案院運でございます。
SIDE スバル
スバルは淡く光るマグライトを片手に恐る恐る盗品蔵の中に足を踏み入れる。。ぼんやりとした視界の中、目先にあるものは小さなカウンターであった。カウンターの上には値が張りそうな壺や刀剣類が無造作並べてある。
「当然だけど値が張りそうなものは蔵の奥か」
流れた盗品の行き着く先もその入手手段も疑わしいものだ。相変わらず人気はないが、奥へ行くほど置かれた盗品のサイズや価値が増しているのが乏しい光源の中でもわかる。
スバルは建物の奥へ進んでいく。
宝石のついた徽章となると、最奥の方にあるのは間違いあるまい。
そう考えて、無意識に逸る足取り。――そんなときだ。
「ん?」
ふいに靴裏に生じた違和感にスバルは立ち止まる。
何か固いものを踏んだ、というような違和感ではない。むしろそれとは逆で、踏んだ地面から引っ張られるような――粘着質な何かを感じたのだ。
足を持ち上げ、スニーカーの裏に指先で触れると、そこにはべったりと液体が付着していた。妙に粘っこいそれは指先で軽く伸び、本能的な不快感を刺激する。
「なんだ、これ」
最初に目にしたのは腕であった。その奥には足、胴、指
ー絶望した顔をした大柄の死体
「ふぇ」
スバルはその光景を見たときに思考が停止した。その思考停止が絶望的な隙であった。
「ーああ。見つけてしまったのね。じゃあ仕方ない。ええ、仕方がないのよ」
声が聞こえてきた瞬間スバルの体は衝撃に襲われる。
「なんだ?あ?」
スバルは足と胴が分かたれていた。何故、いつ、誰が、どうして、殺されかけている?
スバルは思考する。絶命する刹那のときそれは起こる。
「エル・ヴィータ」
スバルの胴体を切った相手とその周りに何か重いものが落ちたようなクレーターが発生する。
「あら?貴方は…」
スバルの意識が段々と落ちていく。
「なんだお前の体。かわいそうなぐらい不細工だな。」
そういう乱入者は月に映える美しい花のような人間であった。
「ダンスの横入りとは無粋ね、あなた。でももう遅いのよ。仕事は終わったから。」
「ああ?何を言ってやがる狂人。」
「――バル? ――っ!」
「ーは?」
短い悲鳴が上がって皮肉なほどに美しい『赤』が周囲に舞い散る。銀髪のハーフエルフが倒れていく。
「……っていろ」
スバルの意識が遠ざかっていく。
だが、それでも――、
「俺が、必ず――」
――お前を、救ってみせる。
次の瞬間にナツキ・スバルは命を落とした。
SIDE ???
「こんなところを見ても落ち着いているだなんてあなたかなり非情なのね?ところであなたは私と踊ってくれるのかしら?」
「ああ?なんで俺がそんな真似しないといけねーんだ。興味もねーよ。」
ーただ
「月が見てんだ。派手に舞えなきゃ俺じゃねーな」
そういって乱入者はニヒルに笑う。その手には5メートルはありそうな細長い鞭が握られている。
「あなたは私を退屈させないみたいわね。ーーー『腸狩り エルザ・グランヒルテ』」
「お前は俺を楽しませてくれるのか?ーーー『最悪の騎士 エリス・フォン・フェンウィック』」
お互い名乗り、一歩一歩近づいていく。
とうとうその距離は目と鼻の先になろうかというところそれは起こる。
周りが凍ったように止まっていく。
黒い黒い影が周りを覆いつくしていく。湧き上がる影に底は見えない。
次第にうっすらと人影が見えてくる。
ー愛してる 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる 愛してる あの人と同じくらい愛してる
あなたも愛して?
