超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

前回、宗谷達のいる教会に突如として訪れたシンシア、一体彼女はなぜ教会に来たのか、なぜ働かせてくださいと言ったのか!

ネプおばの新たなステージへと続く、その始まりを括目せよ!

それではお楽しみください、どうぞ…


stage,89 俺達の新しいスタート

 

 

 

「ハルキ、街の復興具合はどうなんだ?」

 

「あー、はい、報告によると街に受けた被害は修復されたようですね、以前のプラネテューヌで大事件があったなんて思わせないお気楽ぶりもすっかり元通りですよ」

 

「ネプテューヌが納めてるからこの国はそのあたりの立ち直りが早いんだろうなぁ……そこがいい所なんだろうけど」

 

「宗谷さん、ハルキさん、例の国家支援事業の報告と現材の活動予定についての資料はどうなりました?」

 

「あぁ、それならさっきステマックスが取りに行ってくれたぜ? いーすんの方はどう?」

 

「こっちも今日の分の書類がだいぶ纏まってます、3日は掛かるかもと思ってましたが、これなら30時間に収まりそうです」

 

「それでも1日かかるんだな……」

 

ハルキとステマックス、この二人が教会で教祖補佐見習いとして加わってから3日が経過した。

俺達は今日も各自が作業を分担して教会に周ってきたいろんな仕事を、あれやこれやとさばいている。

今俺達がいるのはネプテューヌやネプギア達が普段から過ごしている生活スペースよりも下の階にある教祖であるいーすんの仕事場、まあ、あり大抵に言う“執務室”ってやつだ。

本来ならここには女神であるネプテューヌがいるべき場所らしいんだけど………あいつが進んで仕事をすることなんて、まずないことだから俺がこの国に迷い込むよりも前からここはこの国の教祖であるいーすんの仕事用の部屋になってるんだ。

 

そんな仕事場であるこの部屋にはいかにもって感じの仕事用の机が3つほど並べられており、中央にあるのがいーすんの机になっている。

昔はいーすんの体が小さくて、かなり持て余していた仕事机も今のいーすんの体が大きくなったことでぴったりになったその机、それを中心にして左右に向き合うようにしておかれているのが、教祖補佐である俺とその見習いであり、後輩のハルキ専用のデスク、俺達はこの部屋で教会に周ってきた仕事を今日もあくせく捌いているというわけだ。

 

「でも前よりも仕事の効率は良くなったと思いますよ? やっぱり人出が多くなって助かります」

 

「あぁ、それに関しては同感だよ、前は俺といーすんだけじゃ終わらなかった仕事もあったからなぁ……お前が来てくれて、助かってるよ、ハルキ」

 

「え? ……いやいや、そんなことないですよ、ボクはボクにできることをしてるだけですから」

 

俺といーすんが新たに加わったハルキを見ながらそう言うとハルキはどこか照れくさそうな笑みを浮かべて返事を返した。

実際、ハルキが加わってくれたことで仕事のペースも早くなったのは事実だ、ハルキは処理能力が早いというか効率よく書類やらなんやらのデスクワークを熟してくれてる。

やはり筆記試験満点ってポテンシャルは伊達じゃないな、効率のいい勉強法とかを知ってるからそれを応用して仕事に生かしてるんだと思う。

おかげで仕事がはかどるはかどる、本当有能な新人が来てくれたもんだよなぁ……。

 

……なんて、なんかサラリーマンのおっさんぽいかな、今の……。

 

そんな事を思っていると、突然執務室のドアが数回ノックされる音が聞こえ、ガチャリとドアが開いた。

 

「失礼するでござる、忍者ステマックスただいま戻ったでござる」

 

「おぉ、ステマックス、思ったより早かったな」

 

「拙者、足には自信がある故このくらい大したことはないでござる」

 

そう言って部屋の中に入ってきた俺のもう一人の後輩にあたる、ステマックスは小脇にいくつかの書類がまとめられたファイルを抱えながら俺の所に来ると、そのファイルを俺へと渡してきた。

 

「天条殿、これが頼まれた資料と支援事業の報告でござる」

 

