SIDE スバル
人間というものは、一度死んだからといって、そう簡単に覚悟が決まるものではないらしい。
ナツキ・スバルは、地竜の背に揺られながら自分の胸元を押さえた。そこには傷一つなく、衣服にも血の染みなど見当たらない。それでも、ユリウスの剣が胸を貫いた瞬間の感触は、今も鮮明に残っていた。息ができなくなる苦しさも、身体から熱が抜けていく恐怖も、最後に見た友人の顔も、何一つ忘れられそうになかった。あの男は、最後まで躊躇っていた。友を殺すことを拒み、それでも最後にはスバルの願いを聞き届けてくれた。そんなユリウスが、今は何事もなかったかのように隣を進んでいる。死に戻りという力の理不尽さを、スバルは改めて思い知らされていた。
もっとも、感傷に浸っている暇などない。白鯨討伐の成果は残っている。クルシュたちとの同盟も、討伐隊の編成も、何一つ失われていない。失われたのは、その先で掴み取った勝利だった。魔女教大罪司教『怠惰』ペテルギウス・ロマネコンティを討ち取ったことも、村人たちを守ったことも、エリスに認められたことも、今となってはスバル一人の記憶にしか存在しない。
だが、前の周回で得たものは、決して無駄ではなかった。
ペテルギウスには『指先』と呼ばれる予備の肉体が存在する。奴を倒したつもりでも、それらが残っていれば終わらない。そして、魔女教徒はこちらの動きを事前に把握している節があった。スバルはその二つを踏まえ、ユリウスと鉄の牙の幹部たちへ作戦の変更を申し出た。根拠を尋ねられるたびに冷や汗をかいたものの、これまでの戦いで積み上げてきた信用は、どうやら無駄ではなかったらしい。ユリウスは最後まで話を聞いてくれたし、リカードも多少の疑問を口にしながら、最終的にはスバルの提案を受け入れてくれた。
ただし、エリスにはまだ話していない。
あいつなら、何を言わずとも力を貸してくれるだろう。だが、今回の作戦では、エリスには別の役目を果たしてもらう必要があった。エミリアを守ること。それだけは、何があっても変えるわけにはいかない。
「……スバル」
隣から声がした。
顔を上げると、ユリウスがこちらを見ていた。
「本当に、これでよいのだね?」
「ああ。頼むぜ、ユリウス」
「承知した。君の策に従おう」
その言葉に、スバルは小さく頷いた。
今度こそ、全てを終わらせる。
◇◇◇
アーラム村に到着したスバルを待っていたのは、前の周回と変わらない穏やかな光景だった。畑から戻ってくる村人、道端で遊ぶ子供たち、家々から漂ってくる夕餉の支度の匂い。つい先ほどまで魔女教徒との戦いが繰り広げられていた場所と同じだとは、とても思えなかった。
だが、スバルにとっては見慣れた景色だった。何度も守ろうとして、何度も失ってきた光景でもある。
村の中心へ向かう途中、見覚えのある白い外套が目に入った。
「エリス!」
「あ?」
村人と話していたエリスが振り返る。その顔を見た瞬間、スバルは何となく嫌な予感がした。案の定、エリスはスバルの姿を認めるなり、露骨に眉を寄せた。
「……おい、スバル。てめえ、ちょうどいいところに来たな」
「えっ、何? 何その怖い顔。俺、なんかした?」
「したも何もねえだろ。あの親書、どういうつもりだ?」
「……あ」
スバルは思わず声を漏らした。
白紙の親書。
クルシュ陣営からエミリアへ送られたはずの書状には、何一つ文字が記されていなかった。前の周回でも問題になった出来事であり、当然ながら今回も同じことが起きているらしい。
エリスは腕を組み、苛立たしげに続けた。
「白紙の親書を送りつけるってのが、どういう意味かわかってんのか? リアはまだ話を聞くつもりでいるが、俺は納得してねえぞ」
