ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos 作:トリミングチキン
コックピットの中にいたのは短く髪を剃り、防弾ベストを着た青年だった。
「……なんとなくそんな気はしてたさ。ルビコン以来だな」
その男の顔は、見覚えのあるものだった。
「昔話でもしに来たのか?」
「
名前はレッド。レッドガンの末席に名を連ねる男。
ルビコンの頃はベイラムの傭兵窓口担当として俺達と顔を合わせる機会も多かった。
そして、ナンバー持ち唯一の生き残り。
日の光が俺の顔に差し込まれると、レッドが押し当てている銃口がほんの少し弱まった。
以前の覇気のある声とは違う。弱々しい声色だった。
「……G13、なのか?」
「そうだ」
続けて、昔を懐かしむような静かな声色で答えた。
「貴様には、我が方の依頼も幾度となく遂行してもらったな」
「そうだったな」
「………お前が来てから、レッドガンの人数が少しずつ減っていった。先輩たちも、ミシガン総長すら」
「あぁ」
「終いにはルビコンを焼き払い、ベイラムもアーキバスも死に体と化した」
「そうだな」
俺の相槌に呼応するように、レッドは歯を食いしばる。
「俺には、お前がーーー」
レッドは先程とは打って変わり、怒鳴りつけるように吐き捨てた。
「死神に思えてならんのだ!」
引き金が引かれ、俺の脳天に弾丸が放たれる。
だが、銃弾は俺の額にぶつかると、弾かれるように地に落ちた。
「……き、貴様。もう人間じゃーー」
拳を握り締め、鳩尾めがけて死なない程度に殴り抜く。
レッドは全身から力が抜け、頭から地面へ垂れ堕ちる。
気絶したレッドを担ぎ上げ、コックピットから抜け出す。
そのまま砂の上に放り投げる。
ポケットから携帯を取り出し、チャティへ電話を掛ける。
「パイロットを回収した。今は気絶している」
『了解した。座標を送ってくれ。迎えに行こう』
現在地を送りながら問いかける。
「頼む。ところで、対策委員会の方はどうだ?」
『飛ばしていたドローンの映像からして、ホシノの奪還は完了したようだ』
「他に何かあるか?」
『空崎ヒナを含むゲヘナ風紀委員の数名がカイザーの私兵と戦っていた。さらに、トリニティも迫撃砲で対策委員を援護していたようだ』
「先生の差し金だろうか」
『恐らくな』
「了解。そろそろ切るぞ」
『あぁ』
通話を切り、再びコックピットの中へ入り込む。
中を手当たり次第に物色したが、手掛かりになりそうなものは一切見当たらなかった。
電卓。胡散臭いサングラス。レイヴンの火以前のベイラムの収支の書類。
恐らく、G3五花海の持ち物だろう。
レッドの私物はまた別のところにありそうだ。
だが、コックピット自体にも通信記録が残っているはずだ。
持ち帰るとしよう。
すると、車の走行音が聞こえてきた。
チャティが以前拾ったハーフトラックに乗って来たようだ。
『待ったか?ビジター』
「そんなことは無い」
レッドを担ぎ上げながら、コックピットを指さす。
「これも運びたいんだが、やれそうか?」
『問題ない。積んでくれ』
レッドをコックピットに投げ入れ、俺はその黒い箱を持ち上げる。
そして、車体を傷つけないようにそっと荷台に乗せた。
流石の俺でも一歩間違えれば転びそうな重さだった。
レイヴンの仮面を着け、コキュレットを一丁生成する。
『乗らないのか?』
「あぁ、さっきカイザーPMC理事を目にした。運が良ければ今から拾いに行けるかもしれない」
『やり過ぎるなよ。完全にカイザーを敵に回すわけにはいかない』
「大丈夫、少し話を聞くだけだ。恨まれるほどのことはしない」
『そうか、気を付けろよ』
離れていくハーフトラックを横目に、先程戦闘していた地点まで戻る。
墜落したヘリ、壊れた戦車、他にもオートマタが大勢寝転んでいた。
その中で、兵器の残骸に埋もれている奴がいた。
下半身が完全に下敷きになり、意識も失っているようだ。
そいつの面は記憶の中のPMC理事の顔と一致していた。
それに近寄り、軽く頬を殴る。
「起きろよ」
数発殴り、顔の形が変わってきた所で意識が戻り始めた。
「こ、ここは……」
「ようやく目が覚めたか。カイザーPMC理事」
理事は目が覚めた途端、下半身を引き抜こうと暴れ始めた。
だが、びくともしない瓦礫に悪態をつく。
「くそっ!」
暴れ疲れたのか、こちらの方へ顔を向けた。
「その仮面…貴様、独立傭兵レイヴンか」
