ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos 作:トリミングチキン
ブラックマーケットを歩き続けてから、3時間が経過した。
定期的に襲ってくる輩を返り討ちにしていたため、皆疲労がたまってしまった。
俺達は広めの道路わきのベンチに座り込んだ。
ぐったりとしてる皆を横目にシロコとノノミは元気そうだった。
俺も疲労を感じないわけではないが支障が出るほどではない。
「みんな疲れてるな」
「そうですね。何か買って来ましょうか!」
シロコは当たりを見渡したのちに立てかけられている看板を指さして言った。
「ん、あっちにたい焼き屋がある」
「いいですねー☆三人で買いに行きましょうか!」
「俺は皆を見ておこう、また襲われたら困る。二人で行ってきてくれ」
タイ焼きを階に向かう二人を横目にベンチでぐったりと座る先生を見る。
(そういえば、先生は『大人のカード』というものを持ってると聞いたことがあるな。普通に考えればクレジットカードのことだろうが…まさかな)
ホシノ先輩もセリカもヒフミも同様に座っている。
(それにしても、こんなに襲われるとはな、トリニティ生がいるだけじゃない気がするな)
「買ってきましたよー☆」
二人が買ってきたタイ焼きをみんなに配って回る。
ふんわりと香る小麦の匂いのするたい焼きを大きく一口ほおばる。
外はサックっと軽やかであんこはほくほくで程よい甘さ、こんなところでも美味いものは美味いのだ。
セリカも美味しそうにタイ焼きを食らっている。
「おいしい!」
ホシノも普段は食べないものを食べれえ幸せそうだ。
「しばし、ブレイクタイムだねー」
(みんなでおいしいものを食べて、にこやかに過ごして。これが普通の人生ってやつなのかな、ウォルター……)
ヒフミが口に入れたタイ焼きを全部飲み込んでから話し始めた。
「それにしても、ここまで探しても見つからないなんて妙ですね。お探しの兵器の情報販売ルートから保管記録まで。まるで隠されているような…」
「そうだな、ここの企業ならここまで徹底した隠ぺいはコストに見合わない上に、やる意味も薄い。ブラックマーケットにいる時点で裏があると言っているようなものだからな…」
皆で悩んでいると、何やら重武装の集団がトラックを囲うようにこちらに接近しているのが目につくいた。
それについてアヤネから通信が入った。
『武装した集団がこちらに向かってきています。私たちが目的ではなさそうですが…ひとまず身を潜めた方が良いと思います』
全員で座っていたベンチの裏にある草陰に入り込み、バレないようにかがんで様子をうかがった。
その集団を見たヒフミは顔を蒼くして縮こまっている。
「あれはマーケットガードです!この場所の最上位の治安維持組織なんです!」
『ただのパトロールではなさそうですね』
”あのトラック…現金輸送車を護送してるみたいだね”
その現金輸送車が近くにあったブラックマーケットでは相当なサイズのビルに向かっている。
ヒフミはその場所について知っているようだ。
「あれは…闇銀行ですね。ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つで様々さ犯罪によって獲得した違法な財貨や盗品を武器に変え、そこからさらなる犯罪を促しているそうです」
「つまり、真っ黒の組織ってことでいいんだな」
「ねぇ見て!あの人うちで毎月、利息を受け取ってる銀行員じゃない?」
セリカが指さす先には現金輸送車に乗っていた人物が闇銀行の職員に現金を引き渡している。
『車もカイザーローンの物です。私たちが利息を払ったものと同じようですがなぜブラックマーケットに…!?』
「兎にも角にも、俺達の返済金はブラックマーケットの犯罪資金に流れてたってことだ」
そういった後だったが、冷静になるとアヤネのセリフに聞き捨てならない単語が入っている。
「……なぁ、俺達カイザーに金借りてたのか?」
『はい…そうですが』
(となると、便利屋の証言にも信憑性が増してきたな。カイザーより先にアビドスの借金を調べるべきだったか…)
「カイザーは犯罪こそ起こしていないが、グレーなことばかりやってる企業だ。トリニティでは『ティーパーティー』も目をつけているんだろ?」
そう聞くとヒフミはそっとうなずいた。
ホシノは神妙な面持ちでアヤネと通信する。
「さっきの現金輸送車のルートって調べられる?」
『ダメですね、すべてオフラインで管理されているようです…』
「やっぱりそうかー、となると犯罪資金に流れていたとしても証拠は集めようがないね」
アビドスの皆は先程までと打って変わり、笑えるような状況ではなくなっていた。
