下の階のウルトラマン   作:鳩胸な鴨

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ちょっと後書き追加しました


ドラゴンとウルトラマンと地球(少しずつ変わってゆくものです)

「む、失敗してしまったな」

「ありゃ。もう一回やるでヤンスか?」

「十分楽しめた。大丈夫だ」

 

進むこと、数分。

ソシャゲを体験していたケンが、満足そうな顔でスマホを滝谷くんに返す。

滝谷くんもかなり酒が進んでいるのか、瓶底眼鏡と出っ歯を装着し、オタクモードに突入している。

あれを披露しても問題ないと判断されるくらいには、ケンとマリーの人柄は伝わったらしい。

滝谷くんの勢いに飲まれることなく、ケンは感心をこぼす。

 

「地球の娯楽は多岐にわたるな。

あまりじっくり見てこなかった分、新鮮に感じる」

「小生が日々を生きる活力源でヤンスよ。

そっちの星にはないんでヤンスか?」

「あまり発展してないな。大半のウルトラマンは好きなことが仕事につながってしまう」

「羨ましいでヤンスねぇ。それが出来るのは一部の人間だけでヤンスし」

 

私からすれば、オタク文化が発展しているこちらの方が羨ましい。

光の国だとなにをやっても仕事につながってしまい、気が休まらないんだよな。

…とはいえ、根っからの生真面目や仕事人間が揃っているわけでもない。

 

「特殊なケースもあるよ。

地球人のことを好きになりすぎて、測量屋の仕事ほっぽって地球防衛に回ってたやつがいてね。結果的にはその功績が認められて、警備隊のお偉いさんになったけど」

「功績がなかったらすんごい怒られてそうなやらかしだね…」

「まあ、それについては前例があったし、ちょっと怒られた程度で済んだよ。

もっと怒られた案件がその後にあってね」

「なにやったの?」

「後輩をジープで追い回した」

「なにやってんの!?!?」

 

ほんとになにやってんだろうな、セブン。

いや、そのくらいやらなきゃいけない状況なのは理解できるんだけども、もうちょっと他のやりようあったと思う。

ケンとベリアルを育てた親父でもやらなかったぞ、あんなん。

そんなことを思っていると、小林さんがふと気になったのか、トールさんたちに問いかける。

 

「そういえば、ドラゴンも娯楽には疎いよね。

向こうの娯楽とかって何かあるの?」

「んー…、酒くらいですかね?」

「鬼ごっこ、かくれんぼもあるぞ」

「それは娯楽カウントしていいのかな…」

「いいんじゃない?」

 

それならウルトラの星にもあった。

ただし、訓練という形で。子供の遊びだったのは最初の数百年程度だったっけか。

そのことを懐かしんでいると、マリーがドラゴンたちに問いかける。

 

「なにか流行とかはないの?」

「んー…、派閥争い?」

「それは流行って言わない…」

「派閥争い?」

「私たちドラゴンは三つの派閥に分かれてまして。神々の支配から抜け出そうと自由を目指す混沌勢、神と人間との共存を目指す調和勢、その争いから身を引く傍観勢があります」

 

派閥争いはそこまで珍しいことでもない。

しかし、こうして違う派閥同士が酒を酌み交わしているのは稀有な事例だ。

その事例に当てはまるとは思わなかったのだろう、ケンはドラゴンたちと小林さんたちを見比べ、問いかけた。

 

「ふむ…。ここにいる皆は調和勢なのか?」

「いえ、私、ファフニールさん、イルルは混沌勢です。まだ来てないルコアさんは傍観勢で、調和勢はこのでこっぱちだけ。

カンナは選ぶ前にこっちに来てしまって」

「それにしては、みんな随分と仲が良さそうよね」

「「どこが!?!?」」

 

マリーの天然に目をひん剥くトールさんと上井さん。

基本的にケンカ友達のような仲だしな。仲がいいと言われたら怒るか。

そんなことを思いつつ、私は怪訝そうな顔を見せるマリーに噛み砕いて説明する。

 

「マリー、トールさんと上井さんはその…、ケンとベリアルみたいな仲だから…」

「あら、そうなの?小林さんを取り合ったりしてるのかしら?」

「んなっ…!?エルマ、貴様!!小林さんに色目を使ってるのか!?」

「使ってない使ってない!!」

「使われてない使われてない」

 

