ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos   作:トリミングチキン

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がんじがらめの因果

夜も深まった頃、俺はシャーレの屋上でフェンスに寄りかかり、ただ黙って星を見ていた。

 

”イツキ、待たせてごめんね”

 

「問題ないさ。…とてもきれいな星空だな、地上から見る星も存外いいものだ」

 

先生は俺の隣に立ち、同様にフェンスに寄り掛かった。

 

「対策委員会の皆の容態は?」

 

”問題はないそうだよ、今晩は一応病院で過ごしてもらうことにはなりそうだけどね”

 

「ホシノ先輩は?」

 

”みんなの看病をしてるよ。みんなと仲良く談笑してたから、大丈夫そう”

 

「そうか、よかった」

 

一息つき、床に腰を下ろし、フェンスにもたれかかる。

 

”質問してもいいかい?”

 

「あぁ」

 

”君は独立傭兵のレイヴンなのかい?”

 

少しの沈黙と思案の後、俺は答えた。

 

「……キヴォトスでは独立傭兵という言葉は使われていない。もう気づいているんだろ?」

 

”確信はなかったけど、これだけヒントがあったらね”

 

「それで、どうするんだ。俺を追い出すのか?」

 

”そんなことはしないよ。ただ確認したかっただけだから”

 

少し冷たい風が吹き、星明りは俺達を照らしている。

 

「…俺は、星系を焼き払った大罪人だ。そんな俺を野放しにしていいのか?」

 

”イツキはこれから人に酷いことをするの?”

 

「…必要なければするつもりは無いが、そんな言葉を信じるのか?」

 

”確かに君は人を殺めた。けどね、大人が子供を信じてあげないなんて許されないんだよ”

 

胸ポケットから赤いカードを取り出し、空にかざす。

鮮血よりも赤いそれは煌びやかに輝いていた。

 

ぼんやりと昔のことを思い出してしまう。

 

「先生は、世界を守るために大切な人を殺めなければならないときどうする。己の手をその人の血で汚すか?それとも、大切な人の手を取るのか?」

 

”別の可能性を模索するよ。誰も犠牲にしなくていい選択肢があるかもしれない”

 

「……あんたのこと、ウォルターに似てると思ってたんだ。だが、まるで違う人間のようだ」

 

「先生は過程を重視する考えなんだな」

 

”例え結果的に正しくても間違った手段を認めるわけない。いつだって探せば別の可能性があると、そう思ってる”

 

『可能性』という言葉が妙に頭に残った。そして、彼の考え方は聞き覚えがあった。

(どこかのコーラル変異波形もそんなことを言ってたかな…)

 

「だが、俺は結果がすべてだと思う。あんたの言うように可能性を探しても、見つからず、すべてのが壊れたなら、誰が責任を取るんだ?」

 

”少なくとも、今は私が責任を取るよ”

 

「……なぜだ?」

 

”私は大人だからね。大人は子供のために責任を負うものだ”

 

”だから、イツキのしたことの責任も取るよ”

 

その言葉は確かに温かく感じた。

ルビコンを離れた後は確かに苦しかった、孤独も、慣れない仕事も、犯した罪も何もかもがのしかかってきた時期もあった。

 

だが、俺は皆を殺しルビコンを焼いた、己の意思を貫き通した。

選択の結果を、終わった後も、見届けなければならない。俺にはその権利と義務がある。

その責任は俺だけのものだ、いまさら人に委ねるつもりはない。

 

既に腹はくくっている。

 

「…もう遅いさ、俺はそんな綺麗事にすがれるど子供ではないんだ」

 

「だが、キヴォトスは平和だ。無垢な子供たちにその言葉をかけてやってくれ」

 

”私にとってはイツキも守るべき子供だよ”

 

立ち上がり胸ポケットから煙草を一箱取り出す。ヘッドブリンガーのコックピットに在ったものだ。

一本だけ取り出し、口にくわえる。

 

「火、あるか」

 

先生は少しためらった後、ライターを俺の手に置いた。

 