自分たちの払った利息が犯罪に利用されていると知ったのだはらわたが煮えくり返っているのだろう。
「…いや、これまでの取引の記録があの銀行の中にあるだろ」
「えっ!でもあそこはブラックマーケットの中でも強固なセキュリティを誇る銀行ですし、マーケットガードも目を光らせてますよ!」
ヒフミは乗り気ではないようだが、俺が
「ん、他に方法はない。ホシノ先輩、ここは例の方法しか」
「なるほど、あれかー。あれなのかー」
「そうですね☆あの方法なら!!」
俺は
「あれっていったい何の話だ?」
「ん、そんなの決まってる」
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キヴォトスの闇銀行、一人の少女が銀行員に強く反論している。
「アル様、これでは融資は厳しいですね」
「ちょっと、ここまで待たせておいて手ぶらで帰らせる気!」
銀行員はそんな彼女に一切揺さぶられず淡々と接する。
「ひとまず堅実な仕事から始められてはいかがでしょうか。指名手配されている学生でも日雇いや期間工なら始めやすいと思いますが」
アルの眉はきつく寄り、表には見せないが歯を食いしばり、顔も赤らめている。
(ここまでコケにされて…もう銀行のお金盗んじゃおうかしら……ダメね。ブラックマーケットを敵に回すなんて…そんな勇気無いわ。くそっ、情けない。私は…)
(私が望んでるのはこんなのじゃない……何ごとにも恐れず、縛られず、自分を貫くハードボイルドなアウトロー…)
(そう、あのレイヴンみたいに………)
バンッ
突如辺りは一瞬で暗闇に包まれる。周囲からあわただしい声が飛び出す。
ダンダンッ!バキッ!
銃声が鳴り、何かの打撃音や頭をぶつけるように倒れる音が響く。
マーケットガードの叫び声も次々と聞こえて来る、倒されているのは一人や二人ではない。
悲鳴が鳴りやみ少しると、彼女の瞳の中に強い光が入る。
そこに現れたのは色とりどりの覆面をかぶった6人組!
各々の覆面には番号が刻まれている。
その中でも異質な雰囲気を放っている人物がいる。
彼らの最も後方に立ち、中心に立っている。ただ一人紙袋に番号が書かれたような雑な覆面で…!
そう、ヒフミだ。
他の覆面も前線に出れないアヤネと先生以外の対策委員だ。当然そのうちには俺も含まれている。
屋内で
(覆面をかぶっただけで制服も銃もそのままだ、少し調べれば正体がばれる気がするが…大丈夫だろうか)
青い覆面をかぶったシロコが天に向かって銃声を鳴らす。
「全員武器を置いて、その場に伏せて!」
「あ、あはは…皆さん怪我しちゃいますから抵抗しないでくださいね…」
連絡に必要なシステムの電源は既に落としてある。
増援を断つのはウォルターもよくやっていたことだ。
抵抗しようとする職員はシロコとセリカが無理やり地面に這わせる。
想定よりスムーズに制圧が完了した。特にシロコは、素人とは思えないくらい手際がいい。
目的の書類を手に入れる分には問題なさそうに感じた。
(せっかく来たんだから何もせず帰るのはもったいないか……)
頭を手で覆い小刻みに震えている職員の胸ぐらをつかみ無理やり立たせる。
「盗品がしまわれている場所はどこだ」
「お、奥の金庫の中です…」
恐怖で涙目になっている銀行員の首根っこをつかみそこまで案内させる。
人の背丈を優に超える重厚な金属の扉の前に案内された。
「開けろ」
銀行員は壁のタッチパネルにカードキーを差し込んでからパスワードを入れ、重い扉が自動で開く。
「ここです……」
中には宝石やアクセサリー芸術品が積まれている。
特にこれと言って目を引く物はないが、ここに似つかわしくないひどく汚れた布にくるまれているナニカがあった。
それを手に取り、布をめくって中を調べる。
中には書類、1枚ずつめくって内容を確認する。
「これは…技研の遺物の設計図………」
扉の前で震えている銀行員の胸ぐらを掴み、乱暴に壁に押しつける。
「…おい。これをどこで手に入れた?」
無意識のうちに拳に力が入る。
「しし、知りません…書類はすべて別の部屋で保管しているので存在しないはずなのですが……」
これ以上脅せばほんとに気絶してしまうほどに怯えている。
(とても嘘をついているようには見えない、ならなぜここにある)
「ブラックさーん!撤収でーす!!」
ヒフミの声が聞こえた目的のブツが手に入ったようだ。
書類を制服の裏にしまい込み、皆の方まで駆けだす。
メインホールにいたのはホシノ先輩のみ。ほかの皆は既に銀行の外まで脱出したようだ。
「ブラックちゃーん、急いで逃げるよ」
その場を走り抜け、大通りまで出たところで先生から通信が入る。
”この道路は既に封鎖されているみたい。イツキとホシノは指定した地点まで移動して、追っ手の対処をお願い。指揮は私が執るよ”
