今回のネプおばはリーンボックスに出張した宗谷たち一向、だが彼らはそこである人物たちと再会を果たすこととなる。
久々のあのキャラこのキャラが登場!
それではお楽しみください、どうぞ!
ベールの依頼を受けて俺達は早速身支度を整えて、ここ最近奇怪な破壊工作事件が多発しているらしい、リーンボックスへと向かった。
プラネテューヌ教会の事はしばらくネプテューヌ、ネプギア、アイエフとコンパさんたちに任せることになり、四人には苦労を掛けてしまう分俺達で早くこの事件を解決して戻るようにしないとな……。
そんなことを考えながらリーンボックス行きの船へと乗り込んだ俺達はしばしの船旅を味わうこととなり、船に揺られることしばらく………。
「……また来たな、リーンボックス」
「何気に結構来てますよね、宗谷さん」
俺といーすんにとっては久々に感じるここ、女神グリーンハートことベールが守護する雄大なる緑の大地、リーンボックスの地面。
他国への移動用にと設けられている船場、海が近いこの場所で感じる潮風を肌で感じながらどこか感慨深いような、それでいてちょっと懐かしくも感じるこの感覚、なんだろう俺達にとってリーンボックスが第二の故郷みたいに感じてきた気がする………。
思えば最初にリーンボックスに来たときはいーすんが大きくなって間もない頃だったな、あの頃はリーンボックスの街並みがやけに珍しく感じたっけ?
でも今回はその時と違う、なぜなら俺たち以外にも今回の出張に同行しているメンバーがいるからだ。
「お~、海だ~~~! やっぱりおっきいね~」
さっきまで船の上で昼寝してたせいであんまり海を見ていなかったからか、降りるや否や港から見える海を見て、べたなセリフをのんびり叫ぶのほほん天然時々ドSな異世界のゲイムギョウ界の女神様、プルルート。
「………海、綺麗だね、ぷるちゃん」
船旅という体験事態が初めてだったらしく、船の上ではずっと甲板で船が突き進む海原を眺めていたのに船を降りてからもすぐそばから見える海を見てどこか楽しそうな表情を浮かべている超絶人見知りの18禁絵師兼プラネテューヌ教会の新人メイドのシンシア。
「ハル殿はあっちに混ざらないのでござるか?」
「もう海くらいではしゃぐ歳じゃないよ……それに、今日は仕事で来てるんだから、観光じゃないんだし」
「……ハル殿がすっかり仕事人間でござる……これは喜んでいいやら違うのやら……複雑でござるなぁ……」
船の上でも今現在のリーンボックスの現状を独自に調べ、降りても尚仕事モードに入っているせいでいつもよりなんかお堅いイメージになってる最近家で働いている俺の後輩こと教祖補佐見習いのハルキとそんなハルキの様子を見てちょっと頭を悩ませているハルキのおかん……もとい、お供の女性に対して超ヘタレな忍者、ステマックス。
今回はこの4人に俺といーすんを含めた四人でこのリーンボックスにやってきた。
俺といーすんは今回で三回目だけど、他のみんなは初めてということもあってか思い思いの反応をしている中、俺達が乗ってきた船の船員から手厚いお見送りを受けながら降りてきたベールが合流した。
「ふぅ、やっぱり私は変身して空から来たほうがよろしかったかしら……」
「ははは…ベールは一国の女神だし、船員さんもかなりいいもてなしをしない取って思ってたのかもな?」
「でもただ帰ってきただけですのにわざわざレッドカーペットまで敷こうとするのは少々、やりすぎとは思いませんこと?」
「それは確かに……帰ってきただけにしてはちょっとやりすぎなような気もしますね」
まるで映画スターとか有名な政治家のようなお見送りでしか見たことのないレッドカーペットをただの帰宅に使用するってどこのアニメの世界?
