スーパーノベルヒーロー大戦編、今回のお話はブレイズとの決戦、そこで宗谷は真実を知り、選択する…。
それではお楽しみください、どうぞ…
目の前にいるのは、絶対的な力を有した今までにない強大な敵だった。
その者の拳は、山を吹き飛ばし、“神をも殺す”と言っても過言ではない常軌を逸した……まさに常識が通用しない力を持っている。
一度その力を目にした者ならわかるだろう、このような敵に立ち向かっても敵わないと……格が違いすぎると………だが、そんな常軌を逸した敵に今まさに立ち向かおうとする者達がいた。
片や世界を守るため、片や守りたい者のため、そして……譲れない決意のため……それぞれに思うことに違いはあるだろう、だが今まさにその強大な敵に挑もうとする者が、ここに三人いた。
燃え盛る紅蓮の炎を思わせる闘志を漲らせながら、その場で両足を開き身構える仮面ライダーブレイズ。
そして、業火の愚者の異名を持つ戦士を前にしてそれぞれの武器を構えるのは何の因果かこの世界に集まり、集結し、共に戦うことを誓った深い絆で結ばれた三人の戦士達。
ブレイズと同じ存在であり、異世界でブレイズを生み出した組織と激闘を繰り広げている仮面の戦士、仮面ライダーストーム パーフェクトデストロイ。
異世界を一度救い、その後何の因果か別世界のゲイムギョウ界に迷い込み、ひょんなことで女神と似て非なる力をその身に宿した逸れ者にして元勇者、魔神 バニシングハート。
そして……友との絆、仲間との繋がり、それを力の糧にして、どんな困難に直面しても立ち上がり前に進み続けることを誓った、赤き勝利の勇者、クロス・ヴィクトリー フォーチュンリンク。
彼らもまたいつでも迎え撃てるように、それぞれの得物をその手に握り絞めまっすぐにブレイズを見据える。
今まさに、このゲイムギョウ界に芽生えた天樹で、それを齎したものとのまさに別次元の戦いが幕を開けようとしていた。
そしてそれは………唐突に始まりを迎えた………。
「っ!」
まさにそれは突然、されどそれはいずれ来るとわかってはいた始まりの合図だった。
三人の目の前、それなりに距離の開けて、離れた位置に立っていたブレイズが勢いよく地面を蹴り、三人との距離を一気に詰めてきたのだ。
力強く地を蹴りながら直進するブレイズは、特定の間合いに入ると大きく膝を曲げて姿勢を低くし大きく跳躍し、右の拳を振り上げる。
「各自散開しろ! まともに受けるな!」
すぐさま指示を出したのはバニシングハートだった、その声にすぐさま反応してストームとクロス・ヴィクトリーは彼の指示通り各自それぞれ方へと回避行動を起こし、ブレイズの一撃を躱す。
少し間を開けてから振り下ろされたブレイズの鉄槌ともいえる鋭い拳、それを素早く前に受け身を取ながら回避したバニシングハートとストーム、そして後ろに跳び退りながら回避したクロス・ヴィクトリー、だがそれでブレイズは止まりはしなかった。
『宗谷さん、こちらに来ます! 注意してください!』
「はあっ…!」
「っ……ちぃ!」
すぐさま狙いを正面にいたクロス・ヴィクトリーに変えたブレイズは追い縋り、追撃の回し蹴りを打ち込んできたのだ。
事前に一心同体となっているイストワールの指示が飛んできたため、クロス・ヴィクトリーはすぐさま身を低くかがめて上段に振り抜かれた横薙ぎの回し蹴りを回避する、しかしブレイズはそのまま体をぐるりと捻りながら後ろ回し蹴りへと繋げて追撃を仕掛けてくるがかろうじてその攻撃も後ろに間合いを取りながらクロス・ヴィクトリーは回避する。
ブレイズの持つパワーは今まで彼が相手取ってきた者の中でも群を抜いている程だ、まともに受け止めれば逆に吹き飛ばされるやもしれない、そのためにクロス・ヴィクトリーは回避に集中するようにしているのだ。
「宗谷! 離れろ!」
『デトネイター!』
するとそこに、前に回避したことによってブレイズの後ろを取ったストームが加勢に入った。
彼が握る大型の銃型武装、デトネイターが掲げられた瞬間、漆黒の銃が己という存在を示すかのごとく雄叫びを上げ、デトネイターを構えて銃口をブレイズへと向ける、そしてストームの指示を受けたクロス・ヴィクトリーはブレイズの一瞬の隙をついて背中のウィングユニットを使用し、空中へと跳びあがる。
『ノーマルモォォォォォド! 破壊弾! 全てをぶっ壊せ!!』
そしてその瞬間、ストームがデトネイターのトリガーを引き、音声と共に強烈な銃声が鳴り響き、銃口から熱を帯びた強力な弾丸が放たれた。
「甘い!」
だがその弾丸をブレイズは素早く見切り、飛んでくる弾道に合わせて体を反らしデトネイターの銃弾を回避する、だがストームはトリガーに賭けた左の人差指を放さない……体制を低く構え、右手で銃身の下部に備えられたポンプ式レバーを握り、狙いを定めながらトリガーを引き続ける。
鳴り響く銃声と放たれる弾丸、通常の銃には出せないであろう威力を秘めた破壊の弾が立て続けに放たれる中、ブレイズは天樹の枝の上を素早く動き回りながら次々と回避していく。
「ちっ! ならこいつで……」
『ショットモォォォォォド! 暴れ玉………バァンババァンッッ!!』
『change……Elect hand』
痺れを切らしたストームはデトネイターのトリガー近くに備わっているモード切替レバーをつまんで捻り、モードを通常のノーマルモードから散弾のショットモードへと切り替えると同時にポンプレバーを引いて銃の持つ特性を切り替え、再び狙いをブレイズへと向けた。
だがその瞬間、ブレイズは同時に両腕の炎の刻印を黄色へと変化させる。
次の瞬間、ストームが再びトリガーを引くとデトネイターの銃口からはショットガンなどとは比べ物にならない程の広範囲に散弾が飛び散る。
「………むぅん!」
しかし、その銃撃はブレイズに掠りもしなかった…。
