月光る夜   作:案院運

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シャドバってどうやって勝てます?











ロズワール邸

SIDE エリス

 

眼下に広がるは本、本、本。本の山

広いスペースは二十畳ワンルームの倍ほどもあり、壁際を始めとして至るところに書棚が設置されている。どの書棚にも本がみっちりと詰められていて、蔵書数はどれほどになるのか想像するのも難しい。

そこはまさしく、『書庫』と呼ぶしかない部屋だった。

 

その部屋には普段は優雅とはかけ離れているのにティーカップを片手に読書に勤しむ姿はとても様になっていた。

 

 「ふぅ。いつ飲んでもベティーのお茶はうまいな。」

 

 「当たり前なのよ。ベティーは何でもできるかわいい大精霊なのよ」

 

 「確かに…そーだなぁ」

 

エリスはそういいながらベティーと呼んでいる大精霊ベアトリスを膝の上にのせる。

二人は終始無言でお互い別々の本を読んでいる。

会話はないが心地いい空間が二人の間で広がっていた。

 

しかし、空気の読めない男がここに割り込む。

 

 「なんだぁ、ここは。」

 

二人の空間をぶち壊して早々、ため息をこぼすスバル。

まだ二人に気が付いていない様子であった。

 

 「他人の書架をずけずけ眺めて、おまけにため息。……ひょっとしてケンカ売ってるのかしら? だったら買うのよ?」

 

 「初対面の相手と準備なしに話せるほどコミュ能力なくてさぁ。ちょっぴり助走入れるくらい許してくれよ、メンゴ。」

 

 「…おいスバル。なんでここに来たんだよ。」

 

 「おお!やっと知ってるやつ発見。てかエリスお前ロリコンだったのか!?」

 

 「何言ってんのかわかんねーけどとりあえずぶっ飛ばされたいようだな。」

 

スバルは空気を感じる能力はあっても空気を読む能力は欠損しているのである。ただそんなスバルでもエリスが本当に自分をぶっ飛ばそうとしていることは感じとれていた。

命の危機を感じたスバルがとった行動とは、

 

 「まじ調子乗ってすみませんでしたぁー!なにとぞお命だけはご勘弁願いまして候。」

 

盛大な土下座と命乞いである。

 

 「あやまるなら最初からすんじゃねぇよ」

 

全くこいつはとその様子を見てエリスはため息をつきながら言う。ついでにその踏みやすそうな頭を容赦なく足の裏でグリグリこすりつけて。

 

 「ぐっ!エミリアたんなら喜ぶとことだが、男にされるのはちょっと…いやこんなに美形ならこれはこれで。」

 

 「…気色わりぃ。ベティーこいつにはぜぇっっっっったい近づくなよ」

 

 「当たり前なのよ。こんな変態に近づくだけでベティーの可愛い体が穢れるかしら。」

 

エリスはベアトリスの返答に大変納得したかのようにうなづく。エミリアにも近づけさせるのは危険ではないだろうかと考えていたりもする。

少々横道にそれた気がするが気になっていたことを聞いてみるか。

 

 「それで?…ベティーの『扉渡り』はどれくらいで突破したんだぁ?」

 

 「『扉渡り』って言うとさっきの?…どのくらいも何も、1発で開けたらここにたどり着いたけど。」

 

 「…本当か?」

 

 「ほんとうなのよ。なんて、心の底から腹の立つ奴なのかしら」

 

エリスは驚きベアトリスに確認するが忌々し気な顔を見るにホントのことであろう。

 

 「ところでこちらのちっちゃくてかわいらしいお嬢ちゃんは一体誰なんだ?」

 

 「ベティーはベティーかしら。」

 

 「挨拶をちゃんとしないと他人とのコミュニケーションが取れないぞ!特に第一印象は大事っていうしな。」

 

 「そんなもの、必要ないのよ。」

 

 「引きこもってた俺でも挨拶ぐらいは大切だってわかるぞ。これから学んでこうな。」

 

 「どうしてこうも腹立つ奴なのかしら」 

 

にしてもどんなに運のいいやつでもベアトリスの扉渡りを1度で正解を引き当てる奴はなかなかいない。ここで働いている者たちでもベアトリスが許可しなければ辿り着かないというのに、パックが身の回りにいるエミリアでさえも(パックが望めばすぐに会うことができるが)だ。1度で突破したことあるのはスバルを除いて自分とここの屋敷の主だけだ。

