連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの七海建人と申します。 作:馬鹿め!そっちは本体だ!
最後中途半端になっちゃた。ごめんちゃい。書き直しました。
誤字脱字報告ありがとうございます。なんだかんだ10話目まで来ました。
日間ですがランキングにも乗るようになってモチベは上がっています。
アビドス前の下準備というか補完のお話はまだ続きます。ゲヘナとミレニアムの三大学園をナナミンに回ってもらったら終わる手筈です。それでも長くなりそうなので、トリニティみたいに1学園で2話使うことになるかもしれませんが……
深掘りはしませんが、SRTやヴァルキューレとも関係を成立させています。その辺りの流れも本編で整合性がとれるように作る予定です。ナナミンならアビドスという大仕事に手を付ける前に、外回りと事案の鎮静(本人も参線)でシャーレの実績を堅実に重ねていくかなという解釈でやってます。
この世界でのシャーレを運営しているのはプレイヤーとしての”先生”ではなく”七海建人”なので、それ相応の読み応えが提供できるように書いていきます。
このお話の時点ではまだ、シャーレの活動開始を広報していないのでアヤネからの嘆願書が届く時期もずれています。
アビドス対策委員会編はまだまだお待たせしてしまいそうです。
ブルアカがどんな背景でどんなあらすじかは知っているのですが、未プレイ勢なのでストーリーを叩き込む時間が必要なため投稿頻度はそこそこ落ちます。
本編終了後の時間軸を描いたミニストーリーでお茶を濁す時もあるかもしれませんがご了承ください。私が全部ストーリーを読み終えた後で整合性の取れない部分がここまでの話であった場合は適宜修正します。
ストーリーだけ書いてくれたまとめサイトがあれば再構成も執筆もすぐにできるんですが、楽して良いものは書けないというのが私の信条と矜持なので頑張らせていただきます。でもあったら感想とかで教えてほしいです。これからも良質なナナミンを解像度の高い状態をお届けしていく次第でございます。
「シャーレのお仕事も安定してきましたね!先生!」
「ええ。あなたのおかげですよ、アロナさん。」スッ
「わあい!いちごミルク!ありがとうございます!」
七海の先生という仕事が板に付くようになったのと同時に、アロナの秘書としての能力も日々向上しつつあった。*1いちごミルクやお菓子などで一喜一憂する子どもらしさは健在だが、十二分に七海の補佐の役割をこなせている。
最初は、生徒たちよりも幼い印象を与える子どもに労働をさせることに否定的であった七海も、今では最上級の敬意を持ってアロナに全幅の信用と信頼を置いて共に業務に取り組んでいた。
それこそ、アロナの存在や働きぶりを自分以外が認知できないことを残念がるほどである。*2
「アロナさん。本日の予定は?」
「はい!今日はトリニティ総合学園の訪問ですね!ハスミさんも先生の来訪を楽しみにしているとのことです!」
「ありがとうございます。まだ少し早いですが出発しましょうか。RABBIT小隊の皆さんに差し入れも渡しておきたいので。」
「分かりました!私たちの分のお弁当はちゃんとお守りしておきます!」
「頼りになります。」
七海は七海でちゃんとその日の業務内容を把握しているが、確認とアロナからの秘書らしいことをしたいという要望を踏まえた上でアロナに聞き返すようにしている。
アロナが独自に
画面にサンドイッチの入ったランチボックスを近づけ、吸い込まれるように収納されたことを確認すると七海はシッテムの箱をカバンにしまった。
「良いカバンが見つかるまではしばらくこれで我慢してください。あなたごと落としてしまうよりマシですから。」
「アロナちゃんは周囲の監視カメラからでもリアルタイムで先生を見守れるスーパー秘書なのでモーマンタイです!先生も大船に乗ったつもりで突っ走ってください!」フンス!
