超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

102 / 120
どうも、白宇宙です!

…今回も長いなー…

でも、その分たくさん楽しめる様に頑張りましたのでよろしければ見てください!

今回の大コラボ第5話の見所は、休息と奪還!
二つの場所で起きた二つの出来事をお楽しみください!

それではどうぞ!


XXstage,5 一時の休息と奪還

 

 

 

プラネテューヌ近郊のとある場所、ここに誰にも知られていない場所があった。

周囲をとても険しい高さの岸壁で囲まれ、その周りを複雑な経路の洞窟で守られたこの場所。

空は既に夜の闇に包まれ、満天の星空と月の光が崖を囲まれたとある場所を照らしていた。

上に隔てる物がないためか、広く円形にくりぬかれたようなその場所には草花が生い茂っている。

そしてその場所の中央、そこには石で造られた祭壇のような物が奉られており、その場所の雰囲気が神聖な聖域であるかのような雰囲気を物語っているかのようだった。

 

そんな誰の侵入を許すことのないような場所に複数の人影があった、数は6人、その先頭を歩く一人の男は先刻、宗谷達と戦闘を行ったブレイズの人間の姿だった。

彼の後ろには黒い姿へと変わってしまった紘汰、そして光実、貴虎、ザックの四人がおり、そしてそのすぐ傍にもう一人…。

 

「………ここが俺の目的の要となる“天樹”を育てる“鉢植え”となる場所………そうなのか、クロワール」

 

「あぁ、その通りだ、お前が持ってる“苗”にとってうってつけの“肥料”がある場所っつったらここしかねぇからな」

 

クロワールだ、彼女は屈託のない無邪気な笑みを浮かべてブレイズにそう言うと、ブレイズは身に着けているコートの中からある物を取り出した。

それは、何かの植物の“苗”のようだった。

しかし、生やしている葉やツタの形など見たこともない特殊な苗の様だ。

 

「お前に聞いた限りでは真実かどうか疑いはしたが……なるほど、あの祭壇に祭られているものを見れば頷ける」

 

「へっ、わざわざ他の世界に跳んでここにいるやつらにちょちょっと“細工”までしてやったのに嘘なんかついて何になるってんだよ、念のために行っておくけどなオレはおもしろおかしいことには謙虚に手伝う主義なんだよ」

 

「……違いない……現に、お前の手立てによってこいつらは俺の先兵となった……」

 

ブレイズがそう言って背後にいる紘汰達を一瞥する。

そう、彼らがブレイズの側についたのはクロワールが手を回していたことにあったのだ、彼女は彼女の持っていたある力を応用して彼らの中に眠る“闘争心”を増大、変質させ、ブレイズの側につくように“洗脳”したのである。

 

己が目的のために平和のために戦った戦士を先兵に加えたブレイズ、彼はクロワールの支援を受けながら彼の“野望”への第一歩を踏み出すべくこの場所へと赴いた。

 

ブレイズは目の前にある祭壇と自身が取り出した苗を交互に見て、一歩前へと踏み出そうとする。

 

 

「……まあ、ここってちょっと訳アリな場所だからな……もしかしたら、ただで事が運ぶって訳には、いかないかもな?」

 

 

だがその前に、クロワールがそう呟いた。

それを聞いたブレイズはその言葉が気になったのか踏み出した足を止めた、そして視線をクロワールに向け………その後、その更に背後の方を見つめる。

そして、ブレイズが何かに気付いたのにクロワールも気づいたのかどこか楽しそうな笑みを浮かべながら後ろを振り向く。

 

「ほら、噂をすれば来たぜ? ここと関わりが深い奴らが……♪」

 

彼らが見つめる視線の先、そこにいたのは5人の人物だった。

その人物に、ブレイズは鋭い眼差しを向けて敵意をむき出しにする。

 

 

 

「………こうして顔を合わせるのはいつぶりだろうね、“クロ”?」

 

「さぁ? 久しぶりすぎてもう忘れちまったぜ………“ヴィクトリオン”」

 

 

 

彼女達の背後にいた5人の人物、それはかつてこの世界を守護を担い、その存在が伝説として語り継がれることとなった魔神、ヴィクトリオン・ハートと彼と現在行動を共にしている、ライラ、ヤエ、ステラ、そして、シンシアの古代女神の4人だった。

ブレイズの後ろに立っていた彼ら、その先頭に立つヴィクトリオン・ハートとクロワールが挨拶を交わす。

そして、突然現れた彼らに紘汰達も気づいたのか一斉に後ろを振り向くとすぐさま戦極ドライバーとロックシードを構えて臨戦態勢に入る。

だがそれを彼らの間に割って入るようにして出てきたブレイズが止めた。

 

「……貴様が、この世界の“魔神”か……聞いていた割にはそのような雰囲気は感じないが……」

 

「そう言う君が“業火の愚者”の“神殺し”……ブレイズだね」

 

「……世界を守り切れなかった半端物の貴様が……何をしに来た?」

 

「………僕たちはただ、僕たちにできることをしに来ただけさ」

 

敵意を向けてくるブレイズに対して、それに反するように穏やかな笑みを浮かべて話を続けるヴィクトリオン・ハート。

彼の言葉に何かを察したのか、ブレイズは鋭い眼差しで彼らを射殺さんばかりに睨み付ける、するとそれに反応したのかヴィクトリオン・ハートのすぐ隣にいたシンシアが怯え、短い悲鳴を上げて咄嗟にヴィクトリオン・ハートの後ろに隠れた。

 

「……貴様も、俺の邪魔をしに来たという訳か……」

 

「……別に僕たちは君たち神殺し同士の戦いに直接介入するつもりはないよ、現にメテオ君には事前にこのことは伝えてある……もし本気で君の邪魔をするなら彼らと共にここに来たはずだ」

 

「………なら何をしに来た?」

 

「そんなの、決まっているでしょう」

 

ブレイズの問いかけにライラが不敵な笑みを浮かべながら彼らの間に入り、答えた。

いつもの飄々とした笑みは浮かべずに真剣な顔つきをした彼女は手の関節をぽきぽきと鳴らしながらブレイズ達を睨み付ける。

 

「私達の“決意”を汚されそうになってるってのに……おめおめと引き下がると思ってるんですか?」

 

「………決意、だと?」

 

ライラの言葉に眉を潜めるブレイズ、すると彼女の言葉に再び楽しそうな笑みを浮かべたクロワールがブレイズの横に立ち、彼の肩をとんとんと叩いた。

 

 

 

「要するに……あいつらは、苗の肥料となるあれを取り戻しに来たんだよ」

 

 

 

彼女がそう言って指示したのは、ブレイズ達のいる場所の先にひっそりと建てられた祭壇。

かなり年月が経過しているのを物語っているその祭壇、その奥に何かがあるのをブレイズは見つけた。

 

祭壇の中でひっそりと輝く、“くすんだ結晶”…。

それを見た時、ブレイズは彼女の言う決意が何であるかを理解した。

 

 

 

「………なるほど………利用される前に奪い返しに来たという訳か………お前達、元女神が手放した、“シェアクリスタル”を………」

 

 

 

この場所に奉られた祭壇に納められていた物…。

 

それは古代女神であるかつての自分たちと決別し、新たな道へと進むための証としてシンシアたちが手放し、この場所に“封印”した“彼女たちのシェアクリスタル”だった。

 

 

 

「私らのシェアクリスタルを今更取り返してどうこうってわけやないけど……ろくでもないことに利用されるのは、俺達としてもまっぴらごめんなんでな」

 

「諦める、なら今の内……」

 

ブレイズがそのことに気付いたためか、いつもの口調を変えて、張りつめた男口調に変えたヤエがカーボンブレイドとハンドガンを取り出し、ステラが警告する。

しかしブレイズはそれに対し、口元に微笑を浮かべるとヴィクトリオン・ハートたちへと再び視線を向けた。

 

「………ふっ、だからと言って俺があれをお前たちに手渡すと思っているのか?」

 

「………悪いけど、僕はそう思ってないからここに来たんだよ………危険は承知のうえでね」

 

そう、これがヴィクトリオン・ハートたちがここに来た理由。

ここに来る前にメテオに話したのは、“自分たちが譲ることのできない物をブレイズから守りに行く”ということ…。

つまりは、彼女たちのシェアクリスタルをブレイズの野望のために利用させないために、ブレイズと正面から戦うのを覚悟したうえで奪還に来たのだ。

 

ヴィクトリオン・ハートはそう言うと、腰にゲーム機のような形状をしたバックルを装着し、ベルトを腰に巻いた。

そしてバックルに装填されているROMカセットの形状をしたパーツを押し込んで、ベルトを起動させる。

その瞬間、彼の目つきが今までにないほど鋭く、力強い眼差しへと変化した。

 

 

 

「……悪いけど、邪魔させてもらうよ……これは僕達の……“俺達”の絶対に譲れない絆の証だからな……!」

 

『カ・セーット! ナウ・ローディング! チェーンジ! ヴィクトリオン・ハート!!』

 

 

 

いつもと違う口調になり、己の意志を表に出したヴィクトリオン・ハートが戦うための姿へと変わる。

頭に仮面をつけただけの姿だった以前の時とは違い、今回は両手両足にも装甲を展開している。

以前よりも戦闘を意識したための仕様なのか、ヴィクトリオン・ハートは自身が戦うための姿へと変身するとその拳を強く握りブレイズと対峙した。

それに合わせる様に、古代女神の先頭を請け負うライラとヤエも前線に出て戦闘態勢に入る。

 