ブレイズはデトネイターの各散弾が放たれた瞬間、両手を地面につけ、周囲に協力は電磁波を発生させたのである。
発生した電磁波はドーム状にブレイズを包み込み、バリアのようにブレイズの体を広範囲に放たれた銃撃から防御したのだ。
「そんな……あの攻撃を防いだのか!?」
「……戦いは、常に二手三手先を読むものだ……!」
「っ! やばい、いーすん! スキルチェインを!」
『了解しました、防御スキル発動します!』
電磁波のドームが収まると同時にすぐに反撃に転じようとするブレイズ、このっまあではストームがダメージを負ってしまうと危機感を感じたクロス・ヴィクトリーはすぐさま防御のためのスキルを展開する。
『Skill Chain! Zeruda no densetu! Toaru majyutuno index!』
電子音が響き、クロス・ヴィクトリーの左腕に彼の持つスキルの中で最も強固で、高い防御力を誇る武装である専用の盾が左腕に装備された。
彼は盾が装備されたのを左腕にしっかりと確認するや否や、上空から身を翻しながら勢いをつけて盾をストームとブレイズの間に割り込ませるように投擲する。
そして、同時にブレイズが両腕を前に突き出したことで放たれた凄まじい威力の電撃が放たれるが、その間に割り込むように投擲された盾によって遮られ、済んでの所でストームを仕損じらせた。
「いい機転だ、同志よ……盾を借りるぞ!」
そしてすぐさまその波を止めないようにバニシングハートが畳みかける。
電撃を防ぎ、宙に舞った盾を手にしたバニシングハートは左手にそれを携えながら右手に専用の日本刀型の武装、“爆炎丸”を振りかざしながら果敢にブレイズへと向かっていく。
「……小賢しい、物言わぬ盾を持った程度で……互角に渡り合えると思っているのか……!」
「事実とは実際に行ってみなければ不確定なものであり、確証を得られない……要するに、やってみなければわからないということだ」
「……援護するぞ、ヒロム!」
自身に向かって走ってくるバニシングハートに対して、ブレイズは両腕を構えて反撃の体制を取る、だがそれを察知してかストームはバニシングハートを援護するべく、デトネイターを再びノーマルモードへと切り替えてその後ろから援護するべく引き金を引く。
デトネイターの銃口が火を噴き、弾丸がバニシングハートを通り過ぎる様に宙を駆け、ブレイズへと向かっていくがブレイズはそれをすぐさま回避する。
「ふん!」
「………っ!」
だがそこにバニシングハートが爆炎丸を振り下ろして追撃を仕掛ける、滑らかな曲線を描いた刀の刃が斜めに一閃、そして立て続けに真一文字に振るい、ブレイズを攻撃する。
しかし、その攻撃をブレイズは初撃を回避すると横に振るわれた刀の一撃を腕を受け止めることで防ぐと、それを押し返し、反撃の蹴りを放つがバニシングハートは盾を使ってその攻撃を弾き、そのまま盾でブレイズを殴りつけた。
盾による打撃が直撃し、僅かに身を揺るがしたブレイズ、この戦いでこれが彼が受けた最初の一撃となった。
「……どうだ、一矢報いるくらいだが……当てはしたぞ」
「……それが、どうした……まだ始まったばかりだろう……戦いは……!」
自分達でも十分立ち向かえるという意思を込めたバニシングハートの言葉に、ブレイズは闘志を漲らせたままそう返答すると、凄まじい威力を何度も見せつけてきた拳を握りしめ、バニシングハートに向けて裏拳を撃ち込んできた、その裏拳はバニシングハートの仮面に包まれた顔面を打ち据え、彼の体を大きく揺らす………そして彼はそのまま立て続けに左右に拳を振るい、正拳突きでバニシングハートを大きく後ろに弾き飛ばす。
ブレイズの拳にはしっかりとした手ごたえがあった、現にバニシングハートは大きく体を宙に浮かせて後ろに跳んで行っている………だが。
「………あぁ………その通り、だっ…!」
バニシングハートは空中で体勢を立て直し、枝の地面を滑るように着地するとすぐさま地面を蹴り、再びブレイズへと肉薄した。
まともに受けたはずなのに、なぜ………ブレイズがそう疑問を感じる暇を与えないかのように、距離をすぐさま詰めたバニシングハートが爆炎丸を袈裟懸けに振るいブレイズの体を斬りつける。
「生憎……この姿になると、俺は少々……“やせ我慢”が得意になるのでな……しかし、蓄積すると厄介なんだが……」
バニシングハートがそう言うと、その言葉を表すかのように仮面の口元の隙間から僅かにだが血反吐が垂れていた。
そう、バニシングハートに変身することで得るのは力の向上だけではない、戦いにおいて最も戦況を左右する“己へのダメージを無視する”と言う能力が加わるのだ。
故にこの姿になれば、彼は痛みを気にする必要なく戦いに没頭できる………しかし、それは同時にあまりにも危険な手段でもある。
痛みを無視する、それは感覚を無視する故に肉体に蓄積するダメージの許容量を超えてしまう恐れがあるのだ。
痛みそのものはなくても肉体にはいるダメージは確かに存在する、その許容量を超えてしまえば、当然バニシングハートの身体は限界を迎えてしまう。
仮面の奥で流れた血反吐が、まさにその証明と言えるだろう。
「そうか……諸刃の剣という訳か……」
「それでも、貴様とやり合うには十分に事足りる………なにせ、ここには……俺の同志と、その友がいるからな」
だが、そのデメリットを考慮してもバニシングハートにはまだ戦える意志が残っていた。
まだここに、自分以外の“仲間”がいる限り……。
「うぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
