超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

101 / 120
どうも、白宇宙です!


今回のお話ですが……先に言います、めっちゃくちゃ長いです(汗


いけるところまで書いたら、いつの間にかここまでの長さに…。
良く書いたな僕…。

さて、それはそれとして…。

今回の大コラボベントのお話は、予期せぬ再会の連続!
果たしてその再開は良き再開か、はたまた最悪の出会いか…。

それでは、お楽しみください!
どうぞ…



XXstage,4 リユニオン・ザ・ワールドブレイク

 

 

「………っ………ぅ…ん……」

 

 

 

どことなく重い瞼を開けた時、最初に目に入ったのは古ぼけた木の板で出来た天井だった、木目が所々古びてはがれているのが見て取れる。

その古ぼけた天井の雰囲気に合わせるように、鼻腔の中にどこか埃っぽい妙なにおいを感じた。

 

「……ここ……は……?」

 

さっきまで自分は森の中にいたはず…。

 

そんなことを考えながら、メテオは目を覚ました。

 

目を覚ましたばかりではっきりしない思考を彼は何とか巡らせて、さっきまで自分は何をしていたのか、どうしてこんな所にいるのかを考え始める。

 

(俺は………確か、カズマと絵美と一緒に……それで、見たことない森の中に迷い込んで……そこで……)

 

徐々にわかり始めた己の行動、だが何か肝心なことがまだはっきりわかっていない。

その先に、何があったのかを……。

 

(そして………その後………)

 

メテオの思考が徐々に正常な動きを取り戻し始める。

そして、それに合わせてぼんやりとしていた体の感覚も戻ってきた。

 

『目が覚めましたか、マスター』

 

「………デスティニーか?」

 

それと同時にメテオの腰に装着されているベルト、ストームドライバーことデスティニーが既に目を覚ましていたらしく彼に声を掛けてきた。

 

「デスティニー、俺は一体……ていうか、ここは……」

 

『マスター、その事ですが……隣を見てください』

 

「………?」

 

デスティニーに言われて初めて、メテオは体を包む妙な感覚に気が付いた。

右半身、具体的に言うと右腕を主にして感じる温かく、柔らかい、心地よい感覚。

クッションや毛布とは違う、どこか張りのある弾力とほんのりとした温かさは安心感を感じるものだった。

 

一体これは何なのだろうか、一度思考を中断したメテオは気になって自身の右側へと視線を向けた。

 

「………っ!?」

 

その瞬間、メテオは驚きのあまり目を見開き、息を飲んだ。

 

「すぅ………ぅ………ん…」

 

そこには彼が予想することが出来ない存在が……彼の思考を沸騰させるには十分すぎる人物が、メテオの腕を抱くように包み込み、自分の身体にその体を寄り添わせていた。

空に輝く星のように煌めく白い髪、病的なまでに白い肌に、まるで彫刻の様に整った儚げな顔立ちをした少女。

そして、その白い髪に飾り付けられた、一輪の紫の花飾り…。

 

一目見ただけで彼には理解できた、自分のすぐ隣で自分身体を抱きしめ、安らかな寝息を立てていたこの少女は彼にとって忘れることが出来ない“最愛の人”の一人なのだから。

自分の元いた世界とは違う、別の世界で出会い、絆を結んだ掛け替えのない大切な人、彼女が髪に刺している紫の花飾りは自身と交わした“絆の証”…。

 

 

 

「………シン……シア!?」

 

 

 

そこには以前に異世界で出会い、自身の世界で再び再会を果たすこととなった不思議な力を宿した少女、シンシアがいたのだ。

 

 

 

上半身が裸になっているメテオの腕を、同じように一糸纏わぬ生まれたままの姿で抱きしめながら…。

 

 

 

体を寄り添わせていることで彼女の胸のほのかに膨らむ双丘が彼の腕に押し当てられている…。

 

「ちょっ……えっ……ぇぇぇぇええええええええええええ!?」

 

突然彼が目にしたこの光景と自分の腕に当てられていた柔らかな感触に、思考を一気に覚醒させたメテオは慌てて身を起こした。

この時、ようやく気付いたがメテオは今ベッドの上にいた。

自身と彼女に掛けられていた掛け布団を跳ね除け、全裸のシンシアに目を向けたメテオは慌てて自身の目を覆い隠して彼女の体を見ないようにする。

 

それと同時にメテオが上げた声に反応してか、眠っていたシンシアの瞼がピクリと動き、彼女も目を覚ました。

 

「んっ……? ぁ………メテオ……! 目が覚めたの……!?」

 

「な、なんで……なんでシンシアが!? ど、どういうことなんだよデスティニー!」

 

『いよっしゃぁあ! ドッキリ大成功!(^o^) むふふなお二人の姿をまじかで見れて私は胸いっぱいです、ごちそうさまでした(*´ω`)』

 

「デスティニぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

いらない気を回した相棒に怒り心頭のメテオ、だが今はそれどころではない…。

 

「ていうか、シンシアその格好! は、早く隠して!!」

 

「え? ………っ!? や、やっ……! 見ないで…!?」

 

目を覚ましたばかりでぼうっとしているシンシアは彼の言葉でようやく自分の状態に気づき、白い肌の顔を真っ赤になったモミジのように赤くして、慌てて自身の体をメテオが跳ねのけた掛け布団で覆い隠した。

 

「うぅ……」

 

恥ずかしそうに毛布で体を覆って赤面したままベッドの上で蹲る彼女に困惑しながらもメテオは一度落ち着きを取り戻そうと深呼吸をする。

数回深呼吸をしたところで、若干落ち着きを取り戻した彼は彼女の体を見ないようにしながら気になったことを問いかけることにした。

 

「………シンシア、なんでそんな格好をしてるんだ?」

 

「………め、メテオの体………冷えないようにって……そしたら、ライラが……これが一番、効くって……」

 

「あ………そ、そうか……」

 

どうやら彼女はメテオの身体が冷えてしまわないようにと素肌と素肌を合わせて温めるという方法を行っていたらしい、途中で寝てしまったようだが彼女はメテオのためにこのような行動を起こした様だ。

しかし、正直言うといろんな意味で危ない方法だ、一瞬だが自分はとんでもないことをしでかしたのではないかとメテオは思ってしまった…。

 

これで一つの謎は解けた。

だが、問題はまだ残っている…。

 

「………シンシア……なんで、君がいるんだ? それに……俺は何でこんな所に?」

 

気になったもう一つの問題、自分がなぜこんな所にいて、なぜ彼女がここにいるのか…。

その事が気になったメテオは思い切って彼女に問いかけた。

すると、その問いかけを聞いたシンシアは不思議そうに首を傾げた。

 

「覚えて……ないの?」

 

「……え?」

 

「メテオは……メテオ達と似ている姿をした人たちと戦って……それで川に落ちて……」

 

 

 

シンシアの言葉を聞いた、その時だった…。

 

 

 

 

 

『その力を受け入れれば、こんなざまにはならなかっただろうに…』

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

メテオの脳裏に銃を下に向けた龍玄が自分の事を見て、そう言い放った瞬間が浮かび上がった。

彼の鼓膜の奥で彼の言い放った言葉が木霊するのが聞こえる。

その言葉と光景に驚いたメテオの体が途端に嫌な汗を流し始める。

息を荒くし、動悸が激しくなり、冷や汗が大量に流れる。

 

「……そうだ、俺は……あの後、ミッチ達に……」

 

すべてを思い出したメテオ、彼の中で先程自分が体験した出来事が映像のように浮かび上がっていく。

そしてその度に彼の身体が恐怖と不安の感覚で満たされ、それが震えとなって現れる。

 

「め、メテオ……」

 

彼の様子を心配してか、シンシアが彼に近づく。

 

 

 

「どうやらあなたの王子様が起きたようですね、シンシア?」

 

「ひにゃっ!?」

 

 

 

突然聞こえた何者かの声に、シンシアが驚く。

それに反応したメテオは体を震わせながらもその声が聞こえた方向に目を向けた、それと同時に自分の横を通り過ぎる様に何かが投げられてシンシアに覆いかぶさる。

見るとそれは彼女がいつも来ている衣服だった。

 

「いつまでもそんな格好してないで、早く着なさいな、そこの少年くんが集中できませんでしょうし」

 

「あ………うん…ごめん、ライラ」

 

「………ライラ?」

 

彼女が口に出した名前にメテオは聞き覚えがあった、確かその名前は以前にも、そして先程もシンシアが口にしていた物だった。

その事に気付いたメテオは視線を再度声が下方向に向ける、するとそこには白のジャージに身を包んだシンシアよりも年上のイメージでまさに大人の色香を感じさせる女性が立っていた。

ただ、身に着けている服が白のジャージという少々不釣り合いな恰好ではあるが…。

 

しかし、彼女の姿を見た瞬間、メテオはどこか不思議なことを思った…。

 

(この雰囲気……なんか、シンシアと……似てる?)