例え話を盛大に間違えてしまった。

ぎゃいぎゃいと二人が騒ぐ中、ファフニールさんがため息を吐く。

 

「くだらんな。ドラゴンの世界に馴れ合いはない」

「そう言う割には滝谷くんと仲良いじゃん。

コミケも誘われて参加してたし、やってるソシャゲも殆どは滝谷くんのおすすめでしょ?」

「…………」

 

彼、コミケに参加してたのか。見たかった。

この地球のコミケやハロウィンなど、仮装が自然なイベントは異世界の種族やらが混じって参加している。もしそこに宇宙人がいたらと考え、自粛していたのだ。

無論、この地球に宇宙人が来てない可能性もあるけれど。

ファフニールさんはその指摘を不快に思ったのか、ただでさえ不機嫌そうな顔をさらに顰めた。

 

「この世界はドラゴンをおかしくさせる。

俺はその影響を受けているにすぎない」

 

その言葉になにを思ったのだろうか。

ケンはファフニールさんの空になったコップに酒を注いだ。

 

「聞けば聞くほど、ドラゴンとウルトラマンは似ているな」

「なに…?」

 

その一言に眉を顰めるファフニールさん。

一見すると剣呑な雰囲気を放つ彼を気にせず、ケンはその胸の内を語る。

 

「営みに混ざり、変化し、成長していく。

どれだけ違えど、ドラゴンもウルトラマンもそれは変わらない。

我々は変化の中で、この星のことをどうしようもなく好きになっているのだろうな」

「…………フンッ」

 

否定せず、酒を啜るファフニールさん。

随分と態度が軟化したように思える。…それもそうか。一番影響を受けてるドラゴンだもんな。

そんなことを思っていると、インターホンが鳴り響いた。

 

「あ、ルコアさん来たみたい。

ちょっと外すね」

「はーい」

 

気配からして、翔太くんの勉強を見るとかで遅れてやってきたルコアさんなのは間違いない。

玄関の扉を開けると、いつもの痴女がそこに立っていた。

 

「やあ、こんばんは。おつまみ持ってきたよ」

「ありがとう。あ、どうぞ上がって」

「じゃ、遠慮なく」

 

毎度思うけど、小学生にこれは毒だよなぁ。

彼女を召喚してしまった専務の息子さんが一周回って可哀想になってくる。

そんなことを思いつつ、私は居間の扉を開けた。

 

「ルコアさん来たよ」

「どうも、ケツァルコアトルだよ。

ルコアって呼んで欲しいな」

「………………」

「………………」

「…あれ?どうかした?」

 

返事が返ってこないことを怪訝に思うルコアさん。

二人は顔を見合わせて頷き、ルコアさんの肩を強く握った。

 

「それだと風邪をひく。私の上着ですまないが、これを羽織りなさい」

「えっ、いや、大丈夫…」

「ルミナス、お湯を沸かしてあげて」

「いや、だから…」

「やはり貧富の差はあるものなのだな…」

「これは趣味で…」

「ええ、こんな服しか着れないなんて…」

「あの、聞いてる…?おーい…?」

 

やはりこうなったか。

本気で心配を向ける二人を前に、珍しく困惑するルコアさん。

この二人を前に普段の痴女スタイルを敢行すればそうなる。

 

「二人とも。ルコアさんはこれがデフォルトだから」

「そ、そうなのか…!?」

「いろんな文化があるのねぇ…」

「ボク、なんかおかしいことした…?」

 

普段からしてます、とは言えなかった。




ルコアさん…夫婦にガチで心配された人。初めての反応に困惑し、自分の姿がそんなにおかしいのかと初めて疑問を抱いた。おかしいよ。

ウルトラの父、ウルトラの母…最後に出てきた痴女ラゴンを前に驚きよりも先に心配が来た。対応がおじいちゃんおばあちゃんのそれ。地球の文化は大まかに把握してる程度なので、「季節感ガン無視で服が薄い=貧乏」くらいの認識しかない。

聖さん/ウルトラウーマンルミナス…ルコアさんを見たら絶対にこうなるだろうなと確信していた。忠告したとしても、ルコアさんが素直に聞くわけないので言わなかった。
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