「オッケー、てんきゅなステマックス」

 

「後、ついでに現在プラネテューヌ国内で怪しげな動きをしている輩がいないか保安局の方にも立ち寄って情報を確認してきたでござるのでそちらの方にも目を通した方がよいかと思うにござる」

 

「え、マジか! 頼んでた仕事だけならまだしもそれ以上の仕事もやったのかよ……すげーな」

 

「ステマックスは情報収集に関しては一流ですからね、迅速に、そして確実な情報を持って来てくれますよ」

 

「拙者、忍でござる故……」

 

いやいやいや、十分すげーよニンジャ=サン……。

俺はステマックスが持って来てくれた資料と報告書、そしてステマックスがついでにと持って来てくれた情報に目を通しながら新たに加わった後輩のポテンシャルの高さに改めて感嘆する。

 

「しかし、この国は今の所いたって平和と言えるでござるな、拙者も聞く限り特に慌てるような怪しげな者もいないようでござる」

 

「……みたいだな、まあ、平和が一番ってことだ……ん?」

 

ステマックスとそんなやり取りを交わしながら彼が持って来てくれた情報に目を通していると、俺はある1枚の紙に書かれた情報に目を止めた。

そこには、何やら気になる文が乗せられた一つの団体の広告のような物があったからだ。

 

「……これは、“反女神団体”?」

 

なんだろう、この広告前にどっかで見たような気が……。

 

「あ、それは確か女神による国の統治に異議を申し立てる団体らしいのでござるが、特に大きい勢力でもなくむしろ人数もほぼいないので名ばかりの立て看板、と言ったところでござるな」

 

「そう言えば……だいぶ前にネプテューヌさんがノワールさんの所に女神の心得を学ぶと言い出した時にアイエフさんが持ってきたチラシがそれでしたね」

 

「あぁ~、そう言えば持って来てたな…」

 

いーすんの言葉で俺の中の疑問が納得のいく形で繋がった。

そうだ、あの時確か“女神いらない”とかなんとかチラシに書いて配ってたとか言ってた団体って、このことなのか……。

 

でも見た感じそんな大それたこともしてないし、人も集まっていないようなら特に警戒する必要もないか……情報を見る限り、やってるのもチラシ配りばかりみたいだし。

 

「……まあ、何かしでかしたなら止めるけど今のところはそんな行動も起こす感じじゃなさそうだし、これは一応保留ってことにしとくか」

 

「そうですね、一応念のために記録は取っておきます……えっと、団体の責任者の名前は………“キセイジョウ・レイ”ですね」

 

俺は持っていたファイルをいーすんに渡すと、いーすんはファイルの中に目を通しながら中にある情報を端末に打ち込んでいった。

 

 

……でも、そのキセイジョウ・レイって人はなんで女神に反発しようとしてるんだろう……なんか理由があるのかな?

 

 

俺はあの情報を見て感じた疑問を思い浮かべながらも、ステマックスから受け取った支援事業の報告書をまとめ、今後の予定も確認していく……今日も教祖補佐の仕事は大変だけど、充実してる。

 

そして、それからもしばらく仕事をこなしていると、ふといーすんが部屋に掛けられた時計へと目を向けた。

 

 

「宗谷さん、ハルキさん、ステマックスさん、そろそろ休憩にしましょう、上に行ってお茶にしませんか?」

 

「ん? あぁ、そうだな仕事がはかどってても休憩はしないとな」

 

「賛成です、ボクも甘いものか何かが欲しいですし」

 

「ハル殿が行くなら拙者も同行するでござる」

 

 

いーすんの出した提案に俺達はそれぞれ賛成して、席を立つ。

仕事をするときは仕事を、休む時はしっかり休憩を、趣味を楽しむときはしっかり趣味を、それが俺のライフスタイルでもあるしな。

俺はとりあえず仕事を斬りのいいところで切り上げるとそのまま他のみんなと一緒に執務室を後にした。

 

「宗谷さん、先程なのですがネプギアさんがコンパさんと一緒にお土産を買ってきてくれたそうですよ?」

 

「お、いいな! ケーキかなんかかな? いや、あるいはネプテューヌの好みってことでネプギアとコンパさんならプリンって線もありか? ……いやぁ、でもなぁ……」

 

「どちらにしても楽しみ、って言いたそうですね?」

 

「………バレた?」

 

「バレバレです」

 

部屋を後にした俺は上の生活スペースに行く途中でいーすんとそんなやり取りを交わす。

まったく、いーすんには敵わないな……俺が考えてる事見透かされちまうんだから……最近そのあたりの洞察力が上がってきてないか?