裂帛の気合いと共に、後方で援護に周っていたストームが背に携えた剣、“ディアブロ”と“ルシファー”と名のついた二振りの剣を抜き放ちながらバニシングハートの上を飛び越えてブレイズに切りかかった、ブレイズはそれを背後に跳び退ることで回避するが……
『Machinegun mode!』
そこに上空にいたクロス・ヴィクトリーがスキルリンクによって装備したガンコンシューターをマシンガンモードにして上から連射して追撃する。
手に収まるハンドガン型の銃から短い間隔をあけて連射される弾丸はブレイズへと向かっていき、後ろへと跳び退るブレイズの足元を撃ちぬき、さらに彼を後ろへと後退させた。
その隙を突き、バニシングハートの両隣にストームとクロス・ヴィクトリーの二人が並び立ち、それぞれの手に握った剣を構える。
今自分たちは一人ではない、仲間たちと共に挑んでいるのだということをブレイズに示すように彼らは肩を並べ、神をも殺す可能性を秘めた眼前の敵を見据える。
「………仲間………馬鹿馬鹿しい」
そんな彼ら三人を見てブレイズがそう吐き捨てる、すると黄色く染まっていた炎の刻印が元の赤色へと戻った。
ゆるりと脱力するように拳を下げたブレイズが、仮面越しに三人を睨み付け、その場でとん、とん、と軽く調子を整える様に跳躍する。
「………貴様らが群れて、いくら足掻いたところで………俺を越えることはできない………」
そう呟きながら、ブレイズはだらりと下げていた腕を再度持ち上げて、腰だめに身構える。
「………俺を殺すことが出来る者………それがいるとするなら………“俺だけ”だ………それ以外の者には、決して俺を殺すことなどできはしない」
静かながらも、確かに射殺すような殺意を込めた目が三人を睨み付ける、それは彼の顔を包み込む仮面越しにでもはっきりとわかるものだった。
自分自身にある絶対的な自身、いや、もはやそれを通り越して事実であるかのように言い切ったブレイズは再び身構えた。
「………そんなもの、やってみなければ………わからない事だ!」
だが、それでも三人は果敢にも戦おうとする。
ブレイズに向かって言い放ったバニシングハートを筆頭に、三人は走り出し、再びブレイズへと走り出す、そしてそれを迎え撃つようにブレイズも走り出し、両者の間合いが見る見るうちに埋まっていく。
三人とブレイズ、その間にできた感覚が一定の距離を斬った時、甲高い金属の衝突音の様な音と共に、再び闘いが始まった。
先攻していたバニシングハートが横薙ぎに爆炎丸を振るい、ブレイズに切りかかるがブレイズは深紅の炎の刻印が刻まれた腕の甲でそれを受け止め、押し返す。
だが立て続けに後続のストーム、クロス・ヴィクトリーの二人がバニシングハートの後ろから現れ、左右から同時にブレイズへと切りかかった。
「………せっ!」
「ぐおぉっ!?」
しかし、ブレイズは仕掛けてきたストームに向けて拳を突き出す、するとその際に発生した衝撃波がストームを弾き飛ばした。
直撃すらしていないのに、発生した空気の波だけで敵を押し返すほどのパワー、神をも殺す拳の秘めた力は、まさに常軌を逸している。
「メテオ!」
「他人を気にしている暇があるのか……!」
「なっ、うあぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?」
同時に仕掛けたストームが弾き飛ばされたのを見て、注意がメテオに向いたクロス・ヴィクトリーをブレイズは腕を強引に掴むと体全体を使って彼を振り回し、思い切り真上に向かって……軽々と投げた。
まるでハンマー投げのように遠心力が加わって勢いをつけて真上へと放り投げられたクロス・ヴィクトリーはすぐさま体制を整えようとするが、放り投げられた際に自身の体にかかる衝撃と、加わった遠心力のパワーがそれを許しはしない。
不規則に体を回転させながら、真上へと飛んでいくクロス・ヴィクトリー、すると彼は咄嗟に自身に迫る何か大きな、殺気のような感覚に気付いた。
「っ!」
「おぉぉぉぉぉ……っ!」
どちらが上か下もわからない状況で首を真上に上げた彼が見たのは、さっきまで自分が立っていた極太の枝を蹴り上げてこちらに向かって跳躍してきたブレイズの姿だった。
大きく拳を引いたブレイズはまっすぐにクロス・ヴィクトリーへと向かって来ている、このままではあの強力なパワーを秘めた拳をまともに受けかねない。
「こ………のぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
まだここでやられる訳にはいかない、ありったけの力を込めて何とか体制を整えたクロス・ヴィクトリーは背中のウィングユニットを使って飛翔、近くに生えていた巨大な枝の内の一本を蹴って方向転換する。
すると時間差でブレイズが今先程クロス・ヴィクトリーが蹴った枝に向かって拳を振るい、あろうことか通常の木の幹の10倍はあろうかという太さの枝をいとも簡単にへし折ってしまった。
「くそ! いったい、どこから来るんだよ……あんたのそのパワーは!」
常識離れしたブレイズのパワーに毒づきながら、クロス・ヴィクトリーは左手に握ったガンコンシューターを再び構えてブレイズに向けて引き金を引き、弾幕を貼る。
しかし、ブレイズはそれを物ともせず強引に突破したかと思うと、空中に留まるクロス・ヴィクトリーに拳を振るい、同時にクロス・ヴィクトリーもすぐさま赤剣を振るって対抗する。
空中でぶつかり合う深紅の拳と深紅の刃、ぶつかり合うたびに離れ、再び交差しては激しく激突するような攻防を繰り返す二人、幹から生える枝の合間を縫うように駆け抜ける両者がぶつかるたびに天樹の枝が小刻みに震える。
誰もが息を飲むであろう激しい攻防、すると……
「合わせろメテオ!」
「おう!」
『キャノンモォォォォォド! 粉砕ッ! 玉砕ッ! 大喝采ッッッ!!』
「バニシングショット……エクスプロージョン!!」