「……面白い……なら俺の野望と貴様の絆、どちらが上か試してみるとしよう……!」

 

そう言うとブレイズは手に持っていた苗を再び懐に仕舞い、身構えた。

そして同じく後ろにいた紘汰達四人も腰にベルトを装着し、戦う体制に移行する……。

 

 

 

誰にも知られることなく、かつてこの世界を守護していた“魔神”と、この世界に降り立った“神殺し”が己の譲れない物を掛けて………その拳を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、プラネテューヌ教会では…。

 

「………ぅっ………」

 

「あ、ソウヤ! いーすん、ソウヤが目を覚ましたよ!」

 

「……ネプ……テューヌ……?」

 

ブレイズとの戦いでダメージを負い、意識を失っていた宗谷が目を覚ました。

彼がいつも使っている部屋のベッドの上、体中に治療の後として包帯やらを巻いた宗谷が目を覚ますと、目の前に自分の顔を覗き込むこの国の女神であるネプテューヌの顔があった。

そして、彼女の言葉を聞いて少し離れたところにいたイストワールがすぐに宗谷の隣に駆け寄ってきた。

 

「本当ですか!? 宗谷さん! 大丈夫ですか? ここがどこかわかりますか?」

 

「……とりあえず、俺の部屋だってのはわかるよ……いーすん」

 

「よかった~……何とか大丈夫そうだね、コンパとぷるるんが全力で治療してくれただけあるよ、さすがうちのヒーラー担当だね」

 

意識を取り戻し、特にこれと言って異常がないことを知ったネプテューヌとイストワールが安堵して胸を撫で下ろす。

イストワールに至っては相当心配していたのか、彼が目覚めた瞬間から泣き出しそうに目じりに涙を溜めている程だ。

ちらりと彼女を見て、心配をかけてしまったことを理解した宗谷は内心申し訳ない気持ちになってしまった、そんな彼女に心配を掛けないためかゆっくりと体を起き上がらせてみる。

まだ若干の痛みはあるが動かせない程でもない、プルルートとコンパの二人が治療してくれたのでその効果は絶大だったようだ。

 

「あ、ダメですよ無理して起きたりしたら! あの時あんなに攻撃を受けたのに……」

 

だが逆に彼女にイストワールに心配をかけてしまった。

しかし、宗谷は彼女を安心させるためか彼女の目の前で自分の手をグッパと握り、口元に笑みを浮かべる。

 

「大丈夫、動けないわけでもないって……それに、すぐに飛び出したりなんかしないよ」

 

宗谷はそう言うと、表情をどこか陰りがかかったものに変える。

 

「さっきの戦いで……あいつが……ブレイズが並大抵の相手じゃないってのはいやって程わかったからな……」

 

先の戦い…。

彼が気を失う前に激突することとなった、異世界の仮面の戦士……仮面ライダーブレイズ。

悔しいが、彼の力は今の自分で太刀打ちできるようなレベルではないと宗谷はその身で直に感じていた。

意識を刈り取られる寸前まで、自分はこれと言った反撃も満足にできず、完膚なきまでに叩きのめされてしまった。

その時に受けたブレイズの拳の重みが今でも物語っている………ブレイズは今までの敵とは格が違いすぎるということを………。

 

「……でもよかったよ、宗谷のお友達が助けてくれなかったら間に合わなかったかもしれなかったんだって」

 

「友達………あ、そうだ! いーすん、ヒロミちゃんは!」

 

ネプテューヌの言葉に宗谷はすぐブレイズとの戦いの時に一緒に戦ったヒロミの事を思い出し、イストワールに問いかけた。

彼女も鎧武・修羅と戦いを繰り広げていたはず、助けてくれたのが彼女だとしてただで済んだとは思っていない。

すると、イストワールはどこか申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「……すみません、ヒロミさんは宗谷さんと一緒に……」

 

「そんな……!」

 

「でも大丈夫です、目を覚ましたヒロムさんと交代して何とか離脱に成功したんです」

 

「ヒロムが…?」

 

彼女が無事であることを知って安心する宗谷、しかし、それがただで済んだわけではない。

 

「ただ、その際にヒロムさんの方も怪我を負ってしまって……宗谷さんが目覚める前まで一緒に意識を失っていたんです」

 

「っ……そうか……」

 

友人が怪我を負っていたということに宗谷はどこか落ち込んだ様子を見せた、自分がもう少し抵抗出来ていたら大切な友達に怪我を負わせることはなかったかもしれないのに……と宗谷は自身の拳を無意識に握り絞める。

 

「でも宗谷さんと一緒にヒロムさんも治療を受けて今は意識を取り戻しています、それと一緒に体をヒロミさんに後退してもらって念のために彼女の方も治療を施しました」

 

「すごかったんだよ、ヒロくんが女の子になって! 前にあったヒロくんがまたこっちに来てたのもだけど、さすがに私もびっくりしちゃったよ」

 

「それは俺もびっくりしたよ……でも、二人とも無事なら良かった……あ、そう言えばヒロムは? もう目を覚ましてるんだろ?」

 

彼が治療を受けて命に別状はないことを知った宗谷は、僅かに安心を抱いたのか今ヒロムがどうしているのかを訪ねる。

 

「あ、えっと………」

 

「そ、それは……ねぇ……?」

 

すると、なぜかイストワールとネプテューヌは二人一緒に顔を見合わせて何とも困ったような表情を浮かべた。

一体どうしたのかと宗谷が疑問を感じて首を傾げる。

 

 

 

「……それじゃあ、会いに行く? ヒロくんとソウヤを助けてくれた人たちのとこに」

 

 

 

そう言ってネプテューヌは恐る恐ると言った感じに宗谷に告げた。

 

 

 

そして、彼女に言われるがまま宗谷はベッドから立ち上がりイストワールの補助を受けながら自室を出てネプテューヌたちがいつも過ごしているリビングへと移動する。

 

すると………。

 

 

 

 

 

―――いぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!

 

 

 

 

 

突然部屋の中からヒロムの物と思われるとんでもない叫び声が聞こえてきた。

まるで断末魔の叫びかと錯覚するほどのレベルの絶叫、その叫びに秘められた必死さを感じ取った宗谷は一瞬で彼の身にただならぬことが起きているのだと察した。

 

「お、おいどうしたんだ!? 何があったんだよヒロム!」

 

何事かと宗谷が慌てて部屋のドアを開けると、そこには…。

 

 

 

「いでででででででででででででででで!! ギブギブギブッ!! 折れる折れる!!背骨ぽっきり行くって! 背骨真っ二つになるってぇ!!」

 

「白状しろぉ! お前と絵美の間に何があった!! 俺の妹を誑かしたのか? なら容赦しねぇぞコラァァァァァアアアアアアアアアアア!!」

 

「ちょっとメテ兄もうやめてよ! ヒーくん怪我人なんだし、それにヒーくんはそんな人じゃないってさっきから言ってるでしょ!」

 

 

 

そこには見覚えのある茶髪の天然パーマの目つきが鋭い青年が友人であるヒロムを担ぎ上げて両肩の上に乗せ、彼の首と片足を手で持ちヒロムの体をブリッジさせるかの如く背骨を締め上げる、プロレス技でいうところの“アルゼンチン・バックブリーカー”を決めて、その青年をこれまた見覚えのある茶髪の少女が必死になって説得しているという中々にシュールな光景が広がっていた。

このあまりの状況に混乱は免れない宗谷の思考だが、まずそれよりも早く彼はあることに驚いた。

 

「め、メテオ!? それに絵美ちゃん!? なんで二人ともここにいるんだ!? ていうか、何この状況、何事!?」

 

「あ、起きたのか宗谷? ちょっと待ってろ、今こいつを始末………じゃない、ちょっと尋問してからにしてくれ………!」

 

「今始末って言ったよな!! 確実にこいつ始末って言ったよな!? それに尋問ってろくでもないことこの上ないだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!! ちょっ、宗谷!! ヘルプ!! ヘルペスミーーーー!!」

 

「あ、そっちゃん! ねぇメテ兄なんとかしてよ! さっきからあたしの言う事全然聞いてくれないんだよ!?」

 

宗谷の事はそっちのけでヒロムにアルゼンチン・バックブリーカーを決め込むヒロムとは違う経緯で知り合った異世界の仮面の戦士である友人、メテオの奇行に驚く宗谷。

そして、その宗谷に彼の説得を頼み込む絵美、なぜ彼ら二人がここにいるのかわからない宗谷は困惑した様子で目線を泳がせる。

すると、そこへこの状況を離れた位置で見るに見かねたと言った様子で観察していたアイエフが宗谷に近づいてきた。

 

「実は…あんたが目を覚ます前に、あのヒロムってやつが目を覚ましたんだけど、その時にそこの絵美って子がヒロムに抱き付いて……そのせいで今プロレス技決めてるあいつが何かよからぬ勘違いをしてなぜか大激怒、今に至るって訳よ」

 

「……解説てんきゅ、アイエフ……状況は大体分かった」

 