「心強いですね。あなたのおかげで安心して町を出歩けますが、くれぐれも無茶はしないでくださいよ。」
カバンに押し込めてしまうことを謝罪する七海に、アロナはむしろ自信満々にアピールした。
キヴォトスで無類のハッキング能力を誇るアロナにとっては監視カメラなど自分の目や手足のように利用できるという発言に、最初こそ七海も困惑と驚愕でいっぱいいっぱいだったが、今では無茶をしないよう軽く言っておくだけに収まっていた。キヴォトスの土地柄に適応できたというべきか、毒されたと言った方がまだ近い慣れ方をしているようだ。
「ワカモさん。留守の間は任せましたよ。」
「はぁ~い♡!いってらっしゃいませあなた様~っ♡」
「行ってきます。冷蔵庫のものは好きに使って構いませんよ。それと定時になったら上がってください。」
晴れて正式にシャーレの部員となったことで身分を保証された狐坂ワカモからのラブコールのような熱烈なお見送りを背中に、七海はシャーレから出発した。
「今のやり取り新婚さんみたいでしたねっ♪」
「その言い方やめて下さい。」
アロナの揶揄う声色の言葉に七海は胸焼けしたような表情と声で答えた。
今日のワカモは、SRTと接触させたら何があるか分かったもんじゃないという理由でシャーレでお留守番しながら書類をこなすお仕事である。
■
「おはようございます。体調を崩していたりはしていませんか。」
「先生。早くからお疲れ様です。RABBIT1からRABBIT4まで全員健康状態に異常ありません。」
「それならよかった。こちらが今回の”支援物資”と”納品書”です。重たいので注意して運ぶようお願いします。」
「分かりました。皆さん、運びますよ。」
子ウサギ公園。七海は整列した4人に挨拶をしてミヤコからの状況報告を受けた後、自身の乗ってきた車のトランクを開けてミヤコたちと共に物資を運び出した。それなりに重いものが数多くあったが、ミヤコたちにとっては嬉しい重さであった。
「う~ん、やっぱ無いか~。先生でも弾薬とか爆弾とか最新のすっごい機械とか持ってきてくれるのはアブなすぎる感じ~?」
「モエ!失礼だぞ!……悪いな先生。モエがワガママ言って。」
「構いませんよサキさん。最新型とまでは行かなくても、直で装備品や武器などをお渡しできないのは私としても歯痒いところですから。」
「いやいや~?シャーレを通して輸入してもらうって体で部品を手に入れて組み立てちゃえばコッチのモンだからっ、さっ!先生にはただでさえ危ない橋渡ってもらってるんだし、贅沢は言えないよね~」
「う、うん。元々私たちは捨てられたも同然だったのを、先生が拾ってくれて今があるから……」
七海がキヴォトスに赴任しシャーレの先生に着任する以前。RABBIT小隊の4人が所属していた連邦生徒会長直属であったSRT特殊学園は、連邦生徒会長の失踪に伴う責任者の不在といった事態により組織の存在そのものの意義が疑問視され、連邦生徒会内での協議の果てに閉鎖された。
SRTに所属していた生徒はヴァルキューレへの編入という形で身分が保証されていたが、それに納得がいかなかった一部の生徒はそれを拒否。ミヤコたちのように公園を占拠して抗議活動を続けるものや、連邦生徒会に襲撃をかけて行方を眩ませたミヤコたちの先輩に当たる生徒たちである。
七海は”シャーレと
現在、RABBIT小隊のメンバー4名とベースキャンプはシャーレの顧問である七海の手によって保護観察という形で認められている状態だった。
「ええ。一歩間違えば本当にテロリストとして取り締まられていた私たちの身分を保証して、その上仕事を回してくださる先生には感謝してもしきれません。」
「SRTとあなた達の現状に思うところがあっただけです。」