どうやら相当な距離を離されてしまったらしい。
スマホに表示されたポイントへ向け、ホシノ先輩と並んで走る。
「ところでさ、イツキちゃん怒ってる?」
「…そんなことないが」
「眉間にしわが寄ってるよー?」
「………少し焦ってるのかもしれないな」
「まぁ、こんな状況だけど大丈夫だよ。私がついてるからさ」
「……そうだな」
俺が焦っている理由は別にある。だが、ホシノとはいえど無関係の生徒に言えることではない。
本当のことは飲み込み、適当に相槌を打った。
気づけば目的の地点に到着していた。
後方からマーケットガードが追ってきているのが目についた。
先程倒した奴らも復帰したらしく、そこそこ数がいるようだ。追撃部隊でこれほどなら封鎖に回された人員は相当な数だろう。
ホシノもここにいる急いでここを片さなければ、みんなが先にすりつぶされてしまうかもしれない。
俺達が戦闘態勢に入った瞬間に先生から通信が入る。
”ホシノは前に出て攻撃を引き付けて、イツキは道路の端に隠してあるグレネードを拾いに行って”
道路脇の草陰。
そこには俺の
すぐさま拾い上げ、構える。
”イツキ、3時方向の狙撃兵を狙って”
”ホシノは反撃。前方の敵集団に3発。そのまま残弾を撃ちながら突撃して”
指示どうりに撃ち込む。
後方の援護射撃部隊が何人も吹き飛んだ。
敵が爆風範囲ギリギリに入り込む瞬間を狙ったような指示だ。
続けて、ホシノ先輩も大柄な盾持ちに弾丸を撃ち込み。
陣形に穴が開く。
そこをさらに撃ちつけ後方の兵隊を倒していく。
その後も先生の指示に従い制圧するだけで、戦闘は二分もかからず終了した。
(実際に受けてみると噂以上の指示能力だ)
(特に空間把握能力が以上だ、まるで空から見ているようだ。それに敵を倒すための火力も必要最低限。どんな訓練を積めばここまで…)
ホシノ先輩がショットガンに一つずつ装填し、靴を鳴らす。
「それじゃ、先行ってる皆の援護に行こうか。先生が指揮してるからもう終わってるかもしれないけどねー」
「……?先生はさっきまで俺たちの指揮をしてたはずだが」
「でも通信を聞いてた感じ、先生はあっちの指揮も執ってたみたいだよ」
とても信じられない話だ。ついホシノに疑念の目を向けてしまう。
皆の元へ駆けていくとやがて、後ろ姿が見えてきた。
周囲には大量のマーケットガードが倒れている。五十はくだらないだろう。
その中には戦車もオートマタも含まれる。
こんな短時間で、生徒達だけで制圧できる数ではない。
……まさか本当に同時並行で2つの戦場指揮をしていたとでもいうのか。
彼女達と共にタブレットを手に持つ先生が立っている。
冷たい風が吹いている。
”お帰り、遅かったね”
何事もなかったかのような表情。
それに、底知れなく感じた。
(広い視野、的確な指示、正確な状況把握、人格や権力まで、全てそろっている最高の指揮官だ。だが、人間らしい底が一切見えない……)
”それじゃあ、このまま脱出するよ。一応、痕跡は残さない様に気をつけてね”
そこからは交戦することなく封鎖地点を抜け、安全な市街地まで到着した。
一段落付き、各々覆面を脱いで懐にしまった。
「ところでシロコ、集金記録は持っているんだろうな」
「当然、だけど…」
シロコは少しためらっていたがバックを開く。中身を覗くと、そこには確かにカイザーの集金記録があった。
……そして、数えきれないほどの札束も。
真っ先に反応したのはセリカだった。
「シロコ先輩!現金まで盗ってきちゃったの!?」
「一応聞くが、元からこういう計画だったのか」
「ち、違う……!目当ての書類を入れるように言ったんだけど。お金は銀行の人が勝手に…」
二億は軽くありそうな量だ。最近は俺が動き回ってたせいか、裏社会全体の金回りがよかったからここまでの大金が出てきたのだろう。
セリカがバックを抱えるように持ち、目を輝かせる。
「みんな何ぼーっとしてるの!運ぶわよ!」
満面の笑みでバックを持ち帰ろうとするセリカの肩を掴み、こちらに引き寄せる。
「ダメだ、ここに捨てていく」
「なんでよ!?そりゃあ犯罪かもしれないけど元々私たちのお金なのよ!」
先程とは違い、鋭い目つきで睨んでくる。
「それに、あそこに置いておいたらまた別の犯罪に使われてたでしょ!悪人からお金を盗んで何が悪いの!?」
セリカは俺の腕を振り払い、大事そうにバックを抱える。
ノノミもセリカの側につき、俺に反論する。
「私もそう思います!犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をするべきだと思います!」
二人とも熱くなっている。