「悪い! それについても説明する! けど、今は時間がねえ!」
「……あ?」
「頼む、エミリアたんのところに連れてってくれ! 魔女教が来るんだ!」
その一言で、エリスの表情が変わった。
「……魔女教?」
「ああ。それも、ただの信徒じゃねえ。大罪司教だ」
エリスはしばらくスバルを見つめていた。冗談を言っているのか、それとも本気なのかを確かめるような視線だった。やがて、彼は小さく舌打ちすると、踵を返した。
「……チッ。わかった。リアのところへ行くぞ」
「助かる!」
「ただし、親書の件は後できっちり説明してもらうからな」
「……お、おう」
スバルは頷き、エリスの後を追った。
エミリアたちは、村長の家にいた。
扉を開けると、エミリアがこちらを振り返った。その隣にはベアトリスもおり、机の上には見覚えのある親書が置かれている。
「スバル……!」
「エミリアたん!」
エミリアは立ち上がりかけたものの、すぐに表情を曇らせた。
「来てくれたのね。でも、スバル。私、聞きたいことがあるの」
「……親書のことだろ?」
「うん。どうして、あんな……」
「悪い。俺にも詳しい理由はわからねえんだ。でも、クルシュさんたちが喧嘩を売るつもりで送ったわけじゃない。それだけは信じてほしい」
エミリアは戸惑ったようにスバルを見つめた。納得したわけではないのだろう。それでも、スバルが嘘をついているようには見えなかったのか、すぐに言葉を返すことはなかった。
「リア、親書の話は後だ」
エリスが口を挟んだ。
「こいつ、魔女教が来るとか言い出しやがった」
「……え?」
エミリアの表情が強張る。
スバルは一歩前へ出た。
「魔女教大罪司教『怠惰』ペテルギウス・ロマネコンティ。そいつが、この村を狙ってる」
「大罪司教……?」
「ああ。しかも、連中はかなりの人数で動いてる。村人たちを巻き込むわけにはいかねえ。だから、今すぐ移動を始めたいんだ」
エミリアは唇を引き結んだ。
「……スバル、それは本当なの?」
「間違いない」
「でも、どうしてそんなことがわかるの?」
当然の疑問だった。
スバルは一瞬、言葉に詰まった。
死に戻りのことは話せない。前の周回で何が起きたのかも、ペテルギウスがどのような最期を迎えたのかも、説明することはできなかった。
「……悪い。詳しいことは言えねえ。でも、頼む。俺を信じてくれ」
エミリアは黙ってスバルを見つめた。
その沈黙が、ひどく長く感じられた。
やがて、彼女は小さく頷いた。
「……わかった」
「エミリアたん……!」
「スバルがそこまで言うなら、信じる。でも、村の人たちを危険な目に遭わせるわけにはいかないわ。みんなが安全に移動できるように、私も手伝う」
その言葉に、スバルは大きく息を吐いた。
「……ありがとう」
「礼は後にしろ、スバル」
エリスが肩をすくめた。
「大罪司教が来るってんなら、のんびりしてる暇はねえんだろ? だったら、さっさと動くぞ」
「……おう!」
こうして、アーラム村の移動準備が始まった。
◇◇◇
村人たちの移動準備は、想像以上に慌ただしいものとなった。
突然、大罪司教が襲撃してくると言われて、すぐに納得できる者ばかりではない。家財を置いていくことに抵抗する者もいれば、何が起きているのかわからず泣き出す子供もいた。それでも、エミリアたちが直接説明に回り、鉄の牙の団員たちが移動の手順を整えたことで、村全体は少しずつ動き始めた。
今回、村人たちは王都方面と聖域方面の二手に分かれることになっている。聖域へ向かう一行にはラムが同行し、王都方面へ向かう竜車隊にはエミリア、エリス、ベアトリスがつく。ヴィルヘルムもまた、王都方面の護衛を引き受けてくれていた。
