連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの七海建人と申します。 作:馬鹿め!そっちは本体だ!
シャーレ奪還戦。七海と生徒4人はスケバンたちを蹴散らしながら、シャーレの部室まで迫って来ていた。
「敵は多いですが、目標は近いです!」
前線でスケバンの武器を破壊し、武器を失い呆然とするスケバンを峰打ち*1で気絶させながら声を張り上げる七海の姿は、正に鬼気迫る勢いだった。
「もう!先生ったら結局めちゃくちゃ前出てるじゃないのっ、よ!」バババババ!!
それを追うように、行く手を阻まんとするスケバンに銃弾を浴びせながらユウカは進んでいた。
「かなりの敵の数です!くれぐれも被弾には注意してください!先生!」
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「ふぅむ……連邦生徒会の子犬たちがここまでやるとは。これでは楽しむ余裕は無さそうですね。」
七海の予想通り、戦場の様子はシャーレの部室に近づいていくに連れて激化していた。
ここに来てチナツに支援を要請する数もかなり増えてきていたが、それでも充分に戦況は連邦生徒会側に大きく分がある。
ワカモが率いる不良集団は数では大きく勝るがやはり烏合の衆。七海を含めた実力者である5人には簡単に押されていると言っても過言ではないほどに追い込まれていた。
特に、七海建人の猛進は非常に驚異的であった。距離があるため姿は不明瞭だが、ヘイローを持たぬ身で烏合の衆とはいえヘイローを持つスケバンたちを相手にあの大立ち回りは、充分にワカモの警戒心を高めていた。
「ふう……皆さん。私はここまでです。後はお任せしますのでお好きなように……」スタッ
「騒動の中心人物らしき者を目視。ですが……どうやら撤退したようです。」
「ここに来て……!逃がすわけないでしょ!」
「いえ。深追いは厳禁ですユウカ。私たちの目標はあくまでシャーレの奪還。このままシャーレまで進むべきです。」
「羽川さんの言う通りです早瀬さん。彼女を追撃すると、むしろこちらが誘い込まれる可能性があります。一番の懸念対象がいなくなった今、むしろこれ以上にないチャンスです。」
「むむ……まあいいわ。確かにアイツを追うのは私たちの仕事じゃないですもんね」
「ええ。やる必要のない仕事を手を伸ばしてまでやる意味はありません。」
「……もしかして先生って、仕事嫌いだったりします?」
「確かに労働を好き好んで喜々として取り組む性格ではありませんね。むしろ嫌いです。」
明らかに力の籠ったユウカへの返しに、チナツは引き気味に尋ねるとやはり同じくらい仕事への否定が強く込められた返答が帰ってきた。
「本当に嫌いなのは残業、時間外労働ですが。」
「ま、まあ私も居残りは好きではありませんが……」
「私は必要以上の労働や残業を人生のデメリットとして捉えていますので。」
「お、大人というのはこういうものなのでしょうか……」
引き気味に言葉を選んだスズミとハスミを尻目に、七海は遠くから聞こえてくる音に耳を傾けていた。
「……無駄口を叩いている暇はないようですね。何やらこちらに向かっているようです。」
ゴゴゴゴゴゴゴ
自動車やバリケードを踏み潰しながら、
「……!気を付けてください!巡航戦車です!」
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「気を付けてください!巡航戦車です!」
「クルセイダー1型……!トリニティの制式戦車と同じ型です!」
「不法に流通されたものに違いないわ!PMC*2に流れたのを不良たちが買い取ったのかも!」
「でしたらバラバラに壊してしまっても問題ありませんね。」ダッ!!
「そう!ガラクタだから壊しても……ってええ!?ちょ、ちょっと先生!?さ、流石に無理ですって!」
呪術師と呪霊では、同等級の場合でも呪術師の方が強くなるように設定される。
通常兵器が呪霊に対して有効と仮定した場合、一級呪霊は「戦車でも心細い」強さ。
シュルルッ、バシイッ!!
七海建人は……
”十劃呪法”
ドゴオッ!!!