加勢に入ったバニシングハートとストームの二人が、それぞれの力を合わせた同時攻撃でクロス・ヴィクトリーの援護に入った。
バニシングハートが右腕を突き出してはなった巨大な火球とストームのデトネイターから発射された特大の砲撃が合わさり、クロス・ヴィクトリーを強襲しようとするブレイズに向かっていく。
「っ………てぇぇぇぇら!!」
だが、二人の力を合わせた特大の砲撃をもブレイズは難なく拳を突き出した際に発生させた拳圧だけで薙ぎ払ってしまった。
通常なら大ダメージが必死であろう今の一撃、それを軽々とかき消したブレイズは狙いをすぐさま二人へと変更した。
『change……Aice hand』
「“氷砕”………“氷河裂波”!!」
腕の炎の刻印が水色に変色し、冷気を眼前に集中させて発生させた氷の粒をどんどん巨大化させ、生み出した巨大な氷の塊をブレイズは思い切り殴りつけ、氷の砲弾として発射した。
しかし、バニシングハートとストームもこれで引き下がるほど甘い覚悟で臨んではいない。
「……燃え上がれ、爆炎丸! “魔神爆炎斬”!!」
「もう一発、撃ち込むまでだ!」
バニシングハートの爆炎丸の刀身が炎を帯び、長刀の如き炎の刃が形成され撃ち出された氷の砲弾を炎の勢いをそのままに一刀両断、そして熱気を帯びて僅かに溶け始めたその氷の砲弾をストームがデトネイターの砲撃で破壊する。
熱気を帯びて僅かに溶け始めた氷の塊は、その一撃を受けて見事に粉砕、氷の粒子をまき散らしながら砕け散った。
だが………
「ふん!!」
「ぐあっ!?」
「メテオ! ぐっ……がぁああ!?」
発生した水蒸気の中からブレイズが飛び出し、武器を構えていた二人を強襲、ストームを容赦なく殴り飛ばし、盾を持っていたバニシングハートへと狙いを変えると鋭い回し蹴りを撃ち込む、一撃は何とか盾で防御はしたもののバニシングハートは次の二撃目、上から振り下ろされた手刀を受け、そのまま下に落下し、ストームと共に枝の地面へと叩きつけられた。
「ヒロム! メテオ! ………うぉぉぉおおおおお!!」
それを見てクロス・ヴィクトリーが赤剣を構えてブレイズへと仕掛ける、しかしブレイズは上空から向ってきたクロス・ヴィクトリーの気配をいち早く察知すると、振り下ろされた刃を受け止め、その腕を掴むと力いっぱいにクロス・ヴィクトリーをヒロムやストームが落ちていった方向へと投げ捨てた。
「はぐっ!?」
枝に叩きつけられたクロス・ヴィクトリーは灰の中の空気が強制的に吐き出される感覚を感じながら、その場で体を撥ねさせた。
装甲に包まれた背中に感じる鈍い痛みと衝撃、それでもとクロス・ヴィクトリーは身を起こし、膝をつきながらも赤剣の刃を杖代わりにして体を起き上がらせる。
そしてその背後には同様に何とか身を起き上がらせようとするバニシングハートとストームの二人がいる。
「言ったはずだ……貴様らでは、俺は越えられないと」
そんな中、三人の目の前にブレイズが降り立ちながらそう告げた。
「いくらお前達が徒党を組もうと、意味などない………この俺、神殺しブレイズの持つ宿命の因果………俺の持つ能力の前ではな………」
「……能力……だと?」
ブレイズの呟きに対して、ストームが聞き返す。
するとブレイズはその拳を開きながら、再びぐっと握り絞めた。
「……“リバースライフ・ブレイズ”……俺の持つこの力は、特異な物でな……俺はこの姿に変身するたび、俺の持つ命の炎は燃え上がる……要するに……俺は変身するたびに、“力が10倍に跳ね上がる”……」
「なっ!」
その言葉を聞いたとき、ストームだけではなくクロス・ヴィクトリーとバニシングハートまでもが驚き、息を飲んだ。
変身するたびに力が10倍に跳ね上がる、つまりそれはブレイズ自身が戦う意思を持ち、その姿に変身すればするほど無条件で強くなり続けていく、このブレイズを相手にして何度も戦いを重ね、何度も挑戦しても戦うたびにブレイズは10倍、さらに10倍と強くなるという余りにも理不尽な能力だ。
「……メテオ・ソルヒートよ……ストームの破壊の力を目覚めさせたお前なら、分かるはずだ……この戦いでお前は一度でも……“俺が死ぬのを見たか”?」
「……っ」
「……沈黙は否定……ということでいいな……」
ストームにそう告げたブレイズは、握った両手の拳を打ち合わせると仮面越しに三人を見据えた。
「それが結果だ………貴様らでは、俺を越えることはできない………俺はこの天樹を御旗とし、我ら神殺しに課せられた宿命を制覇する………すべては、俺のために!」
威圧、畏怖、無条件の殺気、ありあらゆる恐れの感情が三人に無理やり流し込まれてくるかのような、そんな迫力が籠った声だった。
それを聞いた三人は反射的に身構えるが、心なしか先程までの闘志が見えない。
「……まさか、これほどまでの敵を相手にしていたとはな……」
「どうする……あいつの言う通りなら、もう俺達に手は……」
自分たちの持つ最大の力を持ってしても、倒すことが出来ない敵……そんな相手を萌えにしてバニシングハートとストームがそう呟いた。
それは、初めてこの戦いで彼らが漏らした本当の弱音だったのかもしれない…。
このまま自分たちは負けるのか……抵抗しても、まともにブレイズに立ち向かうことも出来ずに……この場で……。
そんな思いが二人の仲で横切り始めた……。
「………いや、まだだ………」
だが、そんな中で諦めずに立ち上がる者がいた…。
「………まだ、やれることはあるかもしれないぜ」
クロス・ヴィクトリーである。
静かにそう告げながら立ち上がったクロス・ヴィクトリーにストームとバニシングハートの二人が反応する。
「やれることって……何か策があるのか、宗谷?」
「……たぶんな、でも……それがどういう結果を生むかは俺にもわからない……けど、もうやれることと言ったら、これしかないんだと思う……」
