Re:ゼロから始める無下限術師の異世界生活   作:Griмм

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皆さんの暇つぶしに慣れたら幸いです。感想、誤字報告待ってます。



第二話:現代最強、異世界に立つ

 

 

「……で、ここはどこ?」

 

 

五条悟は辺りを見回しながら、ぽつりとそう呟いた。

 

 

高層ビルもなければ、車が走っている様子もナシ。空は青く、空気は澄み、しかし目に映る光景はあまりに異質だった。石造りの街並みに、見慣れない服装をした人々。中にはうちの生徒のパンダのような風貌をしたやつが、何食わぬ顔で歩いているのも見える。あたりを見渡すと、まるで中世ヨーロッパのような町並みが広がっている。

 

 

──いや、これは幻術か?

 

 

直感的にそう思い、五条はすぐに六眼を使って解析を試みた。しかし、その瞬間。

 

 

「……ッ! う、ぐ……!」

 

 

頭痛、吐き気、めまい。脳内に洪水のように流れ込む情報。しかも、その情報はほとんどが理解不能の“ノイズ”で構成されていた。いつもなら呪力の流れや術式の展開がはっきりと見えるはずなのに、視界は歪み、色彩すら変調して見える。

 

 

「……なんだコレ……六眼が、暴走……してる?」

 

 

すぐに悟った。この世界には“呪力”とは別の、何か異質なエネルギーが満ちている。そして六眼は、その未知の力も“視て”しまう。結果、呪力とこの未知の力──便宜上、“X”とでも呼ぶしかない──二つの異なる法則を同時に認識しようとし、過負荷を起こしていた。

 

 

「……ふぅ。さすがの僕も、これはキツいね」

 

 

額に浮かぶ汗を拭いながら、五条は視界を遮るために再び目隠しを装着する。普段なら冗談交じりに「見えてても見えてなくても大差ないんだけどねー」とでも言うところだが、今はそんな余裕もない。

 

 

──術式はどうだ?

 

 

無下限を展開しようとする。ニュートラルな「止める力」──“不可侵”のフィールドは、かろうじて起動する。だが、“蒼”や“赫”、そして“茈”の応用展開は……。

 

 

「……暴発の予感しかしないね、これは」

 

 

術式の中核である空間制御がXに干渉され、流れが不安定すぎる。制御を失えば、最悪自分ごと町一つを吹き飛ばしかねない。

 

 

領域展開も──

 

 

「……ああ、無理。結界構築の輪郭が歪んでる」

 

 

Xの法則により空間自体の構造が不安定化しているのか、領域の内と外を分ける“結界”が正しく成立しない。展開すれば即崩壊、あるいは暴走の危険が高い。

 

つまり、今の自分は、呪力による強化や簡単な結界、基本的な無下限の展開くらいしかできない。

 

 

──まともに戦えない。

 

 

「やれやれ。ちょっとした観光気分のはずが、まさか異世界トリップでデバフ祭りとはね……」

 

 

苦笑いを浮かべるも、やはり目の奥が痛む。六眼は常にXの情報を拾い続けており、その度にエラーを吐き出す。目を閉じていても、頭の奥で“見えて”しまう。最強であるがゆえの弊害。

 

目を見開いてあたりを見渡したと思ったら、座り込んで苦しみだしたり、いきなり手をグーパーさせる全身黒ずくめ目隠し男はこの世界の人々には異質に映っただろう。

ましてや、改造人間を処理した時の血がまだ額や服についたままだ。街を行く人々の様々な視線を浴びる。

 

いくらGLG(グッドルッキングガイ)の僕といってもこういった視線は好みじゃない。

 

 

「まぁ、しょうがないか。まずはこの世界の法則を理解しないと」

 

 

そう判断した五条は、まずこの世界の様子を観察し始める。

 

 

 

 

 

 

五条は、できる限り目立たぬように──と言いたいところだが、すでに格好も挙動も目立ちまくっていた。とはいえ、これ以上注目を集めるのは得策ではない。

 

