ARMORED CORE6:Re.life in Kivotos 作:トリミングチキン
申し訳ございません。
俺は工場を制圧した後呼んでおいたヒナ達に拘束され牢にぶち込まれた。
周囲には見張りにが何人かいるのみだ。
「なあ。そこの、俺はいつまでここで過ごさなくてはならないんだ」
見張りはそっと目をそらした。顎から冷汗が垂れている。
「ハーッハッハ‼そんなに私と同じ牢はいやかね!」
元気に溢れた声が牢屋内に響く。
俺と同じ牢に入っている彼女は鬼怒川カスミ。ゲヘナの中でも一二を争そう犯罪集団である、温泉開発部の部長。
無視し続けているというのに、絶えず話しかけてくる。
「無視かね。悲しいな私の部員たちをコテンパンにしたのだから少しくらい付き合ってくれてもいいんじゃないかね?」
「お前と話すと惑わされるから口をきくなとヒナに言われている」
「ほう。君は風紀委員長を呼び捨てにしているのか」
「ふつうは役職単体か名前を付けて呼ぶのだが。今まで指摘されなかったのかね?」
「…そういうものなのか、いいことを聞いた。感謝しよう」
「……ふむ。君は少々珍しい存在のようだね」
彼女は俺の全身を舐め回すように見回す。
品定めでもしているかのように。
「ところで、この前の温泉開発でうちの部員100人を瞬く間に倒した生徒がいるのだが。君ではないかね?」
「だとしたらなんだ」
「いやーだからどうというわけでは無いが。私はほんの小さな恨みも決して忘れないたちでね」
一見親しみやすい人物のようで腹のうちはわからない。言葉巧みに人を惑す、そんな人物のように感じる。
ブルートゥにも通ずるところがあるかもしれない。
「…くだらない脅しをするな。お前は報復など率先してやるような人間ではないだろ」
「それに俺に報復するのはコストに見合わない、イオリあたりならまだしも…」
「風紀委員長に私の性格を聞いたのかね」
「いや、違うが」
「ははっ、ハーハッハッハ‼」
「驚いた。この短時間でそこまで私の本質を感じ取るったのか!気に入った!あの件は水に流そう」
カスミは飛び出している袖で俺の背中を笑いながら叩いた。
面倒ごとは避けられそうでなによりだ。
コツコツ
「烏羽さん。牢を出てください。ヒナ委員長がお呼びです」
階段を下りてきた風紀委員が言う。
「またな。カスミ部長」
牢から出てヒナ委員長の執務室に向かう。
扉をノックし中に入る。
コンコンコン
「失礼します」
付き添いの生徒のノックと共に入室すると、相変わらず山のような書類を片付けているヒナの姿がそこにはあった。
「詳細はイオリと便利屋から聞いたわ」
「…俺は事の詳細をいまいち把握できていないんだが、あそこは何の研究をしていたんだ」
ヒナは少しの逡巡の後に答えた。
「……あそこは雷帝の遺産に関する研究をしていたの。彼女が残した設計図、と言ってもメモ書きに近しいものだったそうだけど」
「働いていた人たちはカイザーの子会社だと言っていたけれど、あの工場とカイザーを結びつける証拠は一切上がらなかった。こんなところね」
「他に聞きたいことはある?」
正直、出てきている固有名詞が分からない。
それゆえに、質問の使用もないのだが、強いて言うなら……
「その雷帝ってのは何なんだ?」
「………知らないなら、きっと、その方が良い」
ヒナは神妙な面持ちで、言った。
「まぁ、いい仕事はできたってことでいいのか?」
「えぇ、大手柄ね。でも、その過程であなたが多数の風紀委員にけがを負わせ、便利屋の手錠を外した」
「これは反省文じゃすまないわよ」
「わかっている。責任をとって風紀委員は辞める」
ヒナが少し眉をひそめたような気がした。
「…これからのことは決めてるの?」
「独立傭兵として日銭を稼ごうと思っている。まあ経験はあるから問題はない。それからはキヴォトスを見て回るつもりだ」
「ゲヘナは気に入らなかった?」
「いや、気に入ったさ。楽しいひと時だった」
「そう。あと数日は特別牢ということだから、その後にするといいわ」
「あとこれは独り言だけど。今日の22時以降は牢から南に人はいないわ、あと工場の近くにあった車も牢の近くに置いてある」
俺は部屋の外の見張りと牢に戻る。
その途中、見覚えのある銀髪がこちらに向かっているのが目に入った。
「イオリ!」
その呼びかけに答える者はおらず、彼女は俺の横を通り抜けていった。
「……すまなかったな」
そう呟き、牢屋へ歩み出した。
案内された牢には便利屋4人組が入れられていた。
先ほどの発言と言い、牢屋の面子と言い、促されてるだろうな。
俺を見るアルの顔は何か言いたげだった。
「話と違うじゃない!」
「大丈夫だアル社長。すぐに出してやる」
牢に入り無言の時間が続いた。
そして見張りが居眠りを始めたところで4人に話しかける
「22時にここを脱獄する」
「え‼何言ってるの無理に決まってるじゃない!」
アルが大声で驚くのをムツキが抑える
「アルちゃんシーッ。一旦話だけでも聞こうよ」
「22時以降は南方向に人がいないことを確認している」
「俺なら力ずくで牢を破れる。見張りを殴り倒しすぐそこの私物保管庫から銃を取り出して俺の拳で壁を破壊する」