「かのカイザーの理事に知られているとは、光栄だ」
「……まぁいい、そっちから私を引っ張れ」
「断る」
「何故だ!まさか貴様がーー」
「勘違いするなよ。あんたの身動きが取れないのも、顔が不細工に変形しているのも、俺は無関係だ」
「なら、貴様は何をしにここへ来た」
「……さっきの四つ脚のロボットについて聞きたい。話してくれるなら、助けよう」
理事は暫く俺を睨みつけたが、諦めたように口を開く。
「……分かった」
「早速だが、アレは一体なんだ?」
「ロボット関しては、あれのパイロットが持参したものだ。我々は何も知らない」
「ならパイロットについて聞かせてもらおう」
「奴についても我々は詳しくない。ゲマトリアの紹介で戦力として使っていただけだ。貴様が、独立傭兵レイヴンが関わる場合のみ手を貸す契約でな」
「そのゲマトリアというのは?」
「我が社と協力関係にあった集団だ。キヴォトスの神秘とやらを嗅ぎまわっている。私が知っているのは黒いスーツを着た、もやがかかったような男と、黄色い無骨な機械の頭部をした変人の二人だけだ」
「黄色い機械の男に関しては協力すらしていない」
黒いスーツの男は覚えがないが、片方は最近会ったブルートゥの姿と一致する。
(ゲマトリア……そいつらについても調べる必要がありそうだ)
他にも聞きたいことはあるが、カイザーそのものに関わる情報は吐かないだろう。
これ以上探っても警戒されるだけだろう。
「最後に一つ。俺のことはどこまで知っている?」
「貴様の様な生徒一人を調べるほどカイザーは暇ではない」
「……そうか」
理事を押しつぶしていた残骸を持ち上げ、スーツを掴んで引っ張りだす。
砂の上に投げ捨てられ、潰れた足を抑えている。
その場を後にしようと背を向けたが、一つ引っかかった。
「今、一つ嘘をついただろ」
振り返り、コキュレットを地面に伏している理事に向ける。
「……何のことだ?」
ヘッドブリンガーが現れた時、俺はレイヴン仮面を着けていなかった。
あそこにいたのはアビドスの生徒であるイツキだ。
だが、奴は現れた。
そして先程、理事が言ったことが事実なら、レッドがカイザーに手を貸すのはレイヴンが関わる場合のみだ。
少なくともカイザーは、烏羽イツキがレイヴンだと知っていた。
「俺のことは何も知らない。そう言ったよな」
照準を合わせる。
「次は精々マシな嘘をつくんだな」
「……ま、待て!」
理事が弁明のために口を開けた。
瞬間、引き金に指をかけ、脳天を撃ち抜いた。
コキュレットを仕舞い、廃工場まで歩き始めた。
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工場に戻ると、レッドはパイプ椅子に括られていた。
一方、チャティはハーフトラックに空気を入れている。
「帰ったぞ」
『無事で何よりだ』
「レッドの意識は?」
『まだ戻っていない。体が弱り切っている。どんな力で殴ればこんなになるんだ』
「ヘイローのない人間を殴るのは久しぶりだったからな。加減を誤った」
『それにしても。レッドガンの6番手とは、意外な人選じゃないか?』
「そんなことは無いさ。子供を巻き込みたがらない甘ちゃんはこいつくらいだ」
近くのテーブルの上には、レッドの私物と思われるものが並んでいた。
「これは、携帯か?」
『あぁ、パスワードは000000に変えておいた。確認してくれ』
携帯にパスワードを入れる。
中を調べてみるが、通信以外の機能は全て削られているようだ。
連絡先は、3つのみ。
一つはカイザー。
残り二つは例のゲマトリアだろう。
連絡先の名前はそれぞれ適当な数字が付けられている。
「下手に掛けるわけにもいかないか。誰に掛かるかもわからない上に、情報が得られるかも未知数だ」
『そうだな。だが、あちらから掛かってくる可能性もーーー』
トゥルルルル
突如、レッドの携帯が鳴りだした。
一瞬だけ画面を見る。
悩んでいても仕方がない。
スピーカーに切り替え、通話ボタンを押す。
すると、覚えのない声が聞こえて来た。
『……もしもし、独立傭兵のレイヴンさんですか?』
「どちら様かな」
『申し訳ありません。初対面でしたね』
少し間をおいてからそいつは答えた。
『私のことは黒服とお呼びください』
名前から推測すると、理事が言っていた黒いスーツの男だろうか。
随分と安直なネーミングだ。
「それで、何の用だ。レッドを返してほしいのか?」