 

「……先輩とイストワール様、やっぱり仲いいですね」

 

「……え? あ、あぁ、まあな、これでも長い付き合いだしな」

 

そんな俺達の様子を見てハルキが唐突にそんなことを言ってきた、それに対して俺は何処か気恥ずかしく感じながらも返事を返す。

 

「長い付き合いっていうか、“交際”の方のお付き合いだからでしょ? お二人の場合は」

 

「なっ!? お、お前……茶化すんじゃねぇよ!」

 

「えー、でも事実でしょー? ねえ、イストワール様?」

 

「た、確かに……事実と言えば、事実ですが……その……それはそれ、これはこれです!」

 

ハルキめ……まさかこんなに話に突っ込んでくるとは思わなかったぜ……。

いーすんもハルキの言葉にしどろもどろになってそう誤魔化してはいるけど、顔が真っ赤なのが見え見えだ………まあ、そんな俺も今絶賛顔が熱いんだけどな……。

 

やっぱり、まだ誰かに言われると慣れない所があるなぁ……もう、俺といーすんが付き合い始めてしばらく経ったけど、今だにな……。

 

「ハル殿、あまりちょっかいを出してはダメでござる、相手は先輩、そして今現在絶賛リア充の甘々ラブラブの激熱カップルなのでござるから、変に刺激してはしっぺ返しを食らうでござるよ?」

 

「おいステマックス、フォローなのかもしれないけどその言い方やめろ、なんか恥ずかしいしそれだと俺達がどうしようもないバカップルみたいになるだろ」

 

「ら……ラブラブなんて……そんな……確かに、宗谷さんの事はその……誰よりも……思っていますけど……」

 

「おーい、いーすんさーん、戻ってきてー? ステマックスの言葉に反応して混乱しないでー?」

 

さっきのステマックスの言葉を真に受けたせいかいーすんは顔を更に真っ赤にしてぼそぼそと何かを呟いている。

やっぱりいーすんも慣れてないんだろうな、いきなりそう言うのを実感するとこんな風になってしまうんだ…。

 

俺は片手でいーすんの肩を揺さぶりながらそう呼びかけて、なんとかいーすんを現実世界に引き戻す。

ハッ、と我に返ったいーすんは咄嗟に俺の方に目線を向けると、どこか慌てるようなそぶりを見せた。

 

「あ、す、すみません……私ったら、つい……」

 

「いいって、まだ俺も慣れてないしさ」

 

「……せっかくこうして恋人として交際しているのに、これだとまだまだですね、私」

 

「……そんな焦らなくてもいいって、今は慣れるまでゆっくりでいいからさ、な?」

 

「………はい」

 

俺がそう言うといーすんはどこか嬉しそうな微笑みを浮かべて小さく頷いた。

 

「………ほら、やっぱり仲良しだ」

 

「ハル殿、邪魔をしてはダメでござる」

 

横でハルキとステマックスがそんなやり取りをしている、こりゃあしばらく落ち着けそうにないかもな……。

そんな事を考えていると………。

 

 

「お? ………いーすん?」

 

「……こ、こうしていると、ちょっとは慣れるでしょうか……?」

 

 

俺の開いている左手を、いーすんが軽く握ってきた。

顔は俯いているけど、彼女の金髪が作り上げた柔らかなツインテールの合間から見える彼女の頬は先程と同じくらい真っ赤だ。

 

………でも、こういう時俺はどうしたらいいんだろう………。

 

何せ彼女に対して彼氏がどんなことをするべきかなんて経験がない俺だからな、こんな時どんなことをしてやればいいかなんてわからない。

なので俺はとりあえず……。

 

「………ん」

 

「あ………」

 

その手を放さないようにしっかりと握り返すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室を後にした俺達は教会備え付けの移動用エレベーターで上の生活スペースへと移動、いつもネプテューヌ達が暮らしてる階へと上がった。

自動式のスライドドアを抜けて、俺達はそのままリビングへと向かう、今頃はネプテューヌやみんなも一足先におやつタイムだろうか?

