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「さて、授業を始める前に――再来週に行われるクラス対抗戦の代表者を、そろそろ決めておかなくてはならん」
織斑くんとオルコットさんの一悶着(?)があった後の授業は、織斑先生が担当するらしい。
教卓に立った先生が、開口一番そう言った。
「クラス代表は、対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席者――まあ、クラス委員のようなものだ。
ちなみに、一度決まると一年間は変更できん。自薦・他薦は問わん。なりたい者はいるか?」
正直、僕はあまり向いているとは思わないし、女子たちともまだそこまで話したこともないから推薦もしづらい。
だけど、このクラスの女子なら――
「はい!織斑くんを推薦します!」
「私もそれがいいと思います!」「さんせー!」
「唯一の男子がいるクラスだもんねっ!盛り上げないと!」
……やっぱり。
ずっこけたりしていたこのクラスの皆ならこうなると思った、
僕は自然と苦笑いを浮かべてしまう。
ちなみに、椚ヶ丘出身のことで少し不気味がられている僕が推薦されるとは思っていない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
俺はそんなのやらなーーー」
「推薦されたものに拒否権などない。
選ばれた以上は覚悟しろ。」
織斑先生が、織斑くんの抗議をばっさり切り捨てる。
「他に、自薦や推薦はないか?
無いなら織斑に決定するが……」
そのとき、隣の席の布仏さんが手を挙げた。
「私は、なぎちゃんを推薦しま~す」
えっ……。僕は反射的に布仏さんの方を見てしまう。
「なぎちゃん?……あぁ、潮田のことか」
驚いた僕の反応を見て、織斑先生もすぐに察したようだった。
「なんで僕?!」
「男子っていうなら、おりむーだけじゃなくて、なぎちゃんもいいと思って~」
……ああ。一度名前を出されてしまったら、さっきの流れ的に、ここで「やっぱりやめます」とは言えないだろう。
「では、この二人から――」
「待ってください!!」
バンッ!
机を叩いて立ち上がったのは、オルコットさんだった。
……まあ、さっきの織斑くんとのやり取りを見れば、男子ばかりが代表候補になって、自分が推薦されないのは納得いかないのだろう。
「そのような選出は認められませんわ!!
大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!
わたくしにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
彼女は、男が代表になるなど言語道断と、まるで演説のように語り始めた。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。
それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!
わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!!
大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で___」
実際このクラスで一番の実力があり、知識も豊富だろうから、一番向いているのかもしれない。
けれど、日本人を侮辱した彼女が、果たして“日本のクラス”を代表するにふさわしいのかは、別の話だ。
そんなことを考えていたら――
「イギリスだって、大したお国自慢ないだろ。
世界一料理が不味い国って、何年連続だよ?」
織斑くんが、あろうことか地雷を踏んだ。
ああ……これは、ヒートアップ確定だ。
「な、なんですって!
あなた、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「先に日本を侮辱してきたのはお前だろう!」
と、織斑くんとオルコットが言い争いを始める。
正論を突かれたオルコットさんだったが、祖国を馬鹿にされた事の怒りで止まることはなかった。
「決闘ですわ!!」
「いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい!」
「言っておきますが、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ!」.
「侮るなよ?真剣勝負で手を抜くほど落ちぶれちゃいない。」
……なんか、とんでもないことが勢いだけで決まりかけている。
しかも、立候補したのがオルコットさん、推薦されたのが織斑くん。
この流れだと、きっと――
「そこまでにしろ!
では勝負は一週間後、放課後に第三アリーナで行う。
この勝負で、クラス代表を決める。……だから潮田、お前も戦え」
やっぱり。そうなるか……
「わかりましたわ」
「俺もそれでいいぜ」
「……わかりました」
「何にせよちょうどいいですわ。
イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
そこで織斑くんが、とんでもないことを言い出す。
「ハンデはどのくらいつける?」
「あら、早速わたくしにお願いですか?」
「いや、俺がどのくらいつければいいかなって…。」
織斑くんのその言葉に周りの女子が笑い出す。
「お、織斑君それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「今では男と女が戦ったら、3日で勝負がつくっていうぐらいだよ?」
笑いながら織斑くんを説得している。
「……じゃあハンデはいい」
「そうでしょうそうでしょう。
むしろ、わたくしの方がハンデをつけるべきか迷うくらいですわ。
ふふっ、男が女よりも強いなんて日本の男性はジョークが上手いのですわね。」
と、オルコットも笑いながら言う。
「ねー、織斑君。今からでも遅くないよ。
オルコットさんに言ってハンデをつけてもらったら?」
「男が一度言い出した事をを覆せるか。
ハンデは無くていい。」
「えー、それは代表候補生を舐めすぎだよ。」
「そうだよ、織斑くん。
それは、オルコットさんのことをなめすぎだよ。」
僕は立ち上がり、始めて意見を言う。
「な、渚までそんなことを言うのか?!」
「まぁ、そちらの男子はわきまえているみたいですわね」
セシリア・オルコットは口では肯定的なことを言っているが心の中では父親を思い浮かべて、渚に情けない男のレッテルを貼っている。
「渚!なんでそんなに弱気なんだよ!」
「織斑くん、僕は弱気なわけじゃないよ
オルコットさんが国の代表候補生っていう事実を受け止めているだけだよ。
国の代表候補生ってことは何百――下手すれば何千時間もISを操作してきた可能性があるし、それに伴う知識や訓練もしているはず。」
「そ、それは……」
「まずはその事実を受け入れる必要があると思うよ。
その事実を受け入れ、格上と認定した上で
――僕たちが勝てる可能性は十分にある。」
「……え?」
「……なんですって?」
僕はそこで、笑顔を見せながら――でも、はっきり言った。
「だって相手を見下している
その瞬間クラスにいる全員――あの織斑千冬を含めて クラスの温度が数度下がったかのような寒気を覚えた。
「一週間後に向けて、頑張ろうね!」
「お、おう……」
「あ!先生すみません!
これから授業でしたよね?」
僕は少し固まった様子の織斑先生に声をかける。
何か固まる要素はあっただろうか?
「……ああ。織斑も、オルコットも席に着け。
クラス代表については、先ほど言った通りだ。では、授業を始める」
ようやく始まった授業を聞きながら、クラスメイトたちは思う。
――先ほどの、あの寒気は……いったい何だったのだろうか、と。
ちょっと、いやかなり好戦的過ぎたか?
もうちょっと進める予定だったのですが、思ったよりここが区切りよくて切りました。
次は試合しているはずです。