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「せ、戦車が……」
さながら中ボスのように勇ましく表れたクルセイダー巡航戦車。
その勇姿は飾られることなく、右拳にネクタイをメリケンサックのように巻いた七海のストレートパンチによって木端微塵に破壊されてしまった。
目を真ん丸にしてマスク越しに口をあんぐりと開ける操縦士のスケバンたちに構うことなく気絶させて息をつく七海を、ユウカたちは今度こそ驚きを隠せないでいた。
ユウカとチナツに至っては、持っていた愛銃や支援物資を地面に落としてしまうほどである。
「……言い忘れてましたが、私はある条件下において破壊力を底上げする能力を持っています。今のはそれの応用のようなものです。」
七海は信じられないものを視るような表情の4人から視線を逸らしながら襟元を但し、右手に巻いていたネクタイを結び直していた。
「ほ、ほんとに先生って……なにもの……??」
「一般人ではないという自覚は一応持っているつもりです。れっきとした人間ではありますが……」
「……先生の前歴は後で聞くことにしましょう。一応これで周囲の驚異は排除できたようです。後はシャーレまで消化試合でしょう。」
「先生、その手は大丈夫なんですか?一応診ておきましょうか……」
「これではどちらが守られる側か分かんないですね……」
念のためと強く言うチナツに根負けし、七海は右手を簡易的に診てもらった後、シャーレへと全員で急いだ。もちろん負傷は一切なかった。
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道中、戦車の解体ショーを間近に見て戦意喪失したスケバンや、もうどうにでもなーれとヤケになったスケバンたちを薙ぎ払いながら遂にシャーレの部室の目の前へと到着した。
「着いた!」
「クリアリング完了。どうやらもう敵はいないようですね。」
若干テンションが上がっているユウカと、周囲の状況を確認し終えたハスミ、スズミ、チナツの報告によってシャーレの奪還は果たされた。
「こちら七海。七神さん。シャーレの部室の奪還は成功です。」
『”S.C.H.A.L.E”部室の奪還完了を確認しました。皆さんお疲れ様でした。私ももうすぐ到着します。七海先生、先にシャーレの地下に行っていてください。』
「了解。そこで落ち合いましょう」
無線機でリンに報告を終えると、七海はようやくグラスを外してスーツにしまい、着こなしを整えて息をついた。
「フー……皆さん、お疲れ様でした。ここまでありがとうございます、助かりました。」
「えっ!?そ、そんな!頭をあげて下さい先生!私はただ、セミナーというか、生徒として当然のことをしただけですからっ!」
「そうです。生徒が先生の言うことに従うのは当然のことです。」
「むしろ、先生が1人で全部やってしまわれたような……」
「いえ。私1人ではあの量を捌き切るのは確実に不可能でした。こうして奪還まで行きついたのもあなたたちの協力があってこそです。本当にありがとうございました。」
姿勢を正して頭を下げる七海にユウカはたじたじになりながら頭を上げるように主張した。一番頑張ってたのはあなたでしょうと言わんばかりに言葉を濁すチナツと、それが当然だと言わんばかりに胸を張るスズミに、七海の口元は少し緩んだように見えた。
「まあ……先生は人間的にも素晴らしくできたお方なのですね。是非とも我がトリニティに……」
「ちょ、ちょっと!?抜け駆けして先生を引き抜く気なら黙っちゃいないわよ!?」
「ハスミさんと同意見です。先生の手腕……指揮という意味でも実力的にも、治安維持を底上げすること間違いないです。」
「それでしたら是非ともゲヘナにも。キヴォトスの外から来た人なのに、委員長にも並ぶほどの実力者である先生なら……」
「(どこか大人びてるようだが、こういうところはこの子たちも子供らしいな。)」
やいのやいのと騒ぐ4人を七海は懐かしい過去を思い返すように見守るが、すぐさま次の目的について思考を張り巡らせた。
「とりあえず私はもう一仕事あるのでこれで失礼します。一応ここからは機密になるため、申し訳ありませんが、皆さんとはここまでです。」
「あっ……そうだった。元々先生をここに連れてきて、ここで何かするって話でしたもんね。」
「お話が早くて助かります。早瀬さん。」
「それでしたら私たちはここで待っています。逃げ出したワカモが再び襲撃してくる可能性もありますから。」
「そうですね。相手は非常に危険で、それ相応の実力ですから。万が一にも先生を襲わせたりはしません……巡航戦車を単独で壊した先生には余計なお世話かもしれませんが。」
「必要ないと言いたいところですが、お願いします。道中を戻るよりもここにいる方があなた達にとっても安全ですし、間もなく七神さんとおそらくその護衛の方々も来られるでしょう。」
「はい!お任せください!私たちが猫一匹通らせませんから!」
「頼もしいですね。ですが危ないと判断したら迷わず中に入って身を守るように。いいですね皆さん。」
「か、過保護……」
