魔法科高校の転生者〜暴虐の魔王の力を継ぐもの〜   作:Aibelnik

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第三話 家族の温かさと訓練

 ──あの検査から、二週間が経過した。

 

 俺は再び研究所を訪れ、より詳細な魔法適性の再検査を受けた。結果は、残念ながら変わらなかった。

 

 俺は一条家に代々伝わる秘術、「爆裂」を継ぐことができない──というのが、確定した事実だった。

 

 原因も明らかになった。

 魔法演算領域の約九割一分──実に91%が、あの“力”によって占有されているという、異常事態だったのだ。

 

 あの力、つまりアノス・ヴォルディゴードの魔王の魔力は、封印状態にあるとはいえ、演算領域の奥深くで依然として存在し続けている。

 まるで、眠る龍のように、静かに、そして圧倒的な圧力で、他の魔法系統を排除するように。

 

 ……それでも、ひとつだけ救いがあった。

 

 将輝は、「爆裂」をしっかりと継ぐことができたのだ。

 俺と違って、演算領域はすっきりと整理されていて、サイオンの流れも素直。適性検査の結果は、まさに教科書通りだった。

 

「悠也の分まで、俺が頑張るよ!」

 

 そう言って笑う弟の姿に、俺も父さんも、ようやく胸を撫で下ろすことができた。

 

 ……正直に言えば、少しだけ不安だった。

 十師族の家系に生まれておきながら、家の魔法を継げないと分かった時、俺は“拒絶”されるんじゃないかと。

 

 けれどそんなことはなかった。

 

 父さんは最初こそ動揺していたけど、すぐに気持ちを切り替えてこう言った。

 

「魔法はひとつじゃない。お前に合った道を進めばいい」

 

 母さんも相変わらず優しくて、何も変わらずおやつを作ってくれるし、新しく生まれた妹に「ほら、お兄ちゃんだよ〜」って抱かせてくる始末だ。

 

 ……俺が“爆裂”を使えないことなんて、家族にとってはさほど重要じゃなかったらしい。

 

 その点では、恵まれていたと思う。

 

 ただ──

 

 外では、そうはいかなかった。

 

「え? 一条家なのに“爆裂”使えないの? マジで?」

 

「やっぱ次期当主は将輝くんだよな〜」

 

 どこに行っても、冷ややかな視線と笑い声が背中を追いかけてくる。

 魔法師の世界は、実力と血統が全て。いくらサイオン量や演算領域の容量が飛び抜けていても、“家の魔法”が使えないとなれば、“落ちこぼれ”扱いされるのが現実だ。

 

 ──でも、俺は諦めるつもりはない。

確かに魔法演算領域の九割がアノスの力に“占拠”されているという異常な状態にあるが、逆に言えば、残りの一割でも十分に戦えるだけの演算能力があるということだ。

 

元々の演算領域が人間離れして広すぎるのだ。九割を封じられても、残りの一割が普通の魔法師の五倍を優に超えているのだから、恵まれすぎていると言ってもいい。

 

実際、現代魔法の基本訓練は普通にこなせている。むしろ――

 

「また干渉力が高すぎて壊れたぞ、悠也」

 

「……すみません」

 

その制御に、俺自身が一番苦労していた。

 

あの検査の後、俺と将輝は魔法の基礎訓練を始めた。教師役は、父・一条剛毅。将輝は爆裂の後継者として当然だが、俺にも時間を割いて丁寧に指導してくれた。

 

「悠也、お前の魔法は普通じゃない。制御は難しいが、それを扱えるようになれば――」

 

言葉に出さずとも、父の瞳はいつも真剣だった。将輝のように家を継ぐ役割を担えない俺にも、彼は何一つ見返りを求めずに向き合ってくれた。そのことには、今も感謝しかない。

 

俺は現代魔法を一通り使えるが、その中でも特に得意としているのが『加速系』と『収束系』の魔法だ。

 

 加速系魔法は、対象物の速度や加速度、さらにはベクトルそのものを制御する術式。対象を弾丸のような速度で射出したり、自身の移動速度を一瞬で数倍に引き上げたりと、攻守に応用が利く。

 

 そして収束系。これは、エネルギーを一点に集中させ、破壊力や貫通力を最大限に引き出す系統だ。主に防御貫通や射出魔法の威力強化に使われるが、俺の場合はもっと違う方向に発展させていった。

 

 ──剣にエネルギーを収束し、斬る。

 

 最初は、ただの模倣だった。訓練中、父から木剣を渡された時、「魔法だけに頼るな」と言われたことがきっかけだった。最初は納得がいかなかったが、何度も基礎訓練を繰り返すうちに、剣術に魔法を組み合わせることで、近距離戦での応用が見えてきた。

 

 そこで活きたのが、収束系だ。

 

 魔力を刃に纏わせることで、通常の物理的な一撃に魔法的な破壊力を上乗せする。しかも、俺の干渉力の高さがそれをさらに強化した。

 

 ある時など、訓練用の硬化合金ダミーを、収束魔力を込めた斬撃一発で真っ二つにしてしまった。

 

「……ちょっとやりすぎたかも」

 

「……もはやそれ、“魔剣”だな……」

 

 父も将輝も、唖然とするしかなかった。

 

 さらに、加速系の応用で踏み込みや回避、斬撃そのもののスピードを強化することで、近距離から中距離までの連携が異常なレベルで高まった。

 

 魔法と剣術の複合技。これが、俺の主戦術になりつつある。

 

 確かに、“爆裂”は継げなかった。けれど、俺には俺の道がある。

 

 そして、年月は流れた──

 

 俺と将輝は中学一年生になった。

 

 中学生になるまでに新しい妹である瑠璃が生まれた。瑠璃は母似でとても可愛い。俺や将輝、茜は兄、姉バカになり、父と母から飽きられた顔をされたが関係ない。

 

話は変わるが、入学祝いとして父から特化型CADが贈られた。俺には、加速と収束の2系統に最適化された武装一体型のCAD。将輝には、爆裂系の演算効率を最大化する拳銃型のCADだった。

 

 どちらも、父の伝手を使って設計・制作されたカスタムモデルだ。

 

「……大事に使うよ」

 

「おう。壊すんじゃないぞ」

 

 言いながらも、父の顔はどこか嬉しそうだった。

 

 ーーーそしてある日、父に呼び出された。

 

 訓練場の片隅で、静かに彼は告げた。

 

「……悠也、本当にすまないが、この家は将輝に継いでもらう」

 

 その言葉に、俺は少しも驚かなかった。

 

 むしろ、当然のことだと思っていた。

 

「うん、いいよ」

 

 すぐに、そう答えた。

 

「将輝なら、立派な当主になれる。俺は俺で、別の道を進むから」

 

 父は黙ったまま、しばらく俺の顔を見つめていた。

 

 その後、ポンと頭に手を置き、ぽつりと呟いた。

 

「……お前は、強くなったな」

 

 その言葉が、妙に心に染みた。

 

 この家を継げないことに、悔しさがなかったわけじゃない。

 

 でも、俺には戦う力がある。

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