理由を聞いた宗谷はどこか疲れた様子で頷くと、なんとなしに片手で顔を覆って小さくため息をついた。

何事かと心配して見たら、まさか仲間内で痴話げんかとは思いもよらなかったからだ。

なるほど、だから先程ネプテューヌとイストワールの二人が困ったような表情を浮かべていたわけだと納得した宗谷、とりあえずこの状況をいつまでも放置しておくわけにはいかないと宗谷が何とかメテオを止めようと前に出る。

 

「おいメテオ、とりあえず落ち着いてくれ……そうでないと話が……」

 

「絵美は嫁にはやらねぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええ!!」

 

「そんなこと一言もいってねぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!?」

 

「あーーーもう! いい加減鬱陶しいわね! ちょっとあんた達、宗谷の知り合いみたいだけどいい加減にしなさいよ!!」

 

宗谷の説得に耳を貸さず、大絶叫を轟かせるメテオとヒロム。

これは何を言っても無駄ではないのかと宗谷が薄々感じ始めているとこの状況にい影ヌんざりしていたのであろうアイエフが半ギレでメテオとヒロムに詰め寄り、二人を止めに入った。

さすがは縁の下の力持ち、いざという時は頼りになるのがアイエフである。

 

「……なんか一気ににぎやかだね?」

 

「………俺もびっくりしすぎて心なしかどっと疲れたよ………ところで、他のみんなは?」

 

一気ににぎやかになった教会に嬉しいやらそうでないやら複雑と言った感じの心境を抱いたネプテューヌに宗谷が問いかける。

実はさっきから部屋の中を見回してもアイエフ以外の面子のネプギアとピーシェ、そして宗谷達を治療してくれたというプルルートとコンパの姿がなかったのだ。

彼女達がどこにいるのかと宗谷が疑問を抱いていると、その問いかけにはイストワールが答えた。

 

「もともとネプギアさんとピーシェさんは夕食の買い出しに出ていまして、コンパさんとプルルートさんは人数が増えたので材料が足りないのではないかと治療を終えたらすぐにその手伝いに向かいました、あ、それとあと一人も……」

 

その時、イストワールがその先を言おうとした瞬間、教会の居住スペースと玄関である下のフロアを繋ぐエレベーターの扉が開く音が聞こえた。

時計を見ると、時間は丁度夕食時、おそらく買い出しに出かけていたネプギア達が帰ってきたのだろう。

 

「あ、噂をしてたら帰ってきたようですね」

 

「ねぷてぬ! いすとわる! ただいま~~!」

 

「おぉ、おかえりぴー子!」

 

「おかえりなさい、ピーシェさん」

 

そしてさっそく、廊下の奥から元気な声と共にピーシェが駆けてきてイストワールとネプテューヌを呼びながら宗谷の隣にいるイストワールの足元に抱き付いた。

抱き付いてきたピーシェをイストワールは優しく抱き留めると、彼女に笑みを向けて帰ってきた彼女を出迎えた。

イストワールに抱き留められたピーシェ、すると彼女のすぐ隣にいた宗谷に気付いた。

 

「あ! そーやおきた!」

 

「お、おう……起きたぜ、ぴぃ? ネプギアと一緒に買い物か?」

 

「うん! ぴぃね、ねぷぎゃーのおてつだいしたの! たくさんかいものしたよ!」

 

「へぇ、そうなのか、えらいぞ? ぴぃ」

 

宗谷はお手伝いをしたということにご満悦な様子のピーシェを褒め、彼女の頭を優しく撫でる。

するとピーシェは満足そうな表情を浮かべて嬉しそうに笑った。

 

「おーおー、こっちのピーシェちゃんは宗谷とイストワール様によく懐いてんな」

 

そこへ、ある人物がやってきた。

片手にビニール袋を携えながら、まるで親子の様なやり取りを交わす宗谷達とピーシェにそう言った人物の姿を見た時、宗谷は再び驚くこととなった。

 

「か、カズマ!? お前も来てたのか…」

 

「よっ、宗谷、目が覚めたみてぇだな」

 

メテオ達に続き、カズマも来ていたことに驚いた宗谷に軽く手を上げて答えるカズマ。

それに続いて同時に買出しに出ていたネプギア達の三人も遅れて部屋へと入ってきた。

 

「あ~、そーくんもそーくんのお友達も起きたんだ~? みんな元気いっぱいだね~?」

 

「宗谷さんが運ばれてきたときは驚きましたけど、目が覚めたなら何よりです!」

 

「でも、まだ無理しない方がいいですよ? もうちょっと待ってくれたら、元気が出るごはん作るです♪」

 

それぞれの手に持ったビニール袋を掲げるプルルート、ネプギア、コンパの三人。

やはり予期せぬ来客もあったせいかその量はいつもよりも多い、どうやら彼らの分も纏めて料理を作るらしい。

 

あんなことがあった後でいろいろと不釣り合いな気もするが……今日はなかなか賑やかな食事になりそうだと宗谷は感じた……。

 

「………ピーシェ」

 

「………」

 

イストワールが抱いているピーシェの姿を見て、何やら複雑そうな表情を浮かべるメテオとヒロムに気付くこともなく…。

 

 

 

 

 

 

 

その後、何とかメテオとヒロムのいざこざをアイエフと絵美、そして宗谷が何とか収めたところで夕食が出来るまでの間、宗谷、ヒロム、メテオの三人は宗谷の部屋で情報͡交換を行うことになった。

自身の友人を自分の部屋に呼ぶというのは学生のような気分で宗谷は若干どぎまぎしていたが…。

 

「………」(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

「……なあ、宗谷……あいつ怖い……なんとかして」

 

「無茶言うなよヒロム、俺も怖いんだ……」

 

ヒロムに対してもろに敵対心をむき出しにしているメテオが原因で二人は気が気でなかった…。

 

だが、一応交換するべき情報は交換することはできた…。

 

「紘汰さんだけじゃなくてミッチや貴虎、それにザック………鎧武のキャラがみんな揃って敵になるなんて……」

 

「俺だっていまだに信じられないさ……ミッチ達だけじゃなく紘汰兄さんがそんなことになってたなんて……それに、何よりもブレイズだ……お前達を一切の抵抗を許さずに倒したんだ……」

 

「………状況は最悪ってことだな………さて、これからどうしたものか」

 

自身の憧れたヒーローたちが揃って敵側に落ちたということにショックを受ける宗谷、自分が世話になった兄貴分が敵によって凶悪な狂戦士にされてしまったことに戸惑うメテオ、そしてこの状況を大まかに見て事の重大さが自身の考えることよりもいっそう劣悪な状況だということを察したヒロム、彼ら三人は揃って深刻な顔を浮かべる。

 

彼らが知っている伝説のヒーローが敵になってしまったこともそうだが、何よりも厄介なのはブレイズの存在だった。

紘汰達を己の兵士に仕立て上げ、ブレイズ自身が持つ圧倒的な強さを持ってすればそれはまさに絶対無敵の強敵ということに間違いはない。

今自分たちは今まで以上に強大な敵の前に立っているのではないかと、宗谷はこの時感じていた…。

 

「……なあ、メテオ……とか言ったか? お前に聞きたいんだが」

 

するとここで、ふとヒロムが前にいるメテオに声を掛けた。

一瞬メテオはヒロムに声を掛けられてむっとした表情を浮かべるが、今は個人的な意思で争っている場合じゃないと割り切り彼の言葉を聞き入れることにした。

 

「あいつ……ブレイズってのは、お前の世界にいたんだろ? ……ぶっちゃけ聞くけど、お前から見てあいつはどう思う?」

 

今までにない真剣な顔つきでブレイズについて尋ねるヒロム、それに対してメテオはしばらく悩むような顔を見せると…。

 

 

 

「………たぶん、俺達が戦っても勝てるかどうかは怪しい……いや、おそらく無理かもしれない……」

 

 

 

酷く沈んだ様子ではっきりとそう告げた。

 

メテオは最初に出会ったあの時から薄々と感じてはいたのだ、ブレイズの中に秘められた自分たちを上回る、圧倒的なプレッシャーと、圧倒的な力を…。

それは、同じ神殺しが故に感じ取った物なのか……はたまたそうではないのか、メテオは複雑な物を抱きながらも今回敵となって現れたブレイズにとてつもない脅威を以前から感じていたのだ。

 

「奴は俺やカズマと同じ力を持った存在だ……そもそものスペックが並はずれている上に……なんていうか、あいつは今まで以上の奴よりもでかく見える……例えるならそうだな……向こうがライオンで、俺達が子犬に思えるくらいには……」

 

「………要するに、今の俺達じゃ太刀打ちできないかもしれねぇって訳か………参ったな、おい」

 

自分で聞いておきながら何とも嫌な返答が帰ってきたとヒロムは肩を落とす、その様子をベッドの上に座る宗谷が見つめ、心なしか自身の胸中にも不安という感情が湧き上がってきてしまった。

 

(………あの時受けた奴の拳………)

 

宗谷の意識を刈り取った、ブレイズの容赦のない拳。

その身に余すところなく受けた彼だからこそ、彼は感じていた……ブレイズの拳に秘められた、重さを……その揺るぎない信念のような物を……。

体を穿つように放たれたブレイズの一撃一撃に込められた何か……それは彼が持つ野望に対する“執念”のような物ではないのか……。

自身が戦うために決意を固めたように、奴もその野望のために執念を燃やしている……腕っ節だけじゃない、その執念という想いがブレイズの内側と外側の両方を強くしているのではないだろうか?