 

そんな事を考えながら、俺達が廊下を進んでいると……。

 

 

 

―――がっちゃーーーん!

 

『ねぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううう!?』

 

 

 

突然部屋の方から何かをひっくり返したような音と、ネプテューヌの物と思われる叫び声が聞こえてきた。

 

「な、何だ今の!?」

 

「何かあったのでしょうか?」

 

「……とりあえず行ってみた方が早いですね」

 

その声に驚きながらも、俺達はこの叫び声の真相を確かめるべく急ぎ足で廊下を進んでいき、リビングのドアを開ける。

そして、部屋を開けた瞬間に俺達の目に飛び込んできたのは……。

 

 

 

「あ、あっつ! 熱いって! いくらなんでもアツアツの紅茶を頭からシャワーするのは主人公の栄光を持ってる私でも無理があるよ!? こういうのはベテランのリアクションを取って会場を笑わせる人専用のネタだよ!?」

 

「お、お姉ちゃん大丈夫!? アイエフさんタオルタオル!!」

 

「あーもー、仕方ないわね、ほら早くこれで拭いて」

 

「きゃはははは! ねぷてぬびしょびしょー!」

 

 

 

………どういう訳か頭に逆さになったティーカップを乗せてまだ若干湯気が立っている紅茶を全身に浴びてしまい、てんやわんやと慌てるネプテューヌとそれを見て動揺するネプギア、いつも通りフォローに入るアイエフ、そしてそんなネプテューヌの様子を見て無邪気に笑ってるぴぃの姿だった。

 

一体何をどうしたらこうなったのか……俺はこの状況に疑問を抱きながら、辺りを見回す……すると、後ろにいたハルキが何かに気付いたのかさりげなく俺の前に出てちらりと俺の方を見ると、あるところを指さした。

 

「……どうやら、またやっちゃったみたいです」

 

「……みたいだな」

 

そう言ってハルキが指差した先にいたのは………。

 

 

 

「ふえぇぇ………ご、ごめんなさい………」

 

 

 

最近、ハルキとステマックスの二人と一緒にこの教会に加わった、“新人”である一人の女の子だった。

空色のエプロンドレスに身を包み、綺麗な白髪の頭にあしらわれた紫の花飾りとそれをと一緒につけられたフリルのあしらわれたカチューシャのような被り物。

 

 

 

「……またやらかしたみたいだな、シンシア?」

 

 

 

そう言って苦笑いを浮かべながら問いかけた俺に反応して、彼女………シンシアが俺の方に目を向ける。

すると俺達の存在に気付いてシンシアは目じりに涙を溜めた状態で慌ててぺこぺこと頭を下げ始めた。

 

「ご、ごめんなさい………ごめんなさい………!」

 

「あ~、大丈夫大丈夫、なにもそんな泣きそうな顔して謝らなくても俺達は別にお前を叱りはしないって」

 

「まだシンシアさんはここで働きだして間もないんですから、そんなに怖がらなくても追い出したりしませんよ?」

 

今にも泣き出しそうな感じで必死に謝り続けるシンシアに俺といーすんは一緒になってフォローする。

すると、シンシアはそれを聞いて謝るのはやめたが不安そうな顔を浮かべてしょんぼりと落ち込んだ顔を見せる。

 

「大丈夫だよ~、シンシアちゃん~、心配しなくてもねぷちゃん頑丈だからこのくらいなんともないよ~」

 

「いやぷるるん、私も熱い物は熱いって感じるからね? やけどくらい普通にするからね?」

 

「ねぷねぷ、とりあえず着替えてくるです、ぐしょ濡れのままだと紅茶が冷めちゃうと風邪ひくですよ~」

 