七海はとある事情から公人としてヴァルキューレと連携し、自らも前線で戦いながらRABBIT小隊の4人を制圧したことで最初こそ最悪の一言に尽きる出会いだった。そこからは七海も私人として対応し、視野が狭まり余裕のなかったRABBIT小隊を冷静にさせた。紆余曲折あって今は支援を行い、それを受け入れられているという状況であった。
シャーレの生徒として登録されていないのは、七海に対する物言いや態度という私情では決して無かった。七海が所属し顧問を務めるシャーレもまた、未だにどの学園とも提携が取れていない宙ぶらりんで不安定な状態の権力だからである。
責任不在の精鋭部隊という武力が、不透明で詳細の分かっていない超法規的機関に収まっている状況は誰の目に取っても不安要素になり、それに所属しているミヤコたちの立場もより危ういものとなってしまうからである。
『SRTの再建に関しては私も方法を探っている最中です。』
『上の意志に振り回される気持ちは私も痛いほど味わいましたから。』
『あなた方の代では叶わないかもしれません。ですが、それでも再建できる可能性は充分にあります。』
『無理強いはしませんよ。私の手を取るかどうかはあなた方次第です。』
『シャーレに入部させることが一番手っ取り早く簡単です。ですがまだ実態の知られていない超法規的機関であるシャーレに、それと同じ権限を持っていた学園の生徒であるあなた方を加入させることはかえってあなた方にとって悪手になります。』
『今の状態でできることは、シャーレによる保護観察下という体で一応の身分と場所の保証をし、最低限の支援をすることだけです。グレーゾーンですが、他にもやりようはあるのでそれは追々説明します。』
『今はとにかく、
「……」ギュッ
ミヤコは公人としても、私人としても。事実に即し己を律するを信条とする七海に対して深い尊敬の念を抱くと同時に。自分たちに向き合い、あるだけできるだけの手を尽くしてくれるような大人であった七海に対し、悪辣な言葉で拒絶したことを未だに後悔しているようだった。
「足りなくなったものがある場合はまた依頼してください。」
「りょうか~い。先生も何か欲しいウイルスとかハッキングしてほしい相手とかいたら私の方にどしどし依頼してきてね~。」
「メンテナンスだけお願いしますね。こちらでもチェックはしましたが、管理できるのはあなただけなので。」
「くひひ~♪私の責任重大だな~♪」
「マジで今はお前が頼りなんだからな!?本当に問題起こして先生の立場が危うくなるようなことは本当にするんじゃないぞ!?分かってるよな!?」
「も~ウルさいな!わーってるよサキ!」
七海はモエを通じてシャーレのセキュリティ強化やマクロの構成を依頼しており、その報酬を弾薬や武器のパーツとしてRABBIT小隊に代わって購入・提供していた。直接の武器の支援は七海だけでなく4人の立場も危うくするからである。
破滅願望の傾向があるモエも、七海の真剣さと慎重さにその性は鳴りを潜めているようだった。
「せ、先生も困ってるから喧嘩しないで……特にモエちゃん……」
「私はこの後用事があるのでひとまずはこの辺で……ミユさん、どうも。後はよろしく頼みますね。」
「はい。先生、どうかお気をつけて。」
「ありがとうございます。」
七海は物資を運び終わると、ミユが預かっていた上着とカバンを手に持って4人に背を向けて駅へ歩いて行った。
七海自身、RABBIT小隊の4人に接触したことは早計だった自覚はある。
しかし、実績を積む以外の理由の方が大きかった。
連邦生徒会長に認められた先生である自分が真の意味での彼女の後継にあたり、それに値するだけの権限を持つ自分がSRTを率いるべきだったという思いと、今の自身の無力さ。
それ以上に七海は、連邦生徒会の判断に振り回されて路頭に迷ってしまった4人を、
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ドンッ!!