 

「………どうしたらいいんだ………俺達は………」

 

それ程までに強い意志を持ち、メテオ達をも恐れさせる力を宿した相手に、もう一度挑んで勝てるのか……一抹の不安を感じた宗谷は無意識の内に表情を暗くしていた。

 

そんな時、空気が沈んでいる宗谷の部屋の扉がノックされ、バタン! という勢いのいい音と共に有無を言わさず開かれたドアから小柄な影が部屋へと飛び込んで真っ先に宗谷へと抱き付いてきた。

 

「そーやー!」

 

「えっ!? っと、ぴぃ? どうしたんだよ急に部屋に入ってきたりして…」

 

部屋に入ってくるなり、ベッドの上にいる宗谷に向けて飛びついてきたピーシェを抱き留める宗谷、無邪気な笑顔を彼に向けて抱き付くピーシェに宗谷は先程まで浮かべていた浮かない顔をやめて、ピーシェを抱き留めながら彼女に聞く。

 

「いすとわるがそーやたちよんできてっていってた! だからぴぃがよんできたの!」

 

「いーすんが……? 晩飯出来たのかな?」

 

彼女が部屋に来た理由を聞いてそんなことを呟く宗谷、すると彼はヒロムとメテオの方を見ると自分に抱き付いているピーシェをじっと見つめていることに気付いた。

 

「ん? どうしたんだ、ヒロム、メテオ?」

 

「ん………あぁ、いや別に………」

 

「この世界にも、ピーシェがいるんだなって思ってな…」

 

「へぇ、ってことはやっぱりお前たちのとこにもいるんだな、ぴぃは! さすが平行世界だな」

 

「? そーや、ぴぃ、ここにいるよ?」

 

宗谷はこの世界以外にもピーシェの存在がいるということを確認して驚く。

だが、それに対して、メテオとヒロムはどこか複雑な顔を浮かべていた…。

 

(………宗谷はまだ知らないんだよな…この子…ピー子が本当はどういう存在なのかを………でも、ここでその真実を教えたとして何が起こるかわからないからな………悪いな、宗谷)

 

ヒロムは彼女の持つ“真実”を知ってるが故に、そしてそれを彼に教えたとしてこの世界に何かしらの影響があるのではないかと危惧をしてそれを伝えることをやめた…。

世界という大きな存在に、何かしら影響を与えかねない重要な情報……特にその人物の“未来”のことや、“結末”を教えた時、この世界にどんなこと影響が起きるのか……所謂“パラドックス”のような現象が起きるかもしれないと危惧したためである。

何においても“ネタバレ”と言う行為は避けた方がいいというのが、彼なりの見解なのである………特に世界に関わるような重要なものなら、尚更………。

 

(………ピーシェ………あいつ………今頃どうしてるのかな………怖くてどこかで泣いてたりしてないかな………)

 

一方のメテオは自分の世界で生き別れてしまった彼の世界での彼女の事を思い出していた。

最初、この世界のピーシェと出会ったときは彼やカズマも絵美もたいそう驚いた、だがこの世界のピーシェは自分たちの知っている彼女ではないとわかると、それ以上追及することをやめた。

あくまで彼女がいなくなったのは、彼が戦う組織、“ダークトゥダークネス”によるもの……この世界にそんな組織はまだいないことを考慮した彼はその事を伝えて宗谷に余計な心配を掛けないようにと気を使ったのである。

 

「おっと、そうだ……ぴぃ、二人にはじめましてのあいさつしたのか?」

 

「うん、ぴぃ、めておうにもヒムロにも、ちゃんとあいさつしたよ!」

 

「あ、あぁ……ピー子があんなにかしこまった挨拶が出来るなんて驚いたぜ?」

 

「確かにな……こっちのイストワール様が教えたみたいだから、納得っちゃ納得だけど」

 

「そうか……二人とも俺の大事な友達だから、仲良くしてくれよ?」

 

「うん! ぴぃなかよくする!」

 

仲良く会話をする宗谷とピーシェの姿をじっと見つめるヒロムとメテオ。

彼らの姿はまさに仲のいい兄妹、いや、親子のようにも見えた気がした。

 

「おいおい、お三方?」

 

その時、何処か静かな雰囲気の部屋にまた別の来客があった。

カズマである。

 

「早くしねえと、お前さんたちの分が無くなっちまうぜ?」

 

そう言うカズマの右手には、こんがりとほど良い焼き目と香ばしいに匂いが香り立つ肉や野菜が刺さった串が握られていた…。

 

 

 

 

 

今晩の夕食は手軽に、そして力をつけるためにということで教会のテラスでバーベキューとなった。

既にテラスでは他の面子がにぎやかにグリルに火を起こし、その上に置いた網に串に刺した具材を置いて焼き始めている。

カズマに連れられてきた三人とピーシェは立ち上がる煙と鼻腔をくすぐる香ばしい香りに、反射的に思考が全部そっちに向いてしまった。

 

「おぉ、こいつはまた豪勢だなおい…」

 

「あんなことがあった後だ、これからに備えて力をつけなきゃ、やってられねぇからよ?」

 

驚く宗谷にカズマが答える、するとそこに手ごろな大きさの皿の上に既に焼けた串の乗せて運んできたネプテューヌが彼らの元に近づいてきた。

 

「はい、ソウヤ達も食べなよ! すっごいおいしいから! それに早く今のうちに食べとかないと私たちが全部食べちゃうよ~?」

 

少し意地の悪い笑みを浮かべながらバーベキューを持ってきた彼女だが、そんな言葉よりも、彼女が運んできたバーベキューの匂いを間近に買いで三人の腹の虫は否応なしに強制的に鳴ることとなった。

 

「……そんじゃ、お言葉に甘えて」

 

「そうそう、今のうちにソウヤ達も体力回復させとかないと! あ、ヒロくんも!」

 

「………まあ、腹が減っては何とやらっていうしな、ありがとよ、ネプ子?」

 

彼女が差し出した串を受け取った宗谷とヒロム、そしてネプテューヌはそのまま彼らの隣にいたメテオの前にも串を差し出す。

 

「ほらほら、君も食べときなよ!」

 

「え!? あ………あぁ………」

 

「………? どうかしたの? 私の顔になんかついてる?」

 

自分に向けて彼女の持ち味でもある天真爛漫な笑みを向けられて、メテオは反射的に顔を赤くして目をそむけてしまう。

それに気づいたネプテューヌがメテオに尋ねるが、メテオはそれに答えようとしない。

 

まあ、それも当然だろう、なにせ相手は違う世界とはいえ自分にとってもう一人の“最愛の人”なのだから…。

 

「……い、いや、何でもない……ありがとう」

 

「んー? そうかな? なんか顔が赤い気がするけど、もしかして熱でもあるかな? ……ていっ!」

 

「なっ!?」

 

なにやらおかしな態度を見せるメテオの様子が気になったネプテューヌは気になったのか、持っていた皿をカズマに預けて彼の額に自分の手を当ててもう片方の手で自分の額を抑えて熱を測るような仕草をしてみせた。

自分の額に感じる彼女の感触に否応なしに、メテオの動悸は跳ね上がる。

 

「んー……若干熱い気はするけど……わかんないや」

 

「わからねぇのかよ…」

 

「いや、だって私回復系の能力持ってないし、持っててもステータス上げるか攻撃系のスキルばっかのオールラウンダーだし」

 

「理由になってねぇよ……ていうか意味不明だよその理由」

 

結局は何もわからなかったのか、メテオから手を放したネプテューヌに宗谷はツッコミを入れる。

そんなやり取りをしている中、メテオは何やらぼーっとした様子でじっと彼女の事を見つめる。

 

「それよりもほら、みんな待ってるよ! ソウヤ達も早く来なよ?」

 

「そーや、ぴぃもおなかすいた…」

 

そんなメテオの視線に気づくことなく、ネプテューヌとピーシェは三人をバーベキューを行っているグリルの方へと誘う。

彼らの視線の先では先程まで深刻な空気を放っていた自分たちが場違いであるかのように、賑やかにグリルを囲む仲間たちの姿があった。

 

「………そうだな、まずはいろいろ考える前に」

 

「腹ごしらえ、と行きますかね?」

 

「あぁ、そうしようか」

 

彼女達に導かれ、宗谷達は一時の賑やかな食事を楽しむことにした…。

 

 

 

そして、バーベキューはなかなかの盛り上がりを見せた。

 

「な、なんだこれ……めちゃくちゃうめぇ! ヒロム、これスゲーうまいぞ!」

 

「あぁ、程よく肉はやわらかいし、何より肉の味を引き立てているこの爽やかながらも食欲を引き立たせる味は……」

 

「へへっ、驚いたようだな? なにせその肉の味付けはこの俺、カズマが担当したからな、ちなみに味付けは柚子胡椒を使ったんだぜ?」

 

「カズマは一応、料理人らしいからな……性格はこんななのに」

 

「ほんと、なんでいらないスキル持ってるの? 屑マ」

 

「ちょっと待って褒められてるのか罵倒されてるのかわからない!?」

 