 

彼女と同じ白い髪、そのせいなのかもしれないがジャージの女性を見た瞬間メテオはふとそんなことを感じた。

 

メテオの思考を知ってか知らずか、白ジャージの女性、ライラはシンシアの隣にいるメテオに視線を向ける。

すると彼の姿を見て、ふむ、と感心するような仕草を見せた。

 

「………あれだけのダメージを受けていながら、こんなにも早く目を覚ますとは、さすが改造人間………いや、神殺しの少年くん、と言った所でしょうか?」

 

「っ! ……あんた、なんでそのことを……!」

 

自分の身体の事、自身の力の事を知っている様子のライラ、そのことにメテオは彼女に対して警戒心を向ける。

 

「おっとっと、警戒しないでください、私はあなたの敵じゃありません、むしろそこにいるシンシアの仲間……あなたを支援する側です」

 

「……シンシアの仲間……?」

 

「えぇ、あなた達をここで死なせないようにここまで運び、手当てをしたのも私達です」

 

『……マスター、彼女の言っていることは本当です、改造人間であるあなたの手当てを指示したのは私ですので既に事情を聴いています』

 

彼女と相棒の言葉にメテオは自分の身体を見てみる、すると彼の身体には包帯が巻かれており、手当てをした形跡が残されていた。

どうやら本当に手当てをしてくれたようだ。

 

「ご理解いただけましたか? あと、ついでに言うとあなたと同じ力を持った白髪の少年くんと可愛らしい妹さんはこちらの仲間が別室で見守っています、まだ目を覚ましていませんが直に二人も起きるでしょう」

 

「………どこまでの事を知ってるんだ? シンシアの仲間なら俺の世界とは違う別の世界の人のはずだ……それなのに、あんたは何で俺達の事を知っている? なぜ、俺達の事を助ける?」

 

自分たちの事を助けたライラを信用しないわけではない、ただ理由を聞かない事にはこちらも警戒せざるを得ないというわけだ。

ライラに対して質問を投げかけるメテオにライラはやれやれと言いたげに首を振ると、後ろを振り返った。

 

「すみませんが、説明お願いできますか? どうにも私では警戒されてしまうようです、あなたなら彼も信用してくれるでしょう」

 

ライラがそう言うと、空いているドアの陰から何者かが現れた。

そして、その何者かはドアをくぐって部屋の中へと足を踏み入れた。

 

「仕方ないよ、彼もいろいろあったんだ……突然こんな場所にいたら警戒するのは当然だよ」

 

その人物の姿を見た時、メテオは再び驚きのあまり目を見開くことになった。

 

 

 

「あんたは………ヴィクトリオン・ハート!」

 

「………久しぶりだね、メテオ君」

 

 

 

そこにいたのは、勝利の名を持ち、絆の力を信じるこの世界を見守る魔神…ヴィクトリオン・ハートだった。

彼の登場に驚いたメテオ、彼に向けてヴィクトリオン・ハートはどこか優し気な笑みを浮かべる。

 

「驚かせてしまったようで、ごめんね……突然の事で混乱したでしょ?」

 

「あ、あぁ……でも、なんで…」

 

疑問を取り払えないメテオに、ヴィクトリオン・ハートは表情をどこか真剣なものに変える。

 

 

 

「……メテオ君、これからいうことを心して聞いてくれるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……。

 

 

「………ん?」

 

 

メテオがいる部屋とは別の場所にて、気を失っていた絵美が目を覚ました。

自分の身体に掛けられた布団、見知らぬ小屋の様な部屋、気が付いた絵美は自身の置かれた状況に戸惑いながらも目をしっかりと開いた。

 

「お、気がついたんか?」

 

「……え?」

 

聞き覚えのない声が聞こえ、絵美が隣を見やるとそこには自分の事を見つめて柔和な笑みを浮かべている白髪のポニーテールの女性がいた。

そして、その奥にはこちらに背を向けている白髪の小柄な少女がいる。

この二人は一体、絵美が疑問を感じていると……。

 

 

 

「たすけてくれぇぇぇええええええええええええ!?」

 

 

 

聞き覚えのある人物、先程まで行動を共にしていたカズマの悲鳴が聞こえてきた。

慌てて絵美が自分の隣に目を向けると…

 

「怖がら、なくてもいい……ちょっとだけ、かいぞ……ゲフン……手当てするだけ」

 

「今改造って言いかけたよね!? 間違いなく改造するつもりだよね!? 両手に工具持ってるし!! 何このロリッ娘とんでもないことしようとしてるよ!? どうして俺がこんな目にあってるの! なぜなにホワイっ!?」

 

「右手、にドリル……左手、に超電磁砲……背中、にミサイルパック……目、からレーザービーム……口、から火炎放射……よりどり、みどり……ふふふのふ♪」

 

「いやだぁぁぁああああああああ!! なんかわけのわからない物に再改造されるのは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!! 助けてメテオぉぉぉぉぉおおおお! 絵美ちゃんんんんんんんんんんんんんんん!!」

 

そこには手足を拘束されたトランクス一丁のカズマが両手に工具やらドリルやらを持ったゴスロリ衣装の少女、シンシアの仲間の一人、ステラによって再改造されそうになっていた。

そのあまりにもカオスな空間に若干驚いた絵美だが………。

 

―――まあ、カズマだしいっか…

 

という理由で見なかったことにした。

 

「あっちはまあなんとかなるとして……もうしばらくそこで寝とってな? 今あんた下着だけしか着てへんから起きたらそこのお兄さんに見られてまうで?」

 

「え!? ……あ、ほんとだ」

 

彼女に言われて布団の中をこっそりのぞくと女性の言う通り絵美は今下着だけしか身に纏っていなかった。

女性に言われて起きなくてよかったと安心した絵美はほんのりと頬を赤くしながら布団の中に潜り込んだ。

 

「あの……お姉さんが、助けてくれたの?」

 

布団の中を覗いたときに気付いたが、絵美の身体には包帯が巻かれ、絆創膏などが張られていた。

そして自分とどうように先程ちらりと見た時、カズマにも手当てが施された跡が見えた。

もしかしたらこの人たちが手当てをしてくれたかと思った絵美は思い切ってポニーテールのコートの女性、ヤエに聞いてみることにした。

 

「ん、まぁな、ちょっとうちの人があんたのお兄さんと話がある言うてな……何もないうちに保護しよう思っとったんやけどうまいこといかんくてなぁ……あ、服の方はもう少し待っといてな? 私の仲間が外で乾かしとるから、今日はええ天気やし、このあたりは風もいい感じに拭いとるからしっかり脱水してればすぐに乾くと思うわ」

 

「は、はぁ……ありがとうございます」

 

「あぁ、そうや、良かったらなんか飲む? 川の中に落とされたからめっちゃ寒かったやろ? あんたらを手当てするために駆け込んだ小屋なんやけどお湯くらいは沸かせそうやし、ココアにする? それかホットミルク? それともコーンポタージュとかがええかな? 念のため材料は持って来とったんよ……ちなみにコーヒーは私が苦手やから持ってないんやけど……」

 

「………じゃあ、ココアで」

 

