薔薇と光の結晶   作:NIGHTMARE⭐︎

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3 封眼

「ありゃ〜。堕天使ちゃん負けて戻ってきちゃった」

どこかの巨大な屋敷で闇薔薇が呟いた。堕術ノ天使は闇薔薇の前に浮遊している。

「相手は神嵜妖と星守丸雄凛だった。そんな状況で勝つ方が無理だろうが!!」

堕術ノ天使が声を張り上げた。そうとう負けたことに腹を立てているらしい。闇薔薇はそれを見て面白そうに笑った。

「怒ってるの?キミ感情豊かね。」

「黙れ…!お前如きの協力がなくとも私はすぐに全宇宙を破壊し尽くすことが可能だ。お前の存在は蛇足でしかないのだから口出しをするなーっ!」

「ふーん。」

闇薔薇がドレスを整えながら聞いている。聞いているだけで理解はしていないだろうと思った。その態度が余計に天使の怒りを加速させた。

「何がふーんだ!私の話を聞け!たかが人間から生み出された分際で…」

闇薔薇はため息をついた。

「うるさい。静かにできないならこれっとが消すから。」

闇薔薇コレットはそう言うと、独特な黒いドレスを翻してどこかへ去っていった。

 

一方、雄凛と妖の2人は天使の行方を探ろうとあちこち飛び回っていた。

「…見当たらないな」

「むぅ…まあそうだろうな」

そのとき…

「殺気」

2人は同時に場に溢れる殺気を感じ取った。それとほぼ同時に、地面から黒薔薇がいくつも咲き乱れた。

「わ〜綺麗〜」

空間が裂け、黒く大きな穴が開いた。何もない空中にだ。そこから現れたのは2人の人影。

「Emma…!」

そのうちの1人はかつての雄凛の親友の神速の騎士、Emmaだった。青い髪と輝く赤い目という美貌を持った彼女は、今では完全に闇薔薇によって闇に落ちてしまっていた。

そしてもう1人は、その元凶。コレット、またの名を闇薔薇。

「おのれ…Emmaに何をしたのだ…!」

雄凛が剣を振り上げて急接近する。夜の空気を切り裂き、真っ直ぐにコレットへ突っ込む雄凛。しかしコレットは無邪気に笑い、純粋なまでの表情で雄凛を見つめている。次の瞬間には、雄凛は見えない手で押し返されるようにコレットから遠ざけられた。

「ッ…こやつの能力は…」

「これっとの能力?考えたのをほんとにできるよ」

コレットがニコッと笑って言った。雄凛は、こいつが全くもって悪気がない存在だとその一瞬で分かった。

雄凛が次の一手を考えようとしているところに、Emmaが無言で立ちはだかった。

「Emma…!」

「彼女は世界の不純な部分を再構想しているだけです。邪魔しないでください」

Emmaが冷静に告げる。雄凛は剣を振ろうとするが躊躇いが生じて全く動かせない。それを見た妖が、10cmほどの銀色の立方体の何かを取り出した。

「!…それは封眼か…?」

「そうだ。使わざるを得ないだろう。」

【封眼】、危険封印物。別名パンドラの檻。対象を中に閉じ込め、200年間拘束する。200年の封印期間が終わると、外側からのみ開けることができる。中にいる間は絶対に死ぬことも出ることもできず、歳をとることもない。直前に負った傷があればそれが治ることもない。

 

「すごーいナニコレ〜」

コレットがいつのまにか、全く同じ封眼を右手に持っていた。能力で構想したのだろう。妖がそれに気づき、自身の手に握られた封眼をコレットに向かって投げる。しかし当然本来ならば当たるはずもない。だが、封眼は改変すら跳ね除ける強力な導力が織り込まれた恐ろしい檻だ。コレットの想像力すらも跳ね除けてしまうのだ。

「わぁっ!」

コレットは封眼を跳ね返す想像をしたが反映されることはなく、封眼がそのままコレットの額にぶつかった。

「いたたた」

次の瞬間には封眼がカシャンと広がり、コレットの肉体を中に引き摺り込んでいく。コレットは指をすっと立てるポーズをして、これから200年間そこで過ごすとも知らずに無邪気な顔で封眼の中に取り込まれた。その想像力によって作られた封眼がゴトンと地面に放り出された。

想像だけではどうしようもない現実がある。

 

「…わかっていませんね…!」

Emmaが剣を抜いて妖に向く。妖は刀すら抜かずにEmmaと向き合った。次の瞬間にはEmmaが光速で妖に急接近し、その剣が華奢な首へ振り下ろされる…。それと同時に妖はコレットが想像した封眼をゼロ距離で叩きつけようとした。

「待て妖…!」

その時、雄凛が割って入る。Emmaの剣を即座に盾で受け止めるが、封眼は真っ直ぐにその胸へ触れる。

「雄凛…!何を…」

「…彼女は私の親友だ…」

雄凛はそのまま開いた封眼へと取り込まれた。封眼が対象を完全に収納し終え、鈍い光が消えて化石のようになって地に落ちた。コレットが封印された封眼と、雄凛が封印された封眼が隣り合うように落ちていた。

 

「雄凛…」

Emmaがガクンと膝をついた。彼女も雄凛と戦闘をする気は全くなかった。ただ、コレットの言葉を間に受けてしまっただけなのだ…彼女も雄凛と同じように、親友を傷つけたくはなかった。

妖は静かに両目を閉じて立っていた。

「…済まない雄凛。それとEmma、ここからどうするかはお前の自由だ…」

妖は静かな声でそう言うと、どこかへ消えていった。

 

400年後の現代では、封印から解かれた雄凛がその時代の【最強】となった。本人は全くその称号を気に入っていないようだが。

一方、闇薔薇のコレットは封印を外から解いてくれる者が誰もいないため、未だ封印されたままだ…。

神嵜妖はとうの昔に寿命で亡くなり、残酷なことにその戦闘データはコレットが封印の間際に残した導力が死霊化したものに取り込まれ、禁忌死霊ナイトブレイカーとして自立を開始した。

そしてEmmaは…何者かに封印された影響で現代へそのままの姿で送られ、雄凛と邂逅を果たすこととなった…。

 

光の行末は誰も知らない…。

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