「レイヴン……なにか変だ……嫌な予感がする」
隣からグリムが震えた声が聞こえる。
俺の呼吸は無意識のうちに激しくなり、目の前が白くなったり黒くなったりを繰り返していた。
もしや、いや確実に敵の狙いは……
頭の中の疑念が完全な答えと変わっていく。
『こちら司令部、ダマスカスに展開する多国籍軍部隊は直ちに離脱しろ、繰り返す──』
鬼気迫る声が無線から流れる。
『──こち……司令部……ダマスカ……が……』
無線がノイズによって掻き消される。
『核……爆発……多国籍……軍……』
言葉が過ぎ去っても頭は理解しない。脳が必死に情報を拒もうとする。
「……おい、今なんて言った? 」
誰も答えない、答えられない。
頭の中の思考が真っ白に塗り潰される。
キーンという甲高い耳鳴り、次の瞬間、誰かの叫び声が聞こえる。
が、次の瞬間、遥か彼方の地平線が白く染まり、夜空は昼間のように明るくなる。
遅れて、空気そのものが唸りを上げる。
「──ッ! 伏せろ!! 」
俺は咄嗟にグリムを押し倒し、シールドを構える。
「おい! レイヴ──」
数秒遅れた衝撃波が全ての構造物を薙ぎ払う、空気が鈍器のように背中を殴りつける。
爆風が粉塵と瓦礫を巻き上げ、戦車も、兵士も、ありとあらゆるものを飲み込んでいく。
轟音。
視界は暗転と明転を繰り返し、鼓膜が破かれそうになる程の音の暴力が振るわれる。
そして、静寂が訪れた。
俺は空を見上げる。
ダマスカスの上空、そこには巨大な黒いキノコ雲が天を破らんとゆっくりと昇っていた。
「……嘘……だろ」
その声は誰のものかすらわからない。
ただ、わかっていることがひとつだけあった。
すでにこの戦争は致命的で、絶望的な終末に向かっている、ただそれだけだった。
核攻撃により展開していた多国籍軍兵士約3万名の内、少なくとも約2万名以上が即死。
生存者は数百名にも及ばないと推定される。
通信記録(極秘)
件名
ダマスカス核弾頭発見事案
特殊部隊・核緊急支援隊 通信ログ
記録識別番号
CIA-SIGINT/NUCLEAR-DELTA-06
参加部隊
• 米海軍特殊部隊
→ SEAL Team 6
• 米国エネルギー省 核緊急支援隊(NEST)
状況
核弾頭発見〜起爆直前
通信ログ
21:11:42
『こちらネプチューン1(SEALチーム)。装置を確認、位置固定。映像送る』
21:11:47(NEST)
『映像受信……解析中……』
21:11:52
『サイズは? 見た感じ、戦術核クラスだ』
21:11:56(NEST)
『肯定……外殻構造、旧ソ連系……待て……これは──』
21:12:01
『なんだ、言え』
21:12:04(NEST)
『RDS系の派生モデル……改造されている』
21:12:08
『改造だと? 誰がこんなもん──』
21:12:12(NEST)
『静かに。今は構造を読む』
数秒間の沈黙
21:12:19(NEST)
『起爆回路確認……トリガーは複数……遠隔、それと時限……いや、これは──』
21:12:24
『早くしろ、時間がない』
21:12:27(NEST)
『……自己防衛ロック付きだ』
21:12:30
『解除できるのか? 』
21:12:33(NEST)
『理論上は可能……だが時間が──』
21:12:36
『何分だ! 』
21:12:38(NEST)
『……わからない』
21:12:41
『ふざけるな!! 』
21:12:43(NEST)
『待て、まだだ……今、トリガーの優先順位を──』
21:12:49
『ネプチューン2、周囲警戒強化。これが起きたら全員終わりだ』
21:12:55(NEST)
『……ダメだ』
21:12:57
『何がだ』
21:13:00(NEST)
『トリガーがリンクしている。1つ切れば別の回路が起動する』
21:13:05
『……つまり』
21:13:07(NEST)
『
21:13:10
『……クソ野郎が』
21:13:13(NEST)
『待て、まだ方法はある……手動でコアを──』
21:13:18
『やれ』
21:13:21(NEST)
『……いや、待て……これは……』
21:13:24
『どうした』
21:13:27(NEST)
『トリガーが動いた……』
21:13:29
『なんだと? 』
21:13:31(NEST)
『誰かが遠隔で触った……! 』
21:13:34
『敵か!?』
21:13:36(NEST)
『違う……これは……最初から……』
21:13:39
『はっきり言え! 』
21:13:41(NEST)
『──起爆シーケンスに入った!! 』
21:13:43
『全員退避!! 繰り返す、全員退避!! 』
21:13:46(NEST)
『無理だ、間に合わない!』
21:13:48
『何秒だ! 』
21:13:50(NEST)
『カウントダウンが見えない……! 』
21:13:53
『くそっ!! 』
銃声・混乱
21:13:57
『ネプチューン1より全隊、即時離脱──』
21:13:59(NEST)
『……すまない』
21:14:01
『謝るな、まだ終わってない──』
21:14:03
強烈なノイズ
21:14:04
『……光が……』
21:14:05
通信消失
記録終了
備考:多国籍軍ダマスカス攻略作戦部隊の編成
多国籍軍 編成(13カ国・約30,000名)
アメリカ軍(中核戦力:約12,000名)
• United States Marine Corps
• 第15海兵遠征部隊(15th MEU)
• 第1海兵師団 連隊戦闘団(RCT)
• United States Army
• 第82空挺師団(第1旅団戦闘団)
• SEAL Team Six(DEVGRU)
日本国自衛隊(約3,500名)
• 陸上自衛隊
• 第1空挺団
• 水陸機動団(西部方面隊)
• 中央即応連隊(特殊作戦支援)
韓国軍(約2,500名)
• Republic of Korea Army
• 第707特殊任務団(対テロ・市街戦)
• 機械化歩兵大隊
イギリス軍(約2,000名)
• British Army
• 第16空中強襲旅団
• Special Air Service
フランス軍(約1,800名)
• French Foreign Legion
• 第2外人落下傘連隊(2e REP)
ドイツ軍(約1,500名)
• Bundeswehr
• 降下猟兵連隊
• 機械化歩兵部隊
イタリア軍(約1,200名)
• Italian Army
• フォルゴーレ空挺旅団
ポーランド軍(約1,200名)
• Polish Armed Forces
• 第6空挺旅団
トルコ軍(約1,800名)
• Turkish Armed Forces
• コマンドー旅団
イスラエル軍(約1,500名)
• Israel Defense Forces
• ゴラニ旅団
• サイェレット・マトカル
カナダ軍(約1,000名)
• Canadian Armed Forces
• PPCLI(王立カナダ歩兵連隊)
オーストラリア軍(約800名)
• Australian Army
• SASR(特殊空挺連隊)
オランダ軍(約700名)
• Royal Netherlands Army
• 第11空中機動旅団