下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

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この小説はあと数話で完結予定です


vsグリーザ(みんな必死です)

『────────』

「なんだ、あれは…?ドラゴンたちを取り込んで生まれたように見えるが…」

「気配を感じない…?

いや、違う…。『存在してない』…?」

 

笑い声を撒き散らし、不規則に揺れるグリーザの姿を前に、エルマとファフニールが怪訝そうに眉を顰める。

彼らが知覚しているのは、『無』。

感覚はそこに何もないと告げているにも関わらず、目の前には明らかに異質なものが絶えず揺らめき、巨人へと向かっている。

と。そんな彼女らに向け、トールが叫んだ。

 

『二人とも、そいつから離れてください!』

「トール、アレが何か知ってるのか?」

『話は後です!!今はとにかく退避を!!』

「……その方が良さそうだな」

 

『存在しないもの』との力量差はわからない。比べようがない。

ただ、誕生するだけでドラゴンたちを吸収したことから、自分たちの手に負える相手でないのは明らかだ。

歓喜か嘲りかもわからない笑いを散らし、オーブダークへとにじりよるグリーザ。

オーブダークはそれに焦ってか、慌てて地面に突き刺してあった剣を引き抜いた。

 

『こ、こっちに来るんじゃない!!』

『一番元気満タンなのはアンタだからね…。

さぞ美味しそうに見えてんじゃない…?』

『ぐ、くっそぉぉおおおっ!!』

 

剣を操作し、炎の円を放つオーブダーク。

よほど余裕がないのだろう、こだわっていた技名すら叫んでいない。

が。そんなものが『無』に当たるはずもなく、グリーザの奥にある岩山を抉るだけで終わった。

 

『な、ならば!ダークオリジウム光線!!』

『………………』

『───────』

 

光線とキムンカムイのブレスが混じり合う。

ウルトラマンすらも打ち倒して見せるであろうその光芒が、グリーザへと向かう。

が。もちろんグリーザには当たらず、『無』による影響からか、あちこちに分散するだけに終わった。

 

『くそっ…!!こうなったら龍玉の力を取り込んで…』

 

オーブダークがインナースペースの中にある龍玉を割ろうとする。

が。それより先に接近したグリーザが、彼の体を掴んだ。

 

『ひ、ひっ…!?』

『────────』

 

笑い声が重なる。今からお前を消すと言う意思表示にしか思えぬそれを振り払おうと、オーブダークがもがく。

煩わしく思ったか、条件反射か。

グリーザはゼロ距離で幾重にも光線を放ち、オーブダークに浴びせた。

 

『あばばばばばばばっ!?!?』

 

この場にいる誰よりも強いオーブダークが、あまりにも一方的に追い詰められていく。

場に絶望が漂う中、ルミナスが声を張り上げた。

 

『死にたくなかったら今すぐそいつと同化しろ、オーブダーク!!

寄生じゃないぞ、同化だ!!ウルトラマンだろ、お前!?使えるよな、同化!!使えなかったら死ぬからな!?』

『な、なにを…』

『いいから早く!!!!』

 

カラータイマーが鳴り、自身がグリーザに分解され始めていることに気づいたのだろう。

オーブダークはルミナスに従い、グリーザとの同化を始める。

どうやらウルトラマンとしての同化能力も持ち合わせていたらしい。

グリーザとオーブダークの姿が幾重にも重なり、歪み、揺れる。

やがてオーブダークの影が完全に飲み込まれ、そこにはグリーザだけが残った。

 

「ひ、聖…?」

『これで「針」を取り出せるはず…!

あとは、時間を稼ぐだけ…ッ!!』

 

ルミナスは残り少ない力を振り絞り、蛇腹剣による斬撃を放つ。

オーブダークと同化したばかりだったせいか、その一撃はグリーザに直撃し、火花を散らした。

 

「聖、がんばれ…!」

「シィイーーーァアアーーーーッ!!!」

 

カンナの声援を受けてか、激しく斬撃を放つルミナス。

早く、早く、と救援を強く望むも、空が煌めくことも、テレパシーを受け取ることもなく、時ばかりが進む。

グリーザは初めての痛みに苛立ったのか、それとも本能に従ったのか、オーブダークと同じ挙動でエネルギーを溜める。

 

『Daーくオりジuムこぉせeえeeンッ!!』

 

グリーザが放つ光線と、オーブダークが放つ光線が混じり、ルミナス…果てはカンナとキムンカムイを襲う。

ルミナスは2人を守るように前に出ると、その体で光線を受け止めた。

 

「ひじりーーーーーーーーっ!!!」

 

カンナの叫びは届かず、その場に崩れ落ち、変身を解くルミナス。

遠目で見る聖の体はボロボロで、そこらじゅう血が吹き出し、肌のほとんどが焼け爛れていた。

 