 

カズマが味付けをしたバーベキューに舌鼓を打つ宗谷とヒロムに、自信満々な表情を見せるカズマとそれにジト目を向けるメテオと絵美。

 

 

「ん? ねぇねぇ、そこの天然パーマくん、なにしてるの?」

 

「天然パーマは余計だ! ……何って、まあ、ちょっと思考を変えて生クリームをつけて喰ってみたんだが、意外といけるんだよ……食うか?」

 

「いやいやいやいやいや!! さすがにそれはやばいって!! いくら私でもこの組み合わせはさすがにないと思うよ!?」

 

「そうか? 俺の世界のネプテューヌならむしろこれにプリン付けて出してくれそうなんだけどな…」

 

「えぇ!? 何その発想!? いったいどうなってんの別世界の私!?」

 

 

メテオの甘党ぶりにネプテューヌが驚きを通して、若干引いて異世界の自分のセンスに疑問を感じたり…。

 

 

「ほら、焼けたわよ?」

 

「ありがとう、アイちゃん! ヒーくん焼けたって!」

 

「おいおい、あんまり食べ過ぎんなよ、太るぞ?」

 

「なっ!? ちょっとヒーくん、今のは失礼じゃないかな……!」

 

「ごめん悪かった! だからドライバー仕舞ってお願い!!」

 

「………あんた達、仲いいわね?」

 

 

予期せぬ再会を果たしたヒロムと絵美の二人が何やら仲のよさげなやり取りを交わし、その様子をアイエフが微笑ましく見守り…。

 

 

「いすとわる! ぴぃも! ぴぃもにく!」

 

「あ、ちょっと待ってくださいピーシェさん、熱いですからもう少し冷まさないと…」

 

「ぴぃ、慌てるなよ、まだたくさんあるからな?」

 

「…こっちのイストワール様と宗谷は本当にピーシェの親みたいだな……もしかして、付き合ってたりとか?」

 

「……おい、カズマって言ったか? ……そこの二人、もう付き合ってるんだけど」

 

「………は?」

 

 

友人のまさかの関係の発展を既に知っていたヒロムから予期せぬタイミングで聞いたカズマがあまりの事で驚き、言葉を失ったり…。

 

 

「あれ? プルちゃん、首についてるのって?」

 

「ほえ? あぁ、これはね、あたしの………大事なものだよ~」

 

「……ふ~ん、あたしの知ってるプルちゃんは持ってなかったな~」

 

「でも、あたしは持ってるよ~? ほら~」

 

「あ、そうじゃなくて……まあ、いっか」

 

 

絵美がこの世界のプルルートが首に着けていたペンダントを見つけたり…。

 

 

「宗く~ん!」

 

「えっ!? ひ、ヒロミちゃん!? さっきまでヒロムだったのになんで!?」

 

「みんなして楽しそうなことしてるのに私だけ仲間外れとか~、寂しいから~……強制的にヒロムを裏に押し込んで出てきちゃった♪」(てへっ☆

 

「いや、てへっ☆ じゃなくて……ていうか、ち、近い!? あの、ちょっと近くないですかねぇ!?」

 

「ん~? もしかして宗くん、ドキドキしちゃってる~? ならもっとドキドキしてみる?」

 

「あ、いや、だから、その…!」

 

「………宗谷さん? ヒロミさん? 何をしてるんですか?」

 

「「………ハッ!?」」

 

 

いつの間にか復活していたヒロミが表に出てきて宗谷の腕に抱き付き、宗谷がどうしたらいいか困っているのをイストワールに見られ、二人揃って本の角を頭に喰らいそうになったり…。

 

 

「そーれっ! 絵美ちゃんのをわしづかみ~♪」

 

「はわっ!? だ、誰!?」

 

「ほうほうなるほど……小ぶりのBですか……けど、今後に期待が持てるかな~? さぁて、どんなおっぱいに育つかな~?」

 

「ちょっ、やめっ……んやぁっ! そこっ……やらぁ…!」

 

「おっ、いい反応……やばっ、この子かわいい……ヒロムにはもったいないくらい……ちょっと私欲しくなっちゃったかも……♪」

 

 

ヒロミが一瞬の隙をついて絵美の胸を揉みしだき、かなり背景に百合の花が咲くようなセクハラをしたり……

 

 

「っ! 絵美の声……! おい誰だ! うちの妹に不埒な真似をしてるやつは!!」

 

「あ……背骨デストロイヤーが来た……しかたない、逃げよっと♪ 後は任せたよ、ヒロム?」

 

「え? ………ひ、ヒーくん!?」

 

「あいつまた最悪のタイミングで逃げやがった……!! いや、こ、これは違うんだ絵美! これには事情が!」

 

「………やっぱテメェか」

 

「おい待て! 待てって!! 待ってください!? 話を聞いて!! 俺は無罪なんだ! 悪いのはヒロミなんだ! だからまたアルゼンチン・バックブリーカーは勘弁してくださいお兄さん!!」

 

「誰が“お義兄さん”だぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」

 

「漢字が違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううう!?」

 

「………ヒーくんに………ヒーくんに触られた………ヒーくんに………揉まれた………どうしよう………」

 

 

その現場をメテオが目撃し、それに気づいてヒロミがヒロムと強制交代、第二次シスコン・バックブリーカーが発動されたり…。

 

 

「あ、宗谷さん……動かないでください」

 

「え? い、いーすんどうし……」

 

「……口元に食べかす、付いてましたよ?」

 

「お、おう……ありがとうな、いーすん」

 

「まったく、もっと注意してないとだめですよ?」

 

「あぁ、ごめん……でも、取った食べかすを自分で食べるのは、反則だと思う……」

 

「え? ……あ」

 

「いーすんさんも宗谷さんも、もうすっかりラブラブです♪」

 

 

親切心から食べかすを取るつもりがちょっとした行動で顔を赤くすることとなった宗谷とイストワールのやり取りを見て、コンパがほのぼのと笑みを浮かべたり…。

 

 

「あの、アイエフさん……さっきからどこかで壁を殴るような鈍い音が聞こえるんですが……」

 

「気にしたらダメよネプギア、何を見ても知らないふりをしなさい」

 

「そうだよ、ネプギア? いくら非リアの叫びを聞いたり見たりしても、見てみぬふりをして存分に壁殴りさせてあげよう?」

 

「あの、お姉ちゃん……何言ってるのかわからないんだけど」

 

「世の中のリア充はすべて滅びればいいんだぁぁぁぁあああああああああああ!」

 

 

そんな宗谷とイストワールのやり取りを見て壁を殴る何者かがいることを察して、ネプギアとアイエフ、ネプテューヌは見てみぬふりをしたり…。

ちなみに、壁を殴っているのはカズマだった……。

 

 

「……なあ、宗谷……お前はイストワールと恋人になってどうだった?」

 

「なんだよメテオ急に………んー、どうって言われてもな………強いて言うならこれから先、いーすんの事を守っていきたいって思いが強くなったってことかな?」

 

「……それだけか?」

 

「ああ、それだけだ……四の五の言っていろいろなことに不安を抱えるよりも、自分が成し遂げたいと願った想いをまっすぐに見据えて、受け入れて、突っ走る……不安になって止まってたり、その不安から諦めたりしたら一生後悔するって、ある人が教えてくれたんだ……だから俺はいろいろと俺の過去とかをどうこう考えるよりも、目の前にある大切な人を今度こそ絶対に守るって決めたんだ」

 

「………想いを見据えて、受け入れて、突っ走る、か………お前らしいと言えば、お前らしいかな?」

 

「そうか? ……ところで、なんでお前がそんなことを聞くんだよ? ……好きな人でもできたか?」

 

「っ!?」

 

 

宗谷とメテオがなにやら恋愛方面についての相談を行っていたり…。

 

 

「バーベキューって、いろいろ豪華で楽しいですけど、服に煙の臭いとか着いちゃいますよね?」

 

「じゃあ、せっかくだし片付けたらみんなでお風呂入ろうよ! この前のパジャマパーティーのリベンジもかねて裸の付き合いだよ!」

 

「やたー! おふろっ、おふろー!」

 

「お~! みんなでお風呂だ~♪ じゃあ、あたし~絵美ちゃんの頭洗ってあげるね~?」

 

「そ、そんな!? 別に一人で出来るよプルちゃん!」

 

「ていうか、うちのお風呂ってこの人数で入れるの?」

 

「あいちゃん、そこは気にしちゃいけない所ですよ? ね? いーすんさん?」

 

「いや、私に聞かれましても………でも、まあ、せっかくですし、ここで余計なことは言わないでおきましょうか」

 

 

女性メンバーがこの後、一緒に入浴する約束をしていたり…。

 

 

「ったくよ~! なんだよ宗谷!! 俺の知らない所で彼女作りやがって! あてつけか! 扱いの悪い俺へのあてつけか!!」

 

「いや、そんなこと言われても……ていうか落ち着けカズマ、お前飲みすぎだ」

 

「もう完全に出来上がってるな……おい、メテオ、何とかしてくれよ」

 

「………自分の成し遂げたい想い、か………」

 

「ん? ………おいどうした? シスコン天パ」

 

「誰がシスコン天パだ!?」

 

 

男性陣はやけになって飲んだくれたカズマに困り果ててたり、と…。

 