 

「さて……まずは言葉が通じるか、だよね」

 

 

周囲を歩く人々が交わす会話に耳を傾ける。──あまりにも自然に聞き取れた。

 

 

「……マジか。便利だねぇ異世界」

 

 

翻訳の術式か、魂に作用する言語同調か。呪術的な仕組みがあるのか、それともこの世界の“空気”自体がそうさせているのか……いずれにせよ助かった。

 

そして歩きながら、ふと一つの店の前で立ち止まった。ガラスのショーウィンドウ……ではなく、木枠の中に並ぶパンや野菜。隣の建物には見たことのない記号のような看板。

 

 

「あー、なるほど。読み物はダメだ。まったく分かんない」

 

 

話し言葉は日本語と同じだとすぐに理解したが、文字は完全に異なる。曲線と直線が交錯し、どこか幾何学的でありながら体系立っていないようにも見える。

 

 

「リーディングは死んでるか……まぁ、聞き耳だけでなんとかなるかもね」

 

と、五条がつぶやいたその時、背後から年配の女性の声が聞こえてきた。

 

 

「……まったく、王選が近いってのに物騒な噂ばっかりで……あのロズワールって男、本当に信用できるのかねぇ……」

 

 

「銀髪のハーフエルフを担ぎあげるなんて...ほんとにどうかしてるよ...」

 

 

もう一人の女性の声に、五条はぴくりと反応した。

 

──銀髪のハーフエルフ、ね。

 

その言葉に、なぜか胸の奥が微かにざわついた。ただの異世界の政治話にしては、あまりにも感情のこもった“嫌悪”の響き。思わず耳を澄ませる。

 

 

「……あれは見た目が“あの魔女”にそっくりなんだろ? そんなの、縁起でもない」

 

 

「あたしらはいいけどさ、田舎じゃ石投げられるって話よ。あの子、王都に来て無事に済むのかねぇ」

 

 

「ま、あのロズワールがついてりゃ、しばらくは護られるんだろうけど……あの男も信用ならないからねぇ……」

 

 

五条は、会話を途中まで聞いたところで背を向け、ゆっくりと歩き出す。

 

──王選、差別、銀髪のハーフエルフ、ロズワール。

情報が断片的に飛び交うが、今の五条には十分だった。

 

 

「ふーん……なるほど。魔女ってのが、この世界じゃ忌避対象なのか」

 

 

異世界に来てまだ数十分だというのに、もう“差別構造”らしきものを感じ取ることになるとは。

しかも、それを直接本人に向けるでもなく、陰口として流通させているあたりがなお厄介だ。

 

 

「なんとなく、僕の“嫌いな空気”だなぁ、こういうの」

 

 

五条は軽く首を回しながら、ため息をついた。

 

呪術界でも、例えば禪院家は”禪院家に非ずんば呪術師に非ず。呪術師に非ずんば人に非ず。”なんて家訓を大真面目に掲げていたことを思い出す。

 

思えば、そんな腐った呪術界を少しでも変えるために教師を志したんだったっけ。強いだけじゃダメだってことを悟ったんだ。それに僕の”親友”も──

 

 

「......傑」

 

 

傑の体を乗っ取っていた”ナニカ”。こんな世界に来てしまったせいで頭から離れていたが...

あのふざけた笑み、もはや人間なのかわからんがあいつだけは絶対に殺す。

それにあの後の渋谷の状況がわからないため、生徒たちの心配が次に湧いてくる。

自慢の生徒たちなら、うまくやってくれると思うが...

