リーンリーンリーンリーン
耳をすませば鈴が鳴っているような音が聞こえる。それはまるで誰かが呼んでいるような。
「んーっ!はぁ、寝すぎたか」
固い噴水の淵で寝ていたエリスは体をめいいっぱい伸ばし、ひとりごちる。
辺りはを見回すと昼間のような人だかりはなく、ぽつりぽつりと人が自分の家に帰っていく。
今は夕方にさしかかろうかという時間帯、そしてエミリアに渡していたペンダントからの信号。
「エミリアに何かあったか。」
そういうや否やラインハルトにも負けないスピードで駆け出して行った。
SIDE スバル
エリスが駆けだす4時間半前に遡る。
スバルの徽章探しは難航していた。自分にサテラと名乗っていた銀髪の美しいハーフエルフを見つけ、その名を叫ぶと
「あなた……どういうつもり――?」
彼女が向けたのは、白い頬をわずかに紅潮させ眦をつり上げた怒りの形相だった。
こちらを見上げる瞳には強い敵意が光っていた。
「誰だか知らないけど、人を『嫉妬の魔女』の名前で呼んで、どういうつもりなの!?」
想像だにしなかった怒声によって、スバルの心は粉々に打ち砕かれていた。
想像の外からの怒声は時が止まったかのような錯覚を引き起こしていた。聞こえてくるのは己の早くなっている心臓の鼓動と肩を震わせ起こっている銀髪少女の呼吸だけであった。
周囲、露天商と通行人に満ち溢れるこの大通りにおいて、今や誰もが二人を注視していた。
そこには色濃い動揺が浮かび上がり、誰もが身じろぎを禁じられたように押し黙っている。
「いったいどういった意図でその名を呼んだのか教えなさい!」
サテラと名乗っていた少女はこちらを激しく攻め立てる。しかしスバルとしては教えられた名前を読んだだけであって何が悪かったのか把握できていない。
しかし、残念ながら把握できなくても時は進んでいく。
「私も暇じゃないの。用がないならとっとと離れさせてもらうわ。」
うなだれながらも何もできないまま少女を見ていたその時だった。金色の風が遠くから距離を縮めていく。今や激突するかに思えたその風は銀髪少女の鷹の刺繡が入ったローブへと侵入し竜をかたどられた徽章を盗っていく。
「まさかっ!このための時間稼ぎ!」
彼女は盗っていった金色の風を追いかけていた。
目まぐるしく状況が変わっていくことについていけずスバルは思う。
「誰か俺にやさしくしろよ。何のための異世界召喚だよ!」
ただただその身に起こっている理不尽に対し暴言を並べ、路地裏へと駆け出す。今起こっていることの事態をあの二人に聞き出すために。
スバルは息切れを起こす。筋トレを室内で行っていた筋トレ系引きこもりでも有酸素運動はさすがにカバーしきれていなかった。自分はずっと走り続けていられるわけではない。ならば先回りしてあの惨劇の場に向かうべきだと判断する。
しかし、スバルの不幸はこれだけでは終わらない。路地裏を拠点としているチンピラ三人組にカツアゲされる。
「くそッ時間がねーんだよ。そこどけ!あとでいくらでも相手してやるから」
一刻も早くあの偽サテラと金髪少女の先回りをしたいため焦っているがチンピラごときでビビるスバルではない。
しかし、ふと気づく。自分の手にはコンビニで買ってきたが謎の人物に血まみれにされて台無しになったはずの菓子類が綺麗なままあることに。
今、この場で必要なことは――、
「そーら、取ってこーい!!」
「なっ!?」
手の中のビニール袋を振り上げて、遠く路地の奥まで放り投げる。
放物線を描き、飛んでいくビニール袋は暗がりの方へとまっしぐらだ。当然、それを獲物と目論んでいた男たちの視線もそちらにつられる。
チンピラ三人組がビニール袋に眼を釣られた隙に通り抜けようとするがぐらりと体が傾き足を踏み外す。
なにもない道でこけるなど自分はそんなに老化したか?と思い立ち上がるために力を入れようとするが踏ん張りがきかずまた倒れてしまう。
「だから素直に言うこと聞けってったんだよ、バーカ」
スバルの腰にはナイフが刺さっていた。刺されたと意識した瞬間に鋭い痛みが走る。
痛みに続いて段々と寒くなっていく。