「おっ、なんやあんたとは気ぃ合いそうやな? うちも寒いときはココア派やねん♪ ほな、ちょっと待っといてな? ステラ、あんたも悪ふざけはほどほどにしぃや~?」

 

隣でカズマの容赦なしの再改造ショーを行おうとしていたステラにそう注意して、ヤエは部屋を後にした。

 

「………誰なんだろう、あの人………メテ兄の知り合いかな?」

 

「ふーふふーの、ふー……♪」

 

「待って! 待って待って待って待って!? 絵美ちゃん無視しないで!? 助け………ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

絵美がカズマの断末魔をBGMにしてヤエのココアを待っている頃……。

彼らが保護されている小屋の外では二人の人物が彼らの濡れた服を干して、乾かしていた。

 

「ふぅ、とりあえずはこれで良しでござるな! 後は風の向くまま気の向くままに服が乾くのを待つだけでござる」

 

「………そうだね」

 

ステマックスとハルキの二人である。

メテオ達の洗濯物を手ごろな縄を木と木の間に結んで風向きと日の光がよく当たる場所に干したステマックスは満足げにそう言うが、なぜかハルキは何かを考えているような様子で好物のチョコバーをかじっていた。

 

「どうかしたのでござるか、ハル殿? なにやら考え事をしているようでござるが…」

 

「……ボクらが保護してほしいって頼まれたあの天パのお兄さんたちの事だよ」

 

「……あぁ、あの活発そうな美少女を連れていた……それで、彼らがどうかしたのでござるか?」

 

メテオ達の事を気にしている様子のハルキにステマックスが問いかける、するとハルキはチョコバーを半分ほど齧り終えてから彼らがいる小屋へと目を向けた。

 

 

 

「これから始まることが気になってね……“神殺し”とかいう奴ら同士の戦いが始まるってことと………先代魔神のあの人がこれからやろうとしていることが、ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロス・ヴィクトリーとイストワール、そしてスカーレットハートの前に現れた謎の男と、その男の言葉を受けて“仮面ライダー鎧武・修羅”へと変身した紘汰。

あまりにも異質すぎる変身を遂げた紘汰に戸惑う三人、だがそんな三人の反応を他所に鎧武は両手に握り絞めた武器を構えて走り出す。

 

「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ァ˝ァ˝ァ˝ァ˝ァ˝ァ˝ァ˝!!」

 

まるで獣の様な唸り声と共に鎧武が跳躍し、両手の武器を振り上げた。

 

「宗くん!」

 

「あ、あぁ! いーすん、離れてて!」

 

落下してくる鎧武・修羅の両手の刃が凶悪な光を放つ、それを目にしたスカーレットハートは即座にクロス・ヴィクトリーと息を合わせ互いの武器を手に身構えた。

再び出現させたスカーレットハートのMVSとクロス・ヴィクトリーの赤剣が二人目がけて降下してきた鎧武の無双セイバーとソニックアローの刃を真っ向から受け止めた。

 

ガキン、という音と共に火花が散り、二人と鎧武は鍔迫り合いを始める。

 

「くっ……なにこれ、重っ……!」

 

刃を通して伝わってきたその衝撃にスカーレットハートは不意にそう毒づいた。

今の一撃をぶつけ合わせた、ただそれだけでもわかるほどの鎧武・修羅の壮絶なパワー、それは今こうして二人で抑え込むのがやっとな程で、少しでも気を緩めれば一気に押し込まれてしまいそうなほどだ。

 

「紘汰さん……チクショウ……! どうしてこんな…!」

 

「ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛オ゛!!」

 

「うおっ! っと…!」

 

鎧武の変貌に毒づく宗谷、すると鎧武・修羅は獣の様な声を上げて刃を一度放し、ソニックアローを横薙ぎに振るって赤剣を握るクロス・ヴィクトリーを弾き飛ばした。

空中に身を投げ出され、体を数回回転させたクロス・ヴィクトリーだが何とか体制を直しつつ、体勢を低くした状態で地面に着地する。

だが、この一撃だけで鎧武・修羅は終わらなかった。

 

もう片方の手で握る無双セイバーの鍔、その背面にあるグリップを一度引いて無双セイバーに備わっていた銃口をクロス・ヴィクトリーに向け、柄に備わっていたトリガーに指を添えた。

 

「くっ…!」

 

「させないよ!」

 

引き金が引かれ、無双セイバーの受講からエネルギーの弾丸が数発放たれた瞬間、同じくクロス・ヴィクトリーと一緒に後方に押し返されたスカーレットハートが鎧武・修羅とクロス・ヴィクトリーの間に割って入り、MVSでエネルギー弾を弾き、クロス・ヴィクトリーを庇った。

右手を振り切った状態から赤熱化する刃を左右に切り払い、スカーレットハートはそのままその刃の先を鎧武・修羅へと向ける。

 

「へいへいそこのバーサーカーさん! そんなのじゃ、この私どころかここにいる宗くんも倒すことはできないよ!」

 

勝ち気な目を鎧武・修羅へと向けながら挑発的な言葉を鎧武・修羅へと投げかけるスカーレットハート、それに反応してか鎧武・修羅は狙いをクロス・ヴィクトリーから彼女へと変えたようだった。

それを確認したスカーレットハートはちらりと一瞬だけ視線を背後にいるクロス・ヴィクトリーに向ける。

 

「………宗くん、紘汰さんは私が何とか足止めしておく、だから宗くんその間にあの黒コートのおっさんをぶっ飛ばして来て」

 

「え……そんなの無茶だ! ヒロミちゃんもさっき喰らっただろ、あのパワー……一人で相手取るのは危なすぎる!」

 

「大丈夫、クラス的に言うとたぶん私、セイバーとかの部類に入ると思うから今現在絶賛バーサーカーっぽい紘汰さんとの相性はいいはず、まあ、ダメージも多く貰うと思うけどそうそうやられたりはしないよ………でも、あいつを早く倒さない事には何も変わらないと思う」

 

スカーレットハートはそう言うと今度は視線を離れた位置でこの状況を見ている赤髪の男へと向ける。

 

「どう考えても葛葉 紘汰さんをこんな風にしたのはあいつが強く関わってるのは明白……なら早いうちにぶっ飛ばしておくのに越したことはないよ」

 

「……けど」

 

確かに彼女の言う通りかもしれない、しかし相手は強力なパワーを持っている分困難なのは目に見えて明らかだ。

本当にあの鎧武を彼女一人に任せていいのだろうか…。

クロス・ヴィクトリーが迷っていると……。

 

 

「大丈夫だって……ヒロムとも一緒に戦ったんでしょ? なら、私の事も……信じてよ、同志くん」

 

 

そう言って彼女は目線だけを自分に向けて軽くウィンクをして見せた。

その姿にクロス・ヴィクトリーは……いや、宗谷は一瞬だけ彼女の姿とヒロムの姿が重なって見えた気がした…。

 

「……ヒロミちゃん……悪い、任せる! 俺も早めに決着つけるから!」

 

「よし来た! お姉さんに任せなさい! 頼んだよ、宗くん!」

 

彼女もまた、心強い友だ。

なら、その友を自分が信頼しないでどうする…。

 

意を決した宗谷は彼女とそう言葉を交わした瞬間、立ち上がり、真っ先に赤髪の男の方へと走り出していった。

そして、残されたスカーレットハートは彼が行ったのを確認すると、再び視線を鎧武・修羅へと向ける。

 

「………さてと………それじゃあ、もう少し頑張ってみようかな?」

 

スカーレットハートがMVSを左右に広げるように構えたと同時、両足を強く踏みしめる。

そして、それに対抗するかの如く、鎧武・修羅も腰を大きく落し、まるで走り出そうとする狼の様な姿勢を取る。

 

 

 

「………ゥ゛ゥ゛ゥ゛………!」

 

「“タイムリミット”まで……ざっと見て1分と半分……それまでは、抑えてみせるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧武・修羅をスカーレットハートに任せたクロス・ヴィクトリーは狙いを赤髪の男に変えて走り出した。

 