バニシングハートにそう告げたクロス・ヴィクトリーは、そのままゆっくりと立ち上がると仮面越しにこちらを見据えるブレイズに向かって、同じようにブレイズの事を睨み返した。
この状況で、そして絶対的な力の差を見せつけられたこの状況下で、まだ彼には戦う意思が残っているのか、クロス・ヴィクトリーのその様子からそのようなことを感じたブレイズはその場で身構えると狙いをクロス・ヴィクトリーただ一人に集中した。
「……まだ抗うか、天条宗谷……言ったはずだ、貴様と俺では対等にはなれないと……まともに戦うことはできないと……」
「あぁ、確かにそうかもしれない………あんたと俺じゃ、まともにやり合うのはかなり難しい……なんせ、バトルスタートから既にレベルに10も差をつけられた状態なんだからな……」
ブレイズの言葉にどこか皮肉の混じったような言葉で返したクロス・ヴィクトリー、その様子に不自然さを感じてかブレイズは拳を腰だめに構える。
しかし、それでもクロス・ヴィクトリーはそのスタンスを変えないどころか……。
次の瞬間、なんと持っていた赤剣をその場に突き刺して臨戦態勢を解いてしまった。
「なっ……おい、何のつもりだ宗谷!」
「……血迷ったか……それとも、何もかもバカらしくなったか?」
その行動に驚きを隠せないストーム、そして若干の失望を感じさせる声色でクロス・ヴィクトリーに問いかけるブレイズ。
だが、それに対してクロス・ヴィクトリーはこれと言った反応も示すことなく、じっとブレイズの事を見据え続ける。
「………言ったはずだ、まともにやり合うのは難しい………戦って勝てないゲームに、そもそもコンティニューなしで挑むなんて、無理ゲーにもほどがあるってもんだ………」
半ばあきらめにも似た言葉、彼らしからぬ発言に戸惑うバニシングハートとストーム、先程言っていたやれることというのは、すべてを投げ出すことだとでもいうのか……もはやそんな事すら感じてしまうような彼の言動に、二人はその場に膝をついたまま何も言い返すことが出来ないでいた。
「………興ざめ、だな………まさか、貴様がそこまでの腑抜けとはな………お前は所詮、危険分子ではなかったということか………」
「………ただ、それでもな………」
だが、クロス・ヴィクトリーはそこでさっきまでの言葉とは違った、また別の意志の籠った言葉を口にした。
「気になることが一つあるんだよ、たった一つだけ……この無理ゲーの中で、どうしてももやもやしてしまう物がな……」
「………なに?」
一体何を言っているのか分からないと言いたげなブレイズ、それに対してクロス・ヴィクトリーはじっとブレイズの事を見据えたままで、右手を動かす。
すると、彼はその右手でどこからか“ある物”を取り出した。
「……そもそもだ、こんな戦いが始まった理由……あんた自身がこの戦いを始めようとしたきっかけが何だったんか、それがどうしてもわからなかった……」
クロス・ヴィクトリーが取り出した物、それは一枚の紙の様だった。
「これだけの戦いを巻き起こしたんなら、人にはそれ相応の理由があるはずだ……俺達だってそうだ……最初からあんたが強いってのはわかっててこうして挑んだのは、たとえ勝ち目が薄い闘いであっても、守りたい物があったからだ」
「………っ!」
そう言いながらクロス・ヴィクトリーは持っていた一枚の紙をブレイズに差し出すように腕を伸ばす。
そしてクロス・ヴィクトリーがブレイズに向けて差し出すように見せた物、それを目にした瞬間ブレイズが今までで大きな反応を示した。
「そして、あんたがこの戦いに望む理由………あんたがその力を持ってして、こんなことまでしてこの戦いに勝ちたいと望む理由………たぶんだけど、これがその“理由”なんじゃないかな」
「………貴様………なぜ………!」
彼がこの戦いを起こした理由、この戦いに執着する本当の理由、それを知ったのかクロス・ヴィクトリーはそう言いながら、手に持っていた一枚の紙をブレイズに見える様にゆっくりと裏返した。
そして、ブレイズの視線が捉えた物……それは、一枚の“写真”だった。
その写真に写っているものを、目にした瞬間ブレイズが初めて動揺したような反応を見せた。
ブレイズが大きく動揺するものが写っていた写真、その写真に写っていた物………それは………。
「………あんたにも、“守りたい物”があるんじゃないか?」
その写真に写っていたもの………それは、“一組の親子”の写真だった。
片方には、車いすに座りながらも明るく、元気を感じさせる笑顔を浮かべた鮮やかな赤毛をした一人の少女。
そしてその隣で、安らかで、とても優しそうな笑みを浮かべているのは……紛れもない、ブレイズだった。
ブレイズが変身する前の姿である、あの赤髪の男の姿だった…。
「……守りたい物って……おい、どういうことだよ宗谷!」
クロス・ヴィクトリーの言ったことに対して、ストームが問いかけるとクロス・ヴィクトリーはちらりと彼の方を見てから、再び視線をブレイズへと向けた。
「………ブレイズ、たぶんだけどこの写真に写っているのはあんたにとって大切な人なんじゃないのか………あんたの、娘なのか?」
写真に写っているこの親子、ブレイズと思われる人物の隣で笑みを浮かべている少女について問いかける。
しかし、ブレイズはその場に立ち尽くしたまま俯いたままだった。
「………一体、なぜ貴様がそれを………」
「ある奴からな、ここに来る途中くれたんだよ……けど、なんでそいつがこれを持っていたのかは俺にもわからない」
俯いた体制のまま問いかけたブレイズに対して、クロス・ヴィクトリーはありのままの事を伝える。
それを聞いたブレイズは、記憶をたどりながらある答えを導き出した……。
(あの時か………)