他の機能も次々と息絶えて、最後には抜けるような掠れた音を吐いて、ナツキ・スバルは三度、命を落とした。
スバルが目を覚ますと一度目とおんなじところで立っていた。
「つまりあれだな。死ぬたびに同じ場所に戻る。所詮『死に戻り』といったところか」
かっこつけながらそう言い放つスバルは人が多い場所で悪目立ちしていた。
死に戻り、つまりタイムリープ。セーブ&ロードといっても差し支えはないだろう。
しかし、不可解である。せっかく異世界転生したのであればもっと強い才能や魔法が用意されているのが通例であるのに対し、スバルの力は死ななきゃ発動しない。
痛い辛い思いをしなくちゃ発動できないピーキーな能力である。
「今までのことが死に戻りだと仮定すると、どうにもこれまでの不自然さの辻褄がきっちりかっちり合っちまうんだよな…」
どれも刀剣類による殺傷であるが全く同じ日のあの場所、あの時間に戻っている。
「つまり俺は日に何度も死ぬくらい不運な男なのか。全く困ったもんだぜ。なあ、おっちゃん!」
「さっきからぶつぶつと。急になあとか言われても反応に困るよ」
露店商をやっている主人は意見を求めるスバルに迷惑そうに答える。
露店の主人にいろいろと言葉をかけながら考えたが結局
「男にはやらなきゃならねぇときがある。――なあ、おっちゃん」
「アア、ソウダネ。ダカラ ドッカニ イケ」
「なぜに片言?」
ー目下の目標は盗品蔵にいくことかな
「おっしゃ!ナツキ・スバル!行ってきます!」
しかし土地勘など皆無であるスバルはとりあえず歩き回るしかない。しかし、次第に見覚えのある風景に代わっていき、気づく。
いつの間にか、通りから外れて細い路地に入っているがしかしそこは最初にチンピラ三人に絡まれ、偽サテラと初めて会った場所であった。
似たような路地ばっかりで自信はないがしかし、そこで出会うはチンピラ三人組。
「またお前らかよ。これで三回目だぞ。運命様様ってか?」
「何言ってんだお前。」
「状況が見えてないんだろう。さっさとやっちまうか。」
「そうしようぜ。」
スバルは考える。ここは確かに裏路地であるが決して人通りが少ないわkではない。1回目では偽サテラと風のように早い金髪が通っていたのだから。
だから有用な策は…
「衛兵さーーーーーーーーん!!!」
助けを呼ぶことであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「いやー助かったよ。えーと」
「僕の名前はラインハルト。怪我はないかい?」
「ラインハルトさん。ありがとう。」
「ラインハルトでいいよ。」
「さらっと距離縮めてくるな……えっと、改めてありがとう、ラインハルト」
スバルの目には気前のいい好青年で堅苦しいイメージがある衛兵には見えなかった。
「ラインハルトって衛兵なの?そうは見えないけど」
「今日は非番なんだよ。まあよく言われるけど。」
二人は何でもない世間話をする。話しながらスバルはラインハルトに対して評価していく。
イケメンな顔、ユーモアのある話し方、衛兵…というか騎士というからにはその腕前も確かなものだろう。
つまり…
「100点満点かこの野郎。」
「ん?何か言ったかい?」
「や、何も~ところでラインハルト。盗品蔵って知ってるか?」
「ああ、この先をまっすぐ行ってあの奥の角左に行くと見えてくるよ」
「おお!さんきゅラインハルト!じゃあ俺はこれで!また会おうぜ」
「気を付けてね!また会おう。」
軽口で応じてシュタッと手を掲げると、ラインハルトは最後まで爽やかに見送りの言葉を向けてきた。
その言葉に背中を押されるように、スバルは無傷の損害ゼロで路地裏からの脱出を果たしたのだった。
無事に盗品蔵に到着し、盗品蔵の主であるロムと話す。
「にしても合言葉に茶々を入れてくるとはお前が初めてじゃ。何が目的じゃ。」
「大した目的じゃねーよ。ここに来るであろうフェルトってやつとの交渉だよ。」
「なに?」
スバルはここに来るまでに聞き込みを行っていた。やたら泥だらけになりながら。
「なるほど。つまりフェルトの客じゃな」
「まあそんなとこだ。」
