現代戦争における魔法少女の戦略的価値   作:無能メンヘラ

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私事により投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。


後悔

 轟音とともに爆風と破片が部屋の中を引き裂く。空気が燃え、壁が砕け散る。

 反射的に俺はグリムを押し倒し、その上に覆い被さった。

 

「レイヴン! 」

 

 耳を突く彼女の声が響いた。だが、それすらも遠ざかっていく。

 衝撃が頭を打ち、視界が滲み、やがて黒に沈んだ。

 


 

 ──ふと目を開けると、世界は穏やかだった。

 黄金の麦畑が一面に広がり、夕陽に照らされた穂が柔らかく揺れている。空気は温かく、土の匂いと風の音が心を撫でた。

 

『お兄ちゃん! 』

 

 振り返ると、隣には少女が座っていた。麦畑のような色の髪。笑顔を向けるその声は、懐かしい感じがする。

 

『どうしたアンナ? 』

 

 自然と口をつく名。自分の声なのに、別人にようだった。

アンナと呼ばれた少女は、まるで宝物を見つけたように遠くを指差す。

 

『麦畑、すごく綺麗だね! 』

 

『……ああ、そうだな』

 

 彼女は振り返る。だが顔には薄い霧がかかったように表情が掴めない。

 それでも、声ははっきり届く。 

 

『私、ここが好き! ここは静かで綺麗で、落ち着くんだ! 』

 

 その瞬間、風景が一変した。

 青空は赤に染まり、穏やかな風は悲鳴のように変わる。

 

アンナアンナ! 』

 

 俺の腕の中には彼女がいた。麦色の髪は血に濡れ、胸には銃槍が。

 体温は急速に冷え、血の匂いが鼻を刺す。呼吸は途切れ、視線は揺らいでいた。

 

『お兄……ちゃん……』

 

 震える唇が最後の言葉を紡ぐ。

 

『──ッ』

 

 抱きしめる腕に力を込めても、彼女の光は指の隙間からこぼれ落ちていく。

 俺の口からは言葉にすらならない絶叫と憎しみが吐き出された。

 


 

 目が覚めると、激しい頭痛と吐き気が脳を掻きむしるように襲ってきた。視界は揺れ、世界はグラグラと傾いているように感じる。

 

「お姉ちゃん起きた! 」

 

 タミスの高い声が、鋭く頭に響く。横を向くと、不安げに眉を寄せた彼女の顔があった。

 

「……タミス」

 

 かすれた声で名を呼び、震える手を伸ばす。頬に触れると、柔らかく温かい感触が返ってきた。……生きている。まだこうして、彼女に触れられている。

 

 ガタン、と硬質な音が響いた。入り口に視線を移すと、エレクシアがコップを落としたまま、呆然と立ち尽くしていた。

 

「レイヴン……! 」

 

 彼女はこちらに駆け寄り、俺を胸元に抱き寄せ、力いっぱい抱きしめる。彼女の心臓の脈打つ音がはっきりと耳の奥に聞こえてくる。

 

「よかった……よかった……! 」

 

 俺の手のひらにぽとぽと涙が落ちる。エレクシアの涙だ。エレクシアに、タミスに……余計な心配をかけさせてしまった。俺は、なんて情けないんだ。

 

 タミスが俺の頭をそっと撫でる。

 

「お姉ちゃん、さっきすごいうなされてた。……怖い夢でも見たの? 」

 

 その言葉に心臓が跳ねる。脳裏にこびりついているあの景色はは、隣で、目の前で息絶えた少女は……一体。……あれは俺の記憶か? 俺はなにかを──忘れているのか?

 

 エレクシアが俺の頬を両手で掴み、無理やり顔を合わせてきた。

 

「レイヴン……もう無茶なことはしないでください! 絶対に! 」

 

 彼女の声色には俺に対する不安とほんの少しの怒りがどうしようもない優しさが混じっていた。

 

「ああ、わかったよ。……不安な思いをさせてすまない。不甲斐ない俺を許してくれ」

 

 俺は頭を下げると、エレクシアは少しだけ眉を緩めた

 

「……それと、グリムがひどく怒ってましたよ。『起きたら僕の部屋に来させろ』って」

 

 エレクシアが少々、申し訳なさそうに伝える。

 俺は戸惑った、なんでグリムが怒ってるんだ? 作戦中、あいつの邪魔をした記憶はない。

 

「わ、わかった。行ってくるよ」

 

 タミスが不安そうに目を見上げてくる。

 

「大丈夫だ、タミス。心配するな」

 

 まだ頭痛とめまいが残っており、ベッドから立ち上がったとき、少々ふらついてしまった。エレクシアが支えてくれたおかげで転ばずに済んだが……。

 

 俺はグリムの部屋のドアをノックする。数秒の間の沈黙をあけて低い声が返ってきた。

 

「……誰だ? 」

 