「きゃっ……!?」
「へへっ!油断してたなお嬢様ァ!鞄はあたしらのもんだ!」
「流石トリニティ、高く売れそうな鞄だぜ!」
「ハンドガン2丁も入りそうにない鞄が何十万だからな!ありがてえことこの上無え!」
トリニティの一般生徒たちがヘルメットの被った集団によって鞄や財布などを通りすがり様に奪われる窃盗事件が起きていた。
お嬢様学校であるトリニティの一般生徒の大半は銃は持っていても戦闘はからっきしであり、そういう点では常にそういった不良集団に狙われている。今回もそれが理由であった。
「そろそろ引き上げちまおう!そろそろ正実の奴らが出張ってくる頃合いだ!」
「ああ、だが最後に……そこのオッサン!良いスーツ着てんじゃねえか!」
撤退を考えていた一味であったが、最後に背広姿の大人に目を付けたようだった。
「運がねえなあ……アタシらに目ェ付けられるなんてよお。」
「……お互い運が悪いようですね。」
「冷静じゃねえか。おとなしくしてりゃ手荒な真似は……ん?お互いィ?」
ダッ!!
背後を向けていた大人は想定外の速度で武器を取り出してヘルメットの一味に突撃した。
「なっ!?テメ……!」
ズバッ!
パラパラッパラ……
「銃がっ……!ぐふっ!?」ドッ
「あばっ!?」ドッ
「ひんっ!」ダンッ
引き金に指を置く間もなく銃身が切断されて内部の部品やバネがバラバラと地面に散り、呆気に取られている間に当身を受けて全員気絶。一瞬による制圧だった。
その大人はナタを一文字に振って細かい破片を払い落とすと、それを背中にしまってスーツのボタンを留めた。
「フー……治安が良い方だと聞いていたんですがね。」
ため息交じりにメガネを外した瞬間、黒い制服に身を包んだ群団が走ってきた。
「そこのスーツの大人の方ー、大丈夫っすかー?」
「ええ。問題なく制圧しました。」
「ならよかったっす!……って、はい?」
「ひったくり犯のことでしょう、先ほど襲われたので正当防衛で倒しましたが。」
黒い翼と黒い髪の糸目の生徒が声をかけると、その大人は横にずれて背後の様子を見せた。
その光景は指文字を書くポーズで倒れたヘルメットを被ったスケバンたちが鞄や財布、金品を下敷きにしている死屍累々の様子だった。
「なんか銃真っ二つになってない?」「目ぐるぐるになって気絶してる……」
「ええ……?何者なんすか……?」
「まずは自己紹介でしょう。」
そう言うと目の前の大人は、姿勢を正してただでさえまっすぐな背中をさらに伸ばして生徒たちに正面を見せた。散らばっていた盗品を回収していた者も含め、制服の集団はいつの間にか一列になって背筋を正していた。
「皆さん初めまして。私は連邦生徒会、独立連邦捜査部”S.C.H.A.L.E”の七海建人と申します。シャーレの顧問と、ここキヴォトスにおける先生の役職を務めさせて頂いています。」
「トリニティ総合学園正義実現委員会の2年生、仲正イチカっす!いやー先生だったんすね!ハスミ先輩から話は聞いてます!なんでも戦車を拳で破壊したとかなんとか……信じらんなかったんですけど、そこのヘルメット団の様子を見るとホントだったみたいっすねえ。」
「若干戦闘には心得がありますが、戦車など対物以外に関してはあなた達のようには戦えないのでハスミさんから聞いたほどのものではありませんよ。」
「前線張って指揮出しながら大半倒したって聞いたんすけど……?」
戦車を破壊したことは否定しない七海の謙遜に、イチカは若干引き気味に会話を続けた。
ハスミの報告を聞いていたイチカの部下たちは七海をめちゃくちゃ怖いやばい大人のように誤解していたようだが、目の前で自分の先輩と話している七海を見るうちにその認識は変わっていったようだった。
「ハスミ先輩よりおっきいねー」「スーツが似合うかっこいい大人ってこんな感じなんだねー」「めっちゃ緊張しちゃったけどいい人そうだねー」
「こらこら、みんな先生に失礼っすよー?」