なんてことを考えながらベールのため息をまあまあと慰めることしばらく、気を取り直してということなのか顔の表情を引き締めたベールが俺達一同へと目を向ける。
それを見て、俺といーすん、そしてその場にいたハルキとステマックス、丁度戻ってきたプルルートとシンシアも視線をベールの方へと集中させる。
「……おほん、まずはなんであれ、皆さま、私の願いを聞き入れて協力してくれて感謝いたしますわ、そしてようこそ我が国リーンボックスへ……到着して早々でろくなおもてなしも出来ずに申し訳ないのですが……」
俺達6人を順に見てそう言葉を並べるベール、けどおもてなしもなにも今回は仕事だからそんな気を遣わなくてもいいのに、そこん所が律儀っていうか寛大っていうのか……。
「さっそく教会に戻ったら事件を調査する前に混浴風呂で親睦を深めて!」
「「「それはいいです」」」
……前言撤回、やっぱりベールはベールだった……。
さっそく何やら邪な考えを浮かばせていたベールに俺といーすんとハルキの三人で息ぴったりのタイミングで低調にお断りしといた。
今は仕事大事、プライベートならまあ、考えなくもないけど、今はそれが大事……まあ、終わってからでもいいんだけど……今は仕事大事絶対。
ベールのおもてなしの心半分、そしてもう半分が何やら欲望に満ちたお誘いをお断りした後俺達は何やら不満そうなベールを何とか丸め込んでまずは教会に行く前に事件が起きたという現場を見てみることにした。
ベールが用意してくれた移動用の車(マジでアニメやドラマでしか見たことがないリムジン)に乗ってリーンボックスの街を横目に移動する俺達は車の中で事の発端についてベールの話も踏まえてまとめることにした。
「それで、事件が始まったのは今から3週間くらい前なんだよな?」
「ええ、ある日突然リーンボックスの市街地にある建物の一つが無残な姿となるほどに破壊されましたの……最初は事故かとも思ってのですが、調べていくうちにそれが人為的な物によるものだということが分かったのですわ」
「実際に現場の様子を見てみないとわかりませんが……そんなひどい有様の事件が他にも数件発生しているんですよね?」
「……一番最近ので、もう14件目……ここまで来たらテロか何かと思いまして、警備を強化し私も警戒に当たっていましたの」
かなり真剣な面持ちでそう言ったベールの言うように、この事件は相当悪質なのが話を聞いてみて取れる。
3週間の内に起きた同じ事件の数は14件、これはつまり3週間の日数21日間の内の14日、つまり2週間は休みなく事件が起きたという計算になる。
そんな頻繁な数で事件が起きたら、警戒せざるを得ないだろうな……でも、なんでそんな頻繁に事件が起きてるんだ? こんな大ごとの事件を起こすならそれ相応の動機もあるはずだ。
「……でも~、ベールさんも女神だよね~? それなのに止められなかったの~?」
そんな中、一緒に話を聞いていたプルルートがベールに問いかけた。
「………確かにベール様はリーンボックスを納める女神で今現在のゲイムギョウ界の4ヶ国ではルウィーに並ぶ歴史を持つ国、経験と実力も高いでしょうし、テロリストくらいなんてことないのでは?」
「ハルキさんの言う通りです、並の敵ならベールさん一人でも大丈夫な気もしますが……」
………ハルキやいーすんの言う通りだ、ベールもまた女神の一人で実力も相当高い、だからそう簡単には負けることはないはずだけど、どうしてここまで手こずっているのかそこも謎なところだ。
するとハルキといーすんの二人の問いかけに対して、ベールはしばらく間を開けてから口元に苦笑を浮かべた。
「………その相手が並大抵ではない、ということですわ」
そして、至極単純で俺が今考えたことに率直に繋がるような答えをベールは皮肉気に答えた。
「随分とストレートな答えだけど、というと………ベールでも手こずる強敵ってことか?」
「単純な考えと答えですわね、でもそう言うことですわ………それに付け加えるなら、プラネテューヌで話した通り今回の敵は私だけで何とかなる相手ではない、という意味も含まれていますわ」
そう言うとベールは自身の顔にかなり真剣な印象を与えて来る、目を俺といーすんの二人に向けてきた。
「………何せ、相手は以前に私とやり合った相手………同時に“私達”にとって因縁深い相手………“新・犯罪神四天王”の一人なのですから」
表情が変わって空気が張り詰めている中、次に言われたベールの言葉を聞いた瞬間俺といーすんの二人が同時に息を飲んだのを自覚した。
「新・犯罪神四天王って……あいつらがまた戻ってきたっていうのか!?」
「全員を確認したわけではありませんが……約一名に関しては既に確認済みなのと、既に交戦済みですわ」
「手こずる相手というのは、そう言うことだったのですね…」
ベールの言った事実、ということはまだあいつらはこの世界に残って何かを企んでいるっていうことなのか?
