超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回のお話はリーンボックスに急展開!
嫉妬を燃やすチカ、果たして彼女の想いはベールに届くのか!

しかし、その時奴が動き出して…

それではお楽しみください、どうぞ…


stage,95 俺と溢れる想い

 

 

 

日が沈み、茜色の空が黒く染まり、夜闇の空がリーンボックスの空に広がった直後のこと、その者はまるでこの時間を待っていたかのように突如として街の一角、空高くそびえるリーンボックスの街の一角にあるビルの内の真上に姿を現した。

まるでどこからともなく発生する霧の如く、そのビルの上に降り立った彼は重厚な黒鋼の鎧で包まれた体をがしゃり、がしゃりと鳴らしながら歩を進める。

そしてビルの上から再三にわたり自身の“目的”のために自身のツメ跡を残した街をじっくりと見回す。

 

数回にわたり襲撃を行い、この国の民たちには十二分の恐怖刻み、叫びを上げさせてきた。

だが、まだ足りない……この程度では自分の思い描く結果が出ることはない。

崇高なる目的のためにも、なんとしてでも自分が成すべきことを果たさなければ……そのためにもまずは自身から動かねばなるまい。

 

彼は右手に握る細く、しっかりとした柄にの先端に棘のついた鉄球を備えた武装、モーニングスターを持ち上げるとそれを垂直に立て、柄の底をビルの床へと、こん、と音を鳴らして付けた。

すると、突然彼の目の前に怪しげな光を放つ一つの水晶のような物が現れた。

 

なにやら濁った緑色をした光を放つその水晶は見た所パソコンの電源マークと同じ形を模しており、水晶というにはどうにもくすんだ輝きを放っていた。

 

彼はそれを左手の上に乗せると、それを持ったままチェスのビショップを模したかのような兜から光を放っている深緑の眼光をぎらりと光らせ、再度モーニングスターを振り上げて、肩に担ぐ様にした。

静かな雰囲気を纏いながら、眼光に宿らせた荒ぶる狂気にも似た衝動を滾らせながら、彼は今日の“生贄”を見定める。

 

 

 

あぁ、早く……早くこの街を思うままに……最高の形で蹂躙したい……己の本能のままに……。

 

 

 

そのためにも………はやく“見つけなければ”………。

 

 

 

奥に秘めたる衝動を眼光から迸らせながら、街を一通り見渡した黒鋼の何者かはやがて動かしていた視線を止めた。

次の生贄となる目標を見つけたのだ。

その目標に狙いを定めるや否や、左手の上に乗せていた水晶を仕舞い、迷いのない動きでモーニングスターを構え、鎧に包まれた足をぐっと折り曲げる。

そして、己の中に秘められた力、そして己の持つ湧き溢れんばかりの衝動と共に、次の瞬間、黒鋼の重厚な鎧に身を包んだその体を己の両足を使ってリーンボックスの夜の空へと舞い上げた。

発生した空気の流れが僅かに鎧の表面を撫でていく中、鎧の重さなどを感じさせない程の跳躍を見せた彼はそのまま地上から数キロメートルはあろうかという位置から重力に従ってそのまま降下し、今回の生贄となる建物へと狙いを定めた。

 

 

 

「………“対象”、捜索開始………」

 

 

 

次の瞬間、鎧の中から聞こえてきたくぐもった声よりも遥かに大きな衝撃音と轟音が、リーンボックスの街に響き渡った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーンボックス教会に異変を知らせる警報音が鳴り響いた瞬間、この警報が何の意味を秘めているのかを知っていたベールを筆頭としたリーンボックス連続襲撃事件の対策メンバーはすぐさま対策拠点となる部屋へと足を踏み入れた。

 

「各員、現在のリーンボックス内の状況を報告! ステラ、目標の追跡をお願いしますわ!」

 

「……了承、した……追跡、に入る」

 

「エリアL-32の建築物のうち一つが倒壊! 多数の負傷者が出た模様!」

 

「現場の人命救助と被害拡大阻止を優先させてくださいまし、医療班と防衛班はすぐさま急行、怪我人の救助と国民の避難を!」

 

ベール後を追うような形で部屋へと入った宗谷達、彼らが目にしたのは街の様子が逐一モニタリングされているのであろういくつものモニターの前で備え付けられたコンソールを操作しながら忙しなく現場の状況や対策を連絡し、それぞれに割り振られているのであろう役割を熟す教会職員たちの姿があった。