「構いませんよ、得体の知れない組織の得体の知れない大人である自覚は充分に持っているつもりですから。」
「そ、そこまでは思ってないと思うっすよ?」
「まあそれは置いておいて、です。本日はこちらトリニティの方でお世話になりますので、よろしくお願いしますね。」
「そんな堅くなんなくったっていいっすよ!私たちが責任を持って執務室まで案内するっす!みんなー、先生を護衛するっすよー!着いてきてくださいっす!」
「「「「「はーい!!」」」」」
「むしろ私があなた達を守る立場なんですが……まあ道中はお任せします。」
「さっきは先にひったくりを制圧してもらいましたからねー、名誉挽回っす!」
暴言じみた自虐をする七海にフォローを入れながらイチカは部下たちに指示を出して行進を開始した。自身を取り囲うように陣を固める正義実現委員会たちに七海は不本意なようだったが、とりあえずは好きにさせることにしたようだ。委員たちも張り切っているようだ。
こうして七海と正義実現委員会一向はトリニティの校舎へ向かっていた。
道中、一般生徒への恫喝や小競り合いと何度か鉢合わせるも、汗の1つもかかずに時に単独で制圧・解決するその戦闘力と、イチカや委員たちへの的確な指示によって勝利したその立ち回りによって、七海はイチカと委員たちによる信用と信頼・尊敬と畏怖の念を勝ち取っていた。
装甲車を実際に破壊した時には驚かれるどころか歓声が上がっていた。
「先生強すぎない?」「戦いながら指揮もできるしやりやすかった!」「その上でちゃんと私たちのことも心配してくれるのすごく優しいよね」「わかる。素敵だよね」
「……かっこよすぎるっすね。ずるいっす。」
■
「いや~、思ったより色々あったけど先生のおかげで怪我人ゼロっす。私たち正実の立つ瀬がないっすね~マジで。」
「弾を受けたら下手すれば死ぬので、そこまで前線を張る能力は無いですよ。皆さんがいなければもっと長引いていますし、指揮に関してもまだまだです。」
「はー、これが大人の余裕ってヤツっすか?私はそこまで冷静に色々考えるの難しいんで尊敬するっす。純粋に見習いたいっすねえ……」
「大人である私にはあなた達を自分より優先する義務があります。それが私に、先生として与えられた役割ですから。あなたもよくやっていますよイチカさん。そこまで気負わずともいいでしょう、あなたはまだ、子供なんですから。」
まだパトロール中のハスミたちを待ちながら、七海とイチカは待合室で紅茶を飲みながら向かい合って駄弁っていた。イチカは七海の戦闘技術とそれを底上げする力と、自身を含めた委員を適切に無駄なく動かしたその指揮力に感服すると同時に、
ある程度自身の能力の高さを把握している上で、失敗した時に感情をコントロールできなくなる自分を知っていて嫌悪しているイチカにとって、七海の振る舞いは実に理想的に見えていた。
そして、後天的に獲得した世話焼きの気質で七海の懐の広さと優しさを察した上で、嫌味のような愚痴をこぼしてしまったことにまた自己嫌悪に陥っていた。
それを理解した上でかは知らないが、自分を肯定してくれる七海に居心地の良さを感じていた。
「……失敗して滅茶苦茶になって、もう終わったーってヤケになって癇癪起こすのは、子供だからで済まないし、ダメじゃないっすか」
「そもそも仕事すること自体クソですし、ちょっとミスしただけで滅茶苦茶になるその状況の方がもっとクソです。トリニティに限らずですが、キヴォトス全体がもう色々と終わってるところが多いですよね。」
「ぶはっ!?」
七海の突然すぎる、主語がデカすぎる暴言の数々に、自己嫌悪に陥ってイチカは思わず噴き出してしまった。あまりに先生”らしい”姿とはかけ離れた、先生としてどうかと思うような投げやりすぎる言葉の数々はイチカのツボに入ったようだった。
「ひ、ひひひッ……!せ、先生ってそういう冗談も言うんすね……?」
「先生としてここに来る前は一般企業で働いていたこともあるんですが……まあ長くなるので省きますか。色々あって金のことばかり考えて、逃げることばかり考える日々でした。」