既に新・犯罪神となっていた異世界のネプギアは犯罪神の魂の呪縛から解放されて、今はもう元いた世界に彼女の失われた仲間たちと一緒に帰ったはず……使えるべき主君を失くしたあいつらが、なんで今になって……。
「………してんのう~?」
「あ、そう言えばプルルートさんはその時はまだこちらにいませんでしたね?」
「うん~、そのしてんのうさんって~、そーくんたちのお知り合い~?」
間延びした声で首を傾げながら、プルルートが俺達に問いかける。
プルルートが来たのは新・犯罪神事件が起きてから後だったから知らなくて当然か……思えばあの戦いもかなりやばい、ぎりぎりの戦いだったな……。
「………新・犯罪神四天王、以前この世界のプラネテューヌ近郊とプラネテューヌで発生した大規模事件の一つ………表ではアイエフさんたち諜報員の人達とイストワール様の根回しで情報規制されて発表はされてないけど、事実は女神様達がかなりの苦戦を強いられたとか………」
「ほえ~、ネプちゃんたちがピンチになったんだ~……ってことは、そのしてんのうって人は悪い人なの?」
「………普通に考えなくてもそうなりますよ」
「そうなんだ~、ハルくん物知りだね~?」
「………教会の資料を調べれば出てきますよ………」
その事件について知らなかった彼女に近場に座っていたハルキが簡潔な説明を済ませる、やはり緊張しているのかその口ぶりがいつもより素っ気なく感じるが、まあ、今は慣れなくても今後はちょっとでも改善するかもしれないし……ハルキだってハルキのペースがあるだろうしな。
「……相手が相手ということも会って、昨日交戦した私も苦戦を強いられ、結局は取り逃がしてしまいましたわ……なので、あれを止めるとするなら宗谷とイストワール、あなた達の協力を扇がない事には……と思いましたの」
そう言いながら車の中から窓越しに外の景色へと目を向けるベール、それにつられて話を聞いていた俺達も外の景色を見る。
そして次の瞬間、外に広がっている景色を見て俺達全員は文字通り、言葉を失った…。
元はそこには立派な外観を成していたのであろう建物があったと思われる場所、そこが今は跡形もないほどの無残な瓦礫の山へと姿を変えていたのだから…。
本来は壁だったんだろう、複雑で大きさがまちまちに分裂した石の山、剥きだしになり不規則に曲がり、中には途中から真っ二つに折れた鉄骨、さっきまでそこにあった中の様子も今はもはや瓦礫の中に埋もれる過去の残像となってしまったのだろう……。
並大抵の人間ではここまでするにしても限界があるだろう、だがこの光景はもはや人間がするには容赦がなさ過ぎた様に、俺は見えた…。
感じたのは破壊の衝動、暴れることによって生まれる歪んだ悲しみと怒り、そしてこの事件を起こした犯人の異質な思考……。
俺はこの時、直感で感じ取っていた………このままこの事件が続けば、この国は今よりもひどいことになり、多くの悲しみと不安に包まれる、と………。
「………改めて、お願いしますわ………宗谷、イストワール、そして皆さん………」
張りつめた空気に包まれた車内でベールが再び俺達に向けて言った。
「………平穏な暮らしを送るリーンボックスの国民を守るために………今一度、私に力をお貸しください」
自身の国を思う故に発したその言葉、これ以上この国の平穏を脅かす存在に好き勝手にさせたくないという想い、そして守護女神として自分の守りたい物のために……ベールは俺達に頭を下げた。
そして、それを見た俺達の答えは………既に決まっていた。
それからしばらく間を開けて、その場に居合わせた全員がベールの方を見てこくりと首を縦に、しっかりとした意志を込めて、振ったのだから。
「さて、長い事車の中に居させて申し訳ありませんわ、いつ事件が起きてもいいようにこれからそれぞれ準備してくださいまし?」
