下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

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ちょっとだけ続きを書いてみた


宇宙人にもいろんなのがいる(わけわかんねぇのも含めて)

「ふむ、ふむ。かなり筋肉質だな。鱗越しでも伝わる。トールさん、その体躯で飛ぶんだろ?翼が少し頼りないが…、浮力を発生させるメカニズムでもあるのか?」

『こ、小林さぁん…、何とかしてください…』

「ごめん、無理」

 

私が宇宙人だと明かして数日。

小林さんがドラゴン姿のトールさんの体を洗うとのことだったので、無理を言って観察させてもらうことにした。

ホースの水を浴びながらも、困ったような声を絞るトールさん。

流石に不躾だったか、と身を引くと、小林さんが怪訝そうに首を傾げた。

 

「やっぱ宇宙でも珍しいの、ドラゴン」

「似たような怪獣はそれなりに確認されているよ。でも、トールさんはそのどれにも当てはまらない。

15万にもなって恥ずかしいことだが、ちょっとテンション上がってるんだ」

「15万…」

「孫がいるくらいの年齢だ。私は独身だが」

「ぶっちゃけるなぁ」

『小林さんは渡しませんからね!!』

「取らないよ」

 

出会い頭にも思ったが、メイドをやるにしてはそそっかしい。師匠がいっぱいいるやつと重なる。

唸りながらこちらを睨めるトールさんを宥めていると、小林さんがふと思いついたように口を開いた。

 

「研究職やればよかったんじゃない?うち、どこにでもある一般企業だよ?」

「この星に私由来の技術を残すのは避けたい。つい最近も、別の地球で宇宙技術が大惨事を引き起こしたと弟子から聞いた」

「大惨事?」

「宇宙人の技術をもとに地球人が開発した兵器が、寄生生物に乗っ取られたんだと」

 

事件の詳細は、瓶ラムネ片手にやってくる風来坊に聞いた。

異次元破壊兵器D4レイ。文字通り、空間そのものを消し飛ばす超兵器だという。

異次元に住まう宇宙人ヤプールが開発した技術を地球人が解析し、再現した品だと聞いた時は天を仰いだ。

地球人の手に余る…とまでは言わないが、彼らが手にするにはあまりにも早すぎた。

…まあ、寄生生物が「文明自滅ゲーム」という悪辣極まりない遊びに興じ、地球人を扇動していたのが発端らしいのだが。

私が事件のあらましをかいつまんで伝えると、小林さんは顔を歪めた。

 

「それは…、まあ、躊躇うね…」

「あと、仕事のことを忘れたいってのもある」

「……もしかして、そっちが大半?」

「いくらセキュリティを強化しても、あの手この手で新兵器が盗まれるからね。ストレスが溜まる」

「大丈夫なの、それ?」

「毎度の如く大惨事につながってるからストレスなんだよ」

「ダメじゃん」

 

仕方ないだろう。別の事件に対応してて警備が薄くなったところを突かれたり、大規模破壊攻撃で攻め落とされたりするんだから。

ゲネガーグの襲撃なんて、私がパワーアップするためのシステムを組んだ直後に起こったことだったんだぞ。

パワーアップに使う予定だったメダル三種とライザーは初手で強奪されるわ、大怪我を負って皆に「休め」と気を遣われるわ、申し訳なさと情けなさで死にそうになった。

しばらくはそのことを忘れたい。

 

「…で、結局なんでうちで働いてんの?

エルマみたく、食費でも貯めてるの?」

「ここで生活する以上、なにかしら社会的に貢献しておくべきかと思ってね。

私の行動が大惨事につながらないような職種を選んだら、あそこだっただけだよ」

「立派な心がけだなぁ」

『私も小林さんのメイドとして、立派に貢献してますよ!』

「自分で言うか」

 

ふふん、と鼻を鳴らすトールさんに呆れる小林さん。

ドラゴンとは皆、こんなものなのだろうか。

私が疑問に思っていると、小林さんが不意に問いかける。

 

「…ふと気になったんだけどさ、宇宙人ってみんな聖さんみたいな感じなの?」

「私みたいな、とは?」

「いや、聖さん、かなり人がいいじゃん?

