魔法科高校の転生者〜暴虐の魔王の力を継ぐもの〜 作:Aibelnik
あれから、6年の歳月が流れた。
断片的な知識と現実とのすり合わせを重ねた結果、ようやく確信に至った。
──俺は本当に、『魔法科高校の劣等生』の世界に転生してきたらしい。
しかも、よりにもよって十師族の一つ──一条家の長男として生まれていた。
驚いたことに、俺には弟がいた。名を一条将輝。この世界の“正史”にも登場する、将来有望なエリート魔法師だ。
そして俺の名前は、一条悠也(いちじょう・ゆうや)。将輝の双子の兄になる。
……もっとも、双子とは名ばかりで、見た目はあまり似ていない。
俺の髪は深みのある黒で、将輝はやや明るめの茶色。瞳の色こそ同じエメラルドグリーンだが、それ以外は真逆と言っていい。
性格にいたっては、もはや対極だ。
将輝は天真爛漫で人懐っこく、誰とでもすぐに打ち解ける優等生タイプ。
一方の俺は物静かで観察癖が強く、人見知りこそしないが、あまり多くを語らない子ども……と周囲には思われている。
……いや、実際には“語れない”だけだ。
下手なことを言えば、自分の正体や、封印された力に気づかれかねないから。
それでも──家族には恵まれたと思う。
父、一条剛毅(ごうき)は十師族の当主として日々多忙を極めているが、決して家族を蔑ろにはしない。
仕事で外出が多くても、可能な限り夕食には帰ってきてくれる。
「将輝、悠也、ちゃんと母さんの言うことを聞いてるか?」
そう口癖のように言いながら、穏やかな目で微笑む父の顔を、俺は密かに気に入っている。
母の美登里(みどり)は専業主婦で、普段はとても穏やかで優しい。
けれど怒らせると……手がつけられない。
以前、将輝がコップを割った時の雷鳴のような怒声には、俺も思わず魔法が暴発したのかと錯覚したほどだった。
そんな家庭に、今年新しい命が加わった。
妹──名前は一条茜(あかね)。
まだ生後数ヶ月の赤ん坊だが、俺も将輝も彼女に夢中だ。
特に将輝は、ミルク係を自ら名乗り出るほどの可愛がりようである。
家族は、いい意味で“普通”だ。
それが、どれだけありがたいことか──前世の記憶がある俺には、よくわかる。
ただ一つ、普通でないものが、俺の中には眠っている。
あの転生の瞬間、神を名乗る存在から与えられた“暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴード”の力。
そのすべてが、今も俺の深層意識の奥底に封じられている。
意図的に使うことはできないが、思考や魔力の流れの感覚は、ときおり意識に滲み出てくる。
特にサイオンの流動や演算に関する理解力は、明らかに他の子どもとは一線を画していた。
──そして今日、その異質さが“証明”される日かもしれない。
「はいっ! 今日は、初めての“魔法資質検査”ですよ〜!」
明るい声でそう言ったのは、金沢魔法理学研究所の女性研究員だ。
俺と将輝はまだ6歳ということで、今回は基礎的な数値の測定のみ行われるらしい。
サイオン量、魔法演算領域の広さ、反応速度など──
いずれ魔法科高校に進むため、また十師族の一員としての資質を見極める上で、重要な検査だという。
もちろん、俺としては“何も起きない”ことを祈るばかりだが。
「いこー、いこー!」
「はいはい、落ち着けって、将輝」
俺の袖を引っ張る将輝に苦笑しながらも、内心では少しだけ緊張していた。
(……頼むから暴れんなよ、俺の中の“魔王“)