その後、この事件に向き合う覚悟を固めた俺達はベールの提案によって一度体勢を整えるためにという意味もかねてリーンボックス教会の方へと足を運んだ。
何気に事件現場を転々と移動しながらここまで来たということも合って中々に時間がかかってしまった……まあ、リムジンの中は窮屈とはいいがたい広さだし、不便てこともないし、苦労することはなくむしろ快適だから申し訳がられることもないんだが……。
だが、一応の目的地に着いた俺達はリムジンを一旦降りるとそのままベールの案内でリーンボックス教会の門をくぐった。
ゲイムギョウ界の南方に位置するこの国は温暖な気候が相まってどこか南国的な印象を受ける、現にこの教会もそう言う島国に存在する由緒ある建物のようにも、こうして改めてみると感じるな……。
「………広い………」
「こいつは、掃除とかが大変そうだな、大丈夫か?」
「……が、がんばり、ます……」
外見の大きさから中の広さを想像したシンシアはちょっと不安そうな表情を浮かべるがすぐに張りきった様子を見せた、意外とたくましい面もあるみたいだな…。
さて、とりあえずはこの後どうするか……部屋に行って荷物を置いた後、今後についてベールと相談でも……。
―………ガキィン!
なんてことを考える俺の耳に、不意にどこからか鋭い金属同士がぶつかり合うような音が聞こえてきた。
「え? 今の音は?」
「……聞いた限りだと、刃と刃がぶつかり合う時に生じる独特な音の様でござるが……」
その音を聞いたのは俺だけということもなかったようで、同じく聞いていたらしいステマックスがその音から何の音なのかを予想し、推理している。
「あぁ、それは中庭の方に行けばわかると思いますわ、この時間帯は“協力者”の皆さんが訓練に励んでいる頃だと思いますので」
「訓練、ですか? それに協力者……ボクたち以外にもこの事件の対策に参加した人たちが?」
「ええ、とてもたくましい私が信頼している方々ですわ」
……協力者、つまるところ俺達と同じで今回の事件に向き合うことになった人たちってことか……。
「……何なら、宗谷? 一度挨拶をしていってはどうですの?」
「………え?」
リーンボックス教会の中庭はかなり広い作りになっていて、かなり豪勢な設計になっている教会の様相に見合ったものになっている、広さでいうとサッカー専用のフィールドと同じくらいかな? 中央を取り囲むようにいくつかの木々と真っ白な陶芸の柱が並び、よく手入れされているのであろう芝生が地面を覆っている。
ベールの勧めを受けて中庭へと足を運んだ俺とそれに同行したみんな、そこで俺達は今回の事件に当たってベールと共に行動を共にする協力者たちの姿を見た。
そして、今その人物たちは………。
「どうしたの、まだ踏み込みが甘いわよ?」
「くっ……言われなくても、自覚していますわ!」
たった今、互いの武器を打ち合わせる激しい訓練に明け暮れていた。
片方の人物は槍、もう片方の人物は鋏に似た形状の特殊な剣を振るってたった今せめぎ合っている最中だった。
どこか強気な印象を与えるツリ目に鮮やかなエメラルドグリーンの長髪と頭の大きなリボンが特徴的な少女は手に持った槍に自身の体重をかけて向き合っている赤髪の二つ結びの女性を押し込もうとするが、なにぶん少女よりも長身な女性はびくともせず、女性らしく出るところは出て締まったところは締まったまさにナイスバディで力には無縁そうな見た目に反したパワーで対抗、というかむしろ押し返している様にも見える…。
「お、お二人とも~、ファイトで~す!」
「………まったく共に手合わせを願いたいというから我々の修練に付きあわせたのだが、これでは先が不安になってくるものだな………」