「・・・わりーが名も知らねぇ相手を快く出迎えるほど俺は懐は深くはないがぁ?」
エリスが最後に見た光景は泣きながら近づいてくる『魔女』の姿であった。
時間が遡っていく。
「ああ?」
空を見上げると月と星が輝いていた空には燦燦と輝く太陽が昇っていた。いつも通り憎たらしくも美しい太陽の姿が。
「どういうことだ? まあいいか。舞を踊るには興が冷めた。」
周りを見渡した後にどこに行くかも決めずに歩を進めていく。周りにはとても興が冷めたような面にはみえなかったが。
ーまずは状況把握からだ。確かにあれは自分は月夜に腸狩りとやりあう瞬間であったはず。しかし、今現在は午前中、その隣には
「どうしたの?エリー?どこか悪いとこがあるの?」
そこには自分が一応仕えている主、銀髪のハーフエルフであるエミリアがいた。
「なんでもねーよぉ。ただ久しぶりに王都に来たなぁって思っただけだ。」
「なにいってるの?家から出てきてまだ4年でしょ?ぼけるにはまだはやいにゃぁ~ベティが悲しんじゃうよ」
「精霊の基準で話されちゃたまったもんじゃねーよ」
「?エリー?私もそう思うけど?」
「寿命の長さも違うやつから言われてもなぁ・・・」
「でも心配はいらないんでしょ~いつも言ってる通り…」
「あぁ~黙ってついてきな。俺についてくりゃぁ、すべてうまくいく。」
自信満々にそう答えるエリス。他所からみれば何の根拠があるかはわからないがエミリアとその隣にいる猫の姿をした精霊パックはいいものが見れたと微笑んでいた。
しばらく歩いていると人通りの多い大通りに出ていく。通りの横には装飾店・八百屋・生花店とかなり繁盛しているようであった。
物珍しそうに目を輝かせるエミリアとパック、人通りが多すぎると辟易するエリス。主従関係である二人の反応はえらく違っていた。
「じゃぁ俺はあそこの噴水で寝てるからエミリアは好きに見回ればいい。俺は寝ているから」
「二回言わなくても分かったってば。・・・私の騎士様としてはどうなのかと思うけど」
「全く困ったニンゲンだよねーエリスってば」
「ほら、行った行ったぁ。何かあればこのペンダントで呼んでくれ。マナを込めるだけで俺に知らせてくれる。…パック、大事な娘から目をはなすなよ。」
エリスは懐から月の意匠が施されたペンダントをエミリアに渡す。
「わかってるよーなんたってリアは可愛くて大事な愛娘だからね」
「もう!私、みんなにそんな心配されるほどの子供じゃないんだから!」
エミリアとパックから分かれてから噴水の淵に寝そべるエリス。目を閉じ思考を巡らせる。考えることはもちろん数時間前にみた現実みたいな夢。愛をささやいてくる見知らぬ黒い装束の女、腸狩りを名乗っていたエルザ・グランヒルテ
いくら考えていても謎は深まるばかりである。
「久しぶりだね、エリス。」
はたから見れば噴水に寝そべる不審者。それに声をかけるなんてそう何人もいない。
「何の用だ?『剣聖』」
燃える赤髪に空色の瞳、腰には竜爪の刻まれた鞘を携える騎士の格好をした青年が立っていた。
「僕をそんな風に呼ばないでほしいな。我が友人?」
「悪かったよラインハルト。寝起きは機嫌が悪いんだよ俺は。」
「それは起こして悪かったよ。それだエミリア様は?」
「どこかにはいるだろうよ。…心配しなくても『月』を渡してある。心配ないさ、それに」
「君についていれば何事もうまくいく。かい?」
「ああ。その通り。俺は運がいいからな。」
「全く‥騎士としてはどうかと思うが、僕と渡り合える数少ない友人は言うことだ違うね、エリス」
肩をすくめそう言うラインハルト。その顔はどことなく嬉しそうに見える。
ー心身共にイケメンであるラインハルトは何事も様になるな。全く
「ところでお前今日は非番か?」
「ああ、そうだよ。こうして休日を満喫中だよ」
「休日っていみを辞書で調べてほしいなぁ」
この男、ラインハルトは休日を満喫と言いながら都市を見て回り治安維持に手を貸しているのである。休日の定義が崩れそうな過ごし方である。
「誰かーーーー! 男の人呼んでーーーーーーーー!!!」
どこからか女性のような助けを求める声が響く。
「僕は様子を見に行くよ。また会おう。」
「へぇへぇ、王国一の騎士はお忙しいこった。またな」
ラインハルトはその脚力を使い一瞬で空に消える。
エリスはまた目を瞑り、夢のことを考えながら眠りに落ちるのであった。
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主人公紹介
名前 エリス・フォン・フェンウィック
性格 自信過剰で不遜。ちょっと柔らかくしたプリシラの男版。
能力 鞭を主に武器として使う。その戦い方からついた二つ名は『最悪の騎士』
???の加護
エミリアにここ数年で使えることになった王国の騎士。その前は血濡れになって笑いながら戦う好戦的な考えを持つ。そこそこ交友関係は広いが周りは結構恐れている。
不定期に自給自足します