「逃げるって、何かもう全部放り出してどっかいこーとか、そんな感じっすか?」
「概ねそんな感じです。今思うとあの時の自分は冷静なようであって、何もかも全部自暴自棄だったんでしょう。それを踏まえて、死んでも変わらないなという価値観として、私の中では労働はクソという結論になりました。」
どこか遠い目で額に手を置きながら天井を見る七海に、イチカは自分を見ているような感覚を覚えた。それと同じくらい、目の前の大人がどのような軌跡を歩んできたのか計り知れなかった。
「イチカさんがどのような事情と理由で思い悩んでいるかは分かりませんが、自暴自棄になってしまう気持ちも、その感情も理解できます。ここで先生になる前にも思い悩んで追い詰められた子供の姿を見たことがありますから。」
「はは……気遣ってくれてありがとうっす。ここに来る前にも別に生徒さんというか、受け持ちの子がいたんすね。」
「成り行きで見ることになった後輩ですよ。先輩に当たる人の教え子で生徒だったんですが、また色々あって押し付けられました。」
戦闘中でも見せなかった、七海の苦虫を食い潰したようような表情はイチカにとってはまた新鮮に見えた。無機質でそっけない印象なようで、案外感情豊かな七海という人間はイチカの虚無的だと思っていた興味を刺激した。
「その子もあなたと同じようなことを言っていましたよ。子供だから誰かを助けられませんでした、というのには納得がいかない、イヤだと。」
「……その子ってのは、すごく立派だったんですね。私はそう思った上で抑えらんないんで尊敬するっす。」
「心持ちというより彼にとっては決意のようなものだったのでしょう。彼も色々と難儀で受難も多かったでしょうから。そのときの我々は、ある意味ではキヴォトス以上の過酷な修羅場にあったので。」
「そう、なんすね……」
語る七海の眉が寄って、思い出したくないような表情を浮かべるのを見てしまったイチカは色々聞いたことを少し後悔し、それ以上に申し訳ない気持ちになった。七海はため息をつくと、今度はイチカの方を向いて話し始めた。
「イチカさん。酷なことを言うようですが、人生はどうしようもないことと終わっていることの連続です。それから目を逸らし続けることも、避けて通ることも恐らく難しいでしょう。」
「……っすよね。先生が言うんですし、まあ分かってはいたんですが……」
「ですがそれは大人になってからです。」
諦めたような表情で細めていた目を開くイチカの嘆きを否定するように七海は続ける。
「幸い
「で、でもそれじゃあ正義実現委員会として私は……!」
「あなたも組織の人間として色々しがらみがあるのでしょうが……子供のうちは責任についてずっと考えている必要はそもそもないと思いますよ。その上であなたには真面目すぎて色々と背負い込みすぎるきらいがあるようですし……」
責任感を持つことは確かに大切ですがと続けた上で、イチカに語り続ける。
「どの道どうしようもない状況になったら誰が暴れようが同じでしょう。」
「それは確かにそう思うっす。」
「「……ふっ。」」
「……ひひっ。」
「ひひっ、ははっ、あはは……!アハハハハッ!」バンバン
イチカは七海が真顔で放った言葉に強く同意して顔を合わせた後、堪え切れなくなったのか吹っ切れたのか大声で腹を抱えながらソファーを叩いて笑い出した。
「ひひっ……!らしくね~!も~!いや、マジでそうなんすけど~!そうじゃないっていうかっ……!ひひっ、アハハハハ!」
ソファーをひとしきり叩き終えたイチカは息を深く吸って大きなため息をついた。
「あー……先生も結構ヤンチャっすね。その、誰が暴れても一緒ってやつ……!ひひっ!」
「ここはそういう意味で融通が効くようですし、無理に規定通り動く必要もないと思っただけです。随分とウケたようで何よりです。」
いきなりの豹変に驚くも、これが彼女の素なのだろうと見守ることにして腕を組んだ。