そして、その傍らではどこか華奢な印象を持つ体にやたらに肌の露出が多いような気もする服装をした黒髪ロングの女の子と、どこか科学者めいたロングスカートの服装に手には魔法使いが持つような杖を持って三角帽子をかぶった深い青髪をしたのミステリアスな雰囲気を持つ女性が二人の模技戦の様子を見ていた。
そんな二人の視線を受けながら互いに離れて緑髪の少女の振るった槍を容易く何度も受け流していく赤髪ツインテールの女性、特に苦戦をしているような様子も見せず攻撃をしては受け流され、という一連の動作を眺めていると……やがて、緑髪の少女が大きく息を乱してその場に崩れ落ちた。
「はあ…はあ…はあ…! ま、まだ……うっ……けほ、こほっ…!」
「………無理をするのはやめておきなさい、あなたはただでさえ体が弱いのだから」
「こ、このくらい……なんてことはありませんわ、アタクシはなんとしてもお姉さまのために……」
「その気持ちは嬉しいのですが、それで倒れられては私もさすがに困ってしまいますわ」
「え……お、お姉さま!?」
限界を迎えたらしい少女にベールがそう言って近づくと、彼女はかなり驚いた様子で慌てて飛びあがった。
………この人は本当、ベールの前だとすごい反応が強くなるというか、大げさになるというか………変わらないな。
「よ、チカさん、お久しぶり」
「なっ!? なぜここにあなたがいるんですの! 天条宗谷!! そ、それにプラネテューヌの教祖まで!」
「ご無沙汰していますチカさん、あ、そう言えばこうして体が大きくなってから会うのは初めてですね?」
そう、この人はこのリーンボックス教会の教祖を務めていると同時に女神候補生がいないために妹と呼べる存在がいないベールの“妹替わり”も務めている、“箱崎 チカ”さんだ。
久々に会ったので俺といーすんが二人揃ってチカさんに挨拶をすると、なにやらチカさんは苦虫を噛んだような表情で俺達を睨んできた。
「今回の事件に当たって、あなた達と同じように協力を仰いだのですわ、今回の敵に関してはとても頼りになる方々ですもの」
「そ、そんなお姉さま! 天条宗谷ならいざ知らず………いいとは言ってはいませんが、それだけに飽き足らずにチカという存在がありながらプラネテューヌ教会の教祖まで呼ぶとはどういうことですの!?」
「それは恐らく……彼女がとても頼りになる存在であるということではないかしら」
俺達二人が来たことに何やら不満げなチカさんがベールに問いただしている最中、その後ろからゆっくりとこちらに近づいてきた赤髪の女性がチカさんをそう言って宥めながら俺達へと視線を向けて優しげな微笑みを浮かべた。
………そう言えば、この人とも会うのは久しぶりだ………。
「久しぶりね、宗谷……元気にしてたみたいね?」
「ええ、それが取り柄みたいなもんですからね……そっちも変わんないみたいですね、ケイブさん」
以前に俺が初めてリーンボックスに来た際に起きたちょっとした事件、その時に知り合って一緒に操作をしてからという物、何かと助けられていることも多いリーンボックス特命課のメンバー、“ケイブ”さん、久しぶりに会ったこともあって俺達に優しげな微笑みを浮かべてくるケイブさんに俺も敬意をこめて答える。
俺が差し出した手をケイブさんはじっと見つめてから握り、再会の喜びを握手という形で共有する。
「……あなたが来てくれたのなら心強いわ、頼りにさせて貰ってもいいかしら」
「……期待に応えられるかは別として、全力以上を尽くしますよ」
「ふふ、相変わらずね? イストワール様も、よろしくお願いします」
「はい、いつかのお礼もかねて私も宗谷さんと共に尽力させてもらいます」
同じ事件と向き合う仲間としてケイブさんも俺達にとっては心強い人だ、マジェコンヌの時も新・犯罪神の時も助けられちまったからな…。
「クックック………やはり来ると思っていたぞ、
「お、お久しぶりです、天条さん! イストワールさん! といっても、あんまりお話したことない気がするけど……」