それらを一望できる場所に立ったベールは伝えられてくる状況に素早く冷静かつ的確な判断を下していく、そして部屋に入るや否やベールの指示を受けたステラはベールの隣に置かれていた、恐らくは彼女専用にカスタマイズされているのであろう他のよりも一回り小さい席に座り、目前に映し出される情報を見ながら先程見た彼女の姿とは正反対なほどの真剣な動きでキーボードに指を走らせていく。

 

このリーンボックス襲撃事件対策拠点となる部屋を目の当たりにした宗谷は、こう思った……。

 

 

 

(……まるでガンダムの戦艦……あるいはエヴァの指令室みたいだな……)

 

 

 

何処かSF染みた光景を目の当たりにし、そんなことを考えながら今何が起きているのかを確認しようとする。

 

「なあ、ベール、事件が起きたんだよな……今どういう状況なんだ?」

 

「………先程、街にある建物のうち一件が例の犯人の襲撃を受けて破壊されたようですわ………数人のけが人も出ているみたいですわね」

 

「なら急いで現場に向かわなければさらに被害が!」

 

ベールの話を聞いたイストワールがすぐさま行動を起こそうと主張する、しかしベールはそれを首を左右に振って制止するとちらりと横に座っているステラへと目を向けた。

 

「今、ステラが襲撃犯の動きを追跡していますわ、これまでの動きから予測するに、犯人は目標を一撃で完全に破壊し、その後姿を眩ませるのが常套手段ですわ……故にその後を追うために彼女が街に仕掛けておいた“固定対象追跡レーダーモジュール”で現場周辺にいるであろう犯人を見つけ出しますわ、闇雲に探すよりもそちらの方がはるかに効率は良いですし、この方法で先日私は犯人と遭遇することができましたの」

 

「目標の動きを掴めれば先読みして動くことはいくらでもできるってことか………確かにその方が確実かも………」

 

ベールの説明を聞き、感心するように頷きながらそう言うハルキ、するとその直後部屋の中に新たに三人の人物が入ってきた。

 

「お姉さま! また出ましたの!?」

 

「あ~、そーくんたち見つけた~…やっと会えたよ~」

 

「そ、宗谷さん! お、お久しぶりです!」

 

「プルルート、それに……5pb.も来てたのか!?」

 

彼女が来ているとはまだ知らされておらず、予期せぬ再会を果たすこととなった宗谷が驚きの表情を浮かべる最中、慌てて部屋に入ってきたチカはベールに近づき、今がどういう状態かを問いかける。

 

「おおむねご察しの通りですわ、街中の例の犯人が出現、今現在その動きを追っているところですわ」

 

「なら、アタクシも! いち早く行動して、先手を取るためにもすぐさま街に向かいますわ!」

 

ベールから聞いたその言葉にチカは張りきった様子でベールにそう告げるとすぐさまその部屋を出て、外に向かおうとする。

今までもこうして彼女は前線に赴き、対策チームの支援と援助を行ってきた。

彼女は今回も……いや、今回こそは、と言いたげな表情を浮かべながら部屋の出入り口に向かって歩を進める。

 

 

 

「チカ、あなたは出なくてもいいですわ」

 

「………え?」

 

 

 

だが、彼女の耳に聞こえた言葉が彼女の脚をその場に止めてしまった。

激しい動揺の色を見せるチカ、ベールの方を振り返った彼女に対してベールは彼女の方を見る様子もなく部屋のなかで飛び交う無数の情報に目を通していく。

 

「な……なぜですの……なぜですのお姉さま!! アタクシはこの国とお姉さまの名誉のために……お姉さまの事を思って!」

 

「……お気持ちはありがたいですわ……でもチカ、あなたは今回は出る必要はありませんわ……これが私からのあなたへの指示ですわ」

 

「っ………お姉さま………」

 

納得が行かないと言いたげにベールに詰め寄ったチカ、だがそれに対してベールが放った言葉に彼女はぐっと言葉を押し殺す。

そしてこの時、一連の様子を見ていた宗谷はチカが何やら悔しそうに自分の拳を握りしめていることに気が付いた。

これ以上にないほど力を込めているその拳は小刻みに震え……やがてその拳の隙間から血を流す……。

 