「そりゃそうっすよ!だってそんなこと先生が言ったらおしまいじゃないっすか!」
「どのみち治安は終わってるんですから何言ったって同じでしょう。」
「たはー!その顔でそこまで言っちゃうって、よっぽどっすねー、ほんっ、と!」どすん
「うわっ。どうしたんですか急に。」
ひとしきり笑い終えたのか、イチカは立ち上がって向かいにいた七海の真横に座ると、体重をかけるようにして七海によりかかった。七海は驚いた顔で若干顔をしかめたが、押しのけることはしなかった。吹っ切れた様子のイチカに免じて、ある程度は許すことにしたらしい。ため息は隠さないようだが。
「はー……マジで初めてっすよ。ここまで心の内話すのも、ここまで色々聞いてもらったのも、笑わせてもらったのも含めてぜーんぶ。」
「話した甲斐があったようで何よりですが……だいぶ吹っ切れたようで。」
「っす!なんか色々思い詰めてたんすけど、先生がおもろいこと言っちゃうから全部笑い話になっちゃったんすよ!ひひひっ!」
だいぶ心から笑うようになったイチカに、七海も安心したような笑みを浮かべた。
「あっ!先生また笑ったっすよね!?」
「イチカさんが随分と笑えるようになったのなら、そうでしょう。」
「……急にマジメにそういうこと言ってくるの、どうかと思うっす。」
イチカはその笑顔に、どこか感情を揺さぶれられて頬を染めた。
2人はそのまま、ハスミやツルギが来るまで談笑を続けた。
部屋に入ってもどこかいつも以上の笑顔と雰囲気で話し続けるイチカに、驚いた顔をしているのにイチカが気付くのにはしばらくかかって、その後真っ赤になってソファから飛び上がったようだった。
しごできつよつよなアロナちゃんって見ないよな……って感じでアロナちゃんを書いています。
”先生”は「トリニティか……お嬢様学校っていうから気を張らないとな」
ですが、
ナナミンは「ナメられないようにちゃんとしておく必要がありますね」
のマインドでトリニティに行っています。
ナナミン自体、顔もいいしスーツをキッチリ着込んだ気品のある大人ですからわざわざ気取る必要もないんですね。トリニティの実態は嫌いな呪術界上層部と変わりませんが。
筆が乗って気づいたらイチカ編になってました。どうして……?
1話で終わらせるつもりだったのにもう1話必要になりました。
クソデカ感情激重湿度系ガールのイチカが魅力的すぎるからでしょうか。
意外とナナミンとシナジーが高そうでびっくり。
SRTも簡潔にですが入れました。
シャーレに入れていない理由は、シャーレが組織としてはまだ不安定だからです。
その状況で元特殊部隊の精鋭を入部させると、力が不相応に大きくなりすぎて各地から警戒されて不信からの崩壊ルートにも繋がりません。
ナナミンもそれを見越して、何よりウサギたちを守るためにあれくらいに留めてます。
モエに業務改善用のツールやマクロを組んでもらったり、ボランティア活動をさせることで手助けする口実を計っています。武器に関してもいらない火種を作らないために、
RABBIT小隊がナナミンにパーツを要請→ナナミンが変わりに代理で購入→パーツごとに届ける
を繰り返しやって、武装のやり取りを行われていないように見せかけるためグレーゾーンを付いてるんですね!悪い大人!
だからナナミンが外回りしてシャーレの地盤を固める必要があるんですね。
みなさん大好きな「あなたのような大人が一番嫌いです」ももちろんご用意しております。いつになるかは分かりませんが、4章までお待ちください。
ナナミンはデメリットも隠すことなく伝えるし、それ相応のリスクに見合ったリターンも同じかそれ以上に用意してくれる。分かりやすく具体的に全部話すし。
公的な立場を崩さずに、かつ私情を殺しているわけでもないナナミンは正直キヴォトス内で一番冷静に客観的に、何より感情によりそって物事を考えてくれる大人だと思うんです。だから死んだのかも。