グリーザが爆炎に置き換わり、姿を消す。
巨人はそれを確認すると、勢いをつけ、空へと飛び立った。
「シィアッ!」
青空を彩る軌跡。
激闘を見ていた者はそれを前に、小さく声を漏らした。
「あれが伝説の巨人…、『ウルトラマン』…」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ぐ、ぬ、ぬぬぬぉおっ…!!
頑張ってグリーザと同化までしたっていうのに、必死の思いで見つけた針は取られるわ、手柄は横から掻っ攫われるわ…!!
しかもなんだ!?あのオーブさんへのリスペクトが見えないカリバー技の数々は!?
借りた力はきちんと使え!!スプリームカリバーでとどめをさせーーーーっ!!」
「何を言ってるのかはわからんが、一言一句不快だな」
「ここまで来るともう才能の域だと思うぞ…」
3人に戻ってすぐ目についたのは、ぎゃいぎゃいと騒ぐチェレーザ。
そしてそれを抑え、呆れを見せるファフニールさんと上井さんの2人。
話したくないなぁ、これと。
救援の子に任せてもいいが、せっかく来てくれた子にこの不愉快な動物を見せるわけにもいかない。
私は体の調子を確かめつつ、チェレーザに歩み寄る。
「よくもまあうまくやったもんだ…!
余裕のない私を利用し、踏み台にするとはなんと卑劣な!
ウルトラマンの風上にも置けない女め!だいたいさっきの姿はなんだ!?
ほぼ銀と青!!赤が差し色程度!!オーブさんの力も入ってるのに、オーブさん要素が剣しかなかったじゃないか!!
デザインも気に入らん!なんだあの意味もなく豪華になったポニテは!?さっきまで使ってた蛇腹剣にもしないし、元々あったものはきちんと使って倒せ!!」
「しゃらっぷ」
「おごぉっ!?おっ、ほっ、ほぉおっ…」
「なんだこの動物。説教する気も失せるわ」
あまりにも腹が立ったものだから股間を蹴ってしまった。ごめんね、アーザードくん。
しかし、悶絶する彼に同情する者はこの場におらず、なにか可哀想な動物を見るような目が注がれた。
「………で、どうする、これ?
私が回収して光の国に引き渡してもいいんだけど」
「オレとしてはせっかくの戦いにケチをつけたそいつにケジメをつけてもらいたいが…、現時点で伝説の巨人を相手にする気はない。好きにしてくれ」
この世界におけるノアのネームバリューすごいな。キムンカムイさんのような典型的頑固親父が引くとは。
そんなことを思っていると、キムンカムイさんのそばにいたカンナちゃんが私に歩み寄った。
「聖、もう痛くない?」
「大丈夫。たまたま残機持ってたから」
カンナちゃんに色を失ったルミナスメダルを見せ、微笑む。
手元にこれがあって助かった。これがなかったら、分離した瞬間に死んで蘇生病棟コースだった。
メダルに封じ込めた力はなくなってしまったが、元は需要のない力だ。特段惜しいものでもない。
私が力を失ったメダルをしまおうとすると、カンナちゃんが私の裾を引っ張った。
「それ、ちょうだい」
「ん…?確かにもう何の力もないただのメダルだからいいけど…、あのおもちゃライザーで読み込めたりはしないよ?」
「いい。ほしい」
「…………じゃあ、はい」
「わーい」
メダルを受け取り、喜ぶカンナちゃん。
缶バッジくらいの価値もないと思うが、私のメダルがそんなに嬉しいんだろうか。
疑問に思っていると、カンナちゃんがキムンカムイへと駆け寄り、これ見よがしに見せびらかす。
「お父さん、もらった」
「……………あー、その。
……小林。人間の親は、こういうとき、なんて言うんだ?」
「ほんとコイツ…」
親として未熟どころの騒ぎじゃない問いに呆れ、小林さんが半目を向ける。
が、しかし。価値観のズレを理解したのか、それとも歩み寄ろうと思ったのか。
小林さんは淡々とその問いに答えた。
「よかったねって。あと、くれた人にありがとうくらいは言うよ」
「そうか…。よかった、な?カンナ」
「うん」
「聖も…、感謝しとくぜ」
「ん」
何がよかったのかは、きっとわかってない。
何に感謝すべきなのかも、きっと。
それでも、キムンカムイはカンナちゃんが求める親らしくあろうとしたのだろう。
その変化に皆が様々な反応を見せていると、それをぶち壊すように怒鳴り声が響いた。
「かーっ、ぺっ!!なんだなんだ、お前たち!ちょっといい感じに終わろうとしやがって!!」
どうやら股間を蹴っただけでは足りなかったらしい。
引き剥がすだけの力を持っていたらよかったのだが、あいにく今の私にはほとんど力が残っていない。
皆も喚き始めるチェレーザに辟易を向けるが、彼はそれを気にせず続けた。
「いいか!?この世界はまだ救われちゃいない!!ドラゴンと神々、圧倒的な力に人々が振り回される現状は変わってない!!