スバルとベアトリスのわちゃわちゃを横目にエリスは考える。

 

思考しているうちにかなり時間がたっていたようだ。

 

 「――動くんじゃないのよ」

 

ゾッと、背筋を寒気が走るような感覚がスバルを襲った。

ふいに、それまで書庫の中を支配していた古い紙の臭いが消し飛び、つーんと鼻の奥に氷を差し込まれたような痛みが走る。

肌が粟立ち、遠く甲高い耳鳴りが聞こえる。嗅覚の不全は、他の五感に集中するために一部機能を遮断されたのが原因だ。

この場合、視覚と触覚――その二種類に意識が全投入されている。

 

 「ま、ほどほどにな」

 

 「わかっているのよ」

 

エリスは考えながらも止めることはしなかった。その様子にここ最近頻繁に感じてきた絶望をスバルは感じとる。

 

 「い、痛くしないでね」

 

 「軽口もここまで徹底してると感心するのよ。――痛いかどうか、それはお前次第じゃないかしら」

 

 「ぶわぅ……ッ」

 

――次の瞬間、スバルは全身を炎であぶられたような錯覚を得た。

すさまじい何かが体内を荒れ狂い、指先から髪の毛一本まで全てを焼き尽くすような感覚。

体の内外を、余さず火炎の指でなぞられたような痛みを伴う不快感。

 

エリスはその様子をとても面白いものを見たと微笑みながら紅茶を楽しむ。全く趣味が悪い人物である。

 

 

 「気絶しなかったみたいだなぁ!また珍しいものが見れた!わっはっは」

 

 「全くなのよ。聞いてた通り、頑丈なのよ」

 

 「な、何しやがった、ドリルロリ……」

 

 「ちょっと体の中のマナに聞いただけなのよ。――凡庸なのに、変な魂の形をしているかしら。ゲートも閉じっ放しみたいだし」

 

最後にエリスやベアトリスに何か文句口を言うこともできず、スバルは再び眠りへ落ちていった。

 

ベティーの『扉渡り』を一発で答えを導き出し、あまつさえマナ徴収も気絶はしたがある程度までは意識を保っていられる、か。なんともまあ不思議な奴だな、『ナツキ・スバル』。いろいろと楽しませてくれそうだが、

 

 「…くせぇな、あの時よりましだが。」

 

 「こんなに魔女の香りを出す奴は生まれて初めて見るのよ。こいつは怪しい奴じゃないのかしら?」

 

 「大丈夫だろ。こいつはエミリアを命がけで助けていた。まだ敵とみるべきではない。それに…」

 

エリスはベアトリスの顔を見るなり不敵の笑みを浮かべる。そんな笑みを見たベアトリスも笑い返す。

 

 「俺についてくればすべてうまくいく。ベティーもついてこい」

 

 「全くなんて強引かしら。まあエリスがどうしてもというなら?しょうがないからついてってあげるのよ」

 

二人は紅茶と読書を続ける。気絶したスバルを部屋に戻しておくのも忘れずに。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

 

 

爽やかな風が通り抜け、小鳥たちがさえずり、気持ちのいい朝。常人はそろそろ起きてもいい時間帯だがエリスはいまだに眠り続ける。

 

 「エリス様起きてください。陽日8時と半分になりますよ?エリス様」

 

 「エリー早く起きなさい。陽日8時と半分になるわよ。」

 

少女たちの容姿は瓜二つ――双子の少女だった。

身長はおおよそ百五十センチ真ん中ぐらい。大きな瞳に桃色の唇、彫の浅い顔立ちは幼さと愛らしさを感じさせる。

瓜二つの顔をした二人は髪形もショートカットに揃えているが、髪の色は桃色と水色でそれぞれ違う。さらに髪の毛で片目を隠しているが、桃色は左目で水色は右目を隠しているというのも違いだ。

そんな従者の二人に起こしてもらうエリスだがまだ夢見心地である。この男、実は朝がかなり弱いのである。

 

 

 「…んぁ?ふぁぁ  もう朝か。ありがとよラム、レム。」

 

 「従者として当然です。」

 

 「従者だから当然なのよ。」

 

 「はいはい。もうすぐ朝飯か。すぐ行く」

 

