ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos 作:トリミングチキン
目の前にいるのはキヴォトスによくいるオートマタやロボ住民に似たような機械人形に見えた。
だが、その頭部には見覚えがあった。
RAD製の土建AC向けヘッドパーツ、『HC-3000 WRECKER』。とあるドーザーの愛機、ACミルクトゥースにも使用されていた。
「サプライズです!ご友人」
機械の頭だ、それなのに笑っているような面をしている。
「…久しいな、ブルートゥ」
機械仕掛けの身体だ。
だが、ごく自然で滑らかな動きをしている。
「イツキちゃんのお友達ー?」
ホシノが脇から顔を出す。
ふと、アヤネの姿がないことに気が付いた。
「…アヤネは、ここにいた生徒はどこにやった」
「別の教室にいらっしゃいますよ。あなたへのサプライズをしたいと言ったら快く移動してくれました」
先生がそれとなく確認に向かった。
反応からして問題なさそうだ。
(……こいつの行動は読めない。対策委員の皆に余計なことを話されては困るな)
ドアを閉め、皆の方へ振り返る。
「……お互い積もる話もある。悪いが、二人だけにしてくれないか。アヤネと書類の確認をしておいてくれ」
一見渋っているような返事であったが疲労のせいだろうか。
思いのほか皆は素直に移動してくれた。
先生を除いて。
「二度言うつもりはないぞ」
”イツキのお友達なら挨拶くらいはしておきたいからね”
「…どうしてもか」
”どうしても”
小さく息を吐き出す。
(これ以上粘っても仕方ないか、先生なら俺の事情は知っている。問題はないだろう)
渋々扉を引き、三人で話し合いに臨む。
ブルートゥと向かい合うように二人で席に着いた。
ブルートゥは物言わず、俺の面をじっと覗き込んでいる。
「それで何の用だ」
「友人と会うのに用が必要なのでしょうか」
「…本題に入れ」
「ご友人はせっかちですね。ですが、それもまた素敵だ♡」
懐にある赤いカードからバレない様にコキュレットを生成する。
「私がここまで足を運んだのはそのカードについてお話しするためです」
地面を蹴破るように力強く椅子から立ち上がり、机の上に飛び乗った。
コキュレットを取り出し、奴の額に押し当てる。
奴は身じろぎ一つせず、俺と視線を合わせる。
”イツキ!”
先生が俺を止めようと腕をつかむ。
気にもせず、より強く銃口を押し付ける。
「…なぜ知っている。カードのことはお前どころか、誰にも話していない」
奴は機械の右手で銃身を優しく掴み、そっと降ろさせる。
「赤いカードを見せてもらえませんか」
「……」
再び席に着く。
コキュレットは握ったまま机に置いておく。
カードを取り出し、机の上に置いた。
だが、ブルートゥはカードではなく先生の方を見ている。
その先生は俺のカードをじっと見つめていた。
「……先生、あなたの
先生は黙ったまま僅かに目を細めた。
ブルートゥはそのまま続ける。
「性質に関してはとても近いですが、用途はまるで異なるものです」
聞いたことのない単語が耳に入る。
隠し事があるのは俺だけではないようだ。
「その赤いカードは物質の生成をするオーパーツです」
「あなたの大人のカードとの最大の相違点は代償が貨幣ということです」
「正確には、時間と労力を費やして手に入れた価値を貨幣という形で消費していると言うべきでしょうが」
実際に使用の度、俺の残高は減っている。
