは思いませんでした。何だか、少し冷静な自分が怖いです…。

 

 

医者のみならず、殿方も困惑を隠せないでいたので、私の素性を明かしました。

 

・いきなり知らない世界に居た事。

・決して記憶喪失とか、危険なおクスリを摂取しているとかでは無い事。

・お金も何もない事。

 

全て話しました。同情を誘う様な形になってしまった事が、凄く申し訳なくって苦しかったです。

 

あ、お医者さんは何故か退出しました。

 

 

そしたら、なにやら殿方は少し考え込み……私にこう告げました。

 

 

 

「────なら、私がその費用を負担させて頂きますね」

「────え?」

 

 

 

はい、こんな事を言ったのです。

私は意味が分かりませんでした。だって、この1週間の入院費を負担すると言ったんですもん。

 

流石に冗談かと思ったのですが、目の前に居る殿方が御冗談を言う方にはどうしても見えません。いえ、何だか凄く真剣な表情で私を見つめてきます。

 

……た、耐性が無いので、そんなに見つめないで頂きたいのですが……っ。

 

と、とりあえず!そんな事は駄目ですってお断りをしないと!

 

 

 

「だ、だめですよ!そ、そんな、私なんかの所為で貴方が入院費を支払うなんて、御迷惑過ぎて申し訳ないですよぉ!」

「お気に為さらず。話を聞く限り、貴女は元居た世界とは全くの別世界に移転してしまった方です。私の様に【キヴォトスの外】とは勝手が違う様です……少し謎は残りますが、今は良いでしょう。それよりも、貴女を入院させず、このまま退院させる方が個人的に看過できない話なので」

「そっ……っ……こ、心遣いは本当に嬉しい、です。でも……私と貴方は赤の他人です。見ず知らずの、それも己の存在を証明するような物など一つも持ち合わせていないのですよ?ど、どうして、そんなにしてくれるんですか?」

 

 

 

私がそう言って、殿方に問います。

 

何だか文章が可笑しくなっている様な気がします……お医者さん以外で殿方とお話しする機会は余りなかったので、上手く出来ているか不安です…。

 

い、いえ、今はそれよりも目の前の問答です。

……何故でしょう、殿方がニヤニヤしています。

 

 

 

「そういえば、まだ貴方と私は自己紹介をしていませんでしたね。これじゃあ赤の他人も同義だ」

「へ?きゅ、急に、何を仰って……?」

「私は○○。この【学園都市キヴォトス】で『先生』をしている者です。気軽に先生とお呼び下さい」

「は、はい……あ、わ、私もですよね。え、えっと……私は『(ひいらぎ)(しずく)』と申します。宜しくお願い致します、先生」

「はい。宜しくお願いしますね、柊さん」

 

 

 

先生の脈絡もない自己紹介に、私も名前を紹介します。

 

……なんで?いえ、いずれ自己紹介をして、お礼を伝えようとは思っていましたけど、まさか先生さまからとは思いませんでした。

 

すると、先生が告げます。

 

 

 

「これで私と柊さんは赤の他人ではなくなりました。そうですね?」

「え?えっと……そ、そうなる、のですかね?」

「そうなります。なので、私には貴女の入院費を負担する権利が生まれました」

 

 

 

はいぃぃぃ!?

 

こ、この御方は一体なにを言っているのでしょう!?

私の耳が可笑しく?い、いえ、ハッキリ聞こえてしまいましたので、それは無いでしょう。

 

それに……この人の顔、マジです。

 

 

 

「め、メチャクチャ過ぎませんか?それ!」

「そんな事はありません。至って正当ですよ。それに……私は貴女を『保護』する義務が御座います」

「え?そ……それは、どういう?」

 

 

 

私が疑問に思っていると、先生が応えます。

 

 

 

「実は私、このキヴォトスを統治する【連邦生徒会】の下部組織である〈連邦捜査部S.C.H.A.L.E〉の顧問でもあるのですよ。簡潔に言えばこのキヴォトスの事件や問題を解決する為に活動する、独立した超法規的組織です。裏を返せば、貴女に付く事態もまた私が解決すべく問題に当たる訳、ですね」

「な、成程……先生は想像以上に凄い御方だったのですね」

「あはは、まだまだ名ばかりの未熟者ですよ、私は」

 

 

 

そういう先生の顔は苦笑いです。きっと、本当に御自身の事を未熟だと決めつけているのでしょう。

 

変です、先生はとても凄い人なのに、どうしてそんな謙遜をするのでしょう……あ!そうです!ここで私が救って下さった御礼をお伝えすれば宜しいのです!