そんな中ケイブさんとチカさんの手合わせを遠巻きに見ていた二人もこちらに近づいて来た。
一人は怪しげな笑い声と、最近俺がギルド内で呼ばれるようになったカタカナが呼び仮名として使われるであろう痛々しい二つ名を呼びながら………そして、もう一人はどこか緊張した声でぺこりと頭を下げる、まさに清純派って感じで……。
………この二人は俺はあんまり関わったことはないけど、新・犯罪神の事件の後ちょっとだけ交流したんだよな。
「……なあ、前から気になってたんだけどその二つ名はどこからインスピレーションを得たんだ、“MAGES.”」
「なんだ、不満か? 深紅の装甲に身を包み、真っ向の敵を切り裂くその姿はまさしく狩人……私はそのように思えたのだがな、お前の戦いぶりを見て」
「あははは……“鉄拳さん”もお久しぶりです、あの時はお世話になりました」
「い、いえいえ! わたしはそんな目立ったことはなにもしてませんし、今回も役に立てるか…」
魔女なのか科学者なのか、よくわからない見た目の明らかな中二病少女、“MAGES.”と控えめで大人しい感じのする格闘少女、“鉄拳ちゃん”。
どうやらこの二人も今回の事件に協力してくれるらしいな、それにしてもまさかこの二人も協力してくれるなんて……。
「おー、いろんな人がいる~……ベールさんって友達多いんだ~」
「これでも交流関係は広いと自覚していますわ、それに彼女たちの他にあと“二人”協力者がいるんですのよ?」
俺達が協力者のみんなとあいさつを交わしている最中、なにやらプルルートとベールがそんなやり取りをしているのが聞こえた。
ここにいる人たち以外にもまだいるのか……さすがベール、ネトゲの交流とかも含めると友達関係も広い……ノワールが嫉妬しちまうな、これは。
「………で、その後二人っていうのは?」
「今は教会の中だと思いますわ、うち一人は今先程到着しましたので、おそらく今は部屋に荷物を纏めている頃だとは思いますけど……」
「そ・れ・よ・り・も!! お姉さま!! なぜチカがいるのにこんなにもよそ者を~~~!!」
何気にベールの周りに人が寄ってくることに不満を通り越してご立腹の様子のチカさんがいかにも怒ってますよって感じでベールにこれでもかと詰め寄る………おお、胸が………二人の分を合わせて四つの膨らみが重なってむにゅむにゅってすごいことに………。
「ていっ」
「いだっ!?」
………いかんいかん、油断していーすんが俺の目の先にある光景を見て感づいたようだ………油断して本の角を貰っちゃったぜ。
「この前連れてきたあの“子ども”やケイブたちならまだしも!! よりにもよって今度は天条宗谷とイストワール!! そんなにもチカは頼りになりませんの!?」
「どうどう、とりあえずチカ、落ち着いてくださいまし? でないと本当に倒れてしまいますわよ?」
「………いつにもなく荒れてるわね、彼女」
「いつにもなくって……最近はこんな感じなのですか?」
かなりご乱心の様子のチカさんを見て、いーすんがケイブに問いかけると彼女はやれやれと言いたげな表情と共に首を縦に振った。
「どうにもベール様がいろんな人に協力を仰ぐのが気に入らないみたいで……まあ、なんでなのかは理解してくれてるのだけど」
「まったく、ああも騒がしいと私も集中できない……せっかく狂気の科学術式が浮かび上がりそうだというのに……」
「うーん……嫌われてるのかな、わたしたち……」
………どうにもチカさんはいろいろと面倒を抱えてる人みたいだな………なんとかして彼女とやっていければいいんだけど………。
これは事件に挑む中でちょっとした心配が増えそうだな……なんてことを俺が考えていると……。
「………お?」
不意に俺の服の袖を誰かがくいくい、と引っ張った。
「えっと………なんだ、どうかしたのかシンシア?」
「………あ、あの………ぅ」