その後フェルトが来るまで雑談が続く。
「おーい。ロム爺!ってなんだお前。」
「おお、フェルトこっち来い。この兄ちゃんえらいうまいもん持ってるぞ」
「ああ!俺のコーンポタージュ味うまい棒が!」
フェルトは怪訝そうにしながらも差し出されたうまい棒をむさぼる。
「なんだこれは!むちゃくちゃおいしい!」
「あの、それ、おれの」
スバルの主張は何も通らなかった。
ある程度食べ終わり、一同はぬるいミルクを飲みながらゆっくり団らんしていた。
「ところでよ。兄ちゃんは何しに来たんだ?」
「ああ!全く俺としたことが本題を忘れるところだったぜ。」
スバルはフェルトに問われたことに喜々として答える。自分はフェルトがとってきた徽章を買い取れたいと。
それを聞いたフェルトは不思議そうな顔をする。
「なんで兄ちゃんがそのことを知ってるんだ?」
「まあお前の依頼主の商売敵だよ。」
「ふーん。まあいいや。で?兄ちゃんはいくら用意できるんだ?」
何でもないように嘘をつくスバル。
しかし疑われずに済んだようだ。物々交換による値段交渉は順調に進んでいくが。
「…誰じゃ?」
鋭いノックの音が何度か続き、沈黙にロム爺が振り返る。
「アタシの客かもしれねー。まだ早い気がするけど」
そういいながらフェルトは扉に近づく。スバルは例の殺人鬼だと思い焦るが扉の向こう側にいたのは
「―徽章を返して。あれは大切なものなの」
銀髪の美少女エミリア(偽サテラ)であった。
エミリアが来てからその場は荒れに荒れた。
盗人とその被害者その口論が飛び交う。
数分の口論の結果は引き分けらしい。
スバルがどうしたものかとちらと扉を見たとき。
――滑るように黒い影がそっと、銀髪の少女の背後へと忍び寄っていた。
「ーパック! 防げ!」
わずかに身を伏せる偽サテラの後頭部、そこに淡く青に輝く魔法陣が展開。
それが叩きつけられる刃を正面から受け止め、凶刃からその白いうなじを完全に守り通していた。
「なかなかいいタイミング。助かったよ」
猫精霊パックは親指をスバルに向けて突き立てる。スバルもまねてサムズアップする。
「ー精霊ね。 精霊はどんな腸をしているのかしら。見てみたいわ。」
そう言い襲撃者・エルザは突進していく。その直後全方位からの魔法による氷の矢がエルザの体が貫く。
普通ならそれで決着がついたのであろう。しかし
「備えはしておいて正解だったわ。」
エルザは無傷であった。
エルザ対パック&エミリアの戦いはかなり苛烈であった。しかしながらどちらも千日手であった。
次第に攻撃速度に慣れていったエルザが攻めに回りだす。防戦一方になれば負けは確実になる。
「パックまだいける?」
「ごめんリア。もうかなり眠い~」
「楽しく、なってきたのに。心ここに非ずなんて、つれないわ」
パックが仕掛けていた床一面を凍らすトラップにかかるもエルザは足の表皮は引きちぎることで回避。
「パック?大丈夫?」
「ごめん マナ切れで消えちゃう。いざとなったらオドを振り絞ってでも僕を呼んでね」
「うん。わかった。」
パックはそういうと消えていく。
精霊を失った精霊使いと巨人族のロム爺、風の加護を持っているフェルトの3対1でも状況は厳しかった。
そんななかエルザは一人覚悟が足りていないものに手を出す。
「――ぁぅ」
「だめじゃない。覚悟もない子が戦場にいちゃあ」
視線だけで振り返るエルザがフェルトを見た。
ロム爺は頭部を打たれて気絶し、エミリアは距離を取っていたのが裏目に出て間合いが遠い。そしてフェルトは蛇に睨まれた蛙状態で動けない。
「この~根性!!!!」
スバルが飛び出し咄嗟にフェルトと一緒によけれたのは奇跡であった。
「フェルトにげろ!」
「なっ!私だけケツまくって逃げろってか?」
「そうだケツまくって逃げちまえ。そんでから助けを呼んでくれ。それまでは何とか耐えて見せる。」
「くっ!無事でいろよ!私が戻るまで!」
「ああ!任せておけ。」
何とか態勢を整えてフェルトを逃がせたが状況は変わらず最悪。スバルは鍛えてはいたが化け物について行けたりはしない。
だからどうした?