当然だ、叶う見込みが一切なかった借金返済という夢が現実味を帯びてきたというのに、そのチャンスをドブに捨てろと俺は言っているのだからな。
「気持ちはわかるが、それは犯罪をしていい理由にはならない」
「それは…そうだけど……」
「もしここで盗めばお前たちの人生にこれからもその選択肢が入り込む。そうなれば、窮地を言い訳に何度も同じ選択をしてしまうだろう」
セリカにゆっくりと近づく。
手を握り、バックから指を離させる。
「せっかくの未来をそんなことで汚す必要はない。借金を完済する方法はそれ以外にもきっとある」
冷静になれば俺らしくない言葉だ。
もしかすると俺と同じ道を選んでほしくなかっただけなのかもしれない。
罪と血に塗れ、普通の人生に戻れなくなってしまった俺とーーー
「…本当にそれしか選択肢がないときだけ使うべきだ。二度と普通には戻れなくなる」
セリカの顔が赤みがかり、大きく息を吸った。
これからなんと言われるかは想像に難くない。俺は少し身構える。
「わかったわよ!」
予想に反し、ふてくされたような態度ではあるが、セリカは俺にバックを渡してくれた。
「わからないけど、イツキちゃんが心配してくれてるのはわかったから」
「…そうか」
バックを地面に置き、一息つく。
すると突然、後ろから頭をなでられた。
「ん、偉い。さすが私の後輩」
「イツキちゃんなら『持って帰ろう』っていうと思ったけど。おじさんと同じ考えでうれしいよー」
「…そ、そうか」
ホシノとシロコの手はほんのり温かい。
頭をなでられたのは初めてだった。安心するような、ざわつくような。
少しくすぐったい。
…いや、
ウォルターも一度、撫でてくれたことがあった。
その時は感覚器機が機能していなかったからわからなかったが、存外心地よいものだ。
突如アヤネの通信が来る。
『…皆さん、何者かがそちらに接近しています!』
全員すぐさま覆面をかぶると、そこに現れたのはアルだった。
反射的に
「はぁ、ふぅ……待って!」
彼女は息も整えないまま、彼女はまくしたてる。
「大したことじゃないのだけれど少し待って頂戴。あなたたちの銀行の襲撃見せてもらったわ……!制圧から撤収まですごく速くて」
アルは目を輝かせながら熱弁する。
追っ手かと思ったが違うようだ。俺達の正体にも気づいてい様子だ。
「すごく衝撃的だったわ!このご時世にここまでのアウトローあの人のほかにもいたなんて!感動的というか……とにかく、これから私も頑張るから!」
「だからせめて名前だけでも!チーム名みたいなのが何かあるでしょ!私の心に刻んでおきたいの!!」
突然、ノノミが一歩前に出る。
「はい!私たちは、人呼んでーーー『覆面水着団』!普段はアイドルとして活動していて、ちなみに私はクリスティーだお☆」
(まずいな、このままノノミの悪ノリを続けさせたらマーケットガードも追いついてくるかもしれない)
ノノミの肩をグイっと引き寄せ、会話を辞めさせる。
「俺達も暇じゃない。ここら辺でいいだろ、クリスティーナ」
「それもそうですね、ではアディオス~☆」
そのまま全速力でこの場を離れ、アビドス校舎まで到着した。
覆面を懐にしまい、くたくたになりながら校舎に入る。
普段と比べ、先生とヒフミがいるからか少し窮屈に感じる廊下を歩いて、いつものように、教室の戸を引く。
ガラガラガラッ
本来はそんな配置ではないのだが、教室の中には机と椅子が手前と奥に一つずつ置かれており、奥の方には見知らぬ顔の誰かが座ている。
その声は聞き覚えがあるというほどではない。
しかし、俺の昔の記憶を呼び起こさせた。
依頼で一度闘っただけの関係。
だがそれ以上に脳にこびりつく。そんな人物……
「お久しぶりですね。ご友人♡」
普段の倍近く書いてしまいました…概ね本編をなぞっただけなので新鮮味が薄いかと思われますが、次からはガラッと変えるつもりです。
もっとキャラ同士の絡みも増やしていきたいと思います。
私用で1、2週間ほど更新が止まると思います。申し訳ありません。
感想、評価お待ちしております。
この作品に1番期待している要素は?
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ac6らしい戦闘や残酷な描写
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キャラクターの掛け合いや日常の描写
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アクション、バトル中心のストーリー
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ここにはない