「ひじり、ひじりっ…!」

「あは、は…。かんな、ちゃん、ごめんね…。

わたしが、やっつけられたら、よかったんだけどさ…。やっぱ、無理だったぁ…」

 

倒れた聖へと駆け寄り、大粒の涙をこぼすカンナ。

と、そこへ降り立ったトールたちもまた、聖の元へと駆け寄った。

 

「聖さん!!」

「こばやし、さん…。大丈夫…。

ギリ、生きてるから…。死ぬラインは、まだ超えてない…」

 

今にも意識が飛びそうな感覚に襲われる中、必死に堪える聖。

トールは心配を向けるより先、努めて冷静に問いかけた。

 

「………今、どんな状況なんです?」

「オーブダークとあれを…、同化させて…、実体化、させた…。

いまのうちに…、げぶっ…、あいつのながに、あるっ…、『針』をとりだせば…、わ、たし、でも、だっ、おぜ、るっ…」

「聖さん、血が…っ!!」

「だい、じょうぶ…、し、死なないから…」

 

血反吐を吐きながらも、なんとか説明責任を果たす聖。

と。そんな彼女を覗き込むように、先ほどまで棒立ちだったキムンカムイが顔を見せた。

 

『おい。聖って言ったな』

 

龍玉がオーブダークの手を離れたことで正気を取り戻したのだろう。

初めて聞くキムンカムイの声に、聖はなんとか血反吐混じりの声を出す。

 

「かんな、ちゃんの、おとうさ、ん…。

はじめ、まして…。かんなちゃんの、ともだちです…」

『喋らなくていい、俺の問いに答えろ。

アレの中から、「針」ってのを取り出せばいいんだな?』

「うん…。理屈を超えた、力で…、それを取り出して…、攻撃すれば、たおせる…」

『わかった』

 

吸収し損ねたのか、それとも生物でないが故に興味を持たなかったか。

オーブダークが落とした龍玉を摘み上げ、グリーザを睨むキムンカムイ。

グリーザもまたキムンカムイへと笑い声を向け、ゆらゆらと揺れた。

 

「おとうさん…、だめっ…!」

『……………』

 

カンナの制止を聞かず、龍玉を割ってグリーザへと駆け出すキムンカムイ。

グリーザはそれを前に揺れると同時、幾重にも魔法陣を展開し、多種多様な光線を放った。

 

『ぐぅおっ…!?』

「お父さん!!」

『おぉっ…、ぉおおおおおッ!!!』

 

キムンカムイが叫び、光線の雨の中をかき分けてグリーザへと歩み寄る。

古きドラゴンとしての誇りなのか、それとも別の何かなのか。

やがて距離を埋めたキムンカムイは、その顎門を開き、ブレスをグリーザに浴びせる。

ドラゴンたちが力を込めた龍玉に、オーブダークがさらに力を通したことによる効力だろうか。その威力はグリーザの理屈を歪めるほどの威力を誇っていた。

 

『おおおおおおおおっ!!!!』

 

キムンカムイがグリーザの中へと腕を入れ、中にあった針を探り当てる。

突っ込んでいる腕が徐々に無へと変換されていく痛みと喪失感を堪え、キムンカムイは掴んだ「針」を引き抜いた。

同時にオーブダークもそこから引っ張り出され、地面に転げ落ち、変身を解く。

 

「あららららぁ…」

『あとでケジメはつけてもら、ぐぉおおっ!?!?』

「お父さん!!」

 

アーザードへと一瞬、意識が向いたのがいけなかったのだろう。

グリーザが放つ光線がキムンカムイを穿ち、その体が崩れ落ちる。

先ほどまでの消耗と合わせ、ドラゴンとしての姿を保てなかったのだろう。

キムンカムイはそのまま人の姿となり、カンナの前に落ちた。

 

「お父さん、お父さん…っ!」

「カンナ…」

 

自分を心配して泣きじゃくる娘を前に、何を言えばいいのだろうか。

それを理解できないキムンカムイが狼狽えていると、彼のそばに転がっていた「針」を小林が握る。

 

「これ、さっきオーブダークが使ってたやつに似てるね…」

 

オーブダークの力…その源である「オーブオリジンクリスタル」の因子が反映されたのだろう。

小林が握ったのは、ウルトラマンオーブが持つ「オーブカリバー」によく似た銀色の剣だった。

 

「お、おお…っ!今こそ、私が…」

「誰が貴様に使わせるか!!」

「ぐべっ!?」

 

オーブカリバーに似ていることから執着を抱いたのだろう、這い寄ろうとしたチェレーザの背に蹴りを浴びせ、黙らせるトール。

小林はそれを尻目に、聖へと歩み寄った。

 