エミリアを狙う魔女教徒がいる以上、エリスが彼女のそばを離れるとは考えにくい。スバルも、それを無理に変えるつもりはなかった。
むしろ、その方が都合がいい。
大罪司教の相手は自分たちが引き受ける。エミリアたちには、竜車隊を守ってもらえばいい。
問題は、敵がこちらの動きを把握していることだった。
そのために用意したのが、二時間の嘘である。
「ええと、つまり出発が遅れるということですか?」
「ああ。急な変更で悪いんだけどさ、村人たちの準備が思ったより手間取っててな。予定より二時間ほど遅らせることになったんだ」
スバルは商人のケイティに、申し訳なさそうな顔を作って説明した。
ケイティは一見すると、どこにでもいる気の弱そうな商人だった。人当たりがよく、こちらの話にも丁寧に相槌を打つ。少なくとも、初対面で魔女教徒の内通者を疑うような相手ではない。
だが、スバルは知っている。
前の周回で魔女教徒が見せた、こちらの動きを読んだような襲撃。その不自然さを思い返せば、商人たちの中に情報を流している者がいると考えるのは、決して無理な推測ではなかった。
「二時間、ですか……」
「そうそう。だから、そっちもそのつもりで頼むわ」
「承知しました。では、皆さんにもそのように伝えておきます」
「助かるよ。いやぁ、話のわかる商人さんでよかった」
スバルは笑顔で手を振り、その場を離れた。
背を向けた瞬間、口元から笑みが消える。
ここからが勝負だった。
実際には、出発を二時間遅らせるつもりなどない。ユリウスと鉄の牙には事前に事情を説明してある。彼らはスバルの指示に従い、予定どおり竜車隊を動かす手筈になっていた。
偽の情報を渡された内通者が、目の前でそれと違う事態を見ればどうするか。
答えは簡単だ。
慌てて、本当の仲間へ知らせようとするはずだった。
◇◇◇
最初の竜車が動き出したのは、それから間もなくのことだった。
地竜が低く鳴き、御者の合図に従ってゆっくりと歩き始める。続いて二台目、三台目と車列が動き出し、村人たちを乗せた竜車が村の外へ向かっていった。荷物を抱えた人々が慌ただしく行き交い、鉄の牙の団員たちが声を張り上げて進路を確保している。
そんな光景を見つめながら、一人の男が顔を青ざめさせていた。
ケイティだった。
「……おかしい」
男は小さく呟いた。
聞かされていた予定では、出発までまだ二時間ほどあるはずだった。それなのに、目の前では竜車が次々と村を離れていく。しかも、周囲の団員たちは誰一人として慌てていない。まるで、最初からこの時間に出発することが決まっていたかのようだった。
「どういうことだ……? 話が違う……」
ケイティは額の汗を拭い、辺りを見回した。
やがて、何かを決意したように人混みから離れ、建物の陰へと足を向ける。その後ろを数人の男たちが何気ない様子で追いかけていった。
ケイティは懐から小さな鏡を取り出した。
対話鏡。
離れた場所にいる相手と連絡を取るための魔法道具である。
男は鏡を手にしたまま、焦った様子で何かを操作しようとした。
「――ちょーっと待ったぁ!」
「――ッ!?」
突然の声に、ケイティの肩が跳ね上がった。
振り返った先には、腕を組んだスバルが立っていた。
「いやぁ、困るんだよなぁ。せっかくこっちが用意した予定を、勝手に外へ流されちゃ」
「な、何のことですか……?」
「とぼけんなって。そいつで誰に連絡するつもりだったんだよ?」
スバルが対話鏡を指差す。
ケイティの顔が引きつった。
「こ、これは……商売の連絡に使うもので……」
「へえ。村人が予定より早く出発した途端、慌てて商売相手に連絡か。ずいぶん熱心な商人さんだな」
「……っ」
ケイティが一歩後ずさった。