”私としてはあまり吸ってほしくはないんだけど…”

 

「気にするな、俺は強化人間だ。肺も肝臓も人工臓器だからな、健康被害はあってないようなものだ。脳もニコチンでは大して快楽物質が分泌されない」

 

「…まぁ、味とにおいは楽しめるがな」

 

もらったライターでタバコに火をつけた。

大きく吸い、肺に煙を送り込む。

 

熱く、濃く、重い煙だ。

苦くて強い味。表現しがたいが、強いて言うなら土や草木の香りが近い。

 

だが、少し落ち着くような、体が温まるような感覚だ。

 

煙を吐き出せば、それは町の中に消えていった。

 

「悪くはないな」

 

”私も一本もらっていいかな”

 

箱を軽くたたき、数本ほど出し先生の方へ向ける。

再びライターに火をつけ、彼が手に取った煙草に火をつける

 

「あんたは()()なんだろ、煙草なんていいのか?」

 

”普段は吸わないけど、イツキと私の二人きりだからね。特別にだよ”

 

そんな人たらしなセリフを恥ずかしげもなく言う先生に軽くため息をつく。

 

「俺は男だし構わないが、そんなセリフ生徒たちには言うなよ。惚れられても知らないぞ」

 

”ふふ、イツキも冗談とかいうんだね”

 

俺は忠告のつもりで言ったのだが、へらへらと笑っている。

(本当に無自覚なのだろうな。こいつはどうしようもなさそうだ)

 

改めて一吸いする。ジリジリとも焼ける煙草を眺めながらこの煙草を思い返す。

ほんのりと血流が速度を増したような感覚だ。

(コックピットの中には写真も煙草もおそらくイグアスが乗っていたころからそのままだったのだろう。あそこにいたのは誰だったんだ…)

 

「俺はみんなのお見舞いに行くことにする。まだ病院は開いてるか?」

 

”うん、開いてるよ。ホシノはまだいると思うからよろしく言っておいてね”

 

先生が差し出した手持ちの吸い殻入れに煙草を放り込む。

室内へのドアに向かって歩き、先生に手を振って階段を下りた。先生も手を振り返していた。

シャーレを去り、想定より近場にあった病院に向かった。

 

窓口からみんなの部屋番号を聞き、そこへ向かった。

どうやらみんな同じ部屋にいるようだ。

 

扉を引くと病室には横になっている四人と椅子に座りシロコの顔を穏やかに眺めているホシノがいた。

 

普段の隙のない彼女らしくなく、こちらには気づいていなかった。

それが俺のいたずら心に火をつけたのだろう。そのまま音を立てずに近寄り、驚かせてやろうと構えた。

 

「私がもっとしっかりしていれば…」

 

ホシノは背を丸め、絞り出すようなかすれた声で呟いた。

普段とは違う彼女の姿にぎょっとした。

 

「ユメ先輩。私はまた、同じことを……」

 

そう言った後、すぐに俺の気配に気づいたようだ。振り向きすぐに引き金に手をかけた。

 

「なんだ、イツキちゃんか。みんなはもう寝ちゃったよ」

 

さっきの発言を聞いた後では普段の調子で話すことができなかった。

ホシノも察したようだ、ぎこちなく笑いかけるが、気まずい雰囲気が漂う。

 

「聞かれちゃってたかな?まぁイツキちゃんには気づかれると思ってたよ。このタイミングだとは思ってなかったけどね」

 

「すまない。盗み聞きするつもりは無かった」

 

「別にいいよー。聞かれても何かあるってわけじゃないからね」

 

ホシノは再び椅子に座る。俺も近くから一つ拝借し、隣に座る。

少し悩んだが、今ここで話すことにした。

 

「ホシノ先輩…」

 

「ん?なに」

 

「俺は…アビドスを辞る」

 

先輩は力強く立ち上がり、椅子はその勢いのまま転がっていった。

彼女は瞼を思い切り開きこちらを見た。

 