 

これは名案です!では早速伝えます!

 

 

 

「そんな、御謙遜なさらず!未だ理解に乏しい私が言うのもアレですが、先生は本当に凄い御方であると思います!現に私の命を救って下さったではありませんか!心優しく、人を想う事が出来る先生は、とっても立派です!」

「────っ!」

 

 

 

私がそう言うと、先生が吃驚したような顔に成ります。

 

……こうしてみると、とてもお若いですね~。御年齢はおいくつなのでしょうか?

 

って、あれ?別の事を考えていると、先生が静かになってしまいました。

や、やっぱり、余計なお世話だったのでしょうか!?

 

 

 

「も、申し訳御座いません!私如きが、失礼な発言を……っ」

「え?い、いぃいや!!違うんです!そうではなくてですね……えっと、ちょっと驚いたというか、凄く嬉しかったと云いますか……兎に角、全く失礼とか迷惑だとかでは無いです!それは絶対なので!」

「そ、そうですか?なら良かったのですが……」

「え、えっとですね。とりあえず柊さんはこの1週間の入院費は私が負担すると理解して頂ければと思います。強引ですが、これは決定なので、どうか」

「あ、はい!その……本当に、ありがとう御座います!この御恩は、いつか必ず!」

 

 

 

私は先生に深く一礼をします。

多大な恩を頂いてしまいました。これは退院した時に、先生が納得するような御恩を返せるようにしなくては!

 

 

 

「特段、気にしなくって大丈夫ですよ。柊さん、今は少しでも体の回復に専念致しましょう」

「はい!分かりました。ありがとう御座います………ふふふっ!」

「ん?どうかしましたか?」

 

 

 

先生が私の笑みに反応します。

 

恥ずかしい所を見られてしまいました。これは、言った方がスッキリしますね。

 

 

 

「ふふっ……いえ、良かったなって思いまして」

「良かった、ですか?」

「はい。だって────先生に会えましたので」

「え、え?」

「……私、実は今も凄く不安なんです。数時間前までいつものベンチに座っていたのに、気付けば見知らぬ場所。そしてテンヤワンヤで危ない状況になって命を落としかけた……怖かったんです。とても」

「……柊さん」

「ですが、私は運が良かったです!貴方に会えましたから」

 

 

 

”ドクッ……”

 

 

 

「っ…?」

「早い段階で先生に会えたので、私はこうして今も生きています。本当に感謝しかありません……ありがとう御座います!先生」

「あっ……い、いえ、人として当然の事を為したまでです。柊さんがこうして少し元気に成られただけでも私は嬉しいです」

「ふふっ!本当にお優しい方なのですね、先生は!」

 

 

 

”ドクンッ……”

 

 

 

「ん、っ……?」

「ん?どうかしましたか?先生」

「……いえ、何でも御座いません。お身体はどうですか?少し喋り過ぎましたので、障ってなければ良いのですが……」

「いえ!お陰様で元気になりました!とても親切な心遣い、ありがとう御座います」

「そうですか。分かりました……申し訳御座いません、私の方で仕事が溜まっておりまして、私は此処で席を外しますね」

「あ、そうでしたか……すみません、引き留めてしまっていた様ですね」

「あぁいえ!そんな事はありません。貴女との会話は、とっても楽しかったですので」

 

 

 

”ドキッ……”

 

 

 

「そ、そう……でしたか」

「えぇ、とっても……では、私はこれで」

 

 

 

