#狂気太郎作品ホラーWEBアンソロ   作:塩漬鰯

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障害者革命返し

 

「つまり知的障害者も我ら身体障害者と同じ人間であると、我々は認めたのであります」

 

 拍手。

 核爆弾による首都消滅から三十年後、再興した国家はまた一つ平和になった。

 

「なおかつ知的障害者は生存能力的に不利であるゆえ、毎月一千万円の補助手当を出します」

 

 国会中継を見ていた人々の、目の色が変わった。

 

 まず人々が求めたのは演技力だった。専門学校の倍率は十二倍まで膨れ上がり、特別支援学校は見学者が殺到した。彼らは知的障害者の認定を貰うために演技力を磨き病院に向かったが、脳波検査でことごとく健常な身体障害者と見破られて帰された。

 次に脳手術をおこなう者が現れた。国家公務員として働いていた両腕のない男は数千万円の手術を受け、頭蓋骨に穴をあけ大脳の一部を切除した。数日後に感染症による髄膜炎で男は死んだ。

 生まれついての知的障害者たちを狙う者たちが現れた。障害者手帳を狙った手帳狩りだ。狩られた手帳は個人情報欄を消されて闇で売りさばかれた。役所の福祉課はデータと照合できない人間が大量に現れ受付を一時中断したため本当に福祉を必要とする人間たちが路頭に溢れた。知的障害者同士が殴り合いの喧嘩をしているという通報を受けて警察が向かうと偽物同士が偽造手帳を奪い合っていた。

 知的障碍者と婚姻関係を養子縁組を結び家族になる者たちが現れた。知的障害者たちは最初は喜んだが彼らは婚約者や養子の手当を掠め取ろうとする者たちだった。自らの子供を知的障害者にするため妊婦の間で薬物の乱用が流行した。知的障害者の子供を産むための妊活講座が流行り、過剰な活動によって堕胎する者たちも増えた。

 あまりのスピード感に政府は適切な策を講じることができなかった。

 

 その時、救世主が現れた。その男は脳性まひによる運動機能障害と軽度の知的障害を持っていた。彼は手当の受け取りを拒否した。彼は生活にかかる資金は自分たちで稼ぐべきだと宣言して、所有株を売った資金で元首都圏の広い土地を買い取った。半減期の過ぎたこの土地を広大な農地として知的障害者たちで耕そうと彼は呼び掛けた。提案に乗る人間は最初は数えられるほどしか居なかったが、徐々に知的障害者たちとヘルパーたちが集まり皆で農地を開拓し始めた。

 農地には偽物の知的障害者も入り込んできた。しかし彼らは追い出そうとはしなかった。猫の手も借りたいからだ。

 車椅子の上に座ったままヘルパーに鍬を振るわせるその姿を揶揄する政治家も現れたが、その言葉は四肢のない身体障害者の心を救世主に傾かせた。

 五年、十年と時が経ち、やがて広大な農牧場が出来上がった。半減期が過ぎたとはいえ汚染地域の作物は売れず、仕方なく彼らは自分たちで消費した。食料の自給率が百パーセントを超えた。気が付けば全国民がその農牧場に集っていた。旧政府は税金が取れず国家ごと解散を宣言した。

 

 救世主は建国の王となった。彼の右腕であるヘルパーは宰相となった。救世主はなんの声明も出さず、ただただ農作業に精を出した。

 

「ひとつ、いいかい」

 

 救世主は会話補助具を使って宰相に言った。

 

「障害者の害の字って、ひらがなで書くほうがダイバーシティだと思うんだけど、君はどう?」

 

 宰相は溜め息をついて、隠し持っていた起爆ボタンを押した。農牧場の地下に仕込まれた核爆弾が爆発し、国家は消滅した。

 

 

 

  了

 

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