だからこそ、ウルトラマンのような救世主が必要なんだよ!!
だからこそ、私がこの世界のウルトラマン…」
「……あっ。あの、チェレーザくーん…?
そ、それ以上はほんとにやばいよ…?」
集まるドラゴンたちをかきわけ、歩み寄る気配を感じ取り、私は声を漏らす。
もうその辺にしておいた方がいい。
忠告しようとするも遅く、チェレーザは声を張り上げた。
「ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツとして、人間たちに希望を与えてやっていたのだ!!」
「ほーぉ…?テメェかぁ…?
噂に聞くガイのパチモンっつーのは…?」
「んぇ…、うひぃいいっ!?」
ぎらりと光る刀が、チェレーザのすぐ目の前に突き刺さる。
刀を握っていたのは、怪しげなオーラを垂れ流すツナギ姿の男。
以前見た時とは違い、それなりに爽やかな印象を受ける彼は、背後に立つ青年に怒号混じりの指示を飛ばす。
「おいジードぉ!!とっととこの人間から分離させるぞコイツ!!」
「ジャグラーさん…?
あの、何をそんなに怒って…」
「早ぁく!!」
「う、うん」
あんなにキレてるの、初めて見た。
恐らくは光の国から持って来たのだろう、何も描かれていないメダルを投げ渡す青年。
暴れようとするチェレーザの背を踏みつけ、それを押し付ける男を前に、小林さんが困惑気味に問いかけた。
「あの2人、もしかして聖さんの…」
「片っぽは違うかなー…。多分、どっかからオーブダークのことを聞きつけて来たんだと思うけど…。
おーい、リクくーん」
メダルを渡した青年…ウルトラマンジードこと朝倉 リクくんに声をかける。
リクくんは私を見ると、困惑から一転、安堵の笑顔を見せた。
「ルミナス!よかった、無事だったんだ」
「まあ、ちょっとした裏技使ってね。
救援に来てくれたの?」
「うん。まだグリーザは出てないよね?」
「もう出たよ。倒したけど」
「それならよかっ…、え、ルミナスが?」
「いろいろあってね」
信じられないのはよくわかる。かくいう私も信じられない。
元の姿へと戻ったメダル3枚を取り出し、苦笑する。
イプシロンライズドライグはきっと、
もう二度と起きないだろう奇跡の余韻を振り払うように、私はメダルを押し付ける男…ウルトラマンオーブのライバルであるジャグラス・ジャグラーへと目を向ける
「で。なんでジャグラーくんがいんの?」
「彼はその…、どうしてもオーブダークに引導を渡したいって無理やりボクについて来て…」
ジャグラーくんが憤死しそうな真似だとは思ったけど、まさかここまで来るとは。
よほど腹に据えかねていたんだろうな、と共感していると、トールさんが怪訝そうに首を傾げる。
「あれは何をしてるんですか?」
「空のメダルにチェレーザだけを閉じ込めているんだ。これでもう、誰かに迷惑をかけることはないと思う」
「その程度の仕打ちで終わらせるとは、随分と甘いんですねぇ」
「宇宙牢獄行きだから、甘くはないかな…?」
「え、なんで?」
「ドラゴンがいるこの世界は、ルミナスがいる地球をはじめとしたさまざまな世界と繋がってる。
そこでグリーザが出現したせいで、各宇宙で空間の歪みが発生しててね。
その…、キングがすごく怒ってて……」
「わーお…」
キングがキレるって相当だぞ。
それを聞いてか、チェレーザは冷や汗を垂らしながら問いかけた。
「あ、あの、宇宙牢獄って…、どういう場所、なんですかねぇ…?」
「さあ?私もよく知らないから、今度教えてよ。
…もしそれができたらの話だけど」
「な、なんてことを言うんだ!?
お前、それでもウルトラマンか!?」
チェレーザがメダルへと飲まれていく。
シャバ最後の光景なのだ。記憶に残るものにしてやろう。
私は小林さんとトールさんの手を取り、微笑んでみせた。
「残念。お前が認めなくても、『私たち』は『この世界のウルトラマン』なんだよ」
ジャグラス・ジャグラー…オーブダークの一件をどこからか聞きつけ、自分が引導を渡すべくリクに同行。護送中もチェレーザとレスバを交わしていたという。光の国に着く頃には、メダルは傷だらけだった。
チェレーザ…グリーザ降臨の影響が甚大で、宇宙牢獄行き。あのキングをキレさせた偽トラマンと歴史に残された。ジャグジャグにもしっかりと絞られた。
キムンカムイ…自分のそばに居ようとしたカンナを小林たちに任せ、親としてできることを考え始めた。
カンナカムイ…大好きなウルトラマンのメダルをもらった。後日、才川に自慢する姿があったと言う。
この世界のウルトラマン…この世界の危機に現れる「銀色の巨人」。
次回、最終回