現代戦争における魔法少女の戦略的価値   作:無能メンヘラ

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ゼロファイター

 空は藍色を帯びたまま、夜明けの匂いが微かに漂っている。だが、海の静寂はもう存在しない。

 

 ジョージ・ワシントン艦内、艦橋から見渡す海面には、戦闘艦艇が隊列を成して浮かんでいた。甲板では兵士たちが黙々と装備の点検を繰り返し、遠くではF−35とF/A18がエンジンを轟かせて待機している。

 

「……起きろレイヴン、いつまで眠るつもりなんだ? 」

 

 グリムが苛立ち混じりの声。目を開けると隣ではタミスがまだ眠っていた。小さな寝息を立てている。ここが戦場の中心だとは思えない。

 

 ──頼むから、平和に終わってくれ。

 

 その願いは明らかに矛盾している。これから自分達がやることと真逆だとわかっていた。

 

 軽い食事を済ませた後、俺たちは再び艦内のブリーフィングルームに集められていた。空気が張り詰めており、誰も、グリムですら無駄口を叩こうとしない。

 

「作戦名はSeraph Tide(天使の潮流)。──わかっていると思うが、この作戦に失敗は許されない」

 

 オリビアは淡々と告げる。

 モニターには作戦区域全体の3Dマップが投影され、尖閣諸島を中心に多数の艦隊と航空機の軌道が描かれていた。作戦は2段階に分かれて進行する。

 

「フェーズ1は、自衛隊および第7艦隊による艦砲射撃で敵陣地を先制攻撃。ほぼ同時にB-2を含む統合航空部隊が上空から制圧を加え。地上戦力の大半を削る予定だ」

 

 敵の抗戦能力を事前に削ぎ落とす。いわば()()()()の前哨戦だ。

 

「続くフェーズ2では、地上部隊が尖閣諸島に上陸して、敵残存兵力を掃討。同時に、近海に展開する敵艦隊の──特に人民解放海軍の情報艦と思われるユニットを、我々が速やかに排除する」

 

 作戦図には、赤くマーキングされた艦艇が海域を移動していた。その隣に『可能性:偵察活動』と注釈がある。

 

「今回の演習……、いや軍事行動は世界中が注目している。戦果だけではなく演出も成功させなくてはならない」

 

 オリビアの声は冷静だったが、その裏では緊張が滲んでいた。

 

 数時間後──

 ついに、演習が開始された。

 

 海域全体に轟音が響き渡る。すべての艦艇が一斉に火を噴き、ミサイルと砲弾が空と海を埋め尽くした。着弾の衝撃が島の輪郭すら歪め、まるで地形そのものを作り変えようとしているかのような凄まじい火力。

 

「……こわい」

 

 そのとき、裾が引かれた。視線を落とすと、タミスが怯えた顔で立っていた。顔色は青ざめ、手は小刻みに震えている。

 

 か細く、震える声。

 

 俺はそっとタミスの手を握った。戦争の音を、彼女には覚えさせたくない。

 ──無理もない。彼女にとってこの光景は現実離れしている。鼓膜を裂くような砲声、火柱、爆風、飛び交う金属の音。

 この状況に、正気を保てる人間の方が少ないだろう。

 

 やがて、演習は第二フェーズへと移行した。

 上陸艇が海面を滑走し、空挺部隊が空を舞う。次々と戦力が島に向かって進撃を開始する。

 

「さあ、君たちの番だ」

 

 ブリーフィングルームに戻ると、オリビアが手を打ち鳴らして注目を集めた。彼女の表情は硬いが、どこか誇らしげでもある。

 いよいよだ──拳に自然と力が入る。

 

 歴史上初の魔法少女部隊による公開演習。

 この瞬間が、世界の戦争観を一変させる。

 

「乗れ! 行くぞ! 」

 

 オスプレイへと急かされ、俺たちは次々に搭乗する。

 そして、発艦──そのときだった。

 

『おい……! なんだ、あれは! 』

 

 管制塔からの通信がスピーカー越しに響いた。緊迫した声だった。

 視線を上げると、空を裂くように何かが飛来した。

 