前の課長の愚痴すら吐かなかったし」

「そうか?故郷だと卑屈で俗っぽい方だぞ」

「……それで?」

「歴史上、2人くらいしか犯罪者を出してない星柄だからな。私みたいなのは珍しい方だ」

 

居ないとは言わない。不慮の事故でトレギアの秘蔵タロウポエム…もとい拗らせっぷりを見て、「卑屈って普通のことなんだ」と安心したくらいだ。

私に親近感を覚えるウルトラマンもいたと思う。多分、きっと。…自信はないけど。

心の中で言い訳を並べていると、「それでもすごいよ」と小林さんが称賛を送った。

 

「誰かを貶すって、無意識のうちにやってしまうことだからさ。立派だと思うな、私は」

「聖人のように言わないでくれ。私も人の悪口くらい言う」

「例えば?」

「新人が失言の塊みたいな奴でな。

悪びれることもなく私と弟子が親子関係か聞いてきた」

「怒って当然では?」

 

アイツの場合は悪気がない分、タチが悪い。

ウルトラの星では察知しようもなかった騒動を解決したと聞いたし、ちょっとは緩和してるといいけど。

そんなことを思っていると、トールさんがふと疑問をこぼす。

 

『…結局、そのウチュージンとやらはどういう種族なんです?』

「十把一絡げには言えないなぁ。

いろんなやつがいる、としか」

 

侵略者気質が根っこにまで染み付いたやつもいれば、なんやかんやあって地球に馴染んだやつもいる。同じ種族でも徹底的に相容れないこともあるし、違う種族でも肩を組むような仲になることもあるのだ。

それこそ、私のような一個人が全部まとめて評することができない程度には多種多様の価値観が渦巻いている。

トールさんはその答えに満足いかなかったのか、少しばかり眉を顰めてみせた。

 

『曖昧な答えですね』

「トールさんだけを見て、『ドラゴンはこんな感じなんだな』って断じられると、いい気はしないでしょ」

『………?』

「…上井さ…エルマさんと一緒くたにされるの、気に食わないでしょ」

『はい。すごくわかりました』

 

食い気味だ。派閥争いをしていると聞いたが、そこまで敵視するか。

小林さんもトールさんの反応に苦笑し、宥めるようにその鱗を撫でた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「聖さんは神と同族なのか?」

 

数日後の昼休み。

山積みの弁当箱の中の一つを平らげた上井さんが怪訝そうに問いかける。

この健啖家っぷりにも慣れてきた。

私はコンビニで買ったサラダうどんを啜り、同じように疑問を返した。

 

「……さっきの話を聞いて、なんでそう思えるかな…?」

「いや、そのだな…。考え方があまりに超然としているというか、我々より大きな視点で物事を見ているのが珍しいというか…」

 

世間話の延長でトールさんとのやり取りを話したのが間違いだったか。

敬うべきか否かと逡巡しているであろう上井さんに、私は深くため息を吐く。

 

「ただちょっと人より強くて、できることが多いだけだよ。神様なんてとんでもない」

「そうなのか…?」

「同族に神様っぽい人はいるけど」

「い、いるのか…」

「崩壊する宇宙を一人で補修できる規格外だからね、あのおじいちゃん」

「………想像できないな」

 

私も実際に見るまで想像できなかった。

ノアの神と同レベルで理解不能なことするのはやめてほしい。切に。「頑張ったらできた」じゃないんだよ。どんだけ調べても何一つわかんなかったこっちの気持ちにもなれ。弟子なんて心労で1週間寝込んだんだぞ。

 

「…その、顔が怖い」

「……ごめん、ちょっと嫌なこと思い出した」

 

…いけない。過去の地獄を思い出すんじゃない、私。

今頃は可愛がってる子(ジード)とその自称弟弟子を労っているであろう、規格外の笑みを振り払うように、残った麺を啜った。




聖さん/ウルトラウーマンルミナス…卑屈な性格だが、中身はしっかりウルトラウーマン。パワーアップに使うメダルは「ウルトラの父」、「ウルトラマンタロウ」、「ウルトラマンタイガ」の三つ。この組み合わせじゃないと一般のウルトラマンに届かないほどに素のスペックが低い。キング関連の研究で何度も地獄を見てる。

ウルトラマンキング…なんもわからん。怖い。ウルトラの父曰く、「本人もなにできるか全部わかってない節がある」とのこと。余計に怖い。

トール…宇宙人も人間もドラゴンもいろんなやつがいるんだな、と思うようになった。

エルマ…宇宙の神こわい
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