『いえ、彼は私の管轄ではないので、お好きにしていただいて構いませんよ』
「それなら、なぜ掛けて来た」
『あなたに興味がわきましてね』
『キヴォトスの外の存在でありながら、神秘を宿した存在』
『子供、生徒でありながら、大人でもある。精神と肉体、人生経験。いずれにも乖離があるゆえの歪な存在』
『どちらも、不可解で興味深い』
「……そんなことはどうでもいい。本題に入れ」
『あなたの身体を調べさせていただきたい』
「断る」
『当然、依頼料は払います。あなたの望む額を用意しましょう』
『後遺症が残るような真似も決して致しません』
「断る」
『……理由を聞かせてもらえますか?』
「そんな怪しい話を飲むわけないだろ。お前らの様な素性も知れない集団を信用する方がおかしい」
暫くノイズが響くだけで、黒服は一言も発さなかった。
『…そうですか』
『まさか二度も連続で振られてしまうとは、私の提案はそれほど魅力がないでしょうか?』
「言うまでもないな」
(二度も?俺以外にも誰かを……)
『そうですか。ですが、我々はあなたと敵対したいわけではありません』
『それだけはお忘れなく』
通話は一方的に切られた。
コンコンコン
突然、誰かが工場のシャッターをノックする。
ジマーマンを生成し、シャッターの方へ向ける。
チャティに目配せし、遠隔でシャッターを開けさせる。
シャッターが開くと背をかがめながら入ってきた男がいた。
そいつに対し、チャティは俺より早く反応した。
『久しぶりだな。ブルートゥ』
「おぁ!チャティ。ビジターによみがえらせてもらっていたのですね!!」
奴の手にあるのはアタッシュケース一つのみ。
そんな状態でで俺達の前に現れた。
「実に喜ばしい……カーラの下であなたと働いた日々は、今でも大切な思い出です」
奴の頭部へジマーマンの照準を合わせる。
「よくここに顔を出せたな。ブルートゥ」
「ご友人もお元気そうで何よりです。旧友たちと一堂に会せるなんて……素敵だぁ♡」
「……レッドを取り返しに来たのか?」
「えぇ。彼には、まだしてもらいたい仕事がありまして。介していただけますか?」
「…素直に従うと思っているのか」
「いえ、プレゼントも無しにお願いしようなんて、不躾な真似は出来ませんよ」
「相応のものを用意したと?」
「はい、まずこちらを」
奴がアタッシュケースを開くと、中には兵器の設計図のようなものが詰まっていた。
「以前はC兵器の設計図でしたが、今回はルビコンに在った封鎖機構の兵器類です」
ブルートゥは書類を取り出し、営業のサラリーマンの様に捲し立てた。
「さらに、これらの自立兵器へのアクセス権。強化人間用デバイスの設置に関する書類も入っています。」
「……封鎖機構から盗ったのか」
「いえいえ、あそこの友人に譲っていただいただけですよ」
ブルートゥはチャティに書類の一部を渡し、確認させた。
チャティと目を合わせる。
「本物だと思うか?」
『ざっと見た限りでは、本物だ』
封鎖機構の自立兵器が自由に使えれば、できる仕事が大きく広がる。
レッドが情報を吐く保証もない上に、どんな情報を持っているかすらわからない。
しばらく頭を捻りながら考える。
そして、答えを出した。
「……いいだろう。そいつは好きにしろ」
「ありがとうございます!ご友人」
ブルートゥはケースをチャティに渡し、椅子にくくられたレッドを椅子ごと持ち上げた。
「では、これにて失礼します。また会える日を楽しみに待っています!」
ブルートゥが外に出ると、奴の周囲が影に覆われた。
そして、一機のロボットが降り立ち、ブルートゥを手に乗せて飛び去って行った。
あれは、奴の愛機。ミルクトゥースだった。
「相変わらず、信用できない男だ」
『……ビジター』
チャティが静かに口を開いた。
『疲れているだろ、今日は帰れ』
「レッドはどうするんだ」
『意識のない人間は尋問できない。起きるまでは俺が監視をしておこう。G6の目が覚めたら連絡する』
「……そこまで言うならお言葉に甘えさせてもらおうか」
工場から出る直前に、一度だけレッドの方へ振り返った。
そうして、俺はアビドス砂漠を後にした。
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621がアビドス砂漠を去る少し前。
レッドとレイヴンが戦った場所を、対策委員会が通りかかった。
セリカが周囲を見渡すと、そこら中に大量の兵器の残骸が転がっていた。
