超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回のお話は前回強盗事件に巻き込まれたハルキを救うべく宗谷が現場に!
しかし、そこでは再びあの戦士が…

それでお楽しみください、どうぞ!


stage,91 俺と青の戦士再び

 

 

 

ハルキからの連絡を受けた宗谷、彼ら一行はその一方を受けハルキが今ただ事ではない緊急事態に巻き込まれたことを知り、すぐさまこのプラネテューヌの情報や現状に詳しい諜報部員であるアイエフの協力を借りて、今この国で起きた事件の中で犯人が銃で武装している強盗事件を洗い出し、急いで現場に急行した。

 

今ではすっかり愛車となった深紅のバイク、マシンヴィクトラーに跨り駆けつけた宗谷と彼の後ろに乗って二人乗りで同じく現場に辿り着いたイストワール。

そして、この国の女神であるネプテューヌもこの事件は見逃せないとそれに同行して、女神化し、空を飛んで宗谷とイストワールの後ろをついてきた。

 

「ここだな、強盗事件の起きたショッピングモールってのは…」

 

「そのようですね、確か先にアイエフさんがここに来ているはずなのですが……」

 

プラネテューヌでも名の知れたショッピングモール、今現在ここで強盗事件が起きているらしい現場に辿り着いた宗谷は早速辺りを見回して状況を確認する。

ショッピングモールの入り口付近と思われるこの場所には既に何十人という野次馬と、現場の状況を整理する警察が現場を固めており、かなり込み入った状況となっていた。

そんな中で宗谷達はこの現場に先に駆け付けているというアイエフの姿を探して多くの人影の中で目を凝らす。

 

「……あ、あそこ、あそこにいるのアイちゃんじゃないかしら?」

 

するとパープルハートが人混みの中で冷静に警察や警備員から状況を報告してもらい、何やら支持を出している様子の見慣れた若草色のリボンが特徴的な少女、アイエフの姿を見つけた。

 

「だな………おーい、アイエフ!」

 

「あら? やっと来たのね、宗谷、ネプ子、それにイストワール様も」

 

「状況はどうなっているのか説明してもらえますか?」

 

「わかりました」

 

なんとかアイエフと合流できた三人は早速先に来ていたアイエフから現在このショッピングモールで起きている強盗事件について情報を聞くことにした。

ここからだとショッピングモールの中の様子はわからないし、情報も何も得られないからだ。

イストワールの言葉にこくりと首を縦に振ったアイエフはいつも彼女が愛用しているスマホを取り出し、現在の状況についての説明を始めた。

 

「事件が起きたのは今から一時間と三十分くらい前、突然ショッピングモール内で銃声が鳴り響いたのを皮切りに複数の武装集団がモール内の人々を人質にとって中に立てこもってるとのことです」

 

「複数ってことは犯人は一人じゃないのか?」

 

「たぶんね、そもそもショッピングモール自体も広いし、単独よりも複数で行動した方がいろいろと好都合なのかもしれないわ、侵入されないようにする見張りとか、人質の監視とか………少なく見積もっても、10人近くはいると思っていた方がいいかもしれないわね」

 

「それで、犯人たちは今どこにいるの? それと、人質はどこに?」

 

パープルハートの問いかけにアイエフは手早くスマホを操作すると、ショッピングモール内の地図を画面に映し出し、三人に見える様に画面を向けた。

そして左手の人差指でショッピングモールの入り口からしばらく行った先にある噴水のあるホールを指さす。

 

「今の所、犯人グループの主犯格と思われる人物は数人の仲間と人質と一緒にショッピングモール内の入り口付近、丁度このあたりにいるわ……でも、ここ以外の場所にも犯人グループの仲間がモール内を見回っているし、なにより全員武装してる……迂闊に手は出せないわ、下手をしたらこっちが痛い目を見るかもしれないし、なにより人質も危ないからね」

 

「……よく考えてんな、犯人グループのボスは………」

 

ショッピングモールの中でも見開けた場所である中央ホール、あらゆる方向へと目を向けられる上に、見張りの配置次第ではすぐに対処が出来る場所を選んでそこに立てこもっている犯人グループ、アイエフの説明を聞いて宗谷はこの時このグループが突発的な行動でこの強盗事件を起こしたわけではないと理解した。

 

この強盗はあらかじめ計画して起こした、計画的犯行だ。

 

でなければわざわざ広くて、隠れる場所も十分にありそうなショッピングモールを強盗の舞台にするわけもないだろう。

しかし、なら犯人グループの目的は何なのか、宗谷は疑問に感じた。

計画性のある犯行で、わざわざ人質を取ったのなら恐らくは何かしらの要求を犯人グループは提示しているはずだ、ベターなところでいえば金や逃走用の車、と言った所だろうが……。