そんなシンシアを慰めようと彼女の頭を撫でるプルルートをシンシアは涙目を浮かべながら見つめるが、やっぱりまだどこか申し訳なさそうだ。

意外と責任感が強いんだな、この子って……。

 

「うぅ………」

 

今にも泣きそうなほど目に涙を溜めるシンシア。

 

 

 

何で彼女がここにいるのか、それについてはハルキとステマックスの二人がここで働くことが決まった3日前に遡る………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで………働かせてって………どうしたんだシンシア、突然」

 

何よりも驚いたのは、あの時突然俺達の前に現れ、ここで働かせてほしいと言ったシンシアの発言だった。

俺の知る限り、筋金入りの人見知りで誰かと会うだけでも過剰な拒絶反応を示すようなシンシアは自分から働かせてください、なんていう感じの子に思えなかったからだ……。

 

当のシンシアはやっと言えたと言った感じではあるが、かなり不安そうな顔を浮かべている。

一体彼女に何があったのか、俺達が考えていると……。

 

 

 

「あー、ちょっとごめんなさい、先輩……いいですか?」

 

 

 

突然その時は俺達の後ろにいたハルキが俺達の間を縫うようにして前に出ると、シンシアと俺達の間に割り込んで入ったのだ。

 

「ちょっとシンシアちゃんと話をさせて貰ってもいいですか?」

 

「え? ………あぁ、それはいい、とは思うけど………シンシアは人見知りで早々すぐに離してくれるとは思わないぞ? しかも、お前初対面じゃないのか?」

 

何やら彼女の事を知っているようにすんなりとシンシアの名前を出したハルキに俺が問いかける、するとハルキは苦笑いを浮かべながら俺とシンシアを交互に見て、返答を返してきた。

 

「えっと………それは………実はなんですけど、ボクとシンシアちゃんは従兄妹でして」

 

「え!? そうだったのですか? 初耳ですけど……」

 

「まあ、ボクの方も先輩方がシンシアちゃんと知り合ってるなんて知らなかったのでお互い様です」

 

「……まあ、確かに俺達もシンシアの事は何も言ってないしな……」

 

驚いたことにシンシアとハルキが従兄妹同士だったらしい………偶然のめぐり合わせってあるんだなと、この時の俺は思った。

そして、シンシアとの関係性を放してくれたハルキは俺達の許しを得ると一旦シンシアと一緒に別の場所に移動した。

その時に何やらシンシアが戸惑い気味だった様にも見えたが……まあ、慣れない環境なうえに何かしらの理由を抱えているなら仕方のない事かと俺は感じた。

 

その後、しばらくして二人は戻ってくるとハルキはシンシアの事情を聴いたらしく彼女の代わりにそれを代弁してくれた。

 

 

 

「何かわかったのか?」

 

「はい、どうやらシンシアちゃん、社会勉強の一環とかで一人立ちしたみたいです」

 

「は? ………一人立ち?」

 

 

 

ハルキがシンシアから聞き出した理由、それを聞いた俺やいーすんたちは反射的に呆気にとられたような表情を浮かべてしまった。

それに対して、当のシンシアは何やらどこか申し訳なさそうにこくりと頷くとその場で俯いてしまう。

 

「えぇ、この子もともと人見知りで引きこもりなのはもう先輩たちも知ってるみたいですけど……いつまでもこんな事ではだめだと、一人立ちさせたらしいんです……でもまあ、余りにも突然の事だったので行く当てもなく、ましてや見知らぬ場所で働かせてくださいなんて言えるはずもなく……」

 

「ここに来た、というわけですか……」

 

「……そういうことです」

 

いーすんがハルキの説明を聞いて、合点がいったのか結論をハルキよりも先に出すと間違いはないということなのかハルキは頷いて肯定した。

それを聞いて俺達は今この場で俯いているシンシアがやたらに不憫に思えて仕方なかった。

 

確かに、いつまでも引きこもりで人見知りのままっていうのはダメなことだとは思うけど……けど、さすがにシンシアにいきなり一人立ちはレベルが高すぎないか?