その言葉を最後に、先生は椅子から立ち上がります。

 

 

 

「医者の方には私から1週間入院するとお伝えしますね」

「はい。重ね重ねになりますが、本当にありがとう御座います!」

 

 

私が感謝の意を伝えると、先生はニコッと笑います。

本当に、頭が上がりません。

 

 

 

「────あ、そうだ。柊さん、最後にお一つ聞いても良いでしょうか?」

「っ!はい!勿論です。何でしょう?」

 

 

 

先生がドアノブに手を掛けた瞬間、先生が私に問いを掛けます。

 

その表情は何処か赤く、言うのを躊躇しているように見えました。

数秒の間、先生が告げました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……明日、また此処に来ても大丈夫…ですか?」

 

 

 

”ドキッ……ッ!”

 

 

心臓が跳ね返る様な、そんな感覚が私を襲います。

あ、いえ、変な意味ではなく、本当にそんな感覚でして。

 

あの、痛いんです。痛いんです。でも、心地いいような痛みなんです。

 

あ、違う。今は……先生の返事をしなきゃです。

 

 

 

「もっも、勿論です!午前でも午後でも、お待ちしています!」

「ッ……良かった。では明日、また伺いますね」

「はい!ありがとうごじゃいます!……あ」

 

 

 

……最悪!最悪です!最後の最後で噛んでしまいました…!

 

あぁぁ~~~!何てこと!恥ずかしい事この上ないです!

し、下を見ます。あの人を見るなんて出来る訳がありません!

……先生、もう行ったでしょうか?

 

 

 

「……では、おだいひゅにでひゅ、柊ひゃん」

「っっ!!!」

 

 

 

”バタン……”

 

 

それだけ告げて、先生はドアを閉め帰宅していきました。

け、結構、いじわるな殿方なのですね、先生は…。

 

……でも、優しい方。

 

余り信じていなかったですが、私は今、こうして別の世界に居る。

 

死んだという実感がないので、これは転移なのでしょうか?それとも何かしらの要因で私は即死、そのままこの世界に転生?

 

色々と考えてしまいますが、正直、どうでもいいです。元居た世界には未練何てありませんでした。死ぬのは怖いけど、大切な方は居ませんでした。皆、先に死んでしまったから。

 

そして、私は今こうして生きている。

 

最初こそ怖かったけど、先生……優しい殿方に救って頂けた事が、私は何よりも嬉しい。

 

 

 

────明日が楽しみなんて、いつぶり何でしょうか。

 

 

 

 




☆プロフィール

▽ヒロイン兼主人公

・名前:柊雫(ひいらぎ しずく)
・年齢:23歳
・身長:154㎝
・体重:48㎏(最低値は38㎏。頑張った)
・BWH(B.90 W.50 H.88)

・本作のヒロイン。心臓病を患っていたが、長い年月を得てほぼ完治。現在はリハビリを取り入れ社会復帰に尽力をかけようとした矢先、何故かキヴォトスに飛ばされる。訳も分からない状況で恐喝され、終いには銃弾で脅されてしまった事もあり持病である心臓病が発症してしまった。幸い先生が駆け付け事なきを得たが、非常に危ない状況だった。未だに分からない事だらけだが、雫にとって、今は先生の存在が非常に大きく成っている。
性格は大人しく、非常に整った顔立ちをしている。白髪のロングヘア―で、目は紅い。何処か儚げで、目を離せば消えてしまいそうな、そんな雰囲気を持っている。


▽主人公

・名前:先生
・年齢:23歳
・身長:197㎝
・体重:95㎏

・本作の先生。やっぱムキムキにした。雫の事を非常に心配している。色々と謎が多い女性だと思ってはいるが、とても素敵な淑女なのだと理解している。
一応アビドス、パヴァーヌ1章は終わっている方針。だがもしかしたら変更でアビドス編をするかも。調整して、何が良いかを決めようと思う。



□生徒たち

・次回に書きます。


次回も是非、宜しくお願い致します。

先生の名前

  • 要る(鳳城 龍太郎で良い)
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