 

「……アイエフ、犯人グループの狙いって何なんだ?」

 

気になった宗谷は思い切ってアイエフに質問する、するとアイエフは再びスマホを操作すると宗谷にこの事件の発端となった犯人グループの目的について説明した。

 

 

 

「奴らの目的は………一般流通してるゲームの年齢指定、および規制コンテンツを解除しろとの事らしいわ」

 

「………は?」

 

 

 

ややあきれ顔で説明したアイエフ、そしてそれを聞いた宗谷も呆気にとられた様子で目を丸くしてしまった。

何せ予想を完全にへし折る勢いで裏切られたのだから、呆気にとられるのも無理はない。

 

「き、規制コンテンツの解除? ……それって要するに、何歳以上は見ちゃいけません、とか、過激すぎるため本作には規制が駆けられてます、とかのか?」

 

「付け足すなら、あからさますぎるモザイクとか見えない仕様とかも入るわね……」

 

このゲイムギョウ界ではもちろんサブカルチャーの一角を担うゲームなどが大変な人気を博している。

しかし、その反面そのゲームに対する年齢指定や規制と言ったしがらみも当然存在するのである。

肌色が多くまだ未成熟な子供には見せられないサービスカットに対して使う見えない仕様やエロゲーのモザイクなどもそれに含まれる。

それらの過激すぎると判断された表現には何かしらで隠したり、それなりの配慮を行っうているわけなのだが……要は犯人グループはそれらの仕様を一切廃止しろと、用はそう言うことらしい。

 

「………無茶苦茶だな、おい………ただエロゲ買うだけでは物足りなくてモザイク取れって、しょーもなさすぎだろ………」

 

あくまで年齢指定やそれらの規制は健全にサブカルチャーを楽しめるようにと取り決めた配慮であり、当然のことだと宗谷は理解している。

まあ、確かにもう少し過激な表現を見たいという欲求があるのはわからないこともない、しかしいくらなんでもここまでの大ごとの事件を起こす理由としてはあまりにもしょうもなさ過ぎて宗谷は反射的に頭を抱えてしまった。

 

「……と言っても、最近多いのよね、こういう類の理由が絡んだ事件」

 

「え、これだけじゃないの!? こんなしょうもない理由の事件が!?」

 

「はい、アイエフさんの言う通りここ最近各所で規制関連の動悸で起こした事件の報告が多数確認されているんです……」

 

 

……この世界の犯罪を犯す人の思考は本当に大丈夫なのだろうか?

 

 

この時宗谷は心底この世界の犯罪者の思考がある意味で心配になったという…。

いや、そもそも犯罪者の気持ちなんて理解はしたくないのだが、この時ばかりはそう思わざるを得なかった…。

 

「これだと、巻き込まれたハルキも不満だろうな・・・」

 

「ハルキ? なに、あいつがどうかしたの?」

 

自分たちに連絡してきた後輩がまさかこんなしょうもない事件に巻き込まれることになるとは思ってもみなかった宗谷がそう呟くとアイエフがそれを聞いて首を傾げた。

 

「え? 知らないのか? ここに来る前、この事件が起きてるのを知ったのはハルキから連絡があったからなんだ……強盗事件に巻き込まれたってあいつから連絡があったんだよ、後ろの方で銃声が聞こえたから間違いないと思うんだけど……」

 

「えぇ!? そんなの情報にないわよ!? 人質の中にそれらしい影もみなかったし……」

 

「………もしかしたら、何処かに隠れてるのかしら………人質として捕まってるならまず連絡も取れないだろうし、あの子がそんな迂闊な行動をするようにも思えないわ」

 

宗谷からハルキの事を聞いて驚くアイエフに対して冷静に状況を判断してハルキがどうやって連絡してきたのかを分析したパープルハート、確かに彼女の言う通りそう考えた方が妥当と言えるかもしれない。

ハルキは戦闘などの荒事が不慣れな反面、冷静な分析や状況判断に優れているところがある、今回の事件が起きた際巻き込まれないように手早くどこかに身を隠して、密かに連絡を取っていたとしても不思議ではない。

 

「でも、だとしたらあまりこのまま放っておくわけにもいかないわね……犯人たちも相当気が立ってるみたいで規制された対象となったゲームの規制を解除して一般販売するって交渉を進めなければ人質に痛い目を見せるって言ってるくらいだし…」

 