「紘汰さんを……俺の憧れたあの人を………元に戻せ!!」

 

地を蹴り、一刻でも早く男の所へとたどり着くように彼は走り続ける、

そして、徐々に間合いが近くなってきた時、彼は右手に握る赤剣を逆手に持ち、左手でタッチパネルを二回たたいた。

 

『Skill Chain! Infinite Stratos! Street Fighter!』

 

「駆け抜けろ! “ハイスピードブロー”!!」

 

彼の能力が発動した瞬間、彼の身体が風よりも早くなり、男との間にあった間合いを一瞬にして埋めてしまった。

その距離が0になった瞬間を見計らい、クロス・ヴィクトリーは左腕を思い切り引き、男の顔面へ向けて高速の拳を打ち出した。

目で追うことすら困難に思えるほどの一撃、スピードを乗せたその拳の一撃は通常よりも遥かに高い威力を秘めている。

 

 

 

………だが

 

 

 

「なっ………!」

 

 

 

その拳が……“止まらなかった”。

 

 

目標を見失い、止まることなく伸びた拳。

一体どういう訳か………その理由は明白だった。

彼の目の前にいた赤髪の男の姿がそこにはなかったのだ。

 

 

 

「やはり前よりは力をつけたようだな……だが、それでも、まだまだだ」

 

 

 

そして、遅れてきた男の声…。

それが聞こえたのは……自分の真下。

 

宗谷が咄嗟に下へと目線を向けると……。

 

 

 

 

 

「俺は常に………その先を行く」

 

「お前は………!?」

 

 

 

 

 

そこにいた男の姿を見た瞬間、クロス・ヴィクトリーは驚愕した…。

いつの間にか、クロス・ヴィクトリーの一撃を回避し、身を屈めて自身の懐に潜り込んでいた男……その男の姿が、徐々に変わって行っているのだから…

 

 

 

「………“変身”………」

 

 

 

その言葉と共に、男の身体が完全に変化した…。

 

赤い、スズメバチを思わせる仮面に…燃え盛る炎を象ったかのような紋様が刻まれた両腕…。

その姿に彼は見覚えがあった…。

以前に、彼がとある世界に迷い込んだ時だった。

自分とイストワールを一度は瀕死の状態に追い込んだ“ダークネス四天王”と呼ばれる謎の男との対決の折、その男との決着をつけてすぐ、共に戦った“自分の知らない異世界の仮面ライダー”と勝利の余韻に浸っていた時に姿を現した……謎の仮面ライダー。

 

山を消し飛ばし、圧倒的な闘志を感じさせたその戦士の名を……彼は知っていた……。

 

その名は………。

 

 

 

「………仮面ライダーブレイズ………!」

 

 

 

次の瞬間、クロス・ヴィクトリーの腹部に今までに感じたことのない程の重い衝撃が走った。

 

 

 

 

 

「宗谷さん!!」

 

一連の事態を見守っていたイストワールはすぐに動いた、クロス・ヴィクトリーが赤髪の男が変身した赤い戦士による一撃を受けて、地面を数回して自分の近くに転がってきたのだ。

まるでボールのように地面を数回バウンドしながら地面に倒れたクロス・ヴィクトリーの元にすぐさま駆け寄った彼女は彼の背に手を回してそっと上半身を起き上がらせる。

 

「うっ……げほっ……ごはっ………野郎………!」

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ、一応な……げふっ……」

 

腹部を抑え、せき込むクロス・ヴィクトリーを気に掛けるイストワール。

変身によって強化されているとはいえ、今の一撃は並の攻撃ではなかったのはイストワールにもわかった。

現に今、クロス・ヴィクトリーは大ダメージを受けた。

何とか意識を保っているようだが、もし変身してなかったら一瞬で意識を刈り取られていただろう。

 

一体、あの赤い戦士は……

 

イストワールが疑問を抱いていると……。

 

 

 

「天条 宗谷、お前に問おう……」

 

 

 

赤い戦士、仮面ライダーブレイズが一歩前に出て、クロス・ヴィクトリーに問いかけた。

 

「貴様にとって、強さとは何か? お前は何のために強くなるか?」

 

「……あなたは、一体何を……」

 

「答えろ、天条 宗谷……いや、“魔神の後継者”、“次世代の勇者”よ……」

 

「え……?」

 

気になる単語を並べ、クロス・ヴィクトリーに問いかけたブレイズ。

イストワールはその言葉に反応するが、意味を理解することが出来なかった。

 

「………俺はただ、守りたい物のために強くなる………もう失わないために………この世界を……ネプテューヌ達を……そして……いーすんを……守るために……!」

 

そして、その問いかけにクロス・ヴィクトリーが返答を返した。

彼が覚悟を決めた理由ともなった決意の意志、大切な物を今度こそ守るために強くなると決意した揺るぎない彼の思いだった。

だがその言葉に、ブレイズは仮面の下で僅かに笑うようなそぶりを見せた。

 

「……やはり、貴様も甘いな……甘すぎる」

 

「何だと……?」

 

「……よく覚えておけ、天条 宗谷……強さという物をより強力な物に進化させるために必要なのは、守る物なんかじゃない……必要となるのはすべてを失っても、目の前にいる敵を叩きのめし、さらに上へと行こうとする……揺るぎない“野望”だ」

 

「……“野望”、だと……」

 

「………かつて、日本という国を己が手に納め、天下統一を果たすために戦場に出た武将、“織田 信長”はその“野望”を糧にありとあらゆる敵を討ってきた………その力は、誰もが恐れるほどの物だったという」

 

ブレイズをそう言いながらクロス・ヴィクトリーに一歩ずつ近づいていく。

 

「戦いにおいて必要なのは、“野望”……守りたい物は所詮ただの荷物に過ぎない」

 

「……お前に、そんなことを断言できることが……!」

 

「なら、貴様はもしも、そこにいる女を殺された時………今のようにいられると思うか? 貴様はもう一度、立ち上がれるか?」

 

「っ!」

 

ブレイズの言葉にクロス・ヴィクトリーは動揺を見せた、そして仮面の奥の目を動かして隣にいるイストワールを一瞥する。

彼にとって一番大切な人………守りたいと心に決めた、愛する人………もしも、彼女を失ったとき、自分は今度こそ立ち上がれるだろうか……?

 

あの時のように……。

 

 

 

『change……Wind hand』

 

「貴様は余計な物を抱えすぎている………故に………貴様は、俺には勝てん………絶対にな!」

 

 

 

一瞬、迷いを心中に抱いたクロス・ヴィクトリーに向けてブレイズはそう言い放つと、両腕の赤い腕に刻まれた炎の刻印が緑色へと変化させ、拳を強く握り絞めた後、大きく両足を開いた。

それはまるで腰に刺した日本刀を抜刀して敵を切り裂く攻撃法、“居合切り”を放つ前の様な体制の構えだった。

 

「……“斬風”……“鎌鼬(かまいたち)”……!」

 

そして、ブレイズはその体制から抜刀するかの如く右手の手刀をしたから上へと跳ね上げる様に振り切った。

その瞬間、手刀の軌道に合わせて三日月形の空気の刃が発生し、地面を切り裂くように抉りながらクロス・ヴィクトリーへとまっすぐに向かっていった。

 

ブレイズの攻撃が放たれた瞬間、クロス・ヴィクトリーは意識を引き戻した。

このままではあの攻撃は自分もろとも、イストワールを巻き込んでしまう。

 

「いーすん、フォーチュンリンクだ!!」

 

「は、はい!!」

 

咄嗟にそれを理解したクロス・ヴィクトリーは隣にいるイストワールに指示を出す。

そして二人はそのままクロス・ヴィクトリーの強化形態となるべく、互いの腕に巻かれたリンク・コネクターブレスを構えた。

 

「「フォーチュンリンク・オン!」」

 

『Fortune Link!! Get set starting!!』

 

クロス・ヴィクトリーとイストワールの二人の身体が光に包まれ、2つの光が一つとなり、クロス・ヴィクトリーは強化形態、クロス・ヴィクトリー フォーチュンリンクへと変身した。