「すごいことになってるわね……」
「ところで、あとから来た2本脚のロボットは先生が呼んでくれたの?」
先ほど救出されたばかりのホシノは状況が呑み込めず、シロコに問いかけた。
「そのロボットていうのは?」
「ん、二日前に襲ってきた四つ足の兵器と交戦してたロボットがいたの。確かに、先生が何か呟いてから現れてた気がする」
先生ははぐらかすような、曖昧な返事をした。
”…うん。ちょっとね”
その返答に納得できていないシロコが先生に一歩近づくと、ホシノは優しく制止する。
「おじさん、あんまり意地悪するのは良くないと思うな~。先生も事情があって言えないんだろうからさ」
そう言って、再び歩き出す。
その途中、ホシノの足の裏に何かが当たった。
「……ん?」
彼女が足元に目を向けると、先程歩いていた場所には薬莢が一つ落ちていた。
ホシノは、それを拾い上げる。
薬莢など、どれもさほど変わらない。だが、それはキヴォトスでは見慣れない刻印のないものだった。
薬莢を眺めているホシノにシロコが手を差し出す。
「ホシノ先輩。ちょっと貸してくれない?」
シロコがホシノから薬莢を受け取ると、じっくり観察し始めた。
「……サイズからしてサブマシンガンか拳銃の薬莢かな。刻印がないってことは、普通の流通品じゃなさそう」
そのことを聞き、ホシノの中で一つの仮説が立った。
つい最近、出て行ったばかりの後輩。
市場では見慣れない、妙な拳銃を使っていた。
スマホをスピーカーに切り替え、アヤネに連絡を取る。
「イツキちゃんってさ、ハンドガン持ってたよね」
『えぇ、よく使ってましたね』
「あと、私達って使った薬莢も回収してお金にしてたじゃん。今月の分ってまだ残ってるよね」
『そうですけど……それが何か?』
「イツキちゃんの使ってたハンドガン。コキュレットって言ってたっけ」
シロコの手のひらにある薬莢を見つめる。
「あれの薬莢探しておいてくれない?」
『分かりました』
通話を切ると、シロコから薬莢を受け取った。
「シロコちゃん」
「ん?なに、ホシノ先輩」
「また6人で集まれたらいいね」
少し間を開けてから、シロコは答える。
「…うん」
先生と対策委員会は再び歩き始める。
彼女らが守った学校へ。
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時刻は夜の12時を回り。D.U.の街並みもすっかり暗くなっていた。
そして俺の目前には、シャーレのオフィスがそびえ立っている。
建物に寄り掛かりながらスマホを弄っていると、聞き覚えのある足音が響いてきた。
「…わざわざ呼び出した理由を教えてもらおうか」
”来てくれてよかったよ。イツキに渡したいものがあるんだ”
先生は持っていた紙袋から衣服と一枚の紙をこちらに差し出してきた。
”ホシノからだよ。渡すように頼まれててね”
「……俺はアビドスを辞めると伝えたはずだ」
”対策委員会の委員長として自主退学は認めないってさ”
衣服と紙を受け取る。
それは、アビドスの制服と鳥羽イツキの名が刻まれた学生証だった。
「用件がそれだけなら。もう帰るぞ」
踵を返し、借りている一軒家まで帰ろうと先生に背を向けて歩き始める。
先生は後ろから声をかけた。
”みんなからの伝言だよ。「いつでも帰ってきていいからね」だって”
歩みを早め、帰路に就いた。
その頃、621のPCには一通のメールが届いていた。
区切りいい感じですが、まだまだ書くつもりです。
感想、評価、お待ちしています。
この作品を読む前に、AC6とブルアカをどの程度履修していましたか?
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両方とも履修済み
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AC6は履修済み、ブルアカは未履修
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ブルアカは履修済み、AC6は未履修
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どちらも未履修
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片方または両方を途中まで