「やろうとしてることこそ過激だけど、理由本当にしょうもないな………どんだけモザイク失くしたいんだよ、アニメのBDでも買えよ………」

 

「とにかく、奴らが事を荒立てる前に何とかしないと……もしハルキが見つかったらそれを火種に状況がさらに最悪になるかも……」

 

このまま手を拱いているわけにもいかない………わかってはいるのだが変に手を出すわけにもいかない。

人質の身の安全と、速やかにこの状況を打破するにはどうしたらいいのか、宗谷達は考え込む。

もちろん要求を呑むわけにはいかないし、かといって強行突破すれば人質もどこかにいるであろうハルキに身にも危険が及ぶやも知れない……。

 

「………本当、厄介なことになったな………ハルキ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………厄介だよね~………こんなことになって」

 

ショッピングモール内の一角、衣服類を取り扱うこの店の試着室の中、そこにこの事件に巻きこまれることになったハルキは身を隠していた。

カーテンを閉めて視界を遮り、その中で教会への連絡用の通信端末を使い、宗谷達に連絡をしたハルキ、偶然とはいえこんな事件に巻き込まれるとは思ってもみなかったため、厄介なことこの上ない。

 

「しばらくは大人しくしようと思ってたのに……こうなっちゃったら多少強引でも、あいつらを何とかしなくちゃいけないよね……」

 

そう言うとハルキは通信端末をパーカーのポケットの中に仕舞いこみ、入れ替える様にもう一つの彼の端末、Jデバイザーを取り出すとそれへと目を落とす。

 

「………なにはともあれ、悪人を倒すのが正義の味方の役目なんだしさ」

 

この端末を受け取るにあたり、ハルキは自分がもう一つの姿になり、成すべきことを説明された。

 

自分は“正義の名を持つ戦士として悪を成す物を倒す”と言う役割を……。

 

それはある意味では自分が最もやるべきことなのだとその時のハルキは思っていた、この世の悪は許してはおけない……すべての悪を倒すことが自分のやるべきことなのだと、ハルキは心に誓った。

だからこそ、この力を手にした……悪を絶つ、そのために……そして、打倒すべき最悪の存在をこの手で仕留めるために……。

 

 

 

「………この役目はしっかりこなすさ………プルルートを、倒すためにも………あいつは………最悪の女神なんだからな………」

 

 

 

Jデバイザーを握り絞めてそう呟くハルキ、その目に映るのは揺るがない決意か、信念のような物だった……。

 

すると、突然ハルキのいた試着室の丁度真上の方から、がたがた……という音が聞こえてきた。

それに気付いたハルキが上を見上げると試着室の上にある通気口が外れ、そこからある人物が顔を覗かせた。

 

「ハル殿、偵察終了したでござる」

 

「ん、ごくろうさま……で、どこから抜け出せる?」

 

「このダクトを通って行けば在庫置き場に出るでござる、そこからなら強盗共の目も盗めるかと……」

 

「そっか、ありがとステマックス……それじゃ行こうか……」

 

ステマックスからの情報を聞いたハルキは彼にお礼を言うと上にいるステマックスの方へと手を伸ばした、そしてその手をステマックスは掴むとハルキの体を引き上げて共に通気口のダクトからその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々は表現の自由という建前の元、その自由を奪うこの規制を排除すべくたたかうのである!! その表現の自由を取り戻すその時まで我らは何度でも立ち上がる!! そのための犠牲もいとわぬ所存!! これは必要な犠牲なのである!!」

 

高らかにショッピングモールの入り口でメガホンを片手に、数人の武装した人間と共に入口の周りを固める警察や警備兵、そして野次馬へと向けて宣言をするのはこの強盗を企てた犯人グループのボスのようだった。

あれからしばらくして突如として外へと出てきた彼らはメガホンで自分たちの要求を改めて提示、その上で自分たちは何でもする所存であるという声明を発表したのである。

 

その際に警察側から強行突入を受けないように数人の人質も一緒に同行させて出てきたため警察側も迂闊に手は出せないでいる。

 

「……緊迫してる状況だけど、やっぱり言ってる事を突き詰めるとマジでしょうもないな……」

 

「宗谷さん、それはわかってますから……もう考えないようにしましょう、実際に事件も起きてますから」

 

そんな中でもこの事件の動悸に疑問を抱き続けている宗谷にイストワールがそう言い聞かせる。

そんな中、右手にハンドガンを持った無骨でいかにもな雰囲気を纏った厳つい面構えの男は左手のメガホンで声を上げてさらにがなり立てている。

あまりにも潔白したその雰囲気はまるで革命でも起こそうかというくらいの勢いである。

 