そして彼はすぐさま立ち上がると赤剣の液晶画面のフィニッシュブレイクアプリを素早くタップし、最大の一撃を放つべく赤剣を構えた。

そして、真空の刃が間近にまで迫った時、身構えた赤剣を思い切り振りおろし、深紅の刃を空気の刃へとぶつけた。

 

「『ストレイザーV!!』」

 

鋭く斜めに振り下ろした刃が空気の刃と衝突する。

 

とてつもない切断力を秘めている空気の塊とは思えないような重い衝撃、それを赤剣で真っ向から受け止めたクロス・ヴィクトリーの両腕がそれを彼にこれでもかと警告してくる。

 

少しでも油断は許されない…。

 

一瞬でも気を許せば、この一撃が己の体を切り裂くだろう…。

 

故に、クロス・ヴィクトリーは己が愛剣へとより強い力を籠める。

 

「……荷物だとか邪魔な物かなんて、そんなの俺の知ったこっちゃない……! お前に、俺の覚悟を……否定されるいわれもない! 俺は前に進む! 今度こそ、失わないために! だからこそ………負けてられないんだよぉぉぉぉおおおおおお!!」

 

そして、己の心にある覚悟を共に込めて、振り下ろした刃を鋭角に、Vの字を描くように上へと跳ね上げた。

押し込まれそうになっていた空気の斬撃を僅かに押し返したクロス・ヴィクトリーはその思いと共に、己の武器を更に前へと押し出した。

強力なエネルギーが込められた深紅の剣が、彼の目の前に迫っていた空気の斬撃を霧散させた。

 

 

 

 

 

「………まだまだ、ガキだな………」

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

しかし、それで終わりではなかった。

 

目の前に迫っていた空気の刃にばかり気を取られ、背後に回り込んでいたブレイズに気付くことが出来なかった。

 

気付いたときには、もう遅い……。

クロス・ヴィクトリーがすぐさま背後に振り返った瞬間、ブレイズの拳がクロス・ヴィクトリーの胸の装甲を打ち据えた。

 

「……“嵐連打”……“旋風(つむじ)”……」

 

そして、その一撃をきっかけにクロス・ヴィクトリーの体に、嵐の様な勢いのラッシュが叩きこまれた。

胸、鳩尾、肩、横腹、ありとあらゆる部分にまるでガトリング砲の弾丸の様な勢いで打ち込まれた連撃にクロス・ヴィクトリーの体が大きく揺れ続け、とどめとばかりに下から上へと打ち上げられた拳の一撃によってクロス・ヴィクトリーは大きく真上へと打ち上げられた。

 

大きく弧を描くように空へと打ち上がったクロス・ヴィクトリーはそのまま地面へと落下していく…。

 

 

 

「宗くん! あいつぅ!!」

 

イストワールの声に、状況に気が付いたスカーレットハートはすぐに彼の援護に向かおうとする。

だが、しかし、その行く手を阻むものがいる。

 

「グルゥ゛ゥ゛ゥ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」

 

「くっ……このぉっ! 邪魔しないでよ! いくらあなたでもしつこいと嫌いになるよ!?」

 

一瞬だけ意識をクロス・ヴィクトリーへと向けたスカーレットハートに鎧武・修羅が切りかかってくる。

横薙ぎに振るわれた無双セイバーの一撃をMVSで受け止めたスカーレットハートは何とか間合いを取ろうとするが、鎧武・修羅は追い縋り、ソニックアローの刃を身を捻る勢いを乗せた斬撃を追い打ちとばかりに打ち込む。

 

だが、スカーレットハートはこの追い打ちを胸部のプロセッサユニットをかすめながらもなんとか回避し、反撃の蹴り込みを見舞う。

そして、同時に打ち出した鎧武・修羅も同じタイミングで蹴り込みを打ち出して、互いに後ろに後退し、間合いを開けた。

 

「もう……そろそろ、タイムリミットだっていうのに……!」

 

彼女の言うタイムリミット、それはその言葉通り、彼女が動ける活動限界時間を指していた。

 

彼女、スカーレットハートはその能力こそ他の女神を圧倒しかねないポテンシャルを秘めてはいる。

だが、彼女は本来とは違う形で誕生した“逸れ女神”。

故に普通の女神とは違い、力の源となる“シェアエネルギー”の燃費があまりにも悪い。

シェアクリスタルにあらかじめシェアをチャージしている状態でも、使えるのはせいぜい“3分”が限界だ。

そのため、彼女はタイムリミットである3分が来るのを懸念していたのだ……3分を過ぎれば、本来の力を出すことが出来なくなり、こちらはジリ貧となってしまう。

 

苦虫を噛むように顔をしかめるスカーレットハート、それに対して鎧武・修羅はまだ戦闘をやめる気配を見せない。

自身の内側にいるヒロムはまだ気を失ったままだから、交代もできない……さてどうしたものか……スカーレットハートが思考を巡らせていると……。

 

―――ピシッ…

 

「………ん? なにこの音?」

 

不意に彼女の耳に妙な音が入ってきた。

何やら、ガラスのような物がひび割れるような、そんな音だ。

 

この音が何なのかと、スカーレットハートが疑問を抱いた、その時………。

 

 

 

―――パリィィィィン!

 

 

 

まさにガラスの砕けるような音と共に、彼女の胸部のプロセッサユニットが“砕け散った”。

 

 

 

「………はえ!?」

 

 

 

あまりにも突然の事態と自身の胸に妙な解放感を感じたスカーレットハートが素っ頓狂な声を上げる。

彼女が視線を自身の胸元に向けると、自分の自慢の一つにしている豊かな膨らみを持った胸が惜しげもなくさらけ出されているではないか。

 

「ちょっ、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉお!? な、なにこの変な仕様! わ、私こんなこと今までなかったよ!? ダメージを受けていくたびに服が破れる機能なんて実装された覚えないよ!? なにこれどうなってんの、ねえ!? ただでさえシリアスなバトルシーンなのになんでこんなエッチなイベントが発生するのかな!?」

 

顔を赤面させ、慌てて腕を交差させて胸を隠すスカーレットハートが半ばパニック状態になる。

 

なぜ彼女のプロセッサユニットが砕けたのか、その原因は先程の戦いにあった。

 

実は鎧武・修羅のソニックアローをなんとか回避したあの時、胸の辺りをかすめていたのが原因でプロセッサユニットに僅かに亀裂が入ったのだ。

そして、タイムリミットが迫るにつれてシェアエナジーによって構築されていたプロセッサユニットの防御力が徐々に低くなっていき、限界間近になった瞬間に砕け散った、という訳なのである。

 

しかし、今のスカーレットハートはそんなことを理解する冷静さを欠いていた。

惜しげもなくさらけ出してしまった自身の胸を必死に隠そうとしているのに気を取られている。

 

そのため………それが大きな隙となった。

 

 

 

『ソイヤッ! ブラッドオレンジスカッシュ! ジンバードラゴンフルーツスカッシュ!』

 

「ゴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

「あっ!?」

 

 

 

彼女の事態なんてお構いなしに駆け出した鎧武・修羅が跳躍し、右足を大きく振りかぶった。

そして、そのまま鎧武・修羅は右手で戦極ドライバーのカッティングブレードを作動させると右足に赤黒い色をしたエネルギーが集中していく。

そして、獣のような方向と共に鎧武・修羅がその足を横薙ぎに振り抜いた。

 

余りの事態に反応が遅れたスカーレットハートは咄嗟に右腕だけを放して防御しようとするが、それよりも早く鎧武・修羅の必殺技、“修羅無頼キック”が彼女を打ち据えた。

 

「ああああああああぁぁぁぁぁっ!?」

 

とてつもない威力の蹴りを受けたスカーレットハートはそのまま吹き飛び、地面に倒れ伏してしまった。

そして、それと同時に打ち上げられたクロス・ヴィクトリーが彼女のすぐ近くに落下する。

 

「ぐっ………ぁ……」

 

「もう、ちょっと……がんばれる……はずだったのに………宗くん、ごめんね……」

 