「………あ、あの、チカさん、大丈夫………」

 

「近づかないで!!」

 

その様子を見た宗谷がチカを落ち着けようと声を掛けるが、チカは声を荒げて宗谷を鋭い眼光で睨み付けた。

その迫力はいつにも増して強く、咄嗟のことに宗谷はたじろぎ、傍にいたイストワールもびくりと体を震わせ、彼女の事をよく知るであろう5pb.でさえも驚きに満ちた表情を浮かべていた。

 

「………モジュール、に反応、あり……目標、をエリア、L-24、に確認」

 

そんな中、ステラが目標の位置を特定できたのか驚愕と動揺によって生まれた静寂の中で静かにそう告げた。

それを聞くと、ベールはすぐさまステラの方を向いて更なる指示を飛ばす。

 

「ありがとうございます、ステラ……引き続き、頼りにしてますわ……ケイブたちにその付近に向かうように連絡を入れてくださいまし、すぐに私たちも急行しますわ!」

 

そう言って自らも行動に移ろうとするベール、それと同時にチカはコンソールに掛けた手を休まずに動かし続けるステラを鋭く睨み付けると……。

 

 

 

「………あなたなんかよりも………アタクシの方が………っ!!」

 

 

 

目元に涙を浮かべながらそう呟いたチカはそのまま顔を伏せたまま駆け出し、部屋を出て行ってしまった。

彼女が立ち去る姿をただ見ることしかできなかった宗谷達、そしてベールもまた数秒の沈黙を保った後、すぐさま踵を返し、ゆっくりとした足取りで部屋を出ようとする。

 

「宗谷、イストワール、あなた方も共に来てもらってもよろしいですか?」

 

「あ、え……あぁ、それに関してはいいんだけど……チカさんはいいのか?」

 

「……チカには既にああ言いましたし、こうなることも予想していましたわ……彼女には後で私からちゃんとお話をしますので……では、こちらに」

 

「………お、おう………」

 

ベールのその言葉に宗谷はどこか複雑な心境を抱きながらも、彼女に言われるがまま導かれるようにして部屋の出入り口へと向かっていく。

それに続くようにしてイストワールもその後を追い、ベールより少し後ろに離れて歩く宗谷の隣に付いた。

 

「チカさん、心配ですね………」

 

「………うん、それも………そうなんだけど」

 

「……けどって……どうかしたのですか?」

 

なにやら口ごもるようにしてそう言った宗谷にイストワールが再び問いかける、すると宗谷は先程のチカの表情とあの姿を見て、ある“予感”を感じた………“感じてしまった”………。

 

 

 

「………なんか………嫌な予感がするんだ………すっげー………嫌な………」

 

 

 

皮肉なことに、外れたことのない………不吉な“予感”を………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、なぜ、なぜ!

なぜ自分の頑張ろうとする思いを認めてくれないのか、なぜ自分を力にしてくれないのか、なぜ必要ないと言ったのか……。

 

教会内の廊下を走るチカの心境は、ベールの言われたことに対する疑問と、それに対する悔しさに溢れていた。

顔を俯かせ、強く歯を食いしばり、一心不乱に走る、己の中に募っていく言い知れぬ感情を振り切るかのように、ただ一心不乱に走った。

しかし、いくら走っても自分の中に募ってくる感情を振り切ることが出来ない……自身の中で渦巻く嫌な感情……認めたくない思いが彼女の脳裏に何度も浮かび上がってくる。

 

 

 

―――………お姉さまはもう、アタクシの事は必要ないんだ……。

 

 

 

考えたくもないのに、そう思えてしまう……それがどうしてもいやなのに、消えない……どこにもいかない……。

 

辛い、悔しい、泣きたい、叫びたい、ぶつけたい、消したい。

 

この気持ちを消すためにどうしたらいいのかわからず、今自分の中にあるすべての想いを表に出そうとする。

だが、彼女はそれを心の淵にぐっと抑え込み……一心不乱に走り続ける中で、無意識の内かあるいは咄嗟に思いついたことなのか、彼女はある場所に辿り着いた。

リーンボックス教会の中に、ひっそりと存在するガレージ……そこに置かれている一台の二つの車輪を持つ鋼の乗り物を見つけて、チカは決心を固めたように目元から流していた涙を拭い、その乗り物へと………歩を近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件がいつ起きてもいいようにということに備えて、ケイブはこの時既に街に赴いていた。

