魔法科高校の転生者〜暴虐の魔王の力を継ぐもの〜   作:Aibelnik

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更新が遅くなってしまいすいません。



第四話 佐渡侵攻

一条悠也と一条将輝、校舎入口まで保護者が迎えに来ている。至急来るように」

 

突如として教室に響いた校内放送に、教室の空気が凍りついた。

 

「な、なんだ? 迎えって……」

「授業中だぞ……」

「事件……?」

 

ざわめきと疑念が渦巻く中、俺──一条悠也と、弟の将輝は顔を見合わせた。目を通わせた瞬間、嫌な予感が全身を駆け抜ける。

 

「……行こう」

「うん……」

 

立ち上がり、教室を飛び出す。その背後で、クラスメイトたちの不安げな声が遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

校門前──そこに立っていたのは、父・一条剛毅だった。鬼のような形相で俺たちを見据える父の背後には、黒塗りの大型車。

 

「乗れ!」

 

命令のような声に従い、車に飛び乗った瞬間、タイヤが甲高い音を鳴らして走り出す。スーツ姿の父は、運転席から低い声で告げた。

 

「……佐渡が、いきなり侵攻された」

 

「……は?」

 

「敵性武装勢力が佐渡に上陸。佐渡にある研究所を襲撃。それによる甚大な被害が出ている。」

 

思考が一瞬、停止する。

 

俺たちが暮らすこの日本に、そんな展開が――しかも現実に?

 

「国防軍の酒井大佐に交渉して、国防軍から兵を借りた、お前たちも義勇軍の一員として戦場に出るぞ」

 

「ま、待ってくれよ! 俺たち、まだ学生だぞ!? まだ訓練だって……!」

 

「将輝、お前は『爆裂』の後継者だ。悠也、お前は……“未知の力”を宿している。それが何かは俺にも分からん。だが、戦場に立つ資格は、お前たちにはある」

 

車はサイオン増幅エンジンを駆動し、金沢から佐渡島へと向かって一直線に疾走していく。

 

後部座席では、将輝が唇を噛みしめながら震えていた。

 

「兄貴……俺、怖い……戦えるかな……」

 

「……俺も分からない。でもな、将輝。お前の命だけは、絶対に俺が守る。何があってもだ」

 

 

 

 

佐渡に到着した頃には、空はすでに朱に染まりかけていた。

港周辺はすでに火の海と化し、複数の防衛線が完全に突破されていた。

爆音、魔法光、銃撃、断末魔。そこはまさに“地獄”だった。

 

「悠也、将輝。これが現実だ」

 

父の声に振り返ると、すでに彼は戦闘服に着替え、腰のCADに手をかけている。

後方には20名の一条家直属の魔法兵たちが展開準備に入っていた。

 

「将輝、お前は後衛。“爆裂”の構築は俺が支援する。悠也、前衛に出ろ。お前の剣が必要だ」

 

「了解」

 

俺は腰のベルトに装着された武装一体型のCADを引き抜く。

 

刃にサイオンを通すと、紅の輝きが走り、内部に圧縮されたエネルギーが共鳴音を発する。

 

「加速展開──三重収束」

 

そのまま俺は、最前線へと跳び出した。

 

 

 

 

 

敵影確認。確認できるだけで、魔法師3名、無人兵器2機。

さらにその奥には、部隊規模の魔法師集団が展開中。武装、連携――どれを取っても正規軍並だ。

 

「敵の動きが早い……!」

 

すぐさま初撃。

俺は加速魔法を脚部に重ねて展開し、瞬間移動に近い踏み込みから斬撃を放つ。

 

「せいやッ!」

 

剣が振るわれた瞬間、前方の魔法兵の防御結界が粉砕された。

そのまま刃は胴を両断し、血飛沫が夕焼けの空に溶ける。

 

だが――

 

「まだ来るぞ! 左、無人機! 右から狙撃魔法!」

 

無人機が火を噴き、銃弾の嵐が俺を包む。そこへ追い打ちをかけるように、敵の魔法師が容赦なく距離を詰めてきた。

かろうじて地形を利用し、跳躍で回避。

 

だが、今度は敵魔法師が収束魔法を放ってきた。

 

「チッ──!」

 

即座に干渉領域を展開し、なんとか展開を妨害する。しかし、意識外からの攻撃によって吹き飛ばされ、背中を地面に打ちつけた。

 

「くそっ……っ、精度も反応速度も速すぎる……!」

 

「兄貴、下がって!」

 

その声と共に、将輝が“爆裂”を展開した。

空間を圧縮し、一点に集束させた爆発魔法が、敵の無人兵器に直撃。

 

ドオォン!!

 

音が遅れて追いかけてくる。

砂塵と爆炎の中、敵の機体がひしゃげ、破片を撒き散らして飛び散った。

 

「ナイスだ将輝! もう一発いけるか?」

 

「構築中……! 三式構成、15秒!」

 

だが、敵は待ってくれない。

もう一機の無人兵器が俺たちの横合いから回り込み、背面に砲塔を向けた。

 

「兄貴、避けて!」

 

「間に合わ──ッ!」

 

次の瞬間、全自動の射撃が火を吹く。

俺が回避しようとするその瞬間、将輝が飛び込んできた。

 

「兄貴ィィィ!!」

 

「将輝!! 馬鹿、下がれ!」

 

だが、すでに遅かった。

 

直後、敵魔法師の魔法が構築完了し、俺たちの上に着弾。

 

──ズガァアァァァン!!