いや、見方によっては彼らにとってはこれは革命レベルの問題なのかもしれない……何せこの要求が通れば、年齢指定や過激すぎるとされる表現の規制がなくなり一般の目にも更なる表現が知れ渡ることになるのだから。

そうなれば、ある意味では革命にも似た表現の自由が展開されることとなる。

 

しかし、その革命は決して成しては言い革命とは言えないのもまた事実だ。

 

確かに表現豊かで、それを楽しむ人物もいることは事実だ、しかしそれはちゃんとその表現がどんなものなのか理解したうえでの楽しみ方であり、まだ思考が未熟な子供にそんな過激な表現が行き渡ってしまったら、それこそ不健全極まりない物となってしまう。

サブカルの表現における規制はあくまでよりその作品を楽しめるように敷かれた、当然の配慮なのだ。

 

「それで、どうするんだよ……このまま見てみぬふりって訳にもいかないだろ?」

 

「はい、アイエフさんの指示で別動隊がこことは違う場所で待機しています……タイミングを見計らって突入、速やかに人質を解放して犯人グループを確保します」

 

これ以上、こんなことに巻き込まれた人たちを苦しませないためにも早く何とかしなければいけない。

そう思ったイストワールもまた協力体制を引いて、すでに手は打ってあった。

 

あとはそのタイミングを待ち、反撃の一手を打てるのを見計らうだけなのだが……。

 

すると、そんな時……。

 

 

 

「あ、あの~……こ、こんなことしても意味はないと思うんですけど……」

 

 

 

犯人グループに人質に取られている人物の内の一人が主犯格の男にそう言ったのである。

 

「………なんだと?」

 

「ひっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい! べ、別に他意はないんです!? ただそういうのはこんな過激なことしても周囲の反感を買うだけ……というか……」

 

「貴様、我らの決意の行動がすべて無駄なことだと愚弄するかぁぁぁああああ!!」

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいいい!? すみませんすみませんすみません!!」

 

その人質の言葉に対してまるで烈火の如き怒りを燃やしながらものすごい見幕を向けた男、その勢いに押され言い出した人質の女性は慌てて男に謝り続けるが、怒りに火をつけた男はそんなことはお構いなしに左手に持ってたメガホンを捨てると女性の胸ぐらを掴み上げた。

 

「幸薄そうな眼鏡女が、我らの戦いに口出しするとはいい度胸だな!!」

 

「ごめんなさいそんなつもり一切ないんです!? わ、私はただこんなことをしてもいい事なんてないって思っただけで……!」

 

「要するに我らの行いに意味がないと、そう言うことに変わりはないだろうがぁぁぁぁあああああああ!!」

 

「ひえぇぇぇぇええええええええ!?」

 

もはやさっき使ってたメガホンにも負けないくらいの怒声を響かせる男、このままでは人質となっているあの女性の身が危ない…。

 

「まずいな……なんか知らないけど、ややこしいことになってきたぞ……」

 

「あの眼鏡の女の人、このままだと何されるかわからないわ……なんとかして助けないと」

 

「………しかたありません、別動隊に合図を………」

 

この非常事態に危険を感じたイストワールはすぐさま別動隊へと指示を出そうと、連絡用のチャンネルを出そうとする。

急がなければ、あの男が女性にいつ手を上げるかわかった者ではない。

 

急がなければとイストワールがチャンネルを合わせていると……。

 

 

「我らの覚悟に泥を塗ったその罪、万死に値する! ここでその命を持って償って貰おうか!!」

 

「ひっ!? な、な、な、なんでそうなるんですか!? ちょ、待って、待ってください! 落ち着いて!?」

 

 

痺れを切らした男が右手のハンドガンの銃口を女性へと向けたのである。

その指はハンドガンの引き金へと掛けられており、いつその引き金が引かれて銃弾が放たれるかわかった物ではない。

この事態に警察と警備兵は咄嗟に犯人グループを止めようと前に出ようとするが、そうはさせないというかのように主犯格の周りを固めていたメンバーが持っていた銃を構える。

 

「おいおいおいおい、いくらなんでもこんなのめちゃくちゃだぞ! いーすん別動隊は!?」

 

「ま、待ってください! こっちもすぐには……!」

 

急いで女性を助けようとする宗谷達だがこれではどうしようもない……下手に強行突入すれば人質や、あの女性がどんな目に合うか目に見えているからだ。

しかもあの主犯格の男はかなり興奮してる、このまま放っておいても確実に女性はあの銃の餌食となるのは目に見えて明らかだ…。

 

(どうすればいい……どうしたら、あの人を救える……!)