時間が来たら一旦教会に戻り、宗谷達と後退するという流れだった、その先方として仲間の鉄拳、MEGES.の三人と共に各々で散らばり、街に異変がないかをパトロールしていた。

既に街には夜の闇が訪れ始めていた、リーンボックスは国土の内情が豊かであり、人口も現状の人気国であるラステイションに及ばないにしても多く、この時間帯になると昼間とはまた違った賑わいを見せるようになる。

仕事帰り、外食、何となしに出歩くだけ、ちょっと遅めの買い物、夜遊び、それぞれに考えることは違うだろうがこの国に暮らす人たちはそれぞれの時間を楽しむことだろう。

 

しかし、普段と変わらない賑わいを見せているはずの夜の街の雑踏を身軽にすいすいと合間を縫うようにして進みながら、ケイブはいつもとは違う空気がこの街の中に流れていることをうっすらとだが感じていた。

 

 

―――なあ、最近の事件だけど……。

 

―――怖いよね……もしかして、今日もなのかな?

 

―――女神様が何とかしてくれるらしいけど……。

 

―――はやく安心して暮らせるようになりたいわよね……。

 

 

………それは明らかな、不安、戸惑い、恐怖と言った負の感情の連鎖だった………。

 

人々は今、恐れているのだ……この国で起きている異変に……。

ケイブが所属しているリーンボックス特命課、そこは国の平和と安全を守るために活動するのもまた任務としている、それは彼女の持つ使命といっても過言ではない。

 

(………これ以上、この国を好きにはさせはしない………なんとしてでも、止めて見せる………)

 

胸に秘めたその思いを強く再確認するケイブ、そしてそれはきっとこの国を守るために立ち上がった者達全員に言えることだろう……。

 

 

 

その中でもきっと………彼女なら特に………。

 

 

 

そんなことを考えていた時だった……。

 

 

 

彼女の視界の先で、突然建物が崩壊し、リーンボックスの街に恐怖の色が色濃く滲んだ叫び声が上がったのは………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……了解しましたわ……既にポイントにはケイブたち三人が到着し、犯人と交戦中らしいですわ!」

 

「よし、急ごう! 相手が新・犯罪神四天王の内の一人なら油断はできない!」

 

教会からベールの指示を受けた宗谷はスキル 仮面ライダーの力で呼び出した自身の愛車、マシンヴィクトラーを駆り、自分の後ろにイストワールを乗せて走り、その近くではベールが守護女神である姿、グリーンハートに変身し空を駆けぬけるようにして飛行し、三人は現場へと向かっていた。

 

「……それにしてもなぜ今になって戻ってきたのでしょうか?」

 

その道中、イストワールはふと気になったことを口にした。

 

「あの時、宗谷さんの力で新・犯罪神となった異世界のネプギアさんは元に戻ったはずです、既に仕える主がいなくなり彼らにはもう動く分の目的が無くなったはずですが……」

 

「……確かに、普通ならボスがやられたら他も自然と崩れていくと思うんだけど……」

 

あの戦いにおいて、四天王達を退けたのは宗谷とイストワールがフォーチュンリンクを完全な物へと覚醒させたことによるものが大きい、相当なパワーアップを果たすことが出来た二人の活躍によって女神達が苦戦を強いられた四天王を撃退することに成功し、新・犯罪神を止めることもできた。

確かにこの場合なら宗谷達への復讐を考えている、と考えるのが妥当なところだろうがそれにはまず不可解な点が多かった……。

 

「……仮にそれが目的だとしても、なぜわざわざリーンボックスに来たのかが説明できませんわ、それが目的なら他の四天王達もプラネテューヌに姿を現すのが当然だと思いますし……」

 

そう、仮にそれが目的だとしてもリーンボックスに姿を現す意味が見いだせないのだ。

 

何かしらの目的で向こう側が動いているのだとしたら、わざわざリーンボックスに姿を現した、相当の理由が当然存在するはずだ。

それが何なのかまでは今のところはっきりとはしないが……。

 

「…まあ、それが何にせよ、考えるよりも先に動くのが確実に効率がいいですわ、もう相手は…目の前の様ですし…」

 