「外に置いてある車に乗ってお前らの事務所まで行く」
「なんて作戦よ!そんなのできるの?」
「大丈夫だ」
「だが、別に俺が勝手にやるだけだから。ついてこなくてもいいが、どうする?」
「社長せっかくだし乗らない?その作戦。本当に牢を壊せるならそれでいいし」
「なら今のうちに寝とけ。何があるかわからんぞ」
「ああもう、わかったわよ!」
アルは目を閉じて寝転がった。カヨコとムツキも壁によっかかって眠りだした。
ハルカは天井に張り付いている。狭い牢屋で足の置き場も少ないから助かるが…
見張りからは見られてなさそうだが疑われるかもしれないからやめてほしい。
時計の針が10を刺した瞬間に立ち上がり、檻を思いっきり掴み、引っ張り抜く。
「なっ。はっ、何をしt「黙ってろ」
見張りを殴り倒し奥の私物保管庫のドアをけ破る。
「便利屋!」
「まさかほんとに牢屋を壊しちゃうなんて…」
「シオンちゃんとんでもない怪力だね~」
「ハルカなんで天井張り付いてるの。行くよ」
「すみませんカヨコ課長。すみませんすみません」
俺がすぐにコキュレット、ハリス、ジマーマンとカードを回収し牢屋の壁を蹴り壊す。
牢の近くに俺が出したハーフトラックがあった。
「お前ら車に乗れ、このまま一気にゲヘナの外に行く」
「じゃあなカスミ部長」
隣の牢のカスミに別れを告げるだけ告げ、車に乗り込む。
「フルスロットルだ‼飛ばすぞ!」
出せる限界の速度で、ゲヘナの校内を一直線に走る。
もうすぐ校門だここを出ればもう追いつかれることは」
突如暗闇に人影が見えた。
キキーッ
車を急停車させる。
「何かあったの?」
「カヨコ課長ハンドルを握っておけ。あいつと話してくる」
「いいけど。あいつって…」
問いかけて来たカヨコにハンドルを預け、車から飛び降り校門の前にいた人物に近寄る。
「何か用か?ヒナ委員長」
「ようというほどではないけど。これを渡したくて」
ヒナは服を1着差し出してきた
「これは昔私が使ってたんだけど。少し大きくて使えなかったのだけれど、あなたならちょうどいいんじゃないかと思って」
「なぜわざわざこれを?」
「餞別よ。これまでの仕事の報酬だと思ってもらってもいいけど」
「昔、ある人にもらったものなの。大切なものだけどサイズが合わないから、せっかくならあなたに使ってほしくて」
夜の闇のように黒いコートだ。差し色に赤い模様、胸に白い羽が縫われている。
「よくわからないが、ありがとう。」
コートを受け取る
「短い間だったが世話になった。この恩は忘れない。何かあったら連絡してくれ」
車に乗り込む。
「カヨコ。出せ」
車が再び走り出し校舎が徐々に遠ざかっていく。名残惜しさのようなさみしさを感じる。
「あなたが話してたのヒナだったよね。何もらったの」
風紀委員長がわざわざ出て来たのだ、疑っているのだろう。
「ただの服だ、怪しいものじゃない。それにヒナ委員長なら罠を仕掛ける意味もないだろ」
「それもそっか。それで目的地は事務所でいいの」
「構わない」
事務所に着くと車を降りて全員で事務所でくつろぐ。
「ふぅ~疲れた~。もうこんなことはなければいいんだけど」
「でも私は楽しかったよ。シオンちゃんもそうでしょ?」
「あぁ、いい経験だった。まあ俺は風紀委員をクビになったけどな」
「まぁいいわ、報復もできたし。ハルカ何か飲み物買ってきて」
「はっはい。ただいま!」
「ところで相談なんだが。俺は独立傭兵になろうと思っているんだが、なにかアドバイスはないか」
「うーん。そうねとりあえずこのアプリに登録してみたら」
アルが見せてきたスマホ画面には『マークメイト』というアプリが映し出されていた。
傭兵のMercenaryと仲間のMateを混ぜたのだろうか。
「これならばら撒きの依頼ならすぐ確認できるし、依頼を受けた相手といつでも連絡できるわよ」
「とりあえずこれに登録すればいいのか?」
「そうよ。あと電話番号とメールを登録して。名前とプロフィールを入力すればいいわ」
「名前は本名も多いけどコードネームを考えたりすることも多いわよ」
「名前か…どうしようか」
「はいはい!ムツキちゃん考えたい!」
「いいぞ。…そうだ今手持ちに3万ある。これで便利屋68に依頼する」
「三万‼⁉」
アルの目がいきなり輝きだした。
「その依頼受けるわ!完璧な名前コードネームを考えてあげる」
俺はアルたちに任せソファで寝ることにした。
3時間後
アルに肩を揺らされ目が覚めた。
「それでいいコードネームはできたか?」
「もちろん。いい名前ができたわよ。感想を聞かせて頂戴!」
「あなたのコードネームは『レイヴン』よ!」
目をキラキラさせながら俺の反応を期待しているようだ
「…………最高だ」
どうやら俺はこの名とつくづく縁があるらしい。
ルビコンのことをいやでも思い出してしまう。
兎にも角にも、これで傭兵登録は済んだ。
便利屋に別れを告げ車に乗り込み夜の街に繰り出た。
621にはやはりレイヴンかと。
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