ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos   作:トリミングチキン

19 / 19
正直者の男

目の前にいるのはキヴォトスによくいるオートマタやロボ住民に似たような機械人形に見えた。

だが、その頭部には見覚えがあった。

RAD製の土建AC向けヘッドパーツ、『HC-3000 WRECKER』。とあるドーザーの愛機、ACミルクトゥースにも使用されていた。

 

「サプライズです!ご友人」

 

機械の頭だ、それなのに笑っているような面をしている。

 

「…久しいな、ブルートゥ」

 

機械仕掛けの身体だ。

だが、ごく自然で滑らかな動きをしている。

 

「イツキちゃんのお友達ー?」

 

ホシノが脇から顔を出す。

ふと、アヤネの姿がないことに気が付いた。

 

「…アヤネは、ここにいた生徒はどこにやった」

 

「別の教室にいらっしゃいますよ。あなたへのサプライズをしたいと言ったら快く移動してくれました」

 

先生がそれとなく確認に向かった。

反応からして問題なさそうだ。

 

(……こいつの行動は読めない。対策委員の皆に余計なことを話されては困るな)

 

ドアを閉め、皆の方へ振り返る。

 

「……お互い積もる話もある。悪いが、二人だけにしてくれないか。アヤネと書類の確認をしておいてくれ」

 

一見渋っているような返事であったが疲労のせいだろうか。

思いのほか皆は素直に移動してくれた。

先生を除いて。

 

「二度言うつもりはないぞ」

 

”イツキのお友達なら挨拶くらいはしておきたいからね”

 

「…どうしてもか」

 

”どうしても”

 

小さく息を吐き出す。

 

(これ以上粘っても仕方ないか、先生なら俺の事情は知っている。問題はないだろう)

 

渋々扉を引き、三人で話し合いに臨む。

ブルートゥと向かい合うように二人で席に着いた。

 

ブルートゥは物言わず、俺の面をじっと覗き込んでいる。

 

「それで何の用だ」

 

「友人と会うのに用が必要なのでしょうか」

 

「…本題に入れ」

 

「ご友人はせっかちですね。ですが、それもまた素敵だ♡」

 

懐にある赤いカードからバレない様にコキュレットを生成する。

 

「私がここまで足を運んだのはそのカードについてお話しするためです」

 

地面を蹴破るように力強く椅子から立ち上がり、机の上に飛び乗った。

コキュレットを取り出し、奴の額に押し当てる。

 

奴は身じろぎ一つせず、俺と視線を合わせる。

 

”イツキ!”

 

先生が俺を止めようと腕をつかむ。

気にもせず、より強く銃口を押し付ける。

 

「…なぜ知っている。カードのことはお前どころか、誰にも話していない」

 

奴は機械の右手で銃身を優しく掴み、そっと降ろさせる。

 

「赤いカードを見せてもらえませんか」

 

「……」

 

再び席に着く。

コキュレットは握ったまま机に置いておく。

 

カードを取り出し、机の上に置いた。

だが、ブルートゥはカードではなく先生の方を見ている。

 

その先生は俺のカードをじっと見つめていた。

 

「……先生、あなたの()()()()()()と似ていると思いませんか?」

 

先生は黙ったまま僅かに目を細めた。

ブルートゥはそのまま続ける。

 

「性質に関してはとても近いですが、用途はまるで異なるものです」

 

聞いたことのない単語が耳に入る。

隠し事があるのは俺だけではないようだ。

 

「その赤いカードは物質の生成をするオーパーツです」

 

「あなたの大人のカードとの最大の相違点は代償が貨幣ということです」

 

「正確には、時間と労力を費やして手に入れた価値を貨幣という形で消費していると言うべきでしょうが」

 

実際に使用の度、俺の残高は減っている。

だからこそ、ブルートゥの話を真っ赤な嘘だと簡単に切れなくなった。

 

「その代わり、生成された物質はご友人の認識に依存します」

 

「認識が曖昧な場合、大まかな機能はともかく内部構造までは再現が難しいでしょう」

 

「元は先生の大人のカードと同じものだったはずですが、代償と用途をゆがめた結果でしょう」

 

機械の顔がゆっくりとこちらへ向く。

 

「あなたの人生の一助となる。そのように調整されています」

 

金属の冷たい指を俺の手の上に置く。

 

「前の持ち主はきっと優しい方なのでしょうね。ご友人♡」

 

奴の言うことはよくわからなかったが、有用な道具であるということなら問題ない。

だが、一つ疑問が生えてくる。

 

「なぜそこまで知っている」

 

「大したことは知りません。これまでの話は私の個人的な考察ですので」

 

ブルートゥは立ち上がり、俺の隣まで歩いてきた。

 

「名残惜しいですが、これからパートナーと食事の予定があるのでここで失礼させていただきます」

 

鞄から花束を取り出し、俺に差し出す。

それは黄色の花びらがラッパ状に広がっている花だった。

 

俺が受け取ると、奴は足早に扉に向かった。

ドアに手をかけると同時に問いかけた。

 

「闇銀行にあった技研の資料はお前の仕込みか?」

 

「えぇ、私からのプレゼントです。喜んでもらえたなら素敵だ……」

 

ほんの少し、振り向きながら扉を開けた。

 

「先生、ご友人。また会える日を楽しみにしています。次はルビコンでの舞踏会の続きをしましょう」

 

奴が教室から去り、革靴の固い足音が響いていた。

 

数分経ってから先生が口を開いた。

 

”イツキはカードを使ってから身体に何か変なことはなかった?”