複の袖を引っ張って何かを伝えたいらしいシンシアは小声でそう言うと俺達から離れている場所に置かれている荷物を指さした。
……でも、なにやらシンシアの顔がいつもよりも赤くて終始顔を下に俯けている……こういうリアクションを取るときは確か世話係兼教育係のアイエフ曰く……“知らない人に人見知りをしているとき”だから……。
「………あー、そういうことか」
大まかな検討が付いた俺はそっとベールに近づくと、その耳元に耳打ちする。
「………なあベール、シンシアに俺達の荷物を運ばせたいから部屋に連れて行ってやってくれないか? 俺はケイブさんとかといろいろ話したい事とかもあるし」
「あら? ええ、構いませんわ? お任せくださいな」
俺のお願いを快くって感じで引き受けたベールはどこか嬉しそうな微笑みを浮かべてシンシアに近づくと、彼女の身長に合わせてしゃがんでシンシアに話しかける。
「それではシンシアちゃん? お部屋を案内しますので、こちらに……」
「え………あ、はい………」
「ちゃんっ!? お姉さま! アタクシにはちゃん付けなんて一切してくれないのになぜ!?」
「あーもー、とりあえずチカさん落ち着いて……おい、ハルキ手伝って! いーすん、一応シンシアについていってあげてベールがいるけど一人だと不安だろうから!」
「あ、わかりました!」
「えー………しかたないなぁ、もう………」
シンシアに対するベールの対応に再びチカさんの何かが爆発寸前まで来たみたいなので、それを俺とハルキの二人係で必死に抑える中、シンシアの付き添いにいーすんが向かう。
ていうか、この人本当に病弱キャラか!? なんかやけに力強いんだけど! これがベールに対する愛の力か!?
「………」
「……ん? ステマックス?」
そんな中、俺は何やら遠巻きにステマックスがこの場を離れるベールとシンシアといーすんの三人の後姿を何やらじっと見つめるステマックスに気付いた。
そう言えば、さっきから何も話さずにベールの事ばかり見ていたような気が………なんだろう?
女性に対する人見知りでいえばシンシアと同格かそれ以上なのに……なんでベールを……。
「………やはり、ベール殿は素晴らしい金髪巨乳の持ち主でござるな………」
「………ってしょうもな!? ちょっと意味深なモノローグを入れちゃったじゃねぇか!!」
「ステマックスー、早く手伝ってくれないと君がこの前買ってたやけに薄い本の中身をここで暴露するよ~?」
「ハル殿それは金髪巨乳道をたしなむと同時に女性に免疫のない拙者としては死刑執行に近い所業にござるーーーーーーーー!?」
宗谷の起点によって初対面の人物がやけに多いあの死地にも等しい空間からやっと離れることが出来たシンシア、となりにいるイストワールに荷物を運ぶのを手伝ってもらいながらリーンボックス教会の廊下を進んでいく。
「シンシアさん、重くないですか? よければ一つ持ちますよ?」
「………へ、平気………よい、しょ………」
「ふふ、結構頑張り屋ですのね? とても可愛いですわ……」
「………あの、ベールさん? まさかシンシアさんにも私の時のような事はしませんよね?」
「……さあ、それはわかりませんわ♪」
以前にリーンボックスに来た折、ベールからの洗礼……それを思い出したイストワールは若干ひきつった表情でベールに問いかけるがベールはあっけらかんとした様子でそう言って見せた。
これはシンシアへも警戒を呼び掛けておかなければ、と思いながら両手に持ったプルルートと宗谷の荷物を抱えながら考えるイストワール。
そんな時、不意に廊下を進む彼女達の近くのドアが開き、その中から一人の人物が出てきた。
「あら?」
「あ、ベール様、戻っていたんですね?」
「ええ、丁度さっき戻ってきたところですわ」
まるでサファイアのような青い髪に機械的なヘッドフォンをした少女、その少女はベールの姿を見るとさっそく挨拶を交わす。