 

「あのキャリーケースがあるってことは……」

 

「一人暮らしとかも出来る様に必要最低限の荷物らしいです、家にはしばらく帰らないと約束したらしいので」

 

「……随分大胆っていうか、いきなりすぎて逆に無謀っていうか……」

 

シンシアの事情を理解しながらも、余りにも突然且つ大胆すぎる挑戦に俺は苦笑いを浮かべる。

だけど、悪い事ではないと思う反面、若干これは危うい挑戦だとも感じた………。

なにせあのコミュ力が相当低いシンシアがいきなり社会に出て一人立ちっていうのは普通よりもかなりレベルが高いことこの上ないし、なによりこの子の事だから最悪どこにも当てが無くなって路頭に迷うことだってありえただろうに……。

 

そんなことを考えながら俺はちらりとシンシアを一瞥すると、シンシアはかなり不安なのが分かるくらいに落ち込んでいるように見えた。

何とかしてやりたいけどな……どうしたものか……。

 

俺がシンシアの事について頭を悩ませる、するとそんな時不意にいーすんが俺の横を通り過ぎていった。

いーすんはゆっくりと俯いているシンシアに近づくと、彼女と目線を合わせる様に少ししゃがむ。

 

「……シンシアさん、教会ではもう職員として働く人材は十分事足りています……」

 

「………ぅ」

 

………確かに、いーすんの言うように必要な人員を集めうための募集だ、今はもう既に教会の運営のために働く職員は事足りているだろう。

いーすんの口にした言葉を聞いてシンシアは俯きながら着ているエプロンドレスのスカートをぎゅっと握り絞める、その姿は今にも泣き出しそうなほどで……。

 

 

だけど、そんなシンシアにいーすんはそっと手を伸ばした……。

そしてその手を優しく彼女の頭に乗せ、優しく撫で始める。

 

 

 

「なので、シンシアさん………あなたには、この教会では“家事手伝い”をしてもらいましょう」

 

「………ふえ………?」

 

「……いーすん?」

 

 

 

そして、いーすんが言ったその言葉に俺だけじゃなくその場にいた全員が少し驚いたような反応を見せた。

 

そんな中いーすんは今の言葉を聞いて顔を上げたシンシアの事をまっすぐに見つめながら、こう言った………。

 

 

 

 

 

「シンシアさん、あなたを今日から……プラネテューヌ教会の“メイド”に任命します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということがあって、今現在シンシアはこの教会の直属の“メイド”として住み込みで働くことが決定したのだった。

シンシアが頭に新たに乗せているのはその証でもあるメイド用のメイドキャップというわけだ。

 

とはいっても、シンシア自身やっぱり仕事というか、そう言うのに慣れていないっていうよりもまず経験したことがないから失敗ばかりで、ここ最近はいつも賑やかなネプテューヌ達がいるこの部屋がさらに賑やかになったような気がする。

 

「ほらシンシア、いつまでも落ち込んでないで今度は溢さないように気を付けて、イストワール様達の分のお茶を入れてきて?」

 

「今度はわたしとあいちゃんも一緒にサポートするですから、焦らずゆっくりでいいですからね~」

 

「は………はい………」

 

アイエフとコンパさんの二人はメイドとして働き始めて間もないシンシアにいろいろと教えてあげる“教育係”になって、失敗続きのシンシアをサポートしながら彼女が少しでもこの状況になれることが出来る様に面倒を見てくれてる。

アイエフは自分にも可愛い後輩が出来たって嬉しそうだし、コンパさんもシンシアをとても可愛がっている。

 

「は~い、ねぷちゃんお風呂いこ~、シンシアちゃん~、後はよろしくね~」

 

「シンシアさん、こっちは私達が何とかしますからあまり気にしないでくださいね?」

 

「あー、そうそう、失敗は成功のいいお友達なんだからさ、ちょっとっていうかかなり熱かったけど、このくらい大したことないから大丈夫だよ、シンシア」

 

そして、ネプテューヌ達も新たにメイドとしてこの教会に加わったシンシアと仲良くしてくれている。

ネプテューヌは元々持ってる誰も拒まずに受け止める彼女独自のスタイルでシンシアを早くも受け入れ、ネプギアも彼女の性格を知って彼女が不安がらないようにフォローをよく入れてたまにアイエフ達と一緒にシンシアの面倒を見てるし、プルルートは前から彼女の友達っていうのもあったからいつもシンシアと仲良く接している。