予期せぬ再会を祝すのと、ダメージを負った者達の体力をつけるために執り行われたバーベキュー大会は大いに盛り上がり、その場にいた者達との距離を縮めることとなった。

たくさん用意していた材料が底をつき、食べ終えた食器やグリルをみんなで洗って片付けた後、さっきまでの賑やかさが嘘のように静まり返ったテラスに残った宗谷が空を見上げていた。

 

「こんな所でなに惚けてんだよ、宗谷」

 

「……ヒロム、それに、メテオも」

 

「夜の風は冷えるぞ? 風邪ひく前に戻った方がいい、特にお前はダメージがデカかったんだから、まだ用心するべきだぞ」

 

「ありがとう、でも大丈夫だ、腹いっぱいに飯も食ったし、もう体もだいぶ動くようになった」

 

そこに宗谷を探していたのか、ヒロムとメテオが合流し、彼の体を気遣うが宗谷は二人に心配かけまいと腕を動かして大丈夫だということをアピールする。

そんな宗谷の姿にヒロムとメテオは、やれやれと言いたげな笑みを浮かべると何となしに彼の両隣に立ってテラスから夜空を見上げた。

 

「……楽しかったな」

 

「……あぁ」

 

「……不謹慎かもしれないけど、あんなに楽しいのは久しぶりだ」

 

先程の食事の事を思い浮かべて微笑みを浮かべる三人、彼らの言うようにいつもよりも大人数で食べる食事という物は楽しいし、いつもよりもおいしく感じるものである。

あの僅かな時間の間で三人の心にはどこかほっとした安心感のような物が溢れていた。

 

だがそれ故に……。

 

「……また、こういう楽しい時が来ればいいけどな……」

 

不安もまた大きくなる…。

 

ぽつりとつぶやいたメテオの言葉に、宗谷とヒロムはその表情を再び深刻な物へと変えた。

この世界に現れた三人目の神殺し、ブレイズ…。

彼の持つ野望によって、まだ誰も知らない水面下で何かが起ころうとしている…。

それを宗谷達は何となしに理解はしていた……。

そして、その野望が果たされそうになった時、果たして自分たちはブレイズという強大な敵を打倒すことが出来るのか?

彼らの心境には、そんな不安が再び満ちようとしていた……。

 

 

 

「………けど、このまま諦めるのはガラじゃない………」

 

 

 

しかし、その不安とは裏腹な言葉を、宗谷が言い放った。

 

宗谷はその言葉を言った後に、メテオとヒロムの二人を交互に見る。

 

「まだ俺達は倒れてないし、こうして生きてもいる……あとは、諦めなければ可能性は見えてくるかもしれないだろ?」

 

「……その可能性に心当たりは?」

 

「ない」

 

宗谷の言葉にヒロムが問いかけるが、宗谷はきっぱりとそう言いきった。

あまりにも早い返答に二人は呆気にとられるような表情を浮かべる……だが、それに対し宗谷は微笑みを浮かべると……。

 

 

「でも、心強い仲間たちは……ここにいる」

 

 

そう言って片手で握り拳を作った。

 

 

 

「俺達は確かに奴にとっては他愛ない存在かもしれない……けど、それでも、俺達三人やこの教会にいるみんなと力を合わせれば立ち向かえるかもしれない」

 

「……宗谷……」

 

「………」

 

「俺はこのまま奴の野望を野放しにするつもりはない……紘汰さんを、ミッチを……あいつに利用されてる、俺の憧れたヒーロー達を助けたい……それに、俺はもう一度こうして、みんなと笑いあいたい……だから、俺はもう一度ブレイズと戦う、そして……なんとしてでも、奴を止める! 例え何度倒されようとも、何度だってあいつに喰らい付いてやる!」

 

 

 

そう強く宣言した宗谷にヒロムとメテオの二人は真剣な表情を保ったまま、お互いの顔を見る。

そして、しばらく互いを見つめあった後、どちらからともなくこくりと頷き、宗谷へと再び向き直った。

 

「………嫌いじゃないぜ、そういうの………俺も同感だ、ヒロミがやられたお礼参りもしなくちゃいけないと思ってたところだしな」

 

「それに、同じ神殺しである俺にも奴を止める義務がある……」

 

二人の表情には、何処か決意に満ちたものを感じた。

ヒロムとメテオは宗谷にそう返答すると、そっと彼に近づいて互いの拳を宗谷に向ける。

 

「……付き合うぜ、同志……こうなったら、地獄の底まで相乗りしてやるよ」

 

「お前のいるこの世界を……俺の大切な兄さんや友達を……これ以上好きにさせねぇ……俺も力を貸すぜ」

 

「ヒロム……メテオ……」

 

自身に力を貸してくれると言ったヒロムとメテオに、宗谷は同じように己の拳を向けて、子釣りと打ち合わせた。

 

「………今度こそ勝つぞ、絶対に」

 

「あぁ」

 

「おう」

 

自分たち個々ではブレイズに太刀打ちできないかもしれない、だがここにいるのは激しい修羅場を潜り抜け、絆を結んだ心強い仲間たち。

個々ではだめでも、多くの絆を纏め、力を合わせればどんな苦難も乗り越えられるかもしれない。

友の居るこの世界を、大切な人のいるこの場所を、もう一度笑いあえることが出来る様に、数々の思いをその胸に刻み込んだ三人の心には不安という感情が消え去ったわけではないが……もう一度立ち向かう、“勇気”が満ち始めていた。

 

 

 

「おーい、お前ら、盛り上がってるところ悪いがちょっといいか?」

 

 

 

するとそこへ、カズマが現れ、三人を呼んだ。

何事かと三人がカズマの方に目を向けると、カズマは右手に風呂桶を持ちながら楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

「明日に備えて、より一層親睦を深めようと思ってな、どうだ? これから一緒に風呂でも」

 

「……風呂、か」

 

「カズマに誘われるのは癪だけど……」

 

「まあ、いいんじゃないか? たまには、こういうのも」

 

カズマの誘いに反応はまちまちだったが宗谷が悪くないとその提案を受け入れ、ヒロムとメテオもしかたないなと言いたげに笑みを浮かべるとややあってから首を縦に振った。

それを確認したカズマは宗谷達を連れて、このプラネテューヌ教会の風呂場へと向かうことにした。

途中で宗谷が風呂場への道を案内し、先導する形となって彼らを誘導し、途中で着替えやらを調達した彼らはしばらくして教会の浴場へと続く脱衣所の前へとたどり着いた。

 

「………順調順調♪」

 

「ん? カズマ、なんか言ったか?」

 

「あ、いや別になんもないぜ?」

 

「………?」

 

途中でカズマが何かを呟いたのにメテオが気づいたが、カズマは何でもないと言ったのでメテオはそれ以上追及することはなかった。

 

 

 

この時、彼らはカズマの“作戦”の一部として使われているということは、夢にも思わなかっただろう……。

 

 

 

そして、先頭を歩いていた宗谷が脱衣所のドアに手を掛けて、スライド式のドアを横に開けた時……。

彼らは目を疑った…。

 

「なっ!?」

 

「おわっ!?」

 

「はっ!?」

 

そこには、とんでもない光景が広がっていたからだ。

 

「ねぷっ!?」

 

脱衣所の籠の中に、いつも身に着けているジャージとワンピースを足したような服を入れて、健康的に程よく肉がついた四肢に似合うピンクのストライプの上下の下着を控えめな胸と腰につけただけの姿のネプテューヌが突然脱衣所のドアが開いたことに驚き…。

 

「えっ!? な、なんですか!?」

 

同じくいつも来ているセーラーワンピを脱いで、姉のネプテューヌよりも発育のいい一目見ただけでも張りと弾力がありそうな胸を覆っていた水色のストライプのブラのホックを外したばかりと言った様子のネプギアが同じくドアが開いたことに驚き…。

 

「ほえ? あ~、そーくんたちだ~、どうしたの~?」

 

二人とは違い、ほんわかとした雰囲気の笑顔を浮かべながらいつもの三つ編みを解いて身に着けていたブラを既に外して小ぶりながらもどこか目を引く胸の小さな双丘を露わにし、子どもっぽいショーツのみを身に着けた姿のプルルートが宗谷達に気付いて恥ずかしげもなくそう言って…。

 

「め、メテ兄! それに……そっちゃんと、ヒーくんまで……!」

 

服を脱いで、プルルートやネプテューヌよりかは膨らんでいる胸を覆う健康的ながらもどうしてもそれが女性の魅力を引き立てる下着であるピンクのスポーツブラよりも先に下半身のショーツを今まさに脱ごうとして手を掛けた状態で固まった下着姿の絵美…。

 

「そ、宗谷………さん………!?」

 

そして、身に着けていた衣服と、下着、それらすべてを脱いで二つ結びにしていた髪を下ろし、ほっそりとしたスレンダーな体つきをしていながらしっかりと女性らしい肉付きをした体に一糸まとわぬ姿となっていたイストワールが、突然恋人である宗谷が脱衣所のドアを開けたことに驚いて、顔を真っ赤に染め上げていた。

 

脱衣所を開けたと同時に飛び込んできたとんでもない光景、世の男性達が見たら飛んで喜びそうなまさに魅惑の花園という言葉が似合いそうなこの美少女たちの大胆すぎる姿を前にし、宗谷達三人は反射的に固まってしまった。