この天樹を芽生えさせる下準備、その際に目の前に現れた魔神とそれに付き従う、四人の元女神達…。
あの戦いの際、何処かで落としていたのだろう……今思えば、5つ目のシェアクリスタルを奪還した少女が逃げ去る際に何かを拾い上げていた、おそらくあれが今クロス・ヴィクトリーの持つ写真なのだろうと自分の中で疑問に整理をつけたブレイズ。
すると彼はそのままゆっくりと顔を上げる。
「……知れたこと、貴様たちには関係のないことだ……」
「………そうか、ならこれは俺が考えた予想なんだけどさ………勝手に言わせてもらうぜ?」
それに対して、クロス・ヴィクトリーは追及するでもなく、己の持つ考えを口にし始めた。
この戦いを通して、ブレイズがここまでに至る経緯が何なのか、彼なりに考えたそのいきさつを……。
「……この写真に写っているのがあんたとその娘なら、まず一番に気になるのはこの女の子だ……この写真から考えるに、この子は……大怪我か、あるいは病気をしている……まあ、包帯とかがないのを見るに病気なんじゃないかなと思うんだけど……」
「………」
「そして、その女の子の病気はただの病気じゃない………遥かに重い病気で、そう簡単には治らない………でも、それを治すためにもあんたは戦うしかなかった………改造人間になってまでも………この戦いは、もしかしたら……あんたの大切な物を守るために必要な戦いだったんじゃないのか?」
クロス・ヴィクトリーのいうこの戦いに至るまでのブレイズの経緯、それを推測ではあるもののブレイズと後ろにいる二人に説明するクロス・ヴィクトリー、もしもこの考察が本当で、真実を突いたものだとするのなら…ブレイズもまた、クロス・ヴィクトリーや他の二人と同じ、何かを守るために戦う存在だということになる。
何かを守るために……掛け替えのない何かのために、戦う意思を固めた者……しかし、それ故のこの騒動だとしても度が過ぎている気はする。
この戦いを仕掛けた理由、ブレイズの持つ目的は彼をそうさせるまでのものだというのか……。
その場をしばらくの間、静寂が包み込んだ。
「………残念だが、それは外れだ………」
そして、その静寂を打ち破ったのはブレイズの否定の言葉だった。
「……俺にはもう、守る物などいない……その写真に写っているのが、俺の娘であっても」
「………どういう意味だ」
「………お前の考えは、半分は当たっている………だが、守るために戦うというところは………大きな間違いだ」
否定の言葉に続いてブレイズが口にした言葉は自身の戦う理由についての本質を露わにするような言葉だった。
彼の言う大きな間違い、それは一体何なのか……その場にいた三人は疑問を抱き、じっとブレイズの事を見つめた。
それに対して、ブレイズはクロス・ヴィクトリーの持つ写真に写る少女をじっと見つめながら、こう言い放った。
「………その子は………“かがり”はもういない………かがりは既に………“死んでいる”………俺のせいでな」
俺はこの姿になる前、大切な家族がいた………早くに妻を亡くしてから、たった一人俺の傍で笑顔を見せていた、俺のこの世でたった一人の娘………それが、“かがり”だった。
かがりはとても優しく、そしてとても純粋な子供だった…。
母親を失くし、寂しいという気持ちはあっただろうに、そんなことを微塵も感じさせない程に明るく、元気な笑顔を見せていた。
リーンボックスの特殊軍隊に所属し、当時隊長を務めていた俺は当然娘と一緒になれる時間も多いとは言えなかった、だがそれでもかがりはずっと俺の帰りを待ってくれていた。
家に帰ってきた俺を出迎えて、いつもの明るい笑顔で“おかえり”と言ってくれていた時の事を………俺は今でも鮮明に覚えている………。
……俺にとって、かがりは唯一の大切な“宝”だった……絶対に失うわけにはいかない、俺の大切な娘……。
………だが、まるでそれを許さないかのように不幸はかがり自身にも降りかかった………。
ある日、かがりが倒れた………俺が慌てて病院に駆け付けた時、病院の医者に告げられた………“娘さんとの時間を、大切にしてあげてください”………とな。
かがりは、重い病気にかかっていた……不治の病……今のゲイムギョウ界の医療技術では、到底治すことが出来ない程の重い、死を齎す最悪の病だった。
それを聞いたとき、俺の目の前は真っ暗になった……。
かがりは、まだ10歳だった…。
これから大きくなって、たくさんの物を見て、いろんなことを選んで、自分自身の力で前に進み、成長していく可能性に満ち溢れている、まだまだ可能性を秘めた子供だった。
戦う力しか持てない俺と違い、誰かのことを想い、誰よりも人を愛することが出来る、心優しい子だった。
そんなかがりは自分が病に侵されているというのにいつもと変わらぬ笑顔で、“大丈夫”と言ってくるかがりに俺は……己の無力さを知った。
こんなにもあっさりとかがりの未来が閉ざされようとしているのに……父親である俺には、どうすることもできない……あまりにも無力な俺を、俺自身は呪った……。
そんなときに訪れたんだ………あの“囁き”が………。
“世界最高の技術力”と“世界最高の力”を有する組織からの勧誘……それが俺の元に来た時、俺はもしかしたらと希望を感じた。
そして、俺はその組織に聞いた………娘の病を治すことはできるのか、とな………。
俺はさらにこう言った、“組織に加わる代わりに、娘の……かがりの病を何とか直してくれ”……そして、その組織は快くそれを受け入れてくれたさ。
その時は、絶望の暗闇に一つの光明がさしたように感じた……だが、それは希望に見せかけた“偽りの道しるべ”だった。
俺はその日から、その組織に加わり、ある力を手に入れた………“ダーク・トゥ・ダークネス”に従う、神殺しの戦士……“仮面ライダーブレイズ”としての力を……。