 

そんな多くの人に支えもあって、この教会でメイドとして働き始めたシンシア、出来ればこのままうまい事一人前になってほしいなと、俺は心のどこかで思ってたり……。

 

「………それにしても、だいぶ思い切ったことをするよな、いーすんも」

 

なんてことを考えながら、俺は隣にいるいーすんに今までのシンシアの経緯も踏まえてのこの決断について話しかける。

するといーすんはコンパさんと一緒になって紅茶を入れ直してるシンシアを見つめながら、どこか嬉しそうに微笑みを浮かべた。

 

「………シンシアさんは、以前に私を助けてくれたみたいですし………だとしたら、これは私なりの恩返しです」

 

「………恩返し、か………そうだな、もしあの時ライラさんとシンシアが来てなかったら、今頃どうなっていたかわかんないしな」

 

かなり前の事、いーすんが突如として高熱を出してぶっ倒れた時に俺は彼女と初めて出会った。

そして、ことの成り行きで一緒に居たライラさんと一緒に彼女を教会へと迎え入れ、彼女の協力のおかげでなんとかその時のいーすんを助けることが出来たわけだしな……。

 

「はい、だからそのお礼もかねてシンシアさんにはきっちりと一人前になれるようにここで頑張ってもらいます」

 

「……おーおー、いーすんの教育魂に火が付いたか?」

 

「さぁ、それはどうでしょうね?」

 

俺の冗談交じりの言葉に微笑みながら返したいーすんはそう言いながらリビングのテーブルに備え付けられた椅子に座る、そしてそれに続くようにして俺が、そしてその向かい側にハルキとステマックスの二人が座った。

 

「………ど、どうぞ」

 

それから少し遅れて、シンシアが今度はネプテューヌの時のような失敗をすることなく俺達の元へと紅茶の入ったティーカップを人数分持って来てくれた。

シンシアが一人ずつ丁寧にカップを置いていく、その様子を俺やいーすんはなんだか、何処か微笑ましさのような物を感じながら見守る。

 

「………ありがとうございます、シンシアさん」

 

「え………あ、えと………い、いいえ………こちらこそ、あり……がとう……」

 

お礼を言ったいーすんに対して、恥ずかしそうに頬を染めてお礼を返すシンシア。

 

(これから頑張れよ……)

 

そんな事を俺は思いながら目の前の微笑ましい光景を作り上げるいーすんとシンシアの二人を、俺は見つめ続けた。

 

 

 

「………」

 

 

 

そして、その様子をハルキもまたじっと見つめていた。

ハルキも、何かを感じているのかな? ………まあ、従兄妹だっていうし何かしら思うところがあるのかもな………。

 

でもまあ、こんな後輩たちが出来たこの教会で俺達は新たなスタートを切ることになった……。

 

そう、“新たなスタート”を………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………今の所、予定通りってことでいいの?」

 

空に浮かんでいた眩しい太陽が沈むころ、プラネテューヌ教会の前で今日の教会の勤務を終えたハルキとステマックスがとある人物と話していた。

その人物とは、この教会でメイドとして住み込みで働くことになっているシンシアである。

 

シンシアはハルキの言葉に対して、どこか恐る恐ると言いたげな様子でこくりと頷く。

 

「………ライラに言われた、とおり………」

 

「………あっそ、ならいいけど………とりあえず、あんまり変なことはしないでよ? 何かの拍子で君の目的とか………最悪の場合正体とかばれちゃったら僕が咄嗟に考えた言い訳が水の泡になっちゃうんだからさ」

 

ハルキの言ったシンシアの言い訳、それはシンシアが教会にやってくるまでの経緯について彼が話した一連の出来事の事であった。

あれは、すべてハルキがその場の思い付きで言った咄嗟の嘘、シンシアはまず一人立ちなどの理由で教会に来たわけではない。

 