倒れた二人、クロス・ヴィクトリーは僅かに身を震わせ、スカーレットハートはそう呟き、二人とも意識を失ってしまった。

その瞬間、二人の変身も強制的に解除され、元の姿に戻ってしまう。

 

「宗谷さん、ヒロミさん!」

 

変身が解除されたことで宗谷と分離したイストワールが気を失った宗谷とヒロミの二人を呼ぶ。

しかし、反応は帰ってこない。

 

「……以前よりは強くなったかと思ったが、所詮はこの程度ということか……」

 

「っ!」

 

そこにブレイズが近づいてくる、彼の接近に気が付いたイストワールは咄嗟に二人を庇うようにブレイズの前に出る。

 

「モード! アクティ」

 

「遅い!」

 

そしてすぐさま彼女の戦闘モードであるモード・アクティブを起動し、立ち向かおうとするがそれが発動するよりも早く、ブレイズは彼女に接近し、その華奢な喉元に手刀を宛がった。

あまりにも早いブレイズの動きに行動を封じられたイストワール、しかし、それでもと必死の抵抗の意志を見せてブレイズを真っ向から睨み付ける。

 

「………威勢がいいな………だが戦場は女子供の居場所ではない、そこをどけ………」

 

「……断ります」

 

「………そうか」

 

ブレイズの言葉を真っ向から断ったイストワールにブレイズはそう返す。

 

「なら、とどめは奴にさせるか…」

 

そう言うと、視線を離れた位置にいる鎧武・修羅へと向けた。

ブレイズの視線の先いた鎧武・修羅はソニックアローを構え、矢尻パーツを引き、いつでもエネルギーの一矢を放てる体制に入っている。

その狙いは、気を失っている宗谷に向けられている。

 

「や、やめてください! こんなことは!」

 

「……悪いが聞き入れられない……俺の“野望”のためには、あいつは邪魔になるんでな」

 

イストワールがそれをやめさせようとするが、ブレイズは聞き入れようとしない。

そして、非常にもブレイズが合図を送ると鎧武・修羅はそのままソニックアローの矢尻を放し、エネルギーの矢を宗谷に向けて打ち出した。

 

「いや……やめてぇぇぇえええええええええ!!」

 

イストワールの叫びが響く、だが非常にもソニックアローの放った矢は止まらない。

空中を駆け抜ける光の矢はまっすぐに宗谷へと飛んでいき……。

 

 

 

 

飛び散る鮮血と共に、その動きを止めた……。

 

 

 

 

 

宗谷の身体に当たる直前に起き上り、宗谷と屋の間に割って入った、彼の“同志”の肩に突き刺さって…。

 

 

 

 

 

「………何?」

 

「………ヒロム……さん……!?」

 

「………俺のダチを……みすみす見殺しにできるかよ………!」

 

ソニックアローの矢を止めたのは、先程イストワールの本の角を受けて気を失いヒロミと交代していたはずのヒロムだった。

ヒロムはその体を盾にして宗谷を光矢から守ると、今度は狙いをイストワールの動きを止めていたブレイズに変更。 動揺した様子のブレイズの一瞬の隙をついて左腕を向けて魔方陣を展開し、そこから彼の持つ魔力で生成した魔力追尾弾“ホーミングバレット”を放つ。

数発放たれたホーミングバレットは不規則な軌道を描くとブレイズの横腹に全弾命中し、ブレイズを強制的に後退させることに成功した。

 

「ぬぅっ………!」

 

「イースン! 宗谷を!」

 

「あ……はい!」

 

ヒロムはイストワールに指示を出すと、イストワールは彼の体を起き上がらせヒロムはそれを手伝うように左腕を使って宗谷の体を支えると、すぐさま次の一手を準備する。

 

「ちょっと眩しいのと、あとめちゃくちゃ揺れると思うから目を閉じて舌を噛むなよ!」

 

「え、それってどういう…」

 

「“ブラインドフラッシュ”!!」

 

「きゃあっ!?」

 

ヒロムがそう言った瞬間、彼らの足元に魔方陣が展開し、強烈な光を発生させた。

ヒロムの持つ光魔法、“ブラインドフラッシュ”が発生させる余りの光に驚くイストワールだが、その光の強さはブレイズ達にも効果があったようでブレイズと鎧武・修羅は咄嗟に目を覆った。

 

まるでいくつもの証明を集めたかのような強烈な光がその場を照らす中、光が徐々に収まっていきブレイズと鎧武・修羅が目を覆っていた腕を放した時、そこには既に3人の姿はどこにもなかった。

どうやら今の目くらましを利用してこの場から離脱した様だ。

 

「………ヴゥ゛ゥ゛ゥ゛……」

 

「………逃げたか………まあいい、いずれまた奴らは倒す………だが、あの妙な力を持った見慣れぬ女……いや、男か? ………どちらにせよ、奴も邪魔になりそうだな………奴も天条 宗谷とメテオ・ソルヒート達を屠った後に始末するか………」

 

侮れない3人目の要注意人物を確認したブレイズはヒロムの事も要注意対象に加えると変身を解除し、元の赤髪の男の姿に戻った。

そして男は自身の右手で拳を作ると、ぎりぎりと音が鳴るまで強く握りしめる。

 

 

 

「すべては………俺の“野望”のために………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、メテオ達が運び込まれた小屋では起き上がったメテオが乾いた服を受け取り、包帯を巻いた体の上にそれを着始めていた。

空は既に夕暮れ時のオレンジ色長い時間をここで過ごしたためか服はもうすっかり乾いている。

 

しかし、どういう訳かその服を着ているメテオの顔はどこか浮かない顔だった…。

 

その原因は先程まで再会した魔神、ヴィクトリオン・ハートから聞かされた話だった。

複が乾くまでの間、体を休める時間のついでにヴィクトリオン・ハートはメテオ達にあることについて話したのだ。

 

ここがメテオ達のいる世界ではなく宗谷のいる世界であること、今この世界に以前に出会った同じ神殺しのブレイズが来ていること…。

そして、彼によって仮面ライダー鎧武、葛葉 紘汰が彼の手に落ちたということ…。

 

それらのことを聞いただけでもメテオにとっては彼の表情を曇らせる原因になったが、問題はそれだけではなかった。

 

「………ヴィクトリオン・ハート………あいつ本当に………」

 

それは彼がこれから“何をするか”についてだった。

その事を聞いたメテオは、その行為がどれだけ危険な物かを察して表情を曇らせていたのだ。

 

「………メテオ」

 

「………シンシアか? ん? なんだそれ?」

 

そこへメテオが着替え終わるのを見計らってシンシアが部屋の中に入ってきた。

古ぼけたドアを開けて中に入ってきたシンシアは何やら黒いアタッシュケースのような物を抱えてメテオに近づいてくる。

 

「それよりも………外に、メテオのバイクがある……それにあなたの仲間も……もうそこにいる」

 

「絵美とカズマも? ていうかなんでこの世界に“テンペスト”が? …おいてきたはずなのに」

 

「ある人が……役に立つからって……それから、これ」

 

「え? ………あ、これ……」

 

シンシアがメテオに手渡したのは、彼女が持っていた“白い花の髪飾り”だった。

この髪飾り、実は以前にメテオがシンシアと初めて出会った際にシンシアが再会を約束して彼にこっそり渡したのだが、それがいろいろあってメテオはとある人物に奪われ、そのまま帰ってこなかったままになっていたのだ。

 

それが、なぜかシンシアが持っていたことに驚くメテオ、するとシンシアはそのことを察してかこう返した。

 

「………返しておいてって………」

 

「え? ………そうか……悪いなシンシア」

 

「………気にしてない」

 

シンシアの言葉にその人物が誰なのか……反射的に察したメテオはその髪飾りを受け取るとシンシアに謝罪の言葉を述べる。

この髪飾りはメテオとシンシアにとって大切な“絆の証”だったのだ、それを失くしたとあっては申し訳ないにもほどがあるという物だ。

シンシアは首を左右に振って、気にしてないと返した。

 