そして、俺はダークネスのために任務をこなし続け………ついに、娘を救ってもらうチャンスを手に入れた………。
だが、今でも後悔しているさ……“そのせいでかがりは死んだんだから”な……。
ダークネスが選んだ、かがりを救う方法………それは、病の苦しみから“死を持って解放する”という方法だったのだからな………。
その日、俺の目の前で………かがりは殺された………。
最後の瞬間、俺の方を見つめてあいつが何かを言っていた気がしたが…それがなんだったのかは覚えていない。
覚えているのは、すべてを奪われた虚無感と……体全体が沈むかのような、深い絶望だけだった。
そしてそれから俺は、ただの機械になり果てた……俺に与えられる命令を忠実にこなすだけの、心がない機械に……。
だが、そんな俺にも最後のチャンスが残されていた……“償う”ための最後の手段、神殺しの力を手にした者だけが参加する、“審判”……それを乗り越えることが出来れば………。
「……そのために俺は、ダークネスを離反し、審判に挑む決意を固めた……この審判を乗り越え、“かがりを生き返らせる”ためにな……!」
ブレイズの口から語られた真実、それを告げた瞬間、ブレイズは拳を強く握るとそれを腰だめに構えた。
それを皮切りに、再びブレイズから果てしない闘志が満ち溢れ始める。
「………だからこそ、俺はどんな手を使ってでもこの戦いを勝ち残る! 邪魔なものは、すべてねじ伏せてでもな……!」
離れていても伝わってくる、明らかな力のオーバーフロー……ブレイズは今、まさに、すべての力をその拳に込めようとしているのだ、己の覚悟を戦う糧として、この戦いに挑む己の覚悟を体現するかのように…。
だがそれに対して、クロス・ヴィクトリーは先程とは違った毅然とした態度を見せながら再び赤剣を握るとブレイズと向かい合った。
「……本当にそれでいいのか……あんたの娘さんは……それを本当に望んでいるのか!」
「……かがりは、何もできない俺のせいで死んでいった……さぞかし、俺の事を恨んでいることだろう……だからこそ、俺がかがりにできることと言ったら、もうこれしかない……!」
「………俺はそうとは思わない」
ブレイズの言葉に対して、クロス・ヴィクトリーはそう告げると拳を構えるブレイズに対して赤剣の刃を向けながら言葉を続ける。
「何を根拠に……貴様にかがりのなにが分かるというのだ! 死んでいった私の娘の思いが、貴様にわかるはずがない!」
「でも、本当にその子はこんなことを望んでいるのか!?」
「………なに?」
「その子が………こんな………こんなたくさんの人を傷つけてまで生き返って、それで本当にその子は喜ぶのか! 本当に、こんなことしかできなかったのか!!」
クロス・ヴィクトリーの訴え、それはこの戦いを通して目的を……仮にブレイズがその娘である少女、かがりを生き返らせたとして、生き返ったかがりが本当にこんなことを望むのかということだった。
心優しく、誰かの事を思うことが出来る子だったとブレイズが言った通りの子なら、本当に争いの果てに誰かを傷つけてまで生き返ることを、その子は本当に喜ぶのだろうか?
その疑問がクロス・ヴィクトリーの中に浮かび上がったのだ…。
「俺に残されたのはこの道しかない……例え多くの犠牲を払ったとしても、俺がかがりにできることは……もうこれしかないのだ……!!」
クロス・ヴィクトリーの言葉を聞き入れようとせず、己の戦いを続けようとするブレイズ、彼は拳を腰だめに構えた状態から狙いをクロス・ヴィクトリーただ一人に絞ると、脱兎のごとく走り出した……。
「無駄だ宗谷! 今奴に何を言っても聞きはしない!」
「でも………それでも、こんな!」
「お前がどれだけ優しい心を持っているのかは、俺も知っている……そしてお前が何を考えているのかも……だが、そんな考えは通用しない! 奴にとってこの戦いは、俺達と同じように譲れない物なんだ! だからこそ、分からせるには……戦うしかない!」
迫りくるブレイズを前にして、二人の前に立つクロス・ヴィクトリーにバニシングハートがそう呼びかける。
迫りくるブレイズ、そしてバニシングハートの呼びかけ、だがそれらを前にして、クロス・ヴィクトリーは己の中に生まれた疑問に何度も自問自答を繰り返していた。
(……本当に、それでいいのか……)
この戦いが始まった本質、この戦いが始まった目的……。
(こんな戦いをどちらかが勝ち残るまで続けて、それで本当に誰かが喜ぶのか……救われるのか……?)
何かのために戦い、何かのために傷つけあう、そんな不毛な争いを続け、本当に何かを守れたというのだろうか…。
(………俺達も、あいつも………今までたくさん傷ついて、たくさんの辛い思いをしてきた………そして、どちらかの困難を打ち破って、それですべてが救われるのか?)
自分にとって譲れない物のために、傷つけ、打倒す、片や大切な物を守るため、片や大切な物を取り戻すため……似ているようで違えた両者のやり方、どちらかが勝ち残ってそれでいいのか……ブレイズは、今までたくさんの心の傷を負ってきた、そんな彼にとっての本当の救いとは……本当に、これなのか? ダークネスという巨大な理不尽によってもたらされたこの戦いで、本当にできることはそれしかないのか? この戦いでどちらかが倒れることなのか……?
(………いや、だめだ………こんなの、間違ってる………こんなやり方、やっぱり間違ってる………!)
己の中の疑問に対して、自分が出した答えは……この戦いそのものが間違っているということ。
このままではどちらが勝利しても、本当の意味での勝利にはならない……何かを守るとか、何かを取り戻すとか、それとは違う、もっと大事な物が……もっといい選択がどこかにあったのではないか?