と言っても、ハルキ自身、突然教会職員として教会に潜入した矢先にその場所に今度はシンシアが来るとは予想しておらず若干戸惑ってはいたのだが……。

 

「……まったく、あの人には困ったものだね……潜入先にこの子が来るなんて聞いてないってのに」

 

先日、ここに潜入するための試験を受ける前に、このことについて提案してきたライラが最後に言った“お願い”……。

“面倒を見てほしい子”というのはシンシアの事だったとはハルキ自身も予想してはいなかったのだ。

 

「………まあ、君は君の役目をしなよ、ボクはボクのやることをするだけだからさ」

 

とりあえず、何にしろ今はこの状態を保つしかないと判断したハルキはそう言いながらシンシアに向き直るとパーカーのポケットに入れていたチョコバーを取り出すとその包装を開けて一口齧ろうとする。

 

 

 

「………本当に………プルちゃんを………狙ってるの?」

 

 

 

だが不意に、シンシアはハルキにそう問いかけた。

それを聞いた瞬間、ハルキがチョコバーを持っていた腕の動きを止めると、視線をシンシアの方へと向ける。

表情こそ、いつもと変わらない………だが、その目には明らかな“不機嫌”と言う感情がしっかりと浮かび上がっていた。

 

 

 

「……だから何? なら君は、ボクのしようとしてることを邪魔しようっていうのかな?」

 

 

 

そう言うとハルキはそう発現したシンシアへと距離を詰めると、彼女を追い詰める様に壁際へと追いやった。

言い知れぬ圧迫感を放ちながら迫ってくるハルキに、反射的に押されるようにして壁際まで追いやられたシンシアは背中を壁に付けながら戸惑いに満ちた表情を浮かべる。

そんなシンシアを追い詰めたハルキは、彼女の顔のすぐ横、そこに自身の手を勢いよくつけて彼女の目を覗き込むようにしっかりと見つめる。

 

「………言っとくけど、ボクの邪魔をするようなら………例え君であっても、容赦しないよ?」

 

「ひっ………ご、ごめんなさい………」

 

言い知れぬ迫力と、凄みのある目の眼力、それを間近で感じ取ったシンシアは身近い声を上げると恐る恐ると言った感じでハルキに謝った。

それを確認したハルキは壁に押し当てて知多自分の手を放すと、パーカーのポケットに入れてもう片方の手で握っていたチョコバーを齧った。

 

 

 

「………まあ、今はお互い出来ることをしようよ………」

 

「………出来る、こと?」

 

「そう、ボクはプルルートを倒すためと今後の先輩の行動を監視する……そして、君は先輩とイストワール様が今後獲得する能力について観察する……そして同時に君の“探し物”も探すってことで、ね?」

 

 

 

ハルキがチョコバーを齧りながら、互いの目的を再確認するようにそう言うとシンシアは少し間を開けてからこくりと頷いた。

それを確認するとハルキはそれ以上何も言わずに、チョコバーをたいらげるとそのままシンシアに背を向けると教会を後にしようと歩き始めた。

 

「それじゃあ、また明日……頼むから余計なことはしないでね」

 

最後にくぎを刺すようにしてそう言い残したハルキは、後ろで待機していたステマックスと共に教会を後にする。

住み込みで教会で働くシンシアとは別に、ハルキとステマックスは別の場所に住んで生活をしているのである。

 

 

 

「………ハル殿、さっき何気にシンシア殿に壁ドンをしてたでござるな、拙者には到底あんな大胆なことはできないでござる………」

 

「………いや、だからどうしたの?」

 

 

 

そんなやり取りをしながらその場を離れていくハルキとステマックス、その後姿を見つめながらシンシアはどこか不安そうな表情を浮かべながら背後の天高くそびえ立つ教会へと目を向ける。

 

 

 

「………」

 

 

 

……果たして、この教会に潜入した二つの思惑はどんな物語を導いていくのか……。

 

 

 

 




如何でしたか?

次回、新メンバーとそれぞれの思惑を乗せて動き始めたプラネテューヌ教会の面々、そんな彼らが日々を過ごし始めた裏で、動き始めた者達はまだ残っていた…。

それでは、次回もお楽しみに!
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