その動きに合わせるように、周囲にいた男たちが静かに立ち位置を変える。逃げ道を塞ぐような配置だった。スバルはそれを横目で確認しながら、わざと大きく肩をすくめた。
「いやぁ、しかし参ったね。まさか本当に引っかかるとは思わなかったぜ」
「……貴様」
ケイティの声音が変わった。
先ほどまでの気弱な商人の面影は消え、目には剣呑な光が宿っている。
「最初から、我々を疑っていたのか……?」
「まあな。確証はなかったけど、試してみる価値はあると思ってさ」
「……愚かな」
男の一人が懐へ手を伸ばした。
その瞬間。
「――おせえよ」
乾いた破裂音が響いた。
次の瞬間、男の身体が横合いへ吹き飛び、建物の壁に叩きつけられる。何が起きたのか理解する間もなく、別の男の足首に鞭が絡みつき、その身体が地面へ引き倒された。
「ぐあっ!?」
「な、何者――」
「うるせえ」
エリスは倒れた男の背中を踏みつけ、残る一人へ視線を向けた。相手が武器を抜くより早く鞭が走り、その手首を打ち据える。短い悲鳴とともに武器が地面へ落ち、男はその場に膝をついた。
あまりにも一方的だった。
スバルが瞬きをしている間に、ケイティの周囲にいた男たちは全員地面に転がされていた。
「……おいおい。随分と舐めた真似してくれんじゃねえか」
エリスは呆れたように吐き捨て、ケイティの襟首を掴んだ。
「で? 誰に連絡するつもりだったんだ、お前」
「ひっ……!」
「おい、エリス! そいつは生かしといてくれ! 聞きたいことがある!」
「あ? ……チッ。注文の多い奴だな」
エリスはケイティを地面へ押さえつけ、逃げられないよう腕を捻り上げた。ほどなくしてユリウスと鉄の牙の団員たちが姿を現し、倒れた男たちを次々と拘束していく。
「……見事な手際だね」
ユリウスが感心したように言うと、エリスは鼻を鳴らした。
「こいつらが遅えだけだろ。それより、どういうことだ?」
「どういうこと、とは?」
「とぼけんな、ユリウス。お前ら、最初からこいつが裏切り者だって知ってたな?」
ユリウスは一瞬だけ言葉に詰まり、それからスバルへ視線を向けた。
「……説明してもらってもいいかい、スバル?」
「えっ、俺!?」
「君の作戦だからね」
「……あー、まあ、そうなんだけどさ」
スバルは頭を掻いた。
「実は、二時間遅れってのは最初から嘘だったんだ。ユリウスと鉄の牙には先に話を通してて、商人たちの中に内通者がいるか確かめようってことになってた」
「……ほう?」
エリスが片眉を上げる。
「つまり、俺には黙ってたってわけか」
「いや! 別に仲間外れにしたわけじゃなくてだな! ほら、お前はエミリアたんの護衛とか色々忙しかっただろ!?」
「別に怒っちゃいねえよ」
「……へ?」
「お前が考えて、こいつらが動いた。結果、裏切り者を捕まえた。上出来じゃねえか」
思いがけない言葉に、スバルは目を瞬かせた。
エリスはケイティを団員に引き渡すと、軽く肩を回した。
「ただし、次からは俺にも話を通せ。知らねえところで味方同士が潰し合ったら笑えねえからな」
「……おう。悪かった」
「わかりゃいい」
そう言ってエリスは、何事もなかったかのように話を切り上げた。
スバルはその背中を見つめながら、胸の奥に小さな熱が灯るのを感じた。
前の周回で聞いた言葉とは違う。それでも、確かに自分の行動を認めてもらえたのだ。
だが、喜んでいる暇はなかった。
「……さて、と。そんじゃ本題だ」
スバルは拘束されたケイティの前にしゃがみ込んだ。
「お前ら、魔女教の連中と連絡を取ってたんだろ?」
「……知らない。何のことだ」
「まだとぼける気かよ。だったら、その対話鏡は誰に繋がるんだ?」
ケイティは答えなかった。