「俺だ、レイヴンだ」

 

「……入れ」

 

 短いやり取りだった。返ってくるグリムの声の端には苛立ちが滲んでいた。

 ドアを開けて、部屋に入った瞬間、目の前にいたグリムに胸ぐらを掴まれ壁に押しつけられる。

 

「……どうしてあの時、僕をかばった! 」

 

 グリムの怒号が鼓膜を震わせる。彼女の閉じられた唇は強く噛み締められていた。

 俺は一瞬、頭の中が真っ白になった。

 

「……あのとき、あの中で()()()()()()()()は、俺だった。だから……お前をかばった」

 

 自然とあの時、あの瞬間の自分の考えが口から出た。かえってそれがグリムの逆鱗を逆撫でしたらしい。彼女の表情が歪む。

 

「ふざけるなよ! 」

 

 胸ぐらを掴む手の力が強くなり、息が詰まる。

 

「……ふざけるな」

 

 グリムは呟くようにそう言ったあと、風船が萎むように怒りが去っていく。

 俺を遠ざけるように、胸ぐらを離した。

 

「なあ、レイヴン……」

 

 グリムはゆっくりとベッドに向かい、それに腰掛けうつむく。

 

「……」

 

 彼女は黙り込む。俺はただただ、その場に立ったままで、彼女を見つめた。

 小さな部屋の中を重苦しい沈黙が支配する。外はすでに暗くなっており、整備音だけが沈黙を遮っていた。

 

「……レイヴン、お前は──僕のために死ぬなよ……」

 

 機械音まじりの沈黙の中で、憔悴したグリムの声がぽつりと響いた。

 その声は怒りでも命令でもなく、ただ弱く、切実な願いだった。




公開可能な情報
U.S. Government Report

Subject: Russian Federation Armed Forces – Civilian Massacre in Eastern Ukraine
Date: November 2017
Classification: TOP SECRET / EYES ONLY

I. 概要(Executive Summary)

2017年6月、ロシア連邦軍の空挺部隊がウクライナ東部において越境作戦を実施。その過程で、現地住民に対する大規模な殺害行為が確認された。本報告は米国情報機関および国防総省による調査結果をまとめたものである。
調査の結果、当該事件は ロシア軍による計画的かつ組織的な戦争犯罪 であることが判明した。

II. 背景(Background)
• 2014年のクリミア併合以降、ウクライナ東部ではロシア支援下の分離派武装勢力が活動。
• 2017年初頭、ウクライナ政府軍の奪還作戦が進展し、親露派は劣勢に立たされた。
• ロシアは「人道的保護」を名目に限定的な軍事介入を決定。第76親衛空挺師団の一部部隊が秘密裏に越境。

III. 事件の経過(Incident Timeline)
• 6月4日:ロシア軍部隊がドネツィク州クラマトルスク近郊に侵入。
• 6月5〜6日:住民への協力要求。食糧・情報提供を拒否した住民を「敵性分子」と認定。
• 6月7日:村落襲撃。民間人を広場に集め、機関銃掃射による集団処刑を実施。
• 6月9日:現地に到達したOSCE監視団が遺体と破壊された家屋を確認。

IV. 被害状況(Casualties & Damage)
• 死者数:312名(女性156、子供41、高齢者75、成人男性40)
• 負傷者数:約480名
• 住宅破壊:36棟以上が焼失または破壊
• 犠牲者の遺体には至近距離射撃・銃剣による刺突・拷問痕が確認され、明確な故意による民間人殺害 と断定できる。

V. ロシア側の対応(Russian Response)
• ロシア政府は「自国民保護」「ウクライナ軍の誤射」を主張。
• 国連安保理での非難決議に対し、ロシアは拒否権を行使し否決。
• ロシア国防省は事件への軍の関与を完全否定。

VI. 米国の評価(U.S. Assessment)
1. 計画性の存在
 現地住民を意図的に標的とした証拠が複数確認されており、偶発的戦闘による被害ではない。
2. 軍の関与証拠
 現場で回収された弾薬薬莢はロシア製7.62x39mm弾薬、また無線交信の傍受記録から第76親衛空挺師団の部隊コードが確認された。
3. 国際法違反
 ジュネーヴ条約(第4条・第13条)および国際人道法に違反。

VII. 推奨行動(Recommendations)
1. NATOと協調した対露追加制裁の発動。
2. ウクライナ軍への軍事的支援(防衛兵器供与、訓練の拡大)。
3. 国際刑事裁判所(ICC)への証拠提出を主導。
4. 国際世論におけるロシアの戦争犯罪認知を拡大するための情報戦強化。

VIII. 結論(Conclusion)

本事件は、ロシア連邦軍が組織的に民間人を殺害した、冷戦後最大級の戦争犯罪 である。米国はウクライナと連帯し、国際社会とともにロシアに対して断固たる対応を取る必要がある。
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