そして、すぐさまその後ろにベール以外の人物がいることに気付くとそちらにも目を向ける。
「あ、イストワール様!」
「“5pb.”さん!? ということは、もしかしてあなたも?」
「はい! いつもお世話になってるベール様の恩返しもかねて、少しでもお手伝いできないかなって」
イストワールが驚いた彼女、“5pb.”。
このリーンボックスでは大人気のアイドルである彼女が今回の事件の協力者となっていることに驚いたイストワール、確かにマジェコンヌの騒動や新・犯罪神事件の時は彼女にも手伝ってもらったが、まさか今回もそうなるとは思ってもみなかった…。
「イストワール様がいるってことは……もしかして、宗谷さんも一緒ですか?」
「え? あ、はい、今は中庭の方でケイブさんたちと話してますよ?」
「………そうですか………ふふ」
「………?」
なにやら宗谷が来ていることを知った瞬間どこか嬉しそうに頬を赤くして微笑んだ5pb.、その反応にイストワールは首を傾げる。
「………あれ? ………あなたは………」
「っ………」
すると、そんな中不意に5pb.がイストワールの隣に見知らぬ一人の少女がいることに気が付いた。
その目に映るのは透き通った白髪の髪に頭の花飾り……彼女の視線が自分を捉えたことに気付いたシンシアは咄嗟にイストワールの後ろに隠れた。
だが、そんな彼女を5pb.じっと見つめる。
「えっと……5pb.さんは会うのは初めてですよね? 彼女は最近私達の教会で働いている……」
「あの、すみません」
イストワールが人見知りで恥ずかしがっているのだろうシンシアに変わって5pb.に紹介をしようとするがそれを遮るようにして5pb.はシンシアに声を掛けた。
その声にシンシアはイストワールの後ろで驚いたのか、ぴくり、と小さく体を跳ねさせる。
「あの………昔、青い髪の小さな女の子に会ったことありませんか?」
「………え?」
彼女が何を言っているのかわからないイストワールはきょとんとするばかり、そんな彼女を他所に5pb.は自身が身に着けているトレードマークでもあるヘッドフォンを外すとイストワールの後ろに隠れるシンシアを見つめる。
「………昔、この近くにある湖で………泣き虫な女の子に会ったこと、ありませんか?」
「………」
問いかける5pb.に対してシンシアは何も言わずにただ黙っているばかり、一体この二人に何の関係があるのか、それを知らないイストワールとベールはただただ首を傾げるばかり…。
「………そんな風、に………隠れる、癖………相変わらず」
「………え?」
妙な緊張感に包まれた廊下、そんな中、そこへ今度はイストワールにとっては聞き覚えのない幼げな印象を与える声が聞こえてきた。
そして、今度はその声に真っ先に反応したのは………シンシアだった。
「……なぜ、ここにいるの、か…聞きたいこと、がたくさんある……」
「え………え………?」
イストワールの背後から聞こえてきた声に彼女が振り向くと、そこには見覚えのない小さな少女がいた。
白を基調としたゴスロリ服、緩やかなウェーブがかかったシンシアと同じ様な白髪の間から覗く瞳はエメラルドのように美しく、幼げながらもくりっとした愛らしい印象を与えつつどこか冷たげな印象を感じる。
片手には何やらタブレット端末のような物を持っているその少女はイストワールの後ろに隠れているシンシアを見つめて問いかける…。
「………なぜ、シンシア……が、ここに、いる?」
「………ステラちゃ………ロボちゃんこそ………なんで?」
………どうやら再会を果たしたのは、宗谷やイストワールばかりではない様だ………。
いかがでしたか?
次回、なぜステラがリーンボックスにいるのか!
そして意外なところで再会を果たしたシンシアと5pb.は………?
それでは次回もお楽しみに!