「………なあ、シンシア………お前本当に、この後ヴィクトリオン・ハートと一緒に行くのか?」

 

「………うん」

 

「わかっているのか!? これからお前たちがやろうとしていることは、とても危険なことなんだ! なのに……無理して行かなくても……俺達が代わりに」

 

「メテオ」

 

先程ヴィクトリオン・ハートから聞いた“あまりにも危険な行動”にメテオはシンシアを説得しようとするが、シンシアは彼の言葉を遮るように彼の名を呼んだ。

そして、彼の目を見つめて安らかな微笑みを浮かべる。

 

「……大丈夫……これは、みんなで決めたこと………それにこれは、わたし達の世界の事にも関わりがあることだから………だから、わたし達がやらないと」

 

「………だけど!っ……」

 

メテオが食い下がろうとした時、不意に腹部に軽く何かがぶつかる感覚を感じた。

そして、目線を下に向けると、そこにはシンシアがいた。

小柄な彼女はその細く、白い腕を彼の体に回して抱きしめている。

 

「………ごめんね、メテオ………でも、きっと帰ってくる………だから、心配しないで………」

 

「………シンシア………」

 

シンシアの言葉に、彼女なりの“決意”を感じたメテオは彼女の事を優しく抱きしめた。

彼女にこれ以上言っても聞かないということを察したメテオはそれを受け入れ、せめて、彼女たちが無事であることを祈って思いを込めて彼女を抱きしめた。

 

その時、メテオの脳裏にあることが浮かび上がった。

 

「………シンシア、俺……お前の……あの時のキスの返事なんだけど……」

 

二度目の出会いを、再会を果たしたあの時、シンシアはメテオにキスをした…。

それは彼女の中に芽生えた密かな“恋心”によるものだったのだとあれからメテオは理解したのだ。

しかし、彼の中でその返答はまだ出ていなかった…。

自分の身体の事、自分に課せられた運命の事……たくさんの事を背負った彼がシンシアの思いに答えた時、彼女を不幸にしてしまうのではないかと不安を抱いていたからだ。

 

しかし、その言葉にシンシアはそっと顔を上げて首を小さく左右に振った。

 

 

「………今はまだ、返事はなくていい」

 

「え………?」

 

「わたしにも……そして、あなたにも……まだやるべきことがたくさんある……答えは、それが全部終わってからでいい……あなたにしかできないことがあるように、わたしにしかできないこともあるから……」

 

「………でも、シンシア………本当に俺でいいのか? ………俺は、普通じゃない………だから、いつかきっと、お前にも迷惑を……っ」

 

 

メテオがそう言いかけた時だった、シンシアはその先を言わせないように、メテオの口の前に自身の人差指を宛がったのだ。

 

「……メテオが普通じゃないなら……わたしも普通じゃない………それに、何であっても……メテオは、メテオ……それに変わりはないよ」

 

「……俺は、俺……」

 

「あの時、あなたのおかげで……わたしは変われることが出来た……だから、あなたの運命もきっとあなた自身で変えることが出来る」

 

「………シンシア………」

 

「メテオ………忘れないで………わたしみたいに、あなたの事を思っている人が………支えたいって思っている人がいることを………」

 

シンシアの諭すような言葉に、メテオはそれ以上何も言わなかった…。

自分を支えたいと願う人がいる……なた、自分はその人たちに何をすればいいのか。

分からないことはたくさんある……だが……。

 

まだもう少し、先の事については考えてみようと彼は思ったのだった…。

 

自身の事を思ってくれる人たちにできることは、何なのかを…。

 

「………わかった……シンシア、俺もう少し考えてみるよ……まだわからないことが多いけど、今は今をしっかり見て……」

 

「………頑張って、メテオ」

 

「……ああ」

 

彼を励ますシンシアに、メテオも微笑みを返す。

彼が思う、“愛する人”に今できることはこれなのではないかと思いながら…。

 

すると、なにやらシンシアが目を右往左往と泳がせて落ち着きのない様子を見せ始めた。

 

 

 

「……どうかしたのか、シンシア?」

 

「あの、メテオ………最後に………いい、かな…?」

 

「いいって、なにが……?」

 

「………き………キ、ス……したい……」

 

「なっ!? あ……その、えっと……」

 

 

 

突然のシンシアの提案に驚いたメテオ、赤面してやっとの思いで言えた様子のシンシアは恥ずかしそうにしながらもじっとメテオの事を見つめている。

こういう時、どうすればいいのか経験がないメテオは思考を巡らせるが、これだ、という答えが出てこない。

メテオが困惑した様子を見せて目線を反らす。

すると、シンシアはどこか不安そうな表情を浮かべた…。

 

その表情をちらりと見た時、メテオはあまりにも申し訳ない気持ちになってしまった。

 

「……まだ、答え出してないけど……いいのか?」

 

「………いい………だって……」

 

メテオが彼女に問いかける、それに対してシンシアは今まで以上に頬を真っ赤に染め上げてから、ぽつり、と小さく呟いた。

 

 

 

 

 

「………メテオの事………好き、だから………」

 

 

 

 

 

か細い声に秘めた彼女のありったけの思いが秘められた言葉…。

それを聞いたメテオは、直感的に察した……彼女にここまで言わせた以上、彼女の思いを無下にすることはできない、と…。

 

「わ……わかった……でも、少しだけな?」

 

「………うん!」

 

メテオの返答にぱっと表情を明るくさせて頷いたシンシア。

 

そして、返答を返したメテオは数回深呼吸をした後、意を決して彼女がキスをしやすいように顔を彼女の方に向けて、目を閉じた。

それを前にして、シンシアも僅かに恥ずかしがるような反応を見せた後、頬を染めながらも……ゆっくりと目を閉じ、その顔に自身の顔を近づけていった。

 

 

 

 

 

そして、しばらくして…。

二人の顔が最大まで近づき、二人の唇が触れた。

 

 

 

 

 

互いの唇に感じる柔らかな感触、その感触がメテオにとってはこの時間を永遠のようにも感じさせるものに思えた。

最初の時は不意打ち気味のキスだったが、今度は違う。

分かっていて行うキスの効果はあまりにも絶大で今、メテオの心臓は張り裂けんばかりに脈動していた。

そしてしばしあってから、シンシアとメテオはゆっくりと互いの唇を放した。

 

「………ありがとう、メテオ………うれしい」

 

「そ、そうか………なら、よかった……のか?」

 

キスを終えて嬉しそうに微笑むシンシアに、まだ戸惑うメテオ。

彼はまだ、いろいろと学ぶことがありそうだ…。

 

「そ、それじゃ俺、そろそろ行かないと!」

 

メテオはどこか気まずくなり、とりあえず早くここを出発しようとシンシアから離れてドアの方へと向かおうとする。

 

「あ、メテオ、待って……!」

 

だが、それをシンシアが引き止めた。

どうしたのかとメテオが振り向くと、今度は先程彼女が持っていた黒のアタッシュケースを彼女は手に持った。

 

「………これも持って行って………あの人が、もしもの時はこれを役立ててって……」

 

そう言うとシンシアは手に持っていた黒いアタッシュケースをメテオへと差し出した。

一体このアタッシュケースは何なのかと、メテオは気になりそのケースを受け取るとケースの金具を外しそれを開けて中を確認する。

 

そして、その中に入っていた物を見て、メテオは目を大きく見開き、驚愕した。

 

 

 

「こ、これは………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここまで来れば、もう大丈夫だろ………」

 

「は、はい……でも、さすがにあれは無茶しすぎです」

 

「そりゃ、ありったけの魔力使って魔法連続使用したからな、そうでもしないとあの場を切り抜けられそうになかったから……いっつぅ……」

 

先程ブレイズ達と戦闘を行った場所から遠く離れた場所、そこにはなんとかあの場を離脱することが出来たヒロムとイストワール、そして気を失ったままの宗谷がいた。

あの後、目くらましの魔法を発動させたヒロムは二人を抱えた状態で筋力強化魔法の“パワーブースト”と高速移動魔法の“アクセルダッシュ”を同時に発動させ、なんとかあの場から離れることが出来たのだ。