 

「無い。ブルートゥが言った通り、金が減っているだけだ」

 

机のカードとコキュレットを懐に仕舞いこむ。

 

「先生、あんたのカードには代償があるそうだな」

 

先生の唇がかすかに開いたが言葉が出る前に閉じた、何かを押しとどめるような微妙な表情をしている。

 

「…言いたくないなら構わない。お互い余計な詮索は控えるとしよう」

 

煙草に手を掛けようと腕を伸ばしたが、ここが学校であることを思い出し、思いとどまる。

 

「もしかしたらこの前のヘッドブリンガーもあいつの差し金だったのかもしれないな」

 

”聞いておくべきだったかな”

 

「いや、話すつもりだったらここまで足早に去るとは思えない。どのみち真実が聞けるかは怪しいな」

 

椅子を引き、部屋の電気を消す。

 

「みんなのところに行こう。そろそろ話も纏まってきているはずだ」

 

先生は少し食い気味に問いかけてきた。

 

”イツキは、彼のことはどう思ってるの”

 

「……行動の読めないやつだ。忠告しておくが、常識で奴を図れると思っているなら足元をすくわれるぞ」

 

教室から出ると、明かりのともっていた奥の教室へ向かった。

 

「なんなのよこれーー!!」

 

セリカの叫び声が響いた。

俺達は教室まで駆け出し、勢い良く扉を開けた。

 

”みんなどうかした!?”

 

セリカは肩を震わせながら真っ赤な顔で叫んだ。

 

「私たちの返済金がカタカタヘルメット団に流れてたの!」

 

アヤネが諸々の資料を俺に差し出す。

 

「おそらくヘルメット団の背後にいるのは、カイザーローンです…」

 

資料にはアビドスの返済金の一部がヘルメット団に()()()()()として流れている記録が載っていた。

奴らがヘルメット団を使ってアビドスを潰そうとしている、と見るべきだろう。

 

”規模からみるとカイザーコーポレーション本社からの指示かもしれない”

 

(…やはりか)

 

先生がこちらに近寄り耳打ちした。

 

”イツキは知ってたの?”

 

俺も小声で返す。

 

「便利屋から聞き出した。確信はなかったがな。裏どりも兼ねて先生も調べておいてくれ」

 

俺たち以外は誰も言葉を発さなかった。重い雰囲気が教室を満たしている。

 

ブルートゥの花束を机に置くと、ノノミが真っ先に反応した。

 

「その花、ブルートゥさんからですか?」

 

「あぁ、帰り際に渡された」

 

ノノミが花束を持ち上げ、眺める。

 

「黄色のフリージアですか、素敵です!」

 

「そうなのか?」

 

「そうなんです!花言葉は『親愛の情』『友情』『感謝』なんですよ。私も一度挨拶しておきたかったです…」

 

ノノミは少し寂しそうに微笑んだ。

 

「友情、か……」

 

ガタッ

 

ヒフミが突如、勢いよく立ち上がり時計を確認する。

 

「あっ!もうこんな時間。そろそろ戻らないと…」

 

ヒフミが鞄を持ち、勢いよく立ち上がって扉まで駆けだした。

 

「ヒフミ!」

 

彼女を呼び止めるように声を出す。

 

「よければ俺のバイク乗っていくか?駅までなら送る」

 

「えっ、いいんですか!?でも…」

 

「急ぎなんだろ、こんなことに巻き込んだ礼だ」

 

「……そういうことでしたら、お願いします!」

 

ヒフミは扉を引き、振り返って一礼した。

 

「アビドスの皆さん、色々とありがとうございました」

 

俺達はアビドス運動場に置いているバイクに乗り込み、最寄りの駅まで向かった。

盗んでからもうずいぶんと経つが特に問題なく走れている。

 

(そろそろ修理に出しておくか、整備していないとLCみたいに壊れてしまうからな……)

 

「イツキさん、改めてありがとうございます」

 

「気にするな」

 

「カイザーが反社会的勢力と関りがある証拠、それとアビドスの皆さんの状況も、戻り次第ティーパーティに報告しておきます」

 

「…カイザーはともかく、アビドスのことは知ってると思うがな」

 

「えぇ!?それならなんで……」

 

「あれだけの規模の学園が知らないはずがない。それに下手に注目されても困る、アビドスの報告は止めておいてくれ」

 

「わかりました…ナギサ様にはカイザーの件だけ報告しておきます」

 

何か違和感が俺の頭に突き刺さり、つい少し速度を落とした。

聞き覚えのある名前だ。

 