 

そしてそんな中………。

 

 

 

「いよっしゃぁぁぁぁぁああああああ!! シャッターチャーンス!! 偶然女性陣が風呂に入るという話を聞いたからどうかと思ったが、まさかこんなに事がうまく運ぶとは思わなかったぜぇぇぇえええええええええ!!」

 

「「「カズマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!」」」

 

「りぼーんずぅぅぅぅぅううううううう!?」

 

 

 

跳んで喜ぶ“変態(カズマ)”がいた。

 

意気揚々と首に引っ提げていたカメラを構える変態という名のカズマに宗谷達男性陣三人の鉄拳が飛んだ。

鳩尾に宗谷達のトリプルパンチを喰らったカズマはそのまま壁に向かって吹っ飛び、激突、床に倒れそのまま動かなくなった。

まさかカズマによって踊らされていたとは思いもよらなかった宗谷達は、怒りの込めた目で再起不能にしたカズマに更なる追撃をしようとするが……。

 

 

「……ねぇ、そこのラッキースケベさんたち? 大抵こういうイベントの後に男の子のキャラがどうなるか知ってるよね?」

 

「い、いくら宗谷さんたちでも……こんな……!」

 

「ヒーくんに見られたヒーくんに見られたヒーくんに見られたヒーくんに見られた…!」

 

「あなたたちはどうして揃いも揃って………!」

 

「なんだか~、そーくんたちも大変だね~?」

 

 

背後にからとてつもないプレッシャーを感じ、宗谷達が振り向くと…。

そこには刀を呼びだした満面の笑みのネプテューヌと、涙目になったままビームソードを構えたネプギアと、うわ言のように顔を真っ赤にして呟きながらゼンリンシューターを構えた絵美と、これ以上にないくらい顔を真っ赤にしたまま体にタオルを巻いて本の角を構えたイストワールが立っていた。

唯一の救いは女神化すれば最後、永遠のトラウマを残しかねないプルルートがのほほんと後ろで見守っていることくらいか…。

だが、状況が最悪なのに変わりはない…。

 

「ち、違うんだいーすん! これはここにいる変態が!」

 

「そ、そうだ! 俺達は何の罪もない! 俺達は利用されたにすぎないんだ!」

 

「だから落ち着け、絵美もネプテューヌも! な!?」

 

せめてもと、三人は力を合わせて必死に説得を試みる…。

 

 

 

「言い訳………無用です!!」

 

 

 

しかし、ここで力を合わせても女性の柔肌を見てしまった罪が消えることはなかった…。

その後、プラネテューヌ教会に三人の叫びが木霊したのは、言うまでもない…。

 

 

 

ちなみに……。

 

 

 

「………なんか外が騒がしいわね、何してるのかしらネプ子たち」

 

「さぁ、どうしたんでしょう……あ、ピーシェちゃん? 泡を流しますから、目を瞑っててくださいです」

 

「うっ……こんぱ、まだ? まだ?」

 

 

 

ネプテューヌ達よりも先に一足早く衣服を脱いで、風呂に入っていたアイエフとコンパ、そしてピーシェの三人は宗谷達に恥ずかしい姿を見られることはなかったそうな…。

 

そして断末魔を上げた時、さっきまでのシリアスを返してほしいと、この時の宗谷達は思ったそうな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………さすがは魔神といった所か、俺とここまでやり合えたのは、お前が初めてだ」

 

「………それはどうも」

 

祭壇がまつられた聖域にも似た場所でぶつかり合った、魔神と神殺しによる死闘は壮絶な物となった。

周囲の地面はまるでちょっとした隕石が落ちたかの如く抉れ、岸壁にはいくつもの亀裂やくぼみが形成されていた。

その中で未だに戦いを続けているのは古代女神の内の二人、ライラとヤエ、そしてブレイズとクロワールが洗脳し、先兵とした鎧武・修羅を筆頭とした龍玄、斬月、ナックルの仮面ライダー達。

背中合わせになって自身の拳を構えるライラと武器を構えるヤエ、その周囲を囲むように四人の仮面の戦士達がそれぞれの武器を構えている。

 

そして、魔神ヴィクトリオン・ハートと神殺し仮面ライダーブレイズの両者がそこから少し離れた位置で互いに睨みあった状態で身構えたまま互いの様子を窺っていた。

 

「……だが、忘れるな魔神よ……俺は、“神殺し”……神を殺す者……“魔神”であるお前にとっては天敵であるということをな!」

 

その均衡を破るかの如く、ブレイズがそう告げ変身したことで強化されたその深紅の拳を大きく引き、地面がさらに抉れるほどの力で地面を蹴り、目にも止まらぬ速さでヴィクトリオン・ハートとの間合いを詰めた。

空気を切り裂き、すべてを打ち砕く、彼が持つ最大最強の一撃がヴィクトリオン・ハートへと迫る。

この一撃は鎧武をも沈めるほどの威力を秘めた物、その一撃に“ブレイズが持つ本来の能力”が合わさり、直撃すれば一瞬で型が付くのは目に見えている。

 

しかし、ブレイズは拳を打ち出した時、違和感を覚えた。

 

(………こいつはなぜ、こんなにも落ち着いている………?)

 

だが、その一撃が迫るのを前にして、ヴィクトリオン・ハートは警戒や動揺を見せなかった。

顔が仮面に包まれているため表情は読み取れないが、その代り彼の放っている雰囲気はまるで湖畔のように静かな物だった。

そのあまりにも異様な落ち着きぶりに違和感を覚えたブレイズだったが打ち出した拳はもう止まらない、すべてを粉砕する最強の一撃をブレイズは仮面に包まれた魔神の顔面へとまっすぐに撃つ。

 

「確かに、相性は悪いかもしれない………でも」

 

しかし、その一撃をヴィクトリオン・ハートは回避しようとはしなかった、そして受け止めようともしなかった…。

 

彼のとった行動は………。

 

 

 

「それ故に、その天敵に対する“対処法”を持つこともできる………!」

 

 

 

自身が垂直に立てた左腕を正拳突きとして打ち出したブレイズの右腕に横薙ぎにぶつけることだった。

それにより、ブレイズの拳に秘められた力の向きが、“変わる”。

 

「………貴様っ………!」

 

魔神の行った行動にブレイズは動揺を見せる、その瞬間ヴィクトリオン・ハートは攻撃の軌道を反らされ隙が出来たブレイズの腹に右の掌底を思い切り叩きつけた。

ブレイズの身体が後ろに大きく後退する、何とか空中で体勢を立て直したブレイズはそのまま地面に足をつけ、がりがりと地面を抉りながら失速、地面に膝をつけた体勢で止まると、ゆっくりと仮面に包まれた顔を魔神へと向けた。

 

 

「………今のはただの防御ではないな…貴様のその戦い方、“護身術”か…」

 

 

ブレイズの拳の軌道を反らした今の一撃、それはヴィクトリオン・ハートの持つ戦い方の大きな特徴だった。

 

―――“護身術”。

 

敵を力によってねじ伏せる攻撃が“剛”なら、相手の攻撃を利用するのが“柔”。

彼の戦い方である護身術は、その剛と柔を使い分けた“己の身を護る”ことに特化した武術であり、ブレイズの戦い方には有効的な物だった。

ブレイズは己の力を込めた強力な一撃を拳に乗せて打ち出す、単純だが強力な打撃による戦闘を主に行う、それに対しヴィクトリオン・ハートはその攻撃力を“無力化”させる術を持っていたのだ。

先程のブレイズの一撃を反らせたのもそのためである。

彼はブレイズが打ち出した拳に対して、その攻撃により発生する力を正面から受け止めるのではなく、別の方向へと“受け流した”のだ。

目標に向かって前にまっすぐ向かっていた拳の力軌道がずれ、目標を見失い力もその方向へと向かいその身に攻撃を受けることはない。

そして、攻撃が反らされたことで生まれた隙を、見逃すことなく正確に突いて反撃する…。

 

この戦い方はブレイズに取って最も有効的と言える戦い方なのである。

 

「………だが、惜しいな」

 

しかし、護身術という対処法を持つヴィクトリオン・ハートには決定的な弱点があった。

 

「もうお前の身体は……限界を迎えたはずだ」

 

「………っ」

 

ブレイズの言葉通りというように、その瞬間ヴィクトリオン・ハートはその場に膝をついた。

 

「……本来、己の力を失ったお前がこうして戦うのは無理があるはずだ……既に相当な時間が経過している、もう立っているのもつらい程だろう」

 

「……確かにね、こっちはもう……引退した身な訳だし」

 

その場に膝をつき、肩で息をするヴィクトリオン・ハート、彼には変身するにあたってのデメリットが存在した。

彼は本来持つ力を失っている、それ故に無理にその力を引き出せばその反動がその身に帰ってくるのだ。

既に戦い始めて相当な時間が経過している、もう既に彼の身体は限界を迎えようとしていたのだ。

 

「愚かな…そのような状態で、俺に挑むとはな…せいぜい後悔するがいい、あの世でな」

 

限界を迎えた魔神にブレイズがそう告げ、再び拳を握る。

一歩、また一歩とブレイズはヴィクトリオン・ハートに近づいていく。

 