その沈黙を見て、スバルは小さく息を吐く。ここで無理に口を割らせる必要はない。すでに内通者は確保したし、連絡手段も押さえた。あとは、連中が持っている情報を調べればいい。
「ユリウス、持ち物を確認してもらえるか?」
「もちろんだ」
ユリウスが団員へ指示を出し、ケイティたちの所持品を調べ始める。対話鏡のほかにも、金貨の入った袋や商人らしい帳面、いくつかの手紙が見つかったが、スバルの目を引いたのは一枚の地図だった。
「……これ」
地図には、アーラム村とその周辺の森、街道、山道が描かれていた。特別珍しいものではない。しかし、そこには赤い印がいくつも書き込まれていた。
「……おい、ユリウス」
「どうしたんだい?」
「この印、何だと思う?」
ユリウスは地図を覗き込み、しばらく考え込んだ。
「……街道から外れた場所が多いね。村や宿場でもない。何かを隠すには都合のよさそうな地点ばかりだ」
「ああ。俺もそう思う」
スバルは地図を見つめた。
森の奥、岩場の陰、使われなくなった小道の先。どの場所も、人目につかずに潜伏するにはうってつけだった。そして、スバルには一つだけ心当たりがあった。
指先。
ペテルギウスが自分の魂を移すために用意していた、予備の肉体。
あいつを倒したつもりでも、指先が残っていれば終わらない。前の周回で身をもって思い知らされた事実だった。
「……こいつらが、そうか」
「スバル?」
「ユリウス。たぶん、この印が示してるのは魔女教徒の潜伏場所だ。それも、ただの信徒じゃねえ」
スバルは地図を指差した。
「大罪司教にとって、特別な役割を持つ連中がいるはずだ」
「……なるほど」
ユリウスの表情が引き締まる。
「先ほど君が話していた、『指先』という存在だね」
「ああ。ここを先に潰さねえと、ペテルギウスを倒しても終わらねえ可能性がある」
ユリウスは地図を受け取り、印の数と位置を確かめた。
「ならば、すぐにリカード殿たちへ伝えよう。敵に気づかれる前に動く必要がある」
「頼む」
スバルが頷いたところで、エリスが口を開いた。
「……話はまとまったか?」
「ああ。これで奴らの潜伏場所がわかったかもしれねえ」
「そりゃ上等だ」
エリスは地図を一瞥し、続けて村の外へ目を向けた。すでに王都方面の竜車隊は移動を始めている。エミリアたちも、まもなく村を離れる頃だろう。
「……スバル」
「ん?」
「俺はリアのそばを離れられねえ。意味はわかるな?」
その問いに、スバルはすぐに頷いた。
エミリアは魔女教徒に狙われている。今回の作戦で最も優先して守らなければならない人物の一人だ。エリスが彼女の護衛を離れれば、それだけ危険が増す。
「わかってる。こっちは俺とユリウス、それに鉄の牙で何とかする」
「……ほう。随分と頼もしいこと言うようになったじゃねえか」
「へっ、いつまでもお前に頼りっぱなしじゃいられねえからな」
「言うじゃねえか」
エリスは口元を吊り上げた。
「だったら、きっちり片づけてこい。リアたちのことは俺に任せとけ」
「……おう!」
スバルは力強く頷いた。
エリスはそれ以上何も言わず、踵を返した。王都方面へ向かう竜車隊を追うためだろう。白い外套が人混みの向こうへ消えていくのを見送りながら、スバルは小さく息を吐いた。
これでいい。
エミリアたちはエリスに任せる。自分は自分にできることをやる。
前の周回では、何もかもが終わったと思った瞬間に全てを失った。だからこそ、今度は最後まで気を抜くわけにはいかない。
「……さて、ユリウス」
「何だい?」
「次は、この印の場所だ」
スバルは地図を指差した。
「一つ残らず、潰してやろうぜ」
ユリウスは静かに頷き、腰の剣へ手を添えた。
「承知した。今度こそ、確実に終わらせよう」