 

必死に思考を巡らせる宗谷、しかし、時間は非常にも残酷な答えへと進む……。

 

 

 

「見ているがいい! 我らの覚悟の強さを! そして、我々は本気であるということを!! その犠牲となったこの女を見て、早く答えを出さなかったことを後悔するのだな!!」

 

 

 

恐らくは要求している所に向けての見せしめの言葉を叫びながら、男はハンドガンの引き金へと掛けた指に力を籠める………。

 

「や………やめろ!!」

 

咄嗟に宗谷が男にそう叫ぶが、もう間に合わない……拳銃の引き金は指が引かれるのに合わせて、ゆっくりと銃身と持ち手の間へと沈んで行き……。

 

 

 

 

 

―――ガシャァァァァァァァアアアアアアン!!

 

 

 

 

 

鳴り響いたのは、銃声とは違った……まるでガラスが割れるかのような甲高い音だった。

 

 

 

一体何が起こったのか、その場にいた人々全員が……銃の引き金を引こうとしていた男を含めた犯人たちでさえも驚き、その音が聞こえた方へと目を向けた。

 

 

 

次の瞬間、ガラスが割れた音……ショッピングモールの自動ドアのガラスを粉々に砕きながら、中から一人の人物が無造作に吹き飛ぶかのように飛び出してきた。

 

 

 

自動ドアを突き破り、地面を数回転がり、力なくその場に倒れたのは犯人グループと同じ装備に身を包んだ男だった。

その姿を見て主犯格の男とその取り巻き達が驚きに目を見開く。

どうやらこの人物もまた、犯人の仲間だったようだ。

 

 

 

「………死にはしてない、ただ気絶しているだけだ」

 

 

 

そして、遅れて再びショッピングモールの入り口の方から人の声が聞こえてきた。

粉々に砕けた自動ドアをくぐり、その中から姿を現した人物を見て、犯人たちは再び驚きの表情を浮かべる。

 

右手に青い三叉の槍を握り、首元に深い青のマフラーをなびかせながら、その人物は犯人たちと対峙した。

 

 

「……貴様らのような子悪党など、殺す価値もないからな……」

 

 

全身をスマートなフォルムの青い装甲で包み、近未来なデザインのマスク越しに犯人たちへと睨みを利かせる“青い戦士”が………。

 

「な、何だ貴様は!! どこから現れた!!」

 

「些細なことを気にする暇があったら、自分たちの身の事を考えるんだな……行っておくが、俺は………“正義の勇者”は悪人には容赦はしないのでな……」

 

そう言うと青い戦士は右手に握っていた三叉の槍を振り回し、犯人グループ達の方へと向けて身構えた。

その戦士の姿を遠巻きに確認した宗谷は、彼がいったい何者なのかを知っていた。

 

 

 

「クロス・ジャスティス!? あいつ、いつの間に………」

 

 

 

そう、あの青い戦士の名前は“クロス・ジャスティス”…。

先日、ラステイションで起きたハッキングと盗撮騒ぎの折、宗谷達の前に姿を現し、時折彼らの前に姿を現した、謎の戦士である。

いったい、彼はどこから来たのか……宗谷は疑問を感じる中、クロス・ジャスティスは銃口を向けて来る犯人たちと対峙し続ける。

 

「こんなことをしてタダで済むと思っているのか! 中にいるのとここにいる人質たちがどうなっても!!」

 

「その心配は必要ない」

 

クロス・ジャスティスへと向けて警告する男、だがそれに対してクロス・ジャスティスはあっさりとそして単調に返答を返すと………同時に男の近くで鈍い音が響いた。

 

 

 

「既に中の奴らは全員片付けた………お前達もこれから同じになるがな」

 

 

 

男を取り巻いていたメンバーのうちの一人が、静かに地面へとうめき声を上げながら倒れ込む。

一体何が起こったのか、その場にいた人物はわからなかった……自分体の目の前にいたこの青い戦士が一瞬にして間合いを詰め、仲間の内の一人の鳩尾に持っていた槍の柄を打ち据えて、一瞬のうちに沈めたのである。

だが、それらの行動は犯人たちには理解できなかった……それほどまでに迷いがなく、素早い、目にも追えないような一瞬だった…。

 

「こ、こいつ!」

 

メンバーの一人がやられたことで他の取り巻き達が持っていたサブマシンガンの銃口を向ける。

だがそれに対して、クロス・ジャスティスは怖気づくこともなく次の行動を開始した。

銃口を向けたメンバーに向かっていくと、俊敏な動きで狙いを定めさせることなく近づき、持っていたサブマシンガンを彼の武器であるライバライデントで銃身を切り裂き、無力化する。