ロム爺の棍棒を両手で構えながらスバルは笑う。
「あら?恐怖で気でも狂ったかしら?」
「はっ!こんなもんへでもねーよ。」
エルザと言葉の応酬をしながらスバルはちらりと偽サテラとアイコンタクト。視線に応じる彼女に軽く顎を引いて
「とっておきの切り札とかあったら今のうちに出した方がいいぜ!」
「切り札ならあるけど私以外…あっ!」
「なにその今まで忘れちゃってましたみたいな『あ』は。」
「うっ!でも今思い出したからセーフよ!」
「何を見せてくれるのかしら?楽しみだわ。」
エミリアは月のペンダントを取り出し何かを祈るように握りこむ。
「月のアクセ?…これが切り札?何もないz」
そうつぶやいた2秒後に周りの空気がなくなったような感覚に陥る。
「なっ!」
「待たせたなエミリア。状況は?」
意味深に笑みを浮かべながら降ってきた人が現れる。
SIDE エリス
「それで?」
「ああ!ごめんなさい。状況よね!私襲われちゃって。」
「え?このひ弱そうな眼付きのわりーガキにか?」
「え?ちがうよ?」
「なんで俺が犯人みたいになってんの!?違うよ!あそこのお姉さまが襲ってきてるの!俺!被害者!」
「え?なんでちょっとうれしそうにしてんだ?もしかしてそういう性へk・」
「え?そうなの?」
「ちげーよ!美少女の前で何てこと言いやがる?いたってノーマルだよ」
登場した時の重い空気も忘れ、わちゃわちゃ談笑している。まるで緊張感なんてあったもんじゃない。
「それで?私もそろそろ会話のお仲間に入れてほしいのだけれども。」
「お行儀よく待ってているのはえらかったな。投降をお勧めするが?」
「血の滴るような最高のステーキを前に、飢えた肉食獣が我慢できるとでも?」
「おや!これはびっくり食物連鎖の底辺層がまさか己が頂点だと勘違いしているなんて」
「お世辞が上手なのね」
「生憎狂人にはそんな舌持ち合わせてねぇからなぁ。」
空気が変わる。戦い素人のスバルから見ても今から始まるのだと察知できる。
「あなたは私を退屈させないみたいわね。ーーー『腸狩り エルザ・グランヒルテ』」
「お前は俺を楽しませてくれるのか?ーーー『最悪の騎士 エリス・フォン・フェンウィック』」
奇しくも名乗りは前回と同じセリフであった。段々真っ白な空間がエリスの周りで生まれる。エルザは微笑みながらそれを見ている。
一歩一歩又一歩と前進していき、眼鼻の先まで近づく二人。
響いたのは轟音。エリスは何も特別なことはしていない。ただマナを巡らせ、身体強化を施し、めいいっぱい鞭をひっぱたいただけである。
鞭を振り回しただけで盗品蔵を更地に変えてしまったのである。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ」
見たものが信じられないと叫ぶスバルを横目にエリスはエミリアのもとへと向かう。
「おう。無事だったか。エミリア。」
「もう!助けてもらったけどここまでしてほしいとは言ってないんだから。」
「贅沢言うんじゃねーよぉ。これでも手加減した方なんだぜ。」
そう笑うエリスにエミリアは納得がいかないというような顔をしていた。
「大体もっと前に呼べたろぉ」
「そ、それは…」
「この子、そのことを忘れちまってたみたいだぜ。」
「っちょ」
「ああ、やっぱりそうか!あとでお・は・な・しだな。ところでお前は?」
「ああ、俺は…危ない!」
廃材が跳ね上げられ、その下から黒い影が出現する。
影は黒髪を躍らせて、血を滴らせながらも力強く足を踏み出し、加速を得る。
ひしゃげたククリナイフを握りしめ、無言で疾走するのは流血するエルザだ。
接触までのわずかな数秒、その間にスバルの思考はめまぐるしく回転する。
ひしゃげたナイフ。一瞬の邂逅。おそらくはたった一発に賭けている。エリスも駆けよってくるが間に合わない。
「狙いは腹!」