「ナメているわけではありませんよ。優先すべくは私よりあなた達の安全ですから……私はもう行きます。くれぐれも気を付けて。」
「はい。先生もどうかご無事で……」
ハスミが銃を片手に胸に手を置いて敬礼し、その祈りを背中に七海はシャーレの地下へと降りて行った。
スチャ……
仕舞ったはずの、グラスを再び装着して。
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シャーレの地下、とある一室にて
「うーん……これが一体何なのか検討もつきませんね。これでは壊そうにも……」
「シャーレはまだ活動開始前ですよ。」
「……ッ!?」バッ
一足先にシャーレの内部に潜り込んでいたワカモは、気配も音も起こさずにすぐそばまで近づいていた七海の声に臨戦態勢に入った。2人の間に緊張が走る。
「……あらあら。気づかれていましたか。」
「あなたが
「なるほど。少々戦闘を見守らせていただきましたが……やはりただの大人では無いようですね。」
「過大評価が過ぎますね。私はただの人間ですよ。」
「ご謙遜を。キヴォトスの人間でもないただの大人が、私がここにいると分かっていながら1人でのこのこやって来れますか?」
「
「へえ……?舐められたものですわ、ねッッ!!!」ブン!
火蓋を切ったのはワカモだった。銃は使うまでもないと言わんばかりに、その先端の銃剣を大きく振り上げた。間一髪後ろに逸れた七海だが、その切っ先は七海のかけていたグラスを真っ二つに割ってしまった。
「さァ……ここからどうしま……?」
刹那。それを切っ掛けに時間すら止まって見えるほどのゾーンに入ってしまったワカモの先制行動はあまりにも悪手だった。
いつの間にか構えていた武器。
自分たちに比べて幾分か彫りの深い顔と、高く整った鼻筋。
戦闘の余波か、さきほどの攻撃で乱れた綺麗な金色の髪。
涼しげで切れ長のまぶたの中には、
それに伴う、
ワカモは、敵前にして
「あっ……♡はわわ……♡」ガタッ
「!?」
さっきまで臨戦態勢で殺気立っていたワカモがいきなり銃を落として口元を抑える様子に、流石の七海も想定外すぎる事態に混乱しているようだ。
「あ、あらら……///?あらららら……///!?」
「……あの、どうかされましたか?」
「///!?し、し、失礼いたしましたァ~~~ッッ!!!」ダダダダダッ!
狐ながら脱兎の如く。自分の愛銃と、真っ二つになってしまった七海のメガネを回収しながらワカモは壁を貫いていくようにドアを蹴破って去っていった。
「……何だったんですか。」
あまりに突拍子もない出来事に固まっていた七海だが、しばらくして冷静になり構えていた武器を背中のサスペンダーにしまった。メガネも外そうとするが、悲しくも先の一節で真っ二つになってしまったばかりであった。
「……マジで何だったんだ?」
足元を見ても見当たらなかったため、先の生徒が持って行ったと推測したがそれも全く意味が分からなかった。七海は考えるのは一旦やめにして一先ずは何も見なかったことにしようと決めた。
カツ、カツ、カツ、
「お待たせしました。」
「……?何かありましたか?」
思考停止していた七海の意識は、廊下に響く靴音とリンの入室によって覚醒した。
「いえ、何も。それより道中は大丈夫でしたか?」
「はい。お気遣いありがとうございます。ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちに関しては後でこちらから追跡・討伐いたします。」
「そうですか……それで、連邦生徒会長が残したというものは?」
七海がリンに目的の物を促すと、彼女は1台のタブレット端末を探し出して持ってきた。
「……よかった。幸い傷1つなく無事です。」
「受け取ってください。」
リンはそのタブレット端末に僅かにかかった埃を払うと、七海へそれを差し出した。
「これが、その残した物ですか?」
「はい。普通のタブレット端末にしか見えませんが……実は私もこれが何かよく分かっていないのです。製造元やOS、システム構造、動く仕組みすら不明です。」
「連邦生徒会長はこれを”シッテムの箱”と呼んでおりました。これで、先生がタワーの制御権を回復する手筈になっていると。」
「私が?」
「はい。我々では起動すら出来ませんでしたが……先生なら。」
「……まだ飲み込めていませんが、やれるだけのことはやってみます。ここまで用意していたのですから、何かしらの手立ては連邦生徒会長も打っているのでしょう。」
「よろしくお願いします。私ができるのはここまで……全ては先生にかかっていますので。」
「……邪魔にならないよう、離れております。」
リンはそう言うと、踵を返して部屋から出ていった。自分を信頼してくれているようだが、この先のことに関しては半分疑心暗鬼なのだろう。七海は得体の知れない”シッテムの箱”という目の前のタブレットをにらみながらスイッチを探して押した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…
Connecting To Crate of Shittim...
