下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

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そうそこ(小声)


ルミナス謹製デラックス玩具(トリガー、トリガー最後に押すの)

「こないだ言ってた機械、レプリカ作ってみたよ。変身機能をオミットしたやつ」

「おぉー。かっこいい」

 

次の土曜。用事がてら小林さん宅を訪れた私は、暇を持て余して作ったライザー…いわゆるデラックス玩具高級版をカンナちゃんに見せる。

一度作ってみたかったんだよな、こういう光る鳴るだけのおもちゃ。先日のカンナちゃんの落胆は良いきっかけだった。

無論、重要部分は全部オミット済み。もし悪性宇宙人に盗まれても安心な設計だ。…この地球にいるのかはわかんないけど。

 

「名前はウルトラゼットライザー。使い方は今から見せるね」

「うん」

「まずはウルトラアクセスカードをここにセットする」

 

〈HIJIRI Access granted〉

 

うーむ、自分の名前が鳴っちゃう仕様、なんとも気恥ずかしい。作った私が言えた話じゃないけど。

新人のを再現した方が良かったかも、と思いつつ、カンナちゃんの反応を見る。

…輝く目を見る限り、好感触のようだ。

良かった。今時は女の子にもウケるんだな、こういう変身アイテム。

 

「聖の名前言った」

「まあ、仕様的にね。

次にメダルをこの順番でスリットに入れる」

 

もちろん、本物じゃない。トップクラスの危険物を子供に見せびらかすわけがない。

まじまじと一連の動作を見つめていたカンナちゃんだったが、ふと気になることがあったのだろう。

怪訝そうに首を傾げ、こちらに視線を向ける。

 

「戦いの準備にこんなに時間かかる?」

「大丈夫。やってる間、時間がすごくゆっくり過ぎてくようになるから」

「おぉー…、宇宙人すごい」

「すごいんだよ、私の弟子。…で、セットできたら、一個ずつずらしてスキャンしてく」

 

〔TARO〕 〔TAIGA〕 〔FATHER OF ULTRA〕

 

ウルトラの父直系親子3代の組み合わせ。私みたいなクソ雑魚ナメクジの場合、このくらい相性のいい組み合わせじゃないと普通のウルトラマンレベルにならない。

…理論上で言えばもっと強い組み合わせはあるけど、現時点ではそれを揃えられない。

そんな悲しい事情を隠し、私はこれ見よがしにポーズを取って見せる。

 

「で、最後にこうやってトリガーを押す。

この時に自分の名前を叫んだりする子もいるね」

「聖も叫ぶ?」

「やる気がある時は」

 

〈ULTRAWOMAN LUMINOUS〉

LAMBDA(ラムダ) STRIKER(ストライカー)

 

今はシラフだからやらない。ポーズだけでも羞恥で死にそう。

プロセス完了を知らせるエレキギターが響く中、カンナちゃんが瞳を爛々と輝かせた。

 

「かっこいい」

「やってみる?」

「うん」

 

メダルやアクセスカードを抜き、レプリカのゼットライザーを渡す。

新しいものを試す興奮はよくわかる。

私の真似をして操作を進めていくカンナちゃんを前に、小林さんが苦笑を浮かべた。

 

「ごめんね、わざわざこんな立派なおもちゃ作ってもらっちゃって」

「こっちも創作意欲が溢れてたからね。喜んでもらえて良かった」

「ルミナース」

「そうそう、そんな感じそんな感じ」

 

自分の真似されてる。ちょっと恥ずかしい。

最後に名前叫んだの、どのくらい前のことだろう。…ちょっと思い出せない。少なくも万年レベルで昔だと思う。

 

「…あのメダルに描かれているのが、聖さんの同族ですか?」

「うん。スキャンした順で紹介すると、宇宙警備隊の筆頭教官ウルトラマンタロウと、その息子、ウルトラマンタイガ。で、私とほぼ同期で超が付くほどのお偉いさんのウルトラの父。タロウのお父さんでもあるね」

「…もしかして聖さんも結構偉い?」

「そんなに。ウルトラの父と年が近いってだけのただのお局だよ。技術開発しか能のないウルトラウーマンだし、流石に彼ほど偉くない」

 

それなりに偉い立場ではあったが、すぐ弟子に追い越された。ベーターカプセルの開発も、力のコンパクト化に関する基礎理論の提唱も、私がやらなくても誰かがやってただろうし、そんなに大した功績じゃない。

…こんなことを言うと、弟子から半目で睨まれるが。「は?」とどすの利いた声付きで。

 

「どうして『父』という名前なんですか?

孫がいる年頃なんでしょう?」

「お父さんみたいに頼りになるから、皆がそう呼んでるってだけ。

私たち、環境的な問題で地球上だと約3分くらいしか本来の力を使えないんだけどさ。

ウルトラの父は丸一日中結界みたいなの張りながら、地球を粉微塵にできるやつを相手にしてたことがあるよ」

「『頼りになる』の次元が違い過ぎない?」

 

普通だったらなんらかの後遺症が出るレベルの無茶なのだが、あの筋肉、なんでか筋肉痛で済んでたんだよな。いくら戒めとは言え、常時強化形態とかいう拷問を日頃から敢行しているからだろうか。

…それでもキングと比べたら、解析できるだけマシなんだよな。

そんなことを思っていると、小林さんがふと思い出したように問いかける。

 

「そういえば、用事ってなんだったの?」

「ああそうだった。や、大したことじゃないんだけどね。

来週末に同期二人が遊びに…もとい、私へのお見舞いにくるらしくてさ。ドラゴンたちが変に警戒しないように事前勧告に来たって言うか」

 

私の同期。そう聞いてなにを悟ったのだろうか、トールさんと小林さんが顔を強張らせた。

 

「……もしかしなくても…」

「うん。そういうこと」

 

もしこの地球に悪性宇宙人がいたら、尻尾巻いて一斉に逃げ出すだろうなぁ。

そんなことを思いつつ、私はライザー片手にポーズを決めるカンナちゃんに拍手を送った。




聖さん/ウルトラウーマンルミナス…子供を落胆させたことを気にしてデラックス玩具を自作しちゃったウルトラウーマン。元は宇宙科学技術局最高責任者。なお、数年で「私には荷が重い、責任を取れるだけの技量も度量もない」と後輩に任せ、一研究員としての立場に甘んじた。能力に見合わないその卑屈さがアーリー時代のベリアルの好感度を爆上げしていたことを彼女は知らない。

ウルトラの父、ウルトラの母…怪我で隠居した同期が平和な地球で元気にしてるか気になり、お忍びで様子を見に行くことにした。

トール、小林さん…そんなやばいの来るの?怖っ

カンナカムイ…後日、新たなメダルをルミナスにねだった。一組だけでは満足できなかったらしい。
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