「……確かに……こんな状態で君と戦って、勝てるとは最初から思っていないよ」

 

「……なに?」

 

「だから僕は、最初からこう決めていたんだ……せめて、“邪魔”が出来る様にってね?」

 

「………まさか………!」

 

だが、ヴィクトリオン・ハートが告げたその言葉にブレイズは反射的に足を止めた。

そして、何かに気付いたのかブレイズが後ろを振り向くと……。

 

白い髪に紫の髪飾りをした少女、シンシアが中央にある祭壇へと向かって走っているのが見えた。

 

「……奴が本命か!」

 

ヴィクトリオン・ハートは囮、本命はシンシアがブレイズの気が逸れている内に祭壇に封印されたシェアクリスタルを奪うことにあったのだ。

それに気づいたブレイズがすぐさま行動に移る。

 

『change……Aice hand』

 

「やらせはしない…!」

 

両腕の炎の紋章を水色に変え、手の平に冷気を溜め始めたブレイズがシンシアを狙う。

 

 

 

「ヤエ!!」

 

「任せろ!!」

 

 

 

その時、別の場所で鎧武・修羅達と戦っていたヤエとライラが動いた。

ライラの指示を受け、ヤエが自分の持つ能力“スキルエネミー”を最大限まで引き出す、その瞬間彼女の背中に漆黒の機械仕掛けの翼が広がり、彼女の体を圧倒的な“敵意”で包み込んだ。

これを受けて鎧武・修羅達の意識が一瞬だが、ヤエに集中した。

 

「ちょっと失敬しますよっと!」

 

「なっ……うわっ!?」

 

「光実!」

 

その一瞬の隙を突き、ライラがまっすぐに龍玄へと向けて走り出し、鎧に包まれた体に鋭い前蹴りを浴びせ、体勢が崩したところを踏み台にしてさらに跳躍。

高く飛び上がった状態からそのまま一気に急降下し、シンシアに向けてて両腕を向けるブレイズの腕へと向けて強烈な跳び蹴りを撃ち込んだ。

 

「どぉぉぉぉぉぉぉせいっ!!」

 

「ぐっ……! おのれぇ!」

 

横合いからの一撃により、向きが変わり明後日の方向へと冷凍弾を飛ばしたブレイズがすぐさまライラを攻撃する。

しかし、ライラはその攻撃を身軽な動きで回避するとすぐさま間合いを取った。

 

「取った……!」

 

その隙にシンシアが祭壇の中に封印されていたシェアクリスタルの内の一つを奪還する。

 

「……小娘ェ!!」

 

それを見て怒りを露わにしたブレイズがすぐさまシンシアに向けて駆け出す、その速さは今まで以上に早くヴィクトリオン・ハートたちは対処することが出来ない。

 

「シンシア、逃げなさい!!」

 

「シンシア!!」

 

「っ!」

 

ライラとヴィクトリオン・ハートの言葉を受けて、シンシアが気づいたがその時には既に彼女の目の前にブレイズが迫っていた。

ブレイズが右手で手刀を作り、封印されていたシェアクリスタルを握るシンシアに向けて思い切り振りおろす。

 

咄嗟にシンシアが目をつぶって身を守ろうと両手を振り上げた……その時。

 

 

 

「………っ!!」

 

 

 

ブレイズの動きが、止まった…。

 

「………」

 

「………?」

 

手刀を振り上げた状態で動きを止めたブレイズにシンシアが違和感を抱く、彼女がブレイズの方を見ると、何やらブレイズはシンシアの事を見つめて固まっている様だった。

 

 

「………かがり………」

 

「え?」

 

 

そして、何かを呟いたのをシンシアが聞いたとき不意にブレイズの背中から火花が散った。

咄嗟にブレイズが正気を取り戻して背後を見ると、そこにはブレイズに向けて手の平を向けるステラの姿があった。

彼女の周りには小さな“銃口”の様な物が浮遊している、どうやら今の攻撃はそれによるものの様だ。

 

「今、のうちに……離脱……!」

 

「最低限の目的は達成しました! これ以上ここには要はありません、早急に離脱します!」

 

そして、ステラとライラの言葉に合わせたかのように、突如として彼女たちのすぐ近くに“ファスナーの様な次元の裂け目”が出現する。

狙ったかのようなタイミングで現れたその裂け目にブレイズ達は戸惑うが、ライラたちはその中へと迷うことなく飛び込んでいった。

 

 

 

「あ………」

 

 

 

この時シンシアは何かを見つけたのか地面に落ちたものを拾い上げた。

 

「ちっ………龍玄!!」

 

5人の中で逃げ遅れたシンシアに向けて指示を受けた龍玄がブドウ龍砲を構える、それに気づいたシンシアが慌てて拾い上げた何かと一つのシェアクリスタルを手にしたまま立ち上がると走り出し…。

 

「………っ!!」

 

ブドウ龍砲の弾丸を腕にかすめながらも、なんとか空間の裂け目へと飛び込んだ。

その瞬間、発生した空間の裂け目が一斉に口を閉じる。

残されたのは、ブレイズと鎧武・修羅たちだけだった。

 

「………」

 

祭壇の前で立ち尽くすブレイズはシンシアが姿を消した空間をじっと見つめる。

あの時、シンシアを攻撃しようとして動きを止めたブレイズ、彼は一体何があって動きを止めたのか…。

するとそこへ、事の成り行きを見守っていたクロワールが現れ、ブレイズのすぐ隣へと降り立った。

 

「あーあ、一個取られちまったな? どうする、追いかけねぇのか?」

 

「………いや、このまま続ける………すべてが揃っていなくても、シェアクリスタルはまだ残されている……一つ欠けた程度で何ら影響はないはずだ」

 

冷静にそう言ったブレイズは祭壇に残された残りのシェアクリスタルを見つめる。

それに対し、クロワールはどうでもよさそうに、ふーん、と返事を返すとどこからともなくある物を取り出して、それをブレイズに渡した。

 

「そんじゃ、さっさとお前の苗と“そいつ”を使って、“天樹”ってのを育てちまおーぜ? オレもう待ちきれねぇよ!」

 

意気揚々とそう言ったクロワールが手渡した物、それは金色のボディに色とりどりの果物が描かれた一つの鍵、鎧武の持っていた黄金の果実の欠片である“極ロックシード”だった。

それを受け取ったブレイズは、それを弄ぶように握ると視線を再びクロワールへと向ける。

 

「焦るな………すぐに行動に移る………ところで」

 

だが、その前にとブレイズはあることをクロワールに尋ねた。

 

 

 

「奴らのシェアクリスタルは………余分にあったのか?」

 

 

 

彼が訪ねたのは、祭壇に祭られていた古代のシェアクリスタルの数だった。

 

彼が見つめる祭壇の中、その中には封印されたシェアクリスタルが“4つ”存在した。

 

そのうちの一つは、先程シンシアが奪っていった…。

彼女たち古代女神は少なくとも“4人”しかいないはず、なら……“あと1つ”は誰の物なのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、別の場所では………空間の裂け目を通してあの場から脱出したヴィクトリオン・ハートが疲労困憊と言いたげな様子で木に凭れ掛かっていた。

彼の周りをライラたちが心配した様子で囲み、ステラがすぐさまヴィクトリオン・ハートの仮面に手を掛けて強制的にその仮面を脱がした。

 

「パパ………!」

 

「っ……大丈夫だよ、ステラ……一応、生きてるから」

 

「無茶をしますねほんと、“あの人”の協力がなかったら今頃どうなっていたことか…」

 

彼女を心配させないようにとヴィクトリオン・ハートはそう言うが、彼の髪のほとんどは茶髪から黒へと変色し、彼の顔の半分は荒いノイズのような物で覆われていた。

反動はやはり大きかった様だ、以前の時よりもノイズが荒くなっている。

 

「それよりも……シンシア、は……?」

 

「………ここにいる」

 

だが、それを気にすることもなくヴィクトリオン・ハートはシンシアのことを気に掛けた。

彼の言葉に、シンシアが答えてすぐ近くに寄り添う。

その時に彼は気づいたがシンシアも右腕には先程の追撃をかすめた時の傷が出来ていて、そこから血が流れていた。

 

「シンシア……怪我を……」

 

「……平気……それよりも、これ」

 

そう言ってシンシアは祭壇から奪ったシェアクリスタルをヴィクトリオン・ハートに見せる。

たった一つだが、奪還に成功した…その事実にヴィクトリオン・ハートは安堵の笑みを浮かべる。

 

 

「このクリスタル………“あの子”の………」

 

「っ! ……そうか……」

 

 

そう言ったシンシアが彼にシェアクリスタルを手渡す、するとヴィクトリオン・ハートはそれを右手で受け取り大事そうにそれを握りしめた。

 

 

 

「それと………これ」

 

「? ……これは」

 

 

 

そして、続けてシンシアが差し出した物を見た時、ヴィクトリオン・ハートはそれに目を見張った。

彼が目を見張った物、それはここに逃げてくる際にシンシアが拾い上げた“何か”であった…。

 

この“何か”が秘められた意味を知った時、ヴィクトリオン・ハートは物語の“核心”を知ることとなる……。

 




いかがでしたか?

次回……遂にブレイズの野望が動き出す……。

それでは次回でお会いしましょう…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。