だからこそ、ブルートゥの話を真っ赤な嘘だと簡単に切れなくなった。
「その代わり、生成された物質はご友人の認識に依存します」
「認識が曖昧な場合、大まかな機能はともかく内部構造までは再現が難しいでしょう」
「元は先生の大人のカードと同じものだったはずですが、代償と用途をゆがめた結果でしょう」
機械の顔がゆっくりとこちらへ向く。
「あなたの人生の一助となる。そのように調整されています」
金属の冷たい指を俺の手の上に置く。
「前の持ち主はきっと優しい方なのでしょうね。ご友人♡」
奴の言うことはよくわからなかったが、有用な道具であるということなら問題ない。
だが、一つ疑問が生えてくる。
「なぜそこまで知っている」
「大したことは知りません。これまでの話は私の個人的な考察ですので」
ブルートゥは立ち上がり、俺の隣まで歩いてきた。
「名残惜しいですが、これからパートナーと食事の予定があるのでここで失礼させていただきます」
鞄から花束を取り出し、俺に差し出す。
それは黄色の花びらがラッパ状に広がっている花だった。
俺が受け取ると、奴は足早に扉に向かった。
ドアに手をかけると同時に問いかけた。
「闇銀行にあった技研の資料はお前の仕込みか?」
「えぇ、私からのプレゼントです。喜んでもらえたなら素敵だ……」
ほんの少し、振り向きながら扉を開けた。
「先生、ご友人。また会える日を楽しみにしています。次はルビコンでの舞踏会の続きをしましょう」
奴が教室から去り、革靴の固い足音が響いていた。
数分経ってから先生が口を開いた。
”イツキはカードを使ってから身体に何か変なことはなかった?”
「無い。ブルートゥが言った通り、金が減っているだけだ」
机のカードとコキュレットを懐に仕舞いこむ。
「先生、あんたのカードには代償があるそうだな」
先生の唇がかすかに開いたが言葉が出る前に閉じた、何かを押しとどめるような微妙な表情をしている。
「…言いたくないなら構わない。お互い余計な詮索は控えるとしよう」
煙草に手を掛けようと腕を伸ばしたが、ここが学校であることを思い出し、思いとどまる。
「もしかしたらこの前のヘッドブリンガーもあいつの差し金だったのかもしれないな」
”聞いておくべきだったかな”
「いや、話すつもりだったらここまで足早に去るとは思えない。どのみち真実が聞けるかは怪しいな」
椅子を引き、部屋の電気を消す。
「みんなのところに行こう。そろそろ話も纏まってきているはずだ」
先生は少し食い気味に問いかけてきた。
”イツキは、彼のことはどう思ってるの”
「……行動の読めないやつだ。忠告しておくが、常識で奴を図れると思っているなら足元をすくわれるぞ」
教室から出ると、明かりのともっていた奥の教室へ向かった。
「なんなのよこれーー!!」
セリカの叫び声が響いた。
俺達は教室まで駆け出し、勢い良く扉を開けた。
”みんなどうかした!?”
セリカは肩を震わせながら真っ赤な顔で叫んだ。
「私たちの返済金がカタカタヘルメット団に流れてたの!」
アヤネが諸々の資料を俺に差し出す。
「おそらくヘルメット団の背後にいるのは、カイザーローンです…」
資料にはアビドスの返済金の一部がヘルメット団に
奴らがヘルメット団を使ってアビドスを潰そうとしている、と見るべきだろう。
”規模からみるとカイザーコーポレーション本社からの指示かもしれない”
(…やはりか)
先生がこちらに近寄り耳打ちした。
”イツキは知ってたの?”