システム接続パスワードをご入力ください。
「パスワード?早速詰みましたね……」
”…………”
不自然な程に、突然はっきりと脳裏に文字が浮かんだ。馬鹿馬鹿しいほど、都合よく。
「……一応、打ってみますか。」
……我々は望む、七つの
……我々は覚えている、ジェリコの
……。
接続パスワード承認。
現在の接続者情報は七海建人、確認できました。
冗談だろう。予想はしていたが、こうも都合よく行くとは到底思わなかった。
自分が思っている以上に、連邦生徒会長は底知れない人間のようだ。
シッテムの箱へようこそ、七海先生。
生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステム A.R.O.N.A に変換します。
「は……?」
認証ができたと思った矢先、七海の意識は水に沈んでいくような音と共に、吸い込まれるように落ちていった。
五条悟という、性格と人生と親友を縛りに国宝級の美貌と強さを得たバグテライケメンがいますが、七海建人もとんでもないイケメンですからね。クオーターで金髪碧眼。184cmの長身とムキムキ筋肉。それがおまけになるくらいの人柄の良さ。公式から「悪いことは言わんから七海にしとけ」と言われるだけのことはありますよねえ。あるって言え。
虎杖に加えてナナミンにも存在しない記憶を植え付ける術式が発言しました(そんな術式は無い)。お互い影響は強かったようで。
ナナミンは普通に生徒相手でも戦いますが、(生徒もとい子供に対しては)ちゃんと手加減しますし、不必要に痛めつけるような真似は絶対にしません。
戦闘以外で生徒に手を上げるような真似は言わずもがな(モモイとかモモイみたいな生意気なタイプに手が出そうになることはありえますが)
容赦なくて冷酷なのではなく、ちゃんと悪いことをした子供を ることができる”大人”というだけです。基本生徒や目下の人間のことは大事にするでしょうナナミンなら!
悪い大人相手なら首や手足の1本を刎ねることも同じくらい躊躇しなさそうですけど。
〇個人的な呪力と対物に対する見解と設定(あくまで個人の考察なので、公式の設定ではありません)
・呪力は流動的に流れる。
・無機物(非生物を含む)に対しては流し込んだと同時に全体に呪力が流れる(物質、原子構造 など細かい条件による差異はあれど基本ほぼ同じ。金属の方が差を感じるくらいにはよく流れる)
・上記に則り、呪具ではないどんな武器でも呪力を込めることが可能。但し物によって耐久値(呪力を受け入れられる限界値)は違う。呪具だろうとそれを超えたら破損する(劇場版0の乙骨の刀)
→相手の武器に意図的に呪力を流し込んで破壊することも可能。七海がスケバンの武器を壊したり、戦車を破壊したりできるのはこの応用
・物に流し込んだ呪力に術式を流し込むことも可能。宿儺の”
・術師や呪霊相手にはこのような現象は起きない。表現すると金属と非金属に対する電流の流れ方の違いのようなもの。家入硝子が言っていた、他者に施す反転術式には拒否反応が起こように、自分以外からの呪力干渉による反射的な抵抗が呪力を扱う者には備わっている。七海の場合、術師や呪霊相手には線分した点を自分の手で狙う必要がある。
【☆結論☆】
戦車でも心細いような一級呪霊を単身で狩れる1級呪術師に戦車ごときが相手になるかってんだ。