ベットがまだ恋しいがそんな思いを振り切り、いつも通りの騎士の格好に着替える。屋敷の中で一番遅い準備である。

5分もしないうちに準備が終わり、ここの屋敷全員がそろっているであろう食堂に向かう。

食堂で大きな声が聞こえる。

 

 「はーやーくーもー我慢の限界!」

 

 「雅さに欠けるのよ。もっと優雅に典雅に待てないのかしら」

 

 「酒飲んでる幼女に言われたくねぇよ! ほら、メーシ! メーシ!」

 

置かれたナイフとフォークを取って、カンカン合わせるスバルを目にしたエリス。目にもとまらぬ速さでスバルをぶっ飛ばす。もちろん周囲の被害はスバルを除いて皆無であるが。

 

 「ぶぇぇぇぇぇ!誰!何するん…」

 

 「黙れ品の無いバカガキ。次やったら命の保証はないぞ。」

 

 「うひぃ!」

 

 「あ!エリーおはよう!もう遅いじゃない。またお寝坊さん?だめじゃないちゃんとしなきゃ」

 

 「お前は俺の母ちゃんかよ。」

 

 「?私はエリーのお母さんじゃないわよ?」

 

 「エミリアたん。俺の心配は?」

 

わちゃわちゃしているうちにこの屋敷の主である人物が顔を出す

 

 「あはぁ、元気なもんだねぇ。いーぃことだよ、いーぃこと」

 

嬉しそうな顔の変態であったが。

その装いは襟がやたらカラフルででかい、悪趣味なもの。いかにも道化じみた姿に、変わり者の態度。

 ――なるほど、まごうことなく変態である。

 

屋敷の主ロズワールはいまだ騒がしくしているエリスたちを楽しげに見たあと、グラスを静かに傾ける少女の方を見て眉を上げる。

 

 「おややぁ、ベアトリスがいるなんて珍しい。久々に私と食卓を囲む気ぃになってくれたのかなん?」

 

 「頭が幸せなのはそこの奴だけで十分なのよ。ベティーはエリスとにーちゃの二人と食事しに顔を出しただけかしら。 にーちゃ!」

 

弾むように席を立ち、ぱたぱたと長いスカートを揺らしながら少女が走る。その表情には花の咲いたような笑みが浮かび、これまでの少女の生意気な評価を忘れさせるほどの愛嬌が満ちていた。

ようやっと見た目相応の振舞いをする少女、その小走りに反応したのは銀の髪の中に埋まる灰色の猫だ。顔を出した彼は表情をゆるめて、

 

 

「や。ベティー、二日ぶり。ちゃんと元気にお淑やかにしてた?」

 

「にーちゃに会えるのを心待ちにしてたのよ。今日はどこにも行く予定はないのかしら?」

 

「うん、大丈夫だよ。今日は久しぶりにゆっくりしようか」

 

「わーいなのよ!」

 

スバルは自分が記憶障害にでもなったかのように錯覚した。エリスはベティーがうれしいそうな顔を見て、優し気に微笑んでいた。

なんやかんやあったがみんな自分の席に着く。スバルはエミリアの横に座ろうとしていたがそこはエリスの席であるためしぶしぶエミリアの対面に座る。

 

そばで控えていたラムとレムが次々と料理を運び入れてくる。テーブルの上に湯気の立つ食事が並べられていき、しばらくして朝食の場が整えられた。

 

「では、食事にしよう。――木よ、風よ、星よ、母なる大地よ」

 

 手を組み、目をつむってロズワールは何事か呟き始める。それにならうエミリアと双子。ベアトリスとエリスは目をつむっているだけだが、それが食前の祈りだと気付くと慌ててスバルも所作を真似る。

 

熱心に祈りをささげる姿から、意外とロズワールやエミリアも信仰に厚いのかもしれない。双子も所作を弁えているあたりは手慣れて見える。想像通りであったエリスはともかくベアトリスは適当でぞんざいにやりすぎにみえた。

食前の祈りが終わり、一同は食事を始める。

メニューは耳なしの食パンを薄くスライスされたチーズンと赤いハムムと瑞々しいレタムを挟み込んだサンドイッチであった。

いつもいつも変わらぬ美味しい朝食。その出来に満足げにし、エリスは次々に口にする。

 

自分の席の前でラムとレムがスバルと仲良く談笑しているのを薄めに見ながら‥‥‥‥

 

 

 

 

 




最近暑すぎやしやせんか、私は暑さにダウンしてます。そしてシャドバに勝てません
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