 

 

(まぁ、今すぐ戻れる方法がわからない以上、必要以上に心配しても仕方ないか)

 

 

五条はそう区切って、逸れた思考を止める。ただでさえ頭が痛いのに、解決しないことで頭を悩ませるのも不毛だと思ったからだ。

 

 

「でも、六眼のバグの解消は急務だよなぁ」

 

 

おそらく、情報量が増えたことによる体調不良は、追々適応していけると思うが、この力の正体を理解し、解析しない以上、無下限呪術の大規模運用は難しいだろう。

この世界に”呪霊”...ではないだろうが、それに似通った脅威がいるかもしれない。この世界の脅威のレベルがどの程度かわからない以上、備えあれば憂いなしだ。

 

 

「....慎重に、ね。僕らしくはないけど、そういう時期も必要か」

 

 

そう自嘲気味に言ってから、五条はふと視線を空へ向けた。澄んだ青空、ゆるやかに流れる雲、そして風の香り──どれも穏やかで美しく、渋谷の修羅場がまるで幻だったかのように思えてくる。

 

けれど、五条悟は忘れていなかった。

この平穏の裏に、確実に何かがある。そうでなければ、獄門彊の中に異常干渉を起こしてまで彼をこの世界に引きずり込む理由がない。

 

 

「何かが、動いてる」

 

 

本能が、そう告げていた。

 

──だからこそ、まずは情報が必要だ。

 

この世界の構造。支配体系。権力の在り処。呪力に相当する”X"の正体と理屈。それらの解析なしに、元の世界への帰還などできるはずがない。

ついでに言えば、今この世界にいる自分を、「誰か」が知覚している可能性もある。あの侵食──“X”の存在が偶然でないのならば。

 

今の自分に必要な情報、おそらく知る人は限られるだろう。その情報を知ることができる一番有力な情報源は──

 

 

「王選ってやつ、調べてみる価値はあるかもね」

 

 

この国においての話題の中心がそれなら、関わっていくうちにおのずと情報も手に入るはず。と、五条は踏んだ。

 

「……となると、まずは王都、だよね」

 

そこに向かう道中で、情報を集め、この世界の法則を肌で感じる。可能なら、“X”の正体に関する手がかりも探したい。

 

そして──銀髪の少女とやらにも、いずれ出会うだろう。

忌避され、差別され、それでも王になることを目指すその存在に、五条はどこか“かつての誰か”を重ねていた。

 

 

「君がどんな子か、ちょっと気になるな」

 

 

その視線の先。遠い王都の空には、まるで何かを予感させるような、淡く白い雲がひとすじ、風に乗って流れていった。

 

 

 

 

 

 

──闇。

──苦痛。

──絶望。

そして、次の瞬間巻き戻る世界。

 

「名付けて”死に戻り”か...。負け犬前提な能力なのが実に俺らしいというか」

 

単身異世界に放り出された身に与えられた能力が死んだら時間が戻る能力というのに多少ショックを受けながらもそれならこれまでの事象にも説明がつくと合点が行く。

 

「んだらば、今度は名前ぐらい、ちゃーんと覚えてもらえるように頑張りますか」

 

露天商の主人に絡みながら考える。

──サテラ。

彼女を守るために、あれだけ必死になって動いて……なのに、全部無駄だった。

 

いや、違う。

 

やり直せる。やり直せるんだ。

 

それが“ナツキ・スバル”という人間に与えられた、呪いであり、希望だった。

死をもって時を巻き戻す──『死に戻り』という現象。

 

俺が必ず──お前を救ってみせる。

 

その決心は、3度の死を経ていまだ衰えていない。

 

(それにしても......さっき、何かがおかしかった)

 

いつもと違う、死に戻りの感覚。

まるで、“自分以外の何か”が、同時にこの世界に割り込んで来たような──。

 

「あれ、何だったんだよ……」

 

不気味な重圧、言葉にできない圧迫感。世界の法則が歪み、異質な何かがこの世界に食い込んだような感覚。

スバルの直感が警鐘を鳴らしていた。あれは、“死に戻り”の副作用だけじゃない。

 

「……上等だよ。どんな奴が来たって、絶対に負けてやらねぇ」

 

口元を歪め、スバルは前を向く。

その視線の先には、まだ遠い、けれど確実に彼を待つ“運命”が見えていた。

 

 

 





小説書いてみてわかるけど1000字書くのもきつくて10000字とか投稿してる人がすごすぎる。
創作者は本当に尊敬できる。

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