 

俺は無意識に将輝を庇い、盾となった。

 

 

 

 

 

衝撃。

感覚が、消えていく。

 

腕の骨がきしむ。視界が白く染まる。

 

冷たい……ああ……終わるのか、ここで。

 

こんなところで、ただ弟を守って、終わるのか?

 

 

 

 

 

 

まだだ!! まだ終わらない!!

 

こんなもんで、終われるはずが──ない!

 

俺は……俺は、まだ……!

 

──燃える。

 

心臓が、焼ける。

いや、それは“熱さ”なんかじゃない。

暴走する雷光が、胸の奥で暴れているような感覚。

脈打つたびに、骨が軋み、血管が破裂しそうなほどに、サイオンが暴走していく。

 

「……う、あああ……!」

 

呼吸ができない。肺が膨らまず、酸素が足りない。

視界が明滅し、音が割れ、世界が反転する。

 

封印されていた“何か”が──動いた。

 

どくん。

 

全身を駆け巡るサイオンの流れが、一瞬で“別物”に変わる。

それは、世界の理そのものを否定する何かが、俺の中に確かにある。

 

演算領域が……崩れる。

いや、違う。これは“拡張”だ。

まるで、今まで自分が使っていた演算領域が“偽物”だったかのように、

外側から本物の自分が殴り込んでくるような衝撃だった。

 

「グ、アァ……!」

 

思考が加速する。

視界が開けていく。

血液が炎となって流れ、神経が超伝導するかのように感覚が敏感になっていく。

 

脳の奥底、今まで閉ざされていた暗闇の扉が、ギィ……と音を立てて開いた。

 

中にあったのは、黒い光。

“存在しないはずの記憶”が、無数に流れ込んでくる。

 

異世界。

破壊。

再生。

審判。

理の否定。

全てを無に帰す剣。

 

ーーああ、これはアノスの記憶だ。

 

 

 

 

 

その瞬間、俺の肉体が悲鳴を上げた。

 

皮膚が焼け、血管が破れ、骨が軋む。

それでも止まらない。

暴れる“力”が、俺という器を拡張しながら、完全に目覚めようとしていた。

 

──ガキィィィィン……!

 

空気が割れた。

 

右手に握っていた剣が、音もなく砕ける。

だが、その代わりに現れたのは──

 

漆黒。虚無。否定。

 

すべての理を打ち砕く、絶対の否定存在──

 

理滅剣《ヴェヌズドノア》。

 

 

 

 

 

世界が、再び静まった。

そして俺は、確かに“目覚めた”。

 

 

 

 

 

「貴様らが……俺の“家族”を脅かすというのなら」

 

「容赦はしない」

 

 

 

 

 

俺たちを追い詰めるために放たれた魔法が、一瞬で消失した。

理滅剣が放つ波動が、空間そのものを削り取っていく。

 

斬る。

それだけで、敵魔法師の命が断絶される。

 

一歩踏み出せば、地面が裂けた。

 

「行けえええええええええええええッ!!」

 

次の瞬間、俺の斬撃が世界を断った。

 

障壁魔法など意味を成さず、敵を瞬時に斬り裂く。

魔法兵たちは悲鳴を上げる間もなく、その存在を断たれた。

 

衝撃波が吹き荒れ、敵部隊の中央に大穴が穿たれる。

 

一条家の魔法兵たちが呆然と見つめる中、

俺は敵の第二陣へと向かい、斬り伏せた。

 

彼らが何を展開しようが、何を発動しようが──全て無意味。

 

演算が完了する前に、存在ごと切り裂く。

 

「……こ、これは……!」

「後退しろッ、あれは……人間じゃない!!」

 

敵部隊に、明らかな“動揺”が走った。

 

次の瞬間。

 

 

「……全軍、撤退ッ!!」

「いいから逃げろ!!近づくな!!」

 

魔法兵たちは魔法式の展開すら放棄して逃げ出す。

その顔には、“怒り”でも“憎しみ”でもない。

 

──“恐怖”。

 

理解不能な存在に対する、本能的な恐怖が、奴らを突き動かしていた。

それに追撃をかけようと剣を払おうとする。

 

──だが。

 

「……っ、は……あ……」

 

体が、動かない。

 

「く、そ……!」

 

膝が、崩れ落ちた。

 

世界が、暗く染まりはじめる。

 

呼吸が浅くなり、心臓が早鐘のように脈打つ。

理滅剣が手から滑り落ちる。黒い光が霧のように空へと溶け、消えていく。

 

(やばい……)

 

(限界……か)

 

 

 

 

 

体内を走っていたサイオンが、暴れたまま、急激に失速していく。

焼けただれた神経。軋む骨。

“力”に身体が追いついていない。

 

「兄貴!!」

 

駆け寄ってくる将輝の声が、どこか遠くに聞こえる。

 

「ああ……無事で、よかった……」

 

それだけを、どうしても伝えたかった。

指先を伸ばす。弟の手に触れる。

それだけで、満足だった。

 

 

 

 

 

──力を解き放ち、守るべきものを守った。

ただそれだけの満足感と共に、

 

俺は、崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けに染まった空の下、

静寂が、戦場を支配していた。

 

 

 

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