そして、一瞬の事で理解が追い付いていないメンバーに、クロス・ジャスティスは流れるような後ろ回し蹴りを顔面へと撃ち込んだ。

 

「……次!」

 

そしてそのままクロス・ジャスティスは他の取り巻きへと向かっていくと、勢いを乗せた膝蹴りでさらにもう一人を沈め、サブマシンガンを構えたもう一人にはライバライデントの柄を使って銃口を上へと向けさせ、狙いを外すとその勢いのままライバライデントを下から上へと振り上げるようにして打ち上げ、さらにもう一人を無力化した。

 

僅かな時間で既に4人が倒された、それに至るまでのクロス・ジャスティスの無駄のない動き……それを目の当たりにした犯人たちは焦りを見せ始める。

 

「おのれ……やれ! やれ!!」

 

主犯格の男が残っていた取り巻き二人に指示を出し、サブマシンガンをクロス・ジャスティスへと向けさせると、取り巻き達はすぐさま引き金を引いて弾丸を撃ち出した。

クロス・ジャスティスの背後には様子を見ていた野次馬たちがいる、もし彼が回避行動を取れば撃ち出された銃弾は野次馬へと当たってしまう……。

 

「………ふん」

 

『ライバルカード! リード! インフィニット・ストラトス! ラウラ・ボーデヴィッヒ!』

 

だがクロス・ジャスティスは冷静に腰に装備されたカードホルダーから一枚のカードを取り出すとライバライデントと連結しているJデバイザーへと装填し、素早く左腕を前へと突き出した。

 

すると、クロス・ジャスティスへと向かって来ていたいくつもの銃弾が彼へと直撃する前に、まるで映像を一時停止するかの如く動きを止めてしまったではないか……。

これにはさすがの犯人たちも動揺を隠せずに、銃を発砲するのをやめてしまう。

 

「今のって……まるでISで“ラウラ”が使っていた“シュバルツェア・レーゲン”の“AIC”みたいだ……」

 

宗谷の知識の中に存在する一冊のライトノベル作品、インフィニット・ストラトス。

この時宗谷は今クロス・ジャスティスが使った技を見て、その作品に登場する人物、“ラウラ・ボーデヴィッヒ”が使用していた特殊武装、“AIC”の事が咄嗟に脳裏に浮かび上がった。

 

“アクティブ・イナーシャル・キャンセラー”と呼ばれるその装備、作品内では対象の動きを任意で“停止”させるという能力を持った特殊な装備だった。

作品内でも実弾による攻撃をこの装備で同じように止めていた描写がある、まさに今見た光景がそうだったように…。

そして、以前に宗谷が見たクロス・ジャスティスの技、あれも“ソードアート・オンライン”の登場人物“ユージオ”の“青薔薇の剣”が見せた“記憶解放”の技と似通っていた気がした…。

それらを踏まえ、宗谷はクロス・ジャスティスの使う能力についてある一つの答えを導き出した……。

 

 

「……あいつ、もしかして俺と同じように……主人公と一戦交えたキャラクターの特徴にちなんだ能力を使えるのか……?」

 

 

カードをリードした時に聞こえる電子音、それらを踏まえるとそう考える方が妥当と言えるかもしれない…。

そう感じた宗谷は、再びクロス・ジャスティスへと視線を向けると青い装甲の戦士は伸ばしていた左手を下ろし、空中で制止させていた銃弾を地面へと落した。

 

「ついでだ、取っておけ」

 

『ライバルカード! リード! NARUTO! サスケ!』

 

さらにクロス・ジャスティスはもう一枚のカードをライバライデントへと装填すると、電子音が鳴り響き、その瞬間彼の右腕に激しく光を上げる電撃が発生した。

そしてクロス・ジャスティスはその右腕に電撃を纏わせたまま走り出すと、前に出ていた取り巻き二人へと急接近し………

 

 

 

「解放………“雷流し”!!」

 

 

 

十分に接近した瞬間、右腕に纏わせていた電撃を解き放ち、二人の取り巻きを感電させた!