本当の、“ハッピーエンド”を迎えるためには………どちらかが倒れるなんて言う選択肢は、間違っている………。
そう答えを出したクロス・ヴィクトリーは持っていた赤剣を再び下ろすと、目前まで迫りつつあるブレイズの事をまっすぐに見つめた。
「何をしている宗谷!! 死ぬ気か!!」
「今は……今はこいつを止めるしかないんだ、力づくでも……何があっても、立ち向かうしかない!」
クロス・ヴィクトリーに向けて、バニシングハートとストームがそう呼びかけて来る、だがそれでもとクロス・ヴィクトリーは戦う姿勢はもう見せようとはしなかった。
彼の中に生まれたのは、戦うでも、眼前の敵となっているブレイズのために死ぬでもない………“第三の選択”。
「……ヒロム、メテオ……俺、決めたよ……」
後ろで膝をつく二人に向かって、クロス・ヴィクトリーは振り返ることなく二人にこう告げた。
それは、戦いという概念の中であまりにも異質な答え、だが彼にとってはもうこの思いを曲げるわけにはいかなかった。
苦い結末はもうたくさんだと知っているから……なら、自分にできる選択はこれしかないと悟ったから。
「………俺は、あいつを………ブレイズを“救いたい”………」
その瞬間、ブレイズの拳がクロス・ヴィクトリーの仮面に包まれた顔面に向けて撃ち出された。
彼に迫る深紅の拳、もう防御も、回避も不可能な距離にまで迫っている…。
それを前にしていたバニシングハート、そしてストームの両名は次の瞬間に訪れるであろう光景に息を飲むしかできなかった……。
「………まさか、ここまで甘ちゃんな奴とは思わなかったぜ」
彼らが激しい戦いを繰り広げる天樹の別の場所に生えている木の枝、彼らがいる枝よりもさらに高い位置に生えた枝の上に座りながら謎の少女、クロワールは今起きている状況を静かに見つめていた。
ブレイズの過去を聞いてからという物、あの三人の中の一人の赤い勝利の勇者の中にあった闘志にも似た感情が一気に消滅したのをクロワールは感じ取った。
まあ、それよりも以前にこの場所に来た時から彼には何か迷いにも似た感情があったのを、薄々感じてはいたのだが……。
「他人の事を思って、挙句の果てにはそいつのことも救いたいってなるってか? けっ、甘すぎて反吐が出るっつーの、面白くねぇ」
今はもう戦う意思を見せずに、ブレイズを見つめているクロス・ヴィクトリーにクロワールは毒づきながらふてくされる様に胡坐を組む。
「結局……全部を救うなんて出来たら苦労しねぇんだよ」
「確かに、それは一番難しい選択かもしれない………」
「………!」
その時、どこからか聞き覚えのある人物の声がクロワールの耳に響き、慌てて彼女はその声が聞こえた方向へと視線を向けた。
そこには、自分とは長い因縁を持っている人物の姿があった。
「………なんだよ、昨日あんだけボロボロになってたのにもう動けるのか、魔神様よ?」
「……まあ、無理はしすぎたのは認めるよ? けど、少し休めば動くくらいはできる……そして、見守ることもできる」
枝の先端部分に近い場所に座り、眼科で行われている戦いの結末をクロワールと同じようにして見守るのはこの世界の魔神と呼ばれる存在、ヴィクトリオン・ハートだった。
昨夜、ブレイズと激突し限界を迎え、逃走したはずの彼が再びここにいることに若干驚くクロールだったが彼の発言に、何処か納得したような表情を浮かべると再び視線を眼下に戻した。
「……相変わらず無理するのが好きだな、お前」
「よく知ってるでしょ? なにせ、僕とクロの仲なんだから……」
「今はもうあんときとはちげーよ」
皮肉めいたヴィクトリオン・ハートの言葉に対してそう斬り捨てたクロワールは視線だけをヴィクトリオン・ハートへと向ける。
「お前、何のつもりだ? あいつにブレイズの過去について興味を持たせるようなことをして……そのせいで、あいつはもうブレイズと戦う意思を失くしちまったぞ? お前はここで、あいつを見殺しにするのか? せっかく用意したお前の後継者をよ」
「………いいや、そのつもりはないよ………僕は………いや、僕達はただ、“ルート分岐”に必要なフラグを立てることに成功した、それだけさ」
クロワールの問いかけに、赤い瞳を眼下で繰り広げられている戦いへと向けたままそう言った彼の表情は今までにないほど真剣な物だった。
「………何も倒すだけが選択肢じゃない………僕の力を受け継ぐ彼なら………その覚悟が出来ているなら、今の段階で出来る“ハッピーエンド”のための“奇跡”を起こすことが出来るかもしれない」
「……奇跡? ……そんなもん、そう簡単に起きるわけないだろ?」
「………それはどうかな?」
そう言った瞬間、ヴィクトリオン・ハートの口元に僅かだが微笑みが浮かび上がった。
それを見たクロワールはどうしたことかと眉を潜めると、すぐに視線をクロス・ヴィクトリー達の方へと向けた。
そしてその瞬間、クロワールはわが目を疑うかのように、大きく目を見開いた…。
「……おいおいおい、嘘だろ……こんなご都合展開、ありかよ……」
「………例え、それがご都合主義で起きた展開でも………誰かのためのハッピーエンドになりえるためのイベントなら、それは必然で起きたイベント………」
それに対して、ヴィクトリオン・ハートは安らかな表情を浮かべて……静かにそう呟き始めた。
「………君ならそのための“奇跡”を起こすことが出来る………すべてを繋ぎ、すべてを救うために勇者として選ばれた………君なら」
誰もが息を飲んだ、バニシングハートやストームだけでなく、今まさに拳を撃ち出したブレイズでさえも、クロス・ヴィクトリーに直撃する寸前でその腕を止めた。
そして、クロス・ヴィクトリーでさえも……。
彼らが息を飲み、驚きを隠せずにいるその要因……。
それは、今まさにクロス・ヴィクトリーとブレイズの間で発生した“光”が大きく関係していた。
拳がクロス・ヴィクトリーに直撃しようとしたまさにその寸前、突如としてクロス・ヴィクトリーが握っていた写真が輝きだした。
そして、その光はまさに……新・犯罪神となったネプギアや洗脳された龍玄達や鎧武・修羅を解き放ったものと同じ、淡くも確かな輝きを放っている“虹色の光”だった。
その光が徐々に輝きを増していき、クロス・ヴィクトリーとブレイズの間で大きな光を放ったのである。
突然の事態に驚くのもつかの間……その光が徐々に収まり始めた時、彼らは驚きを隠せずにその場で目を疑った。
光の中から、一人の人物が姿を現したのである。
その光の中から、蜃気楼のようにゆらゆらと揺れながら姿を現したのは…一人の少女だった。
真っ白なワンピースに身を包み、まるで揺らめく篝火のように優しい暖かな色を下赤毛を揺らしながら現れたその少女は、まるでクロス・ヴィクトリーを守るかのように両腕を広げて、ブレイズの前に立ちはだかった。
そして、その少女の姿を目の当たりにしたとき、ブレイズは衝撃のあまりにその場で固まり………仮面の下で大きくその目を見開いた。
「………か………かがり………!?」
そう、今まさに彼の目の前に現れたその少女は………紛れもなく、彼のたった一人の最愛の家族であり、たった一人の娘で………今はもう、この世にはいないはずの少女………。
“かがり”だったのだから………。
如何でしたか?
次回、虹色の光と共に姿を現したブレイズの娘、かがり…。
この第三の選択を選んだことによって起きた奇跡、これが齎すものとは…
次回をお楽しみに!