そのまま、俺の肩を強く掴む。

 

「イツキちゃん。大丈夫だから、次は私がちゃんと守るから…だからさ、まだアビドスにいてよ。ね?」

 

今までに聞いたことがないほど弱弱しい声だ。

俺の目には縋るような、何かを恐れているような姿に映った。

 

「もう気づいているんじゃないか。あのロボットが来たのは俺のせいだ。これ以上みんなを巻き込むわけにはいかない」

 

口ではそう言ったが、今にも折れてしまいそうな彼女の頼みを無下にするれば、さらに追い詰めてしまうんじゃないか、何かがひっくり返ってしまうんじゃないか。そう思った。

 

彼女の小さな背中を見た俺は自分の意思を通せなかった。

 

「わかった、しばらくはアビドスに留まる。それでいいだろ」

 

そう言うと彼女は落ち着き落ちるように椅子に座った。

 

雰囲気に耐えられなくなり席を立ち、逃げるように病室を出る。

俺は病院から立ち去り、学校へ向かった。

 

弱った子供になんて声をかければいいのか、俺はわからなかった。

選択を先延ばしにすることしかできない。

(先生やウォルターなら、気の利いた言葉をかけられかもしれないが…)

 

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アビドス校舎へ入り、チャティが使っている教室の明かりをつける。

 

「生きてるか、アル社長?」

 

居室の隅には、便利屋の4人組が鎖で括りつけられている。

アビドス砂漠から回収して拘束しておいた。

 

疲弊してはいるようだ、人も来ないような学校に取り残されたのだから当然だがな。

 

「えぇ、生きてるわよ。何時間も拘束されて体中痛いけれどね」

 

「ムツキちゃんも退屈でやだなー」

 

減らず口をたたく元気はあるようだ。

 

「大人しく口を割ればすぐにでも解放する」

 

先程までうつむいていたカヨコが答えた。

 

「何が聞きたいの?話せる事なら何でも話すけど」

 

「ちょっと!カヨコ」

 

「銃もどこかに隠されてるし拘束も解けそうにない。もう詰みだよ、社長」

 

アルの反論にも論理的に答えた。

おそらくカヨコはアルと同様の情報を持っているのだろう。

 

「カヨコ課長、あのロボットはなんだ?」

 

「それに関しては何も知らない。私たちが失敗したら援軍に来るってことだけ聞かされてたから」

 

「依頼主は?」

 

「カイザーPMC。そこの代表取締役」

 

「そうか。じゃあもう帰っていいぞ。次はないからな」

 

持っていたZIMMERMAN(ジマーマン)で鎖を撃ち抜き、彼女たちの拘束を解いた。

 

鎖を片付け、帰ろうと教室の扉を開ける。

 

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

振り返るとアルが何か言いたげなしぐさをしていた。

 

「あー、銃は廊下に置いてあるぞ」

 

「そうじゃないわよ!ほんとに終わりなの?!たったこれだけ聞くために何時間もわたしたちを拘束してたの?」

 

「そうだ。お前達は口が堅そうだったからな」

 

「それでも、他にも色々できることがあったでしょ!依頼料を巻き上げるとか、下働きさせるとか」

 

「別にお前らと敵対したいわけでは無い。前も言ったがお前たちのことは買っている。極力、禍根は残したくないんだ」

 

改めて帰ることにした。

(カイザーか…調べておこう。依頼主がここの企業ということは襲撃の狙いが俺ではなくアビドスか?これで終わりではなさそうだな)




621を明確に男の子にしました。
女の子だと先生に惚れかねないかなと思いまして。
ちなみに、周りからは女の子だと思われています。キヴォトスでは男なんてめったにいないですからね。

久方ぶりの投稿だというのに見ていただき感謝しかありません。

この作品に1番期待している要素は?

  • ac6らしい戦闘や残酷な描写
  • キャラクターの掛け合いや日常の描写
  • 621の内面描写
  • シリアスなストーリー
  • アクション、バトル中心のストーリー
  • ここにはない
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