現代戦争における魔法少女の戦略的価値   作:無能メンヘラ

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タミス

 俺は施設内を案内されていた。どうも違和感がある。

 通路ですれ違う者はすべて女、男がいない。俺は気になってオリビアにそのことを聞く。

 

「おい、どうして女しかいないんだ? 」

 

「あー、それはね。()()()()()()に問題があるんだ」

 

 オリビアについていくとひとつの部屋の前で止まった。その部屋はガラス張りで4隅に監視カメラ、周囲にはライフルで武装した兵士、なにかを明確に監視している。

 

「あれが君のお世話をする子。Tactical Atomic Magical Integrated System(戦略原子魔法統合システム)、みんなからはタミスって呼ばれてる」

 

 ガラス張りの部屋の中には腰までの長さの白髪で青い目をした少女が立ってこちらを見ていた。目は俺のほうを注視しているようで、その瞳に吸い込まれるような感じがした。

 

「挨拶してあげて」

 

 部屋のドアを開けるとオリビアは俺を押し込んだ。

 挨拶をしろ、そう言われても俺はどうすればいいかわからなかった。小さな子どもの相手なんてほとんどしたことがない。

 俺がたじろいでいるとオリビアが痺れを切らしたのか入ってきてタミスに話しかけた。

 

「タミス、今日から君のお世話をしてくれるレイヴンお姉ちゃんだよ」

 

 タミスは俺のことをじっと見つめる。

 これはなにか言わなければまずい。自然と焦る。

 

「よ、よろしく」

 

「……お姉ちゃん」

 

 ズボンの裾が掴まれる。そして、上目遣いで俺の顔をのぞいてきた。

 ……少女に掴まれるお姉さん(中身は男)、文字に起こすととんでもないな。

 

「お姉ちゃんは……悪い人? 」

 

 子どもらしい直球な質問だな。

 思わず口を閉じた。まるで、嘘の通じない純粋なまなざし。

 

「もし悪い人、って言ったらどうする? 」

 

 意地悪な答え方だ、子ども相手にまで自分の性格の悪さが滲み出ている。でも、『悪い人じゃない』とか『いい人だよ? 』と答える方がうさんくさいだろう。子どもというのは純粋な生き物だということは俺でもわかる。

 こんな言い方されたら幼い頃の俺はなんと答えただろうか? きっと、なにも言えなくなるのに違いない。

 

「悪い人なら──、一緒にいたくない」

 

 実に子どもらしい、幼さゆえの非合理的な答えだ。

 だが、そこには嘘も計算もない。ただ、真っ白な本音があるだけだ。

 

「嘘だよ、君に悪いことはしない。約束するよ」

 

「本当……? 」

 

「ああ、本当さ」

 

 タミスの透き通った青い瞳が俺を覗く。そのまなざしは俺の心の奥底まで見透かしているようで、心拍数が上がる。

 この瞳に見られたら嘘はつけない……。

 

「じゃあ、ふたりとも。移動しようか」

 

 オリビアが場を仕切るように軽く手を叩き、廊下へと誘導する。タミスは俺のズボンを掴んだままだった。

 やはり、廊下ですれ違う者は全て女。その理由はこの少女、タミスにある。もしかして……、いや邪推はよそう。

 

 向かった先にはすでに2人の少女がいた。

 1人は白と銀の修道服にようなローブ、腰元には十字架のマークがあしらわれている。その気品のある姿は、まるで聖堂に仕える聖女のようだった。

 もう1人はというとだいぶ雰囲気が違う。オーバーサイズ気味のクロムハーツのパーカーに丈の短いデニムパンツ、スポーツキャップを後ろ被り、いかにも()()()()()と言った感じのが伝わってくる。

 

「紹介するよ、こっちがエレクシア=ベネディクト、そしてもうひとりがグリム=ヴァルカナだ。君の部隊の仲間になる子だ」

 

 聖女のような装いのほうがエレクシア、明らかに喧嘩腰なのはグリム。覚えたぞ。

 

 俺が一歩踏み出そうとしたとき、グリムが俺を鋭く睨みつけた。そして、不機嫌さを隠そうとせず、オリビアに声を投げつける。

 

「こいつが僕の指揮官だと? ただの人間が? 」

 

 棘のある口調、明確な拒絶の色が見える。オリビアは少し呆れた表情をしつつ首を少し掻く。いつもこんな態度なのだろうか?

 

「納得できないね。どう考えても不釣り合いだろ」

 

「文句なら受け付けないよグリム」

 

 オリビアがグリムを一蹴した。

 

「君を野放しにできるほど軍は甘くないんだ」

 

 グリムは舌打ちする、苛立ちを隠そうとしない。親指を噛みながら反論した。

 

「いいかいオリビア、僕たち魔法少女のような神に選ばれた存在をただの人間が束ねるだと? そんなの文字が書けない子供にペンを渡すのと一緒だよ 」

 

 ずいぶんと横柄な態度をとるやつだ。頭にくる。自然と握る拳に力が入る。その時だった、グリムと目線が被る。

 

「なんだ、その目……、僕に不満があるなら言ってみろよ」

 

 しまった、心の声が表情に出てたらしい。言い訳も思いつかない。

 下手なことを言えば火に油を注ぐだけだ。

 

 そんな気まずい空気をエレクシアが落ち着いた声で静かに割った。

 

「グリム、落ち着いてください」

 

 グリムは憤然とした様子で振り返る。

 

「君はいいのかい? エレクシア。こんなどこぞの馬の骨とも知れないやつが僕たちの指揮官になるんだぞ! 」

 

 エレクシアはその問いにふっと笑みを浮かべた。どこか凛とした微笑み、まるでわがままな子どもを諭す親のようだ。

 

「いついかなるときも──謙虚な心を失ってはなりません。傲慢はいずれ自らを滅ぼしますよ……グリム。あなたが一番わかっているでしょう? 」

 

 その言葉を聞いたグリムは顔をしかめて、不機嫌そうなまま親指を噛んでそっぽをむいた。

 初対面からこんな態度のやつ任務をこなすことになるとは考えてもいなかった。先行き悪い。

 

 俺は心の中で頭を抱えた。あまりにも不安だ。




公開可能な情報
レイヴン 27歳 女(元男) 身長181cm 体重71kg 
経歴 元ウクライナ国家親衛隊の隊員
特筆すべき点 ウクライナに対する愛国心、忠誠心が強い
機密情報 ウクライナ、ドンバスにて行われた作戦においてロシア軍の魔法少女コードネーム『サンダーボルト』を殺害。MK-Deltaにより記憶を改竄済み。
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