なるだけ離れられるようにいつもよりも魔力を余分に継ぎ足した結果、ヒロムも疲労困憊なのか肩で息をしながら近くの木に凭れ掛かっていた。

 

「あのヒロムさん、肩から血が……」

 

「あぁ、まあ、背に腹は代えられないからな……あのままだと宗谷はやられてた……」

 

「………ごめんなさい、ヒロムさん………私がふがいないばかりに………」

 

「いや、おっきイースンは悪くねぇって、むしろあの時ぎりぎりまで気絶してた俺の方が悪いさ……ってて……」

 

傷を負い、血を溢れさせる右肩を抑えながら落ち込むイストワールをフォローするヒロム。

何とか回復魔法を発動させれればいいのだが、先程の先頭やら脱出やらで魔力を惜しみなく使ったせいでこの傷を治すまでの魔力が足りない、まあ、そもそも魔法を使ってもすぐに傷が塞がるわけではないが…。

 

しかし、ヒロムの傷もそうだが宗谷の方も問題だ。

 

ブレイズの攻撃を肉体を担っていた宗谷が一身に受けたため、彼の方も相当な怪我を負ってしまっていて、傷だらけだ。

彼の方も手当てをしない事には…。

 

空はもう既に夕焼け空、日が落ちる前に何とかしなければ…。

 

「……とにかく、一度宗谷を手当てできる場所に運ばないとな……」

 

「それなら、一度プラネテューヌ教会に! 今ならコンパさんやみなさん……それに回復魔法を使えるプルルートさんがいます!」

 

「ぷるるんが? そうか、この世界にもぷるるんがいるのか………なら話は早い、急いで教会に………っ」

 

イストワールの提案に賛成したヒロムが立ち上がろうとするが、突然眩暈に襲われ、彼は体を大きく揺らすとその場に再び座り込んでしまった。

 

「ヒロムさん!? どうかしたんですか!?」

 

「やべっ……無理したせいか、血が出すぎたみたいだ……軽く貧血気味、かも」

 

「そんな……急いで治療しないと……! でも、どうすれば…」

 

動揺するイストワール、パナンジャングルとプラネテューヌまではまだまだ距離がある。

しかも、女性であるイストワールには男性二人を抱えて歩けるほどイストワールには力はない。

このままでは二人とも危ない……イストワールがそう思っていると……。

 

 

 

「どうすれば………え?」

 

 

 

どこか遠くから何か妙な音が聞こえてきた。

 

その音は遠くから聞こえてきたが徐々にこちらに向かってくるように大きくなってきた。

 

そして、その音がはっきりと聞こえるほど大きくなってきたとき、イストワールはその音が“バイクのエンジン音”だということに気が付いた。

しかも、それは一台だけではない。

少なくとも、三台はある。

 

「バイクの音………あ!」

 

その音が聞こえる方に目を向ける、するとその先から三台のバイクがこちらに向かって走ってくるのが見えた。

それを見つけたイストワールは咄嗟に立ち上がるとこちらに向かってくるバイクの前に立ち、その行く手を阻んだ。

 

「お願いします、止まってください! 人が、怪我人がいるんです!!」

 

なんとか止まって貰おうとバイクに訴えかけるイストワール。

今は緊急事態だ、なんとしてでも彼達を教会まで運ばなくては……。

 

そして、彼女の事に気付いたのか三台のバイクはブレーキを掛けるとイストワールのすぐ近くで停止した。

 

「イストワール!?」

 

「え?」

 

すると、なぜか中央を走っていた白いバイクに跨っていた男が何やら驚いた様子でイストワールの名を呼んだ。

なぜ自分の名を知っているのかとイストワールは疑問を感じた。

だが、その疑問を解消する前に後続の黒いカラーリングと同じく白だが形状の違う二台のバイクに乗っていた二人も何やらイストワールを見て反応を示した。

 

「本当だ、おっきいイーちゃんだ!」

 

「なんで大きいイストワール様がこんなとこに!?」

 

「え、あ、あの、あなたたちは……?」

 

イストワールが動揺し、その三人のバイク乗りに何者か尋ねようとした時だった。

三人は顔を覆っていたフルフェイスヘルメットを外し、その素顔を露わにした、その瞬間イストワールが驚きの表情を浮かべる。

 

 

 

「あ………あぁ! え、絵美さん! カズマさん! それに………どちら様でしたっけ?」

 

「ちょっ!? あの時最後にちらっと見ただろ!? メテオだよ、メテオ・ソルヒート!!」

 

「あー、メテ兄、よくよく考えたらあの時おっきいイーちゃんに自己紹介してなかったから……」

 

 

 

そこにいたのは、以前に宗谷と共に異世界に紛れ込んだ際に出会った三人の仮面の戦士達、メテオ、絵美、カズマの三人組だった。

メテオについては自己紹介を受けていなかったためわからなかったイストワールだが、絵美とカズマに関してはあの時一緒に行動していた時間がなかったからすぐに思い出すことが出来た。

 

なぜ彼らがこの世界にいるのか、早速イストワールの脳裏に疑問が浮かぶが……。

 

「聞きたいことは多々ありますが、今はそれどころじゃないんです、お願いします力を貸してください! 宗谷さんと宗谷さんのご友人が怪我をして……!」

 

「っ! 宗谷が!?」

 

イストワールの言葉を聞いて落ち込んでいた表情から一気に表情を強張らせると三人はすぐさまバイクを降りて宗谷達の元へと駆けつける。

 

 

 

「宗谷!」

 

「こいつはひでぇな、早く運ばねぇと……おいメテオ、とりあえず宗谷を俺のバイクに乗せるぞ、お前の方にはそこのもう一人を……」

 

「………ヒーくん………?」

 

 

 

怪我をしている二人を発見した瞬間、メテオとカズマは二人をすぐに運び出そうとする。

すると、どういう訳か絵美が宗谷ではなく肩から血を流すヒロムを見つめて、呟いた。

 

「え? おい、絵美、お前今なんて…」

 

「ヒーくん!!」

 

「ずごっく!?」

 

何やらただならぬ反応を見せた絵美にメテオが問いかけようとするが、絵美は兄の言うことなんかお構いなしに、というかヒロムを運ぼうとして近づいたメテオを跳ね除けて一目散にヒロムの元へ駆けよった。

 

「ヒーくん! ねえ、しっかりしてよ! ヒーくん!!」

 

「ぅ………その声……もしかして、絵美……か?」

 

「うん、そう、絵美だよ! どうしたのヒーくん……そっちゃんやイーちゃんと一緒にいるし……しかも、その怪我……」

 

ヒロムの事を心配している様子を見せる絵美にヒロムはどこかおぼつかない声を発しながら彼女の姿を確認する。

ヒロムの怪我を心配する絵美に、ヒロムは僅かにほほ笑むと…。

 

「へへっ…ごめんな……すぐに話すのは……難しそうだ……悪いけど……ちょっと………落ちる………っ」

 

彼はそう言い残すと、そのまま傷から流れる血によって気を失ってしまった。

 

「……ヒーくん? ……ヒーくん! しっかりして! ヒーくん!!」

 

「絵美さん、何があったかわかりませんが今はとりあえず二人を教会に……急ぎましょう」

 

「イーちゃん………うん! メテ兄、屑マ! ボサッとしてないで急いで!!」

 

「お、おう、わかった!」

 

「ヒーくん………ヒーくんって、確か………まさか、こいつが………?」

 

怪我をして気を失った二人を運ぶべく、四人は急いで二人をバイクへと運ぶと、急いでプラネテューヌを目指して走り出した。

 

 

 

これが、三つの世界で生きる者達の出会い……。

 




いかがでしたか?

次回は、遂に舞台がプラネテューヌへ!
傷を負った宗谷とヒロムくん、二人と合流したメテオ君たち、彼らが遂にこの世界のプラネテューヌに集う。

そして、メテオ君に何かを託し、己の行動を開始したヴィクトリオン・ハートたちは……

次回をお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。