俺も小声で返す。
「便利屋から聞き出した。確信はなかったがな。裏どりも兼ねて先生も調べておいてくれ」
俺たち以外は誰も言葉を発さなかった。重い雰囲気が教室を満たしている。
ブルートゥの花束を机に置くと、ノノミが真っ先に反応した。
「その花、ブルートゥさんからですか?」
「あぁ、帰り際に渡された」
ノノミが花束を持ち上げ、眺める。
「黄色のフリージアですか、素敵です!」
「そうなのか?」
「そうなんです!花言葉は『親愛の情』『友情』『感謝』なんですよ。私も一度挨拶しておきたかったです…」
ノノミは少し寂しそうに微笑んだ。
「友情、か……」
ガタッ
ヒフミが突如、勢いよく立ち上がり時計を確認する。
「あっ!もうこんな時間。そろそろ戻らないと…」
ヒフミが鞄を持ち、勢いよく立ち上がって扉まで駆けだした。
「ヒフミ!」
彼女を呼び止めるように声を出す。
「よければ俺のバイク乗っていくか?駅までなら送る」
「えっ、いいんですか!?でも…」
「急ぎなんだろ、こんなことに巻き込んだ礼だ」
「……そういうことでしたら、お願いします!」
ヒフミは扉を引き、振り返って一礼した。
「アビドスの皆さん、色々とありがとうございました」
俺達はアビドス運動場に置いているバイクに乗り込み、最寄りの駅まで向かった。
盗んでからもうずいぶんと経つが特に問題なく走れている。
(そろそろ修理に出しておくか、整備していないとLCみたいに壊れてしまうからな……)
「イツキさん、改めてありがとうございます」
「気にするな」
「カイザーが反社会的勢力と関りがある証拠、それとアビドスの皆さんの状況も、戻り次第ティーパーティに報告しておきます」
「…カイザーはともかく、アビドスのことは知ってると思うがな」
「えぇ!?それならなんで……」
「あれだけの規模の学園が知らないはずがない。それに下手に注目されても困る、アビドスの報告は止めておいてくれ」
「わかりました…ナギサ様にはカイザーの件だけ報告しておきます」
何か違和感が俺の頭に突き刺さり、つい少し速度を落とした。
聞き覚えのある名前だ。
そいつを知ったのは主要校の生徒会長を覚えていた時だったはず。
「………ナギサって、トリニティの生徒会長か?」
「えぇ、そうですけど。それがどうかしましたか?」
(トリニティのトップとは面識を持っておきたいが、いきなり紹介させるのは不自然か…)
一度、話題を換えることにした。
「そういえばトリニティはエデン条約とやらを結ぶそうだな。少し教えてくれないか」
「もちろんです。エデン条約は連邦生徒会長が立ち上げたトリニティとゲヘナ両校で結ばれるはずだった平和条約のことです」
連邦生徒会長の失踪後、条約は空中分解していたそうだ
しかし、最近ナギサが中心となって締結を進めてるらしい。
「……なるほど」
目的の駅が見えてきた。
バイクを止め、ヒフミとバイクから降りた。
「ヒフミ、ナギサさんに『困りごとがあるならレイヴンを使え』と伝えておいてくれ」
「レイヴンさん、ですか?」
「知り合いの傭兵だ。困りごとがあるなら使ってやってくれ。腕は保証する」
「わかりました。私からも、アビドスの皆さんに応援していると伝えてもらえますか!」
「あぁ」
ヒフミは頭を下げ駅の方へ走っていった
姿が見えなくなるのを見届け、先生に電話を掛けた。
『”もしもし、ヒフミは無事についた?”』
「あぁ、みんなはどうしている」
『”そろそろ解散するみたいだよ、どうかした”』
「いや、ヒフミが応援していると言っていたから伝えておいてくれ」
『”了解、伝えておくね”』
「それと、ホシノ先輩に今日は帰れないと伝えておいてくれ」
『”…わかった、気を付けてね”』
通話を切り、スマホを仕舞い再びバイクに跨る。
「これでティーパーティーと繋がりができるといいんだが……高望みか」
バイクのエンジンを再びかける。
「そんなことより目前の問題を何とかするべきだな」
「ブルートゥの件はチャティと相談するとしよう」
スマホで大まかなルートを確認する。
「そろそろチャティの探し物も終わってるだろう」
アクセルをひねった。
「行くか、ミレニアム」
アンケートの回答ありがとうございました!
今回は説明が多くなっていたので読みにくかったかと思いますが、ここからはもう説明することはあまりないのでこういうことは減ると思います。
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ここにはない