スバルはエミリアを突き飛ばすように庇い、棍棒を盾にする。が衝撃までは殺せず壁に激突する。
「この子また邪魔を・・・」
「そこまでにしてもらおうか。エルザ」
「ああそうだね。そこまでだ。」
そこに現れたのは王紘一の騎士
「なんだ来たのかラインハルト」
ラインハルトであった。
「いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」
そう言い張り、エルザが逃げていく。
「まさか君が抜かれるとはね。」
「ふん!俺が何もしなくてもなんとかなってたさ。そこの男のおかげ。つまりこれも俺の運のおかげってな」
「君のその自信がどこから来るのか教えてほしいよ。大丈夫かい?スバル」
「そんなこと言ってないでエリーはちゃんと反省しなさい!」
仁王立ちし、頬を膨らませながらエリスに詰め寄るエミリア。それを知らんぷりしてそっぽむくエリス。がしかし怒れる乙女は怖いのである。
「エリスの説教は後にして、エミリア様ご無事でしたか。」
「ラインハルト。私はへっちゃら!それよりあの子は大丈夫?」
「俺の名前はナツキ・スバル!君を殺人鬼から守り抜いた男!そんな男に褒美があってもいいとは思いませんか?」
エリスはそれを白けた目で見ていた。
ーどうせ、しょうもない願い事でもするんだろ。斬るか
しかし聞こえてきたのは思ってもいない言葉だった。
「俺の願いは――君の名前を教えてほしい」
此奴はとんでもないバカだ。俺はそう確信した。命張って助けた報酬が名前を聞くことだ?こいつはおもしれぇ
「わっはっはっはーおい教えてやれよ。」
上機嫌で笑うエリスに戸惑う二人
「もうわかってるってば――エミリア 私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、スバル」
とここで終わっていれば完ぺきだったのだがここで終わらないのが不運の男スバル。
ちらりと棍棒を見てみれば滑らかな切断面を見せていた。
ど真ん中で二つに切り落とされ、まさに等分されていた。
ふいにスバルの腹に赤い線が生まれる。
なんと腹が横一文字に裂け、大量に鮮血が噴出し倒れる。
エミリアとラインハルトはもう大パニック。しかしこの場にはこの男がいる
「全く世話が焼けるぜ。」
スバルは頼りになりそうな声を聴いて安心しながら意識を失う。
「俺はついているからな。」
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
―どうにか、峠は越えた
手当を迅速に済ませたエリスは焦っている二人に顔を向け笑いながら言う。
「んで、ラインハルトは何でここまで来たんだ?」
治療しながらも聞くエリス。
「それはね。途中で彼女と出会い、今に至るというところだ」
「そう、あの子に」
エミリアの視線が広場の隅にいる金髪の少女はその視線を受けて振り返り、気まずげな表情を見せる。
「ん?なんかあったのか?エミリア?まさか…」
そういいだんだん無表情になるエリス。
「い、いやーなんのこと?私は盗品蔵にいいものがないか案内されただけだから!」
嘘が下手なエミリアであった。
「これも後でお話だな」 「うひぃ!」
文字通り盗品蔵という場所だったのなら何かエミリアから盗んだのであろう。で、エミリアは文字通り無一文。つまり、
「ー徽章か」
エリスは考える。そもそもなぜ徽章を狙われたのか。知らない人からすればあまり金にならないもの。エミリアが意図的に狙われたのかあるいは
「ー? リー? エリー? 大丈夫?」
「はっなんでもねーよ。俺に心配なんかすんじゃねーよ。それよりも自分のほうを心配しな」
「うぐっ」
その後ラインハルトがフェルトの身柄を預かるということになったが問題なく今の拠点であるロズワール領に帰宅する。
ーナツキ・スバルをつれて
この後大事件が起こることをまだ誰も知らなかった。
疲れた