 ──7機。

 

 米軍艦隊の上空を、識別不能の機体が通過した。

 その形状から戦闘機と爆撃機の混合編隊とわかるが、どれも見たことがない。滑らかすぎる機体ライン、熱を感知できないエンジン排気──。

 

『レーダーに反応はなし! 光学・赤外線でも捕捉できていません! 識別コード不一致、データベースに該当機体なし! 』

 

 隣で、オリビアが吐き捨てる。

 

「くそっ……! あいつら、やりやがった! 」

 

 顔が怒りで酷く紅潮している。

 彼女は震える声で続けた。

 

「魔法少女を寄越したのは囮……! 注目を集めるためのエサ……! そして、私たちは……まんまと釣られた! 」

 


 

 上空2000メートル 戦闘空域 米軍アグレッサー部隊

 

 衝撃波が空域に広がる。

 

「──ッ、なんだあのイカれたスピードは! 」

 

 レーダースクリーン上に、なんの反応もなく油断をしていた。そのときだった。

 空域に展開していたF-22の一機のパイロットは、咄嗟に機体をロールさせ回避行動に入る。

 

 次の瞬間──

 

 彼の僚機に撃墜判定が出る。警報を鳴る間すらなかった。

 

「撃墜された! どこからだ! 」

 

『新型のミサイルか! いや、違う……機体そのものが──』

 

 F-0、日本が極秘裏に開発した第6世代戦闘機。その速度とステルス性は、今までの空戦の常識を覆す代物だった。

 

「上を取られている! いや、これは──真下だ! 」

 

 F-16が急旋回して迎撃しようとしたときには、もう手遅れだった。

 F-0は機首の迎角を90度上げて追尾するF-16の追尾を外すと、そのまま背後をとる。背面機動のまま、()()()()()()()()()()()()()()()を行い、F-16をロックオンする。そのまま、F-16のHUDには撃墜判定が出される。

 

 米軍の地上オペレーションルームはこの異常事態に困惑していた。

 

「こちらのF-22とF-35が……圧倒されているだと……? 」

 

 演習観測官の米軍将校が、ディスプレイ越しに状況を見て呆然と呟いた。

 

「あの機体、人間にできる機動じゃないぞ! AIか……? 」

 

「──違います」

 

 日本側の航空幕僚監部の技官がゆっくりと口を開く。

 

F()-()0()はパイロットの神経信号とAI制御が連動している、それによってあのような機動を可能にした」

 

 F-0が螺旋を描きながらF-35の編隊を上下から分断する。

 1機、また1機とF-35に撃墜判定が出される異様な光景だった。

 

「──米軍アグレッサー航空戦力、全滅を想定。演習フェーズ終了」

 

 静まり返った作戦室に、日本側の担当官が淡々と告げる。

 

「脅威評価レベル、想定を超過。F-0、米軍F-22とF-35を実戦レベルで凌駕」

 

 その瞬間、世界は日本の空の本当の姿を知った。




公開可能な情報
以下は、尖閣諸島での米軍との合同演習に投入されたアグレッサー航空機部隊の編成
米軍アグレッサー航空機部隊:第99戦術訓練飛行隊 “ゴースト・ヴァイパーズ”

任務:
敵勢力(=人民解放空軍)に模した高性能航空戦力として、演習参加部隊に高度な空中戦・電磁戦・情報戦への即応力を付与する。

機体編成(計18機)

F-22 Raptor 6機
• 高度な空対空戦闘能力をもつステルス戦闘機。
• 改修型(ブロック30/35)で最新アビオニクスを搭載。

F-35A Lightning II 4機
• マルチロールステルス機。
• SEAD(敵防空制圧)任務を想定。
• データリンクによる部隊間連携強化。

F-16C Block 70 6機(アグレッサー塗装)
• 視覚的識別を困難にするためのカラースキーム(ロシア風または中国風迷彩)。
• ECM(電子妨害)ポッドを搭載し、敵通信妨害や模擬ミサイル回避訓練を実施。
• 近接ドッグファイトの訓練に特化。

EA-18G Growler 2機
• 電子戦機。
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