 

電撃を受けたことの痛みによる叫びを上げながら、そのまま地面へと倒れ伏した二人のメンバー、これで主犯格の男を取り巻いていたメンバーはすべて倒されたこととなった。

残るは主犯格の男だけ……だが……。

 

 

 

「動くなぁぁああああああ!! 動けば、この女を今ここで殺すぞぉぉぉおおお!!」

 

「ひぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

 

男は先程、危険に晒されていた人質の女性を盾にし、クロス・ジャスティスへと向かって警告を発した。

女性のこめかみへと銃口を押し当てて、逃げないように左腕で女性を捕縛した男はクロス・ジャスティスを睨みつける。

 

「………最後の抵抗か………見苦しい限りだな」

 

「黙れ!! これ以上我らの邪魔をするならこの女を殺す!! それが嫌ならそこで膝をつけ!!」

 

興奮状態の男は血走った眼でクロス・ジャスティスにそう告げると、クロス・ジャスティスはゆっくりと人質となった眼鏡の女性を見てから、周囲へと目を向けた後、再び男へと目を向けるとしばらくの間その場に立ち尽くし、様子を窺うかのように動きを止めた。

 

「………」

 

そして、ライバライデントの矛先を下に向けて地面へと突き立てると両手を上げて抵抗はしないという意思を見せる。

 

「……よくも我が同志たちを……覚悟はできているのだろうな!」

 

「………」

 

「ふっ……言い返す余裕もなしか! ならばそのままそこにいるのだな! 俺はこのままこの場から逃げさせてもらう!!」

 

「えっ!? わ、私もですか!? いやぁぁぁ!! 人質としてこのまま危険と隣り合わせなんていやぁぁぁあああああああああ!?」

 

「黙れ!! 痛い目を見たいのか!!」

 

このまま女性を盾にこの場から逃走を図ろうとしている様子の男、女性は身の危険を感じてか叫び声をあげるが女性の力では男を振り払うことはできない。

さすがのクロス・ジャスティスもこの状況では迂闊に動くこともできないのだろう……誰もがそう感じ、息を飲んでその様子を見守る……。

 

 

 

「………周りをよく見ることだな………」

 

「………なんだと?」

 

 

 

だが、そんな中でクロス・ジャスティスが何かを呟いた、それが聞こえたのか主犯格の男は眉を潜めながらクロス・ジャスティスへと視線を向ける。

 

 

 

しかし、次の瞬間………。

 

 

 

「ぜぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!!」

 

 

 

裂帛の気合いがどこからともなく聞こえてきて、同時に男の後頭部にとてつもない衝撃が走った。

その際に受けたダメージで男は視界がぐらつき、咄嗟に人質に取っていた女性の事を放してしまった。

 

その一瞬の隙をついて、女性は慌てて主犯格の男から離れ………。

 

 

 

「………ふんっ!!」

 

 

 

それを確認した瞬間、クロス・ジャスティスが一気に男との間合いを縮めて、その鳩尾に重い拳を寸分の狂いなく見事な角度で撃ち込んだ。

 

「お………ごぁ………!?」

 

一瞬のうちに起きたまさかの反撃、一体何が起きたのか男は理解する間もなく……そのまま体をくの字に曲げたまま地面へと倒れ伏し、完全に沈黙した。

 

「確保――――――――!!」

 

それを確認した警察と、イストワールが合図を送っていた別動隊がようやく現場に到着し、地面へと倒れ伏した犯人グループを一斉に確保していき、人質たちを保護していった。

そしてこの一連の大逆転劇、事件解決へと導いた青い戦士に向かって周りの野次馬たちから称賛の完成が声高く響き渡る。

 

その中でクロス・ジャスティスは倒れた主犯格の男が護送されて行くのを見送り、自分の元へと近づいてきた人物へと目を向けた。

 

 

「………露払いご苦労」

 

「前に助けてくれた借りもあるしな……気にすんな」

 

 

それはクロス・ジャスティスとは対照的に赤い装甲と赤いマフラーをが目を引く戦士、宗谷が変身したクロス・ヴィクトリーであった。

そう、あの状況で主犯格の男に背後からの一撃を見舞ったのは、彼だったのである。

 

クロス・ジャスティスはあの状況で両手を上げて抵抗の意志はないと見せた中で周囲を見回した際、宗谷の姿を見つけたのだ。

そして、何かを伝えるかのようにじっと数秒ほど彼の事を見つめてから視線を戻した、それに気づいた宗谷はクロス・ジャスティスが自分に何かをしろと言っているのではないかと思い、隙をついて変身し、犯人を背後から強襲したのである。

 

「でも、ちょっと無理があったんじゃないか? 俺がお前の視線に気づかなかったら、そのままお前がピンチだっただろうに……」

 

「その時はその時だったさ……それに、お前の人柄ならこのまま黙ってみておくということはしないとも思ったからな……」

 

そう言うとクロス・ジャスティスは地面に付き立てていたライバライデントを引き抜くと、グルン、と振り回してから歩き出した。

 

