現代戦争における魔法少女の戦略的価値   作:無能メンヘラ

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アヴァンギャルド

 戦火が消えることのない廃墟都市。その瓦礫と煙の迷路を、3機のオスプレイが低空で滑るように進む。機体のローター音が、壊れたビルの残骸を震わせるたびに反響し、不穏な鼓動のように耳に残る。

 

「目標地点まであと少しだ。警戒を怠るなよ! 」

 

 機内にケイトの鋭い声が響く。

 魔法少女が潜伏していると思われるPMC《華龍安保軍団》の前哨基地への奇襲。兵力は互角、いや、むしろこちらのほうが分が悪い。失敗すれば全滅もあり得る。

 

 自然とライフルのグリップを握る手に力がこもる。──なにがあってもタミスを守る。

 

 作戦は2つのフェーズで構成されている。

 第1フェーズではタミスの魔法で敵性兵器を無力化。

 第2フェーズは地上部隊が前哨基地に残る敵を掃討する。その間、タミスとエレクシアはオスプレイ内に待機だ。

 

「タミス、怖くないか? 」

 

 隣に座る小柄な影に声をかけると、タミスはこちらを見上げて首を振った。恐怖の色は微塵もない。

 

「お姉ちゃんがいるから大丈夫だよ! タミスに任せて! 」

 

 タミスは胸を張る姿を見て安心する。彼女の成長を感じると同時に守るべき存在であること改めて胸に刻む。

 

『目標地点についたぞ! 魔法攻撃を開始してくれ! 』

 

 コクピットから通信が入る。

 機体後方のハッチが開くと、焦げた鉄と煙の匂いを含んだ熱気が流れ込んでくる。反射的に顔をしかめた。

 

 タミスは小さく息を吐くと、ゆっくりとハッチ際に立ち、両手を前に差し出した。彼女の唇が動き始める。

 

Light,Ccondence.(光よ凝縮せよ)Rain, Fall Heavy (重き雨となり降れ)──Shatter The Earth :(大地を砕け)Radiant Barrage(ラディアント・バラージ)

 

 最後の言葉が響くと世界が息を止めたかのように沈黙した。

 空には夜空を覆う星屑のような輝きが一斉に溢れかえり、無数の光点が降り注いだ。

 

 ──金属を叩く豪雨のような音が響く。

 質量を帯びた光の雨が、敵の拠点を無慈悲に貫き、爆ぜ、焼き尽くす。装甲車両は熱されたプラスチックのように溶解し、建物は形を保つ間もなく崩れ落ち、その場にいた生命は音もなく蒸発していった。

 

「……やっば」

 

 隣で光景を目の当たりにしたケイトが、乾いた笑みとともに呟く。その声には驚愕と、ほんの少しの恐怖が混じっていた。

 

「これ私たちの出番ないんじゃないの? 」

 

 ケイトが笑いながら言った。俺も一瞬同意しかけたがすぐに頭を振った。──油断は命取りだ。生き残りがいるかもしれない。

 

 オスプレイが地面を揺らすように着陸し、同時に白いスモークが噴き出した。視界は灰色に覆われ、焼け焦げた金属と火薬の匂いが鼻を突く。

 

 作戦は第2フェーズ、俺たちの出番だ。

 

「クリア! 」

 

 合図と同時に展開。損壊した基地の入り口を突破する。外観こそ半壊しているが、内部の主要構造は想像以上に残っていた。焦げた鉄骨、壁に走る亀裂。だが、通路はまだ機能している。

 

「行け行け! 制圧しろ! 」

 

 グリムが声を張り上げ、迷わず先陣を切る。彼女はライフルを装備していない。必要ないのだ。

 

「僕の後ろにいれば死なずに済むぞ」

 

 短く吐き捨てるように言い残し、通路を進む。足音がコンクリートに響き、緊張感が肌を刺す。

 

 やがて一つのドアの前で、グリムは立ち止まった。ドアノブに手をかけることもなく、じっと内部を()()()()

 

「……いるね」

 

 その声は確信に満ちていた。

 腰からスタングレネードを取り出すと、ピンを引き抜き、わずかにドアを開けて室内に投げ込む。

 

 激しい閃光と炸裂音が、通路全体を震わせた。耳がキンと鳴るほどの衝撃。

 

 ──だが、グリムは待たない。コンマ数秒、敵が硬直した瞬間を見逃すはずもない。ドアを蹴破り、影のように滑り込む。

 

 室内に2人の兵士。驚き、武器を構える暇もなく、グリムは彼らに手を触れた。

 触れた瞬間、彼女の声が響く。

 

「BONG! 」

 

 その言葉と同時に、兵士たちの体を赤橙の炎が包み込む。金属製の装備さえも軋む熱。兵士たちは悲鳴を上げて転げ回り、必死に炎を振り払おうとするが、何の効果もない。

 

「無駄だよ、その炎は魔法さ。焼け死ぬまで消えないよ」

 

 グリムは口元を歪ませた。恐怖に彩られた室内で、ただ一人、自信と冷徹さをまとった笑みを浮かべる。

 

 グリムは脱兎のごとく走り、影のような速さで通路を駆け抜ける。兵士の姿を認めた瞬間、迷いなく手を伸ばし、その指先が触れた途端に赤橙の炎が炸裂する。

 悲鳴を上げる間もなく、彼らは燃え尽きていく。動きに一切の無駄はなく、冷酷なまでに合理的。まるで戦場を舞う刈り取り手のように、兵士を()()()()()()()

 

「ははっ、なんだ。案外大したことないじゃんか!」

 

 ケイトが笑い混じりに言う。その軽口が、逆に戦場の異様さを際立たせていた。

 俺たちはグリムの後を追い、焼かれた兵士の息の根を確実に止めるだけ。まるで彼女が道を切り開き、俺たちはその影をなぞるだけの存在だ。

 

 ──しかし、心の奥底で嫌な予感が蠢いていた。これだけ静かすぎる。こんなにあっさり終わるはずがない。

 

「……ここが最後の部屋か」

 

 グリムは足を止め、鋭い視線で扉を睨む。空気が張りつめる。敵の魔法少女が潜んでいるとすれば、この先だ。

 

「グリム、全員で同時に突入しよう」

 

 ケイトが冷静に提案する。そのほうが生存率は高いはずだ。グリムは一瞬不満そうに舌打ちしたが、やがて短く答える。

 

「……チッ。わかったよ」

 

 二人は無言で左右に散り、扉の両側に立った。グリムがそっとドアノブを回し、隙間を開ける。直後、ケイトが素早くスタングレネードを投げ入れた。

 

「突入!」

 

 ケイトの声が響くや否や、グリムが全力で扉を蹴り破り、閃光と煙の中に飛び込む。俺も反射的にその後を追った。

 

 ──だが、次の瞬間、視界に飛び込んできたものに心臓が凍りつく。

 

「C4! 伏せろ!!」

 

 叫びと同時に、部屋全体が白い閃光と轟音に包まれた。耳をつんざく爆発音。肌を焼く熱風。破片が弾丸のように空間を切り裂いた。

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