そいつを知ったのは主要校の生徒会長を覚えていた時だったはず。

 

「………ナギサって、トリニティの生徒会長か?」

 

「えぇ、そうですけど。それがどうかしましたか?」

 

(トリニティのトップとは面識を持っておきたいが、いきなり紹介させるのは不自然か…)

 

一度、話題を換えることにした。

 

「そういえばトリニティはエデン条約とやらを結ぶそうだな。少し教えてくれないか」

 

「もちろんです。エデン条約は連邦生徒会長が立ち上げたトリニティとゲヘナ両校で結ばれるはずだった平和条約のことです」

 

連邦生徒会長の失踪後、条約は空中分解していたそうだ

 

しかし、最近ナギサが中心となって締結を進めてるらしい。

 

「……なるほど」

 

目的の駅が見えてきた。

バイクを止め、ヒフミとバイクから降りた。

 

「ヒフミ、ナギサさんに『困りごとがあるならレイヴンを使え』と伝えておいてくれ」

 

「レイヴンさん、ですか?」

 

「知り合いの傭兵だ。困りごとがあるなら使ってやってくれ。腕は保証する」

 

「わかりました。私からも、アビドスの皆さんに応援していると伝えてもらえますか!」

 

「あぁ」

 

ヒフミは頭を下げ駅の方へ走っていった

姿が見えなくなるのを見届け、先生に電話を掛けた。

 

『”もしもし、ヒフミは無事についた?”』

 

「あぁ、みんなはどうしている」

 

『”そろそろ解散するみたいだよ、どうかした”』

 

「いや、ヒフミが応援していると言っていたから伝えておいてくれ」

 

『”了解、伝えておくね”』

 

「それと、ホシノ先輩に今日は帰れないと伝えておいてくれ」

 

『”…わかった、気を付けてね”』

 

通話を切り、スマホを仕舞い再びバイクに跨る。

 

「これでティーパーティーと繋がりができるといいんだが……高望みか」

 

バイクのエンジンを再びかける。

 

「そんなことより目前の問題を何とかするべきだな」

 

「ブルートゥの件はチャティと相談するとしよう」

 

スマホで大まかなルートを確認する。

 

「そろそろチャティの探し物も終わってるだろう」

 

アクセルをひねった。

 

「行くか、ミレニアム」




アンケートの回答ありがとうございました!
今回は説明が多くなっていたので読みにくかったかと思いますが、ここからはもう説明することはあまりないのでこういうことは減ると思います。

この作品に1番期待している要素は?

  • ac6らしい戦闘や残酷な描写
  • キャラクターの掛け合いや日常の描写
  • 621の内面描写
  • シリアスなストーリー
  • アクション、バトル中心のストーリー
  • ここにはない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

アビドスの古竜(作者:灰の人)(原作:ブルーアーカイブ)

原作ほぼほぼ知らないオリ主がミディールになって原作を引っ掻き回すだけ。曇らせはないよ!


総合評価:486/評価:7.67/連載:6話/更新日時:2026年03月25日(水) 21:59 小説情報

各務に想う 〜いったいいつになったらみんな財務会計ってもんを覚えてくれるんだ〜(作者:ふぃーあ)(原作:ブルーアーカイブ)

第2部、完結。メインストーリー最終編まで終了!▼第2.5部「五塵来降」編、現在更新中。▼ミレニアムサイエンススクールにだって、パソコンを扱うことを旨にする部活動……俗に言う情報処理部はあるものだ。▼その部長の座に今座っている者の名は、天峰チハヤ。▼これは、ミレニアムどころかキヴォトスを見渡しても珍しい男子生徒の彼が送る青春の物語……?▼「だから、僕は会計士で…


総合評価:3618/評価:8.7/連載:64話/更新日時:2026年06月10日(水) 21:38 小説情報

思春期男子にキヴォトスは刺激が強い(作者:作刀)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスにはとある男子生徒がいる。しかしその男子生徒は絶賛思春期中であり、自分と同年代の顔のいい女子達がなぜか積極的に関わってくる状況に悩んでいる。思春期男子にとってあまりにも刺激が強すぎるキヴォトスで思春期真っ只中の青年は悶々としながら日常を送っていく


総合評価:2468/評価:6.84/連載:17話/更新日時:2026年06月08日(月) 19:53 小説情報

キヴォトス企業、アーキバス・コーポレーション(作者:ねうしとら)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスに“大人”として転生したブルアカミリしら転生者が、この世界の技術力を駆使すればACを造ることも夢ではないと希望を抱き、企業として奮闘する話。▼尚、キヴォトスで社会人として揉まれた結果、性格も企業となってしまった。▼


総合評価:12433/評価:8.89/連載:22話/更新日時:2026年02月25日(水) 19:12 小説情報

転生モブ、ディストピア世界で指揮官になる(作者:模範的アーク市民)(原作:勝利の女神:NIKKE)

目が覚めると、そこは人類が地下に追いやられたディストピア世界だった。


総合評価:15112/評価:8.81/連載:19話/更新日時:2026年05月02日(土) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>