「おい待てよ!! えっと………ジャスティス!!」

 

それをクロス・ヴィクトリーは呼び止めると、クロス・ジャスティスはちらりと視線だけを彼に向けて、その場に立ち止まった。

 

「あのさ……お前は、俺達の味方……そう思ってもいいんだよな?」

 

謎がまだ多く存在している青い戦士、クロス・ジャスティス……彼は数回にわたり自分を助けてくれたが、まだはっきりと彼自身が味方だとわかったわけではない。

そのためクロス・ヴィクトリーは思い切って彼にそう問いかけてみたのである、するとクロス・ジャスティスはしばらくその場に立ち止まって、再び前へと視線を戻し……。

 

 

 

「………お前がそう思ううちは、そうなのかもな………」

 

 

 

そう呟いたのち、大きく両膝を曲げて高く跳躍し、ショッピングモールの壁を蹴るようにしてさらに上へと昇って行き、そのまま姿を消してしまった。

 

「………なんだよ、その意味深な言い方………気になるだろ」

 

「宗谷さん、あの青い人はどうしましたか!?」

 

その場を去っていったクロス・ジャスティスを見送ったクロス・ヴィクトリー、そこへイストワールと一緒に居たパープルハート、そしてアイエフの三人が駆けつけた。

それに気づいたクロス・ヴィクトリーは変身を解除し、元の姿へと戻ると三人に首を左右に振ってみせた。

 

「もう行っちゃったよ、よくわかんねぇこと言ってからな?」

 

「そうですか……いろいろ聞きたいことがあったのですが……」

 

「それにしても、なんだったのかしら……あいつ」

 

その場を去っていったクロス・ジャスティス……彼はいったい何者なのか、その疑問に対してはイストワール達も同じだったらしい。

どうにも気になると言いたげな表情を浮かべる三人に宗谷は苦笑いを浮かべると、彼女たちと向き合う。

 

「けど、敵って訳じゃないみたいだ……だから、一応は信用してもいいのかもな」

 

「一応、ね………それにしても、今回私ずっと女神化してたけど、出番がなかったわね」

 

「………ま、まあ、そう言うこともあるって」

 

どこか腑に落ちなさそうな表情を浮かべるパープルハートに宗谷はそう言ってフォローを入れる。

すると……。

 

 

 

「先輩~、みなさ~ん!」

 

 

 

雑踏の中から見覚えのあるツインテールをした小柄な人影がこちらに手を振りながら近づいてきた、その後ろには長身の忍者の姿も一緒である。

 

「あ、ハルキ! ステマックスも! 二人とも無事だったか!」

 

「はい、ステマックスの術もあって事態が落ち着くまで隠れてました」

 

「拙者、影の薄さと隠れ身の術には自信があるでござるからな」

 

そう言ってサムズアップを浮かべるステマックス、彼と一緒に居たことでハルキも難を逃れたようである。

なんとか被害を最小限にとどめて、全員無事に事件を解決することが出来た……これも、あの謎の青い戦士が力を貸してくれたおかげなのだろうか?

そんな事を考えながら、ハルキと合流した宗谷はとりあえずハルキの頭を撫でるのだった。

 

「……あの先輩、それ嬉しくないです……軽くムカッとします」

 

「あ、悪い、つい……」

 

だが、ハルキはあんまり頭を撫でられるのが好きではないようだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………へへっ、まあ、試しに浸かってみた結果は上々ってか?」

 

一連のショッピングモールで起きた強盗事件、その様子を離れた場所に立っていた建物の陰で様子を窺う人物がいた。

一人は褐色の肌に黒いワンピースのような服を身に纏ったイストワールと似た容姿を持つ少女、クロワール。

そして、もう一人………赤と黒が入り混じったドレスのような服装に身を包み、頭にはチェスのクイーンを思わせるティアラを乗せた、まるで血のように赤いツインテールをした女性……。

 

「………さて、これからどうするよ?」

 

「………各地に散らばった四天王に合図を送る………“前夜祭だ、大いに盛り上げろ”とな」

 

「おーおー、そいつはたいそうな言い回しだな……面白くなってきた♪」

 

女性の言葉を聞いてクロワールが楽しそうな表情を浮かべる。

その横で女性は西洋の甲冑の兜を思わせる仮面の奥で鋭い眼差しを浮かべながら、呟いた……。

 

 

 

「………あれで終わったと、思わないことだ………」

 

 

 

 

 




いかがでしたか?

次回、謎の動きを見せる影……そんな中、宗谷の元に新たな展開が!?

次回でお会いしましょう、それでは…
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