「聖さん。私と…いや。『私たち』と、一体化して」

「………そ、そうきたかぁ…」

 

小林の隣に立ったのは、トール。

その背後ではファフニールとエルマがグリーザの気を逸らす光景が映る。

確かにこれならトールに文句を言われないだろうが、果たして一体化すべきなのか。

このまま助けを待つという手もあるにはあるが、それがいつになるかわからない以上、取れる手はそのくらいしかない。

しかし、ここでできた友人を死地に送り出していいものか。

聖は何度か逡巡を繰り返したのち、懐からライザーとメダルを取り出した。

 

「……わかった。でも、危なく感じたらすぐ戻るからね…?」

「うん」

「じゃあ、これ…。メダル…と、ライザー…。

使い方は、わかる…?」

「カンナちゃんが遊んでるとこ見てたから」

「なら、おっけー、だね…」

 

聖の姿が解け、その粒子が2人の中へと溶け込んでいく。

彼女らは共に託されたライザーのトリガーを押し、インナースペースへと足を踏み入れた。

 

「まずはこのカードを入れるんだったっけ?」

「そうですよ、小林さん。

…ぐへへ、私と小林さんのツーショットですよ、ツーショット」

「今それどころじゃないからね」

 

〈KOBAYASHI & THOR Access Granted〉

 

アクセスカードに描かれたツーショットにだらしない顔を晒すトール。

小林はそれを律すると、託されたホルダーからメダルを三つ取り出した。

 

「で、メダルを…、あれ?」

 

小林が取り出した三つのメダルが、金色のものへと変化する。

針に反応したのか、それとも彼女らの絆に反応したのか。

変化の原因がわからない小林が困惑を見せ、トールへと目を向ける。

 

「な、なんで変わったんだろ…?」

「わかりませんが…、すごい力を感じます!

これを使いましょう、小林さん!」

「え、えぇ…?いいのかな…?」

「いいでしょいいでしょ!さっきの聖さんよりも強くなれるのは確実なんですし!」

「わ、わかった、わかったから。

えーっと…、の、あ…、おぉぶ…、め…、めび、うす…、ふぇに…くす、ぶれいぶ…?」

 

メダルに書いてある文字でなんとか読める部分を汲み取り、スリットにセットしていく。

順番はこれでいいのだろうか、と不安に思いながらも、小林はメダルをスキャンした。

 

〔NOA〕 〔ORB〕 〔MEBIUS PHOENIX BRAVE〕

 

どうやらこれで合っていたらしい。

背後にはウルトラウーマンルミナスの素体が君臨し、ライザーに呆れた視線を向ける。

 

『なんつー組み合わせで使ってんの…?

ってか、なんでメダルが進化してんの…?』

「うぉっ、でっかい聖さん出たぁ…。

……あの、やっぱこれやばいやつなの?」

『…いや、アレ相手ならちょうどいいかな。

で、どうする?ぶっちゃけ、あとはトリガー押すだけなんだけど…、私の名前叫ぶ?』

「……まあ、気合い入れたいしね。トールもそれでいい?」

「はいっ!ぜひ、ご一緒に!!」

 

小林、トールが共にライザーを掲げる。

ルミナスはそれを前に呼吸を置き、叫んだ。

 

『輝けッ!!!』

「「ルミナーーーーーーースッ!!!!」」

 

〈ULTRAWOMAN LUMINOUS〉

EPSILON(イプシロン) RISE(ライズ) DRAIG(ドライグ)




ウルトラウーマンルミナス・イプシロンライズドライグ…ルミナスが小林、トールと融合した究極の姿。使用メダルは人間、ドラゴン、ウルトラマンの絆を糧に進化したノアライズメダル、オーブオリジンライズメダル、メビウスフェニックスブレイブライズメダルの3枚。
素体のあまりに低すぎる能力をドラゴンの力、メダルの力、小林に宿る神剣の力で補ったことで、デルタライズクローに並ぶ戦闘力を誇る。
専用武器はグリーザより取り出した「銀のオーブカリバー」。必殺光線は両腕で竜の顎門を模したのち、大きくL字を作り、そのまま手を組んで放つ「ブレシウム光線」。

ウルトラマンノア…メダルに宿っているのは「ノアの力のほんの一部」。諦めなかった彼女らへの贈り物なのか、それとも彼女らが起こした奇跡だったのかはノア本人しか知らない。

ウルトラマンオダブツ…一応責任は取った。針がよりにもよってオーブカリバーの形をしていたため、反射的に口を滑らせたところ、腹を立てたトールにより気絶。現時点では今よりタチが悪くなる可能性大。

グリーザ…また無理矢理突っ込まれて変なの作らされてる…。

救援…いろいろあってかなり遅れてる。光の国出身ではない。

キムンカムイ…なんで体が動いたのかわかってない
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