疑問を抱えながらも現場へと近づいていく彼ら、その最中、宗谷達の視界に今現在犯人がいるとされているポイントが入り込んできた。

 

今回の事件を起こしたきっかけとなる………巨大な敵が出現したポイントに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふっ!」

 

地面を力強く蹴り、跳躍したケイブはそのまま目標に向けて放物線の起動を描きながら急降下し、身を翻しながらその手に持っていた武器を振り下ろした。

彼女の持つ獲物である特殊な形状をした剣の刃が空気を斬る音を立てながら、その刃を目標へと近づけていく。

鋭く、鋭角に振り下ろされた刃、その行き先にあるのは黒光りを放ち、その場にどっしりと構える重厚な装甲…。

 

―――ガイィィン!

 

強烈な金属音があたりに響き渡り、ケイブの持っていた剣の刃が簡単に弾き返された。

腕から伝わってくる反動、それをケイブはダイレクトに受けずにその力に任せ、うまく体を後方へと流し、衝撃を受け流した。

弾き飛ばされるように後退し、地面を僅かに抉るようにして着地したケイブは臨戦態勢を崩さずに剣を構えたまま、目標を睨み付ける。

 

「………」

 

漆黒の鎧に身を包み、兜の目元から怪しく光る眼光を覗かせる巨体、自分が平均的な女性よりも身長が高く、体格が大きめであることを考慮しても今目の前に存在している相手の体格はそれよりも明らかに高かった。

ざっと見て、身長は2m近く……下手をするとそれを越えているかもしれないその大き目な体には、屈強な肉体を強調し、またそれをより頑強な物へとするかのように全身に装甲を着こんでいる。

そんな重武装に身を包んだ目の前の相手から感じる圧倒的な迫力にケイブは警戒を強めざるを得なかった…。

 

おそらく、自分一人ならこれを相手取るのは難しかっただろう………それは嫌が応にもわかる、というより自分の中にある本能が告げている………一筋縄ではいかない相手だということを………。

 

「MEGES.! 鉄拳ちゃん!」

 

「いいだろう、その要求に答えよう!」

 

「りょ、了解です~!」

 

ケイブの指示を受け、後から合流した二人の仲間が一斉に飛び出す、MEGES.果てに持っていた特殊な形状の杖を振りかざし、鉄拳は指が露出した所謂オープンフィンガーグローブをつけた拳を握り絞め、黒鋼の敵へと向かっていく。

 

「うぅ……せぇ~~い!」

 

少々間の抜けた声と共に鉄拳の拳が降り抜かれる、それを黒鋼の敵は反射的に左腕で受け止めるが、その瞬間とてつもない衝撃音と共に僅かにその巨躯が揺れた。

彼女は見た目こそ華奢でひ弱な印象を受けるが、そのうちに秘められた圧倒的なパワーはこのメンバーの中でも随一である、下手をすれば女神にも匹敵するほどかもしれないというのはケイブの想像なのだが…。

 

だが、それに恥じぬほどの拳を受け、目標は僅かに体勢を崩した。

 

その隙を狙い、MEGES.が更なる追い打ちを仕掛ける。

 

「終焉へと導く因果の光……誘え! はあ!」

 

勢いよく杖を振り下ろした瞬間、彼女の杖の先端に青白い魔方陣が展開され彼女が詠唱した呪文染みた言葉に答えるようにしてそこから光り輝く閃光が放たれる。

MEGES.は魔法を得意とする所謂魔法使いだ、彼女が会得している彼女独自の魔法はケイブや他の仲間たちにとっても心強い切り札になることもある。

その期待に答えるようにビーム砲の如く放たれた光の束はそのまま鉄拳の一撃を受け止めたことによって生まれた衝撃で体勢を崩した敵に向かっていき、爆炎を上げながら直撃した。

 

「あ、危なかった~……ひ、ひどいですよ~! もうちょっとでわたしにもあたりそうだったじゃないですか~!」

 

「ふ……この狂気の魔術師である私がそんなヘマをするはずがない、安心しろお前が直撃の寸前に慌てて回避するということは既に計算済みだった」

 

「二人とも、油断してはダメよ………っ!」

 

息の合った……かどうかはさておき、二人のコンビネーションを受けた目標はもうもうと立ち込めている煙の中にいる。

できることなら今ので仕留めておきたいところだが……。

 

……そうはいかないということも、十分にありえることだった。

 

発生した煙を薙ぎ払うようにして姿を再び現した黒鋼の敵は依然、健在とでも言うかのようにその場に仁王立ちしている。

 

「……私の狂気の魔術の一端を見て、まだ向かってくるというのか……面白い」

 

「え~! さっきのけっこうほんきだったんですよ~!? あの人硬すぎだよ~、さっき殴った時もがきぃんってなったし~…今も腕がちょっとぴりぴりするし~…」

 

感じ方はそれぞれの様だが、これで二人も理解したはずだ。

相手は一筋縄じゃいかない、むしろ下手をすれば自分たちが太刀打ちできるかどうかも怪しいということを……。

ケイブは再び自身の中に生まれた警戒を強め、次の攻撃を仕掛けるべく鋭い眼差しを向ける。

だが、ここにきてケイブは一つの“違和感”を敵に感じ始めていた。

 

(………なぜ、反撃してこないの?)

 

遭遇してから今まで自分たちが攻撃こそすれど、相手はまだそれに対する反撃を見せたことがないのだ。

自分たちが仕掛ける攻撃に対して敵はそれらすべてを防御しつづけている。

これほどまでの破壊をしておきながら、一体何を考えているのか………そんな疑問をケイブが抱いていると、ふいに黒鋼の敵が兜から覗かせる緑の眼光を強くさせ、一瞬自分たちを睨み付けた気がした。

遂に反撃に出るのかとケイブが身構える、だがしかし相手は行動を見せることはなかった。

 

「………適合、不可………該当、確認せず………」

 

「………?」

 

不意に聞こえたのは相手が呟いた言葉だった。

一体何を示しているのかはわからないが、今の言葉はあの敵が考えていることのヒントになりえることなのではないか?

そう感じたケイブは思考を巡らせ始める。

 

一種の停滞状態に陥ったケイブたち、不気味なほどに沈黙を守る黒鋼の敵に警戒し続ける……このままでは一向に埒が明かない……。

 

するとそのときだった、ケイブたちの耳に聞きなれた疾走感のあるエンジン音が聞こえてきた。

 

「この音は………まさか」

 

「……あ! 来てくれましたよ、ベール様と宗谷さんたちが!」

 

自分たちの後方から近づいてくるその音に咄嗟に三人が振り返り、目を向ける。

そして、その視線の先にはこちらに向かってまっすぐに疾走してくる深紅のバイクに跨った二人の人影とその近くを飛行する自身たちが信頼する緑の守護女神の姿があった。

 

疾走する車体をうまく乗りこなし、素早く三人の近くまでたどり着いた宗谷は彼女たちと敵の合間に割り込むようにしてマシンヴィクトラーを停車させ、その隣にゆっくりと優雅に降り立つようにグリーンハートが舞い降りる。

 

「悪い、遅れちまった! 怪我はないですか、ケイブさん!」

 

「えぇ、今の所私を含めて全員目立った怪我はないわ……でも、それは向こうも同じようだけど……」

 

三人の安否を確認するように問いかける宗谷にケイブがそう言って再度視線を目の前の敵に向ける。

それに続くように視線を同じ方向に向けた宗谷、そしてその後ろにいたイストワールも少々強張った面持ちで目を向ける。

 

「……まあ、それもそうですわ……一度槍を交え、再びこうして会い見えたため、私も重々理解しております……向こうの防御力は、私たちの遥かに上を行くと……」

 

そして、グリーンハートがそう呟きながらしっかりと槍を握り、まさに因縁の相手を見据えるかのようにゆっくりと、そして凛とした雰囲気を保ちながら目を向ける。

 

 

 

「………いい加減に、そのだんまりの口を開けてもらいたい物ですわ………ねえ………“ジャッジ・ザ・ビショップ”」

 

 

 

槍の矛先と鋭い視線の切っ先、二つの刃にも似た威圧感を放ちながらグリーンハートが言い放つ、目標の名を……自国の平穏を乱す、敵の名を……。

 

そして、その鋭き圧倒的な威圧感を受けても尚、黒鋼の敵………新・犯罪神四天王として、かつて宗谷達の前に立ちはだかり、最初の戦いで彼女と一線を交えた強敵、“ジャッジ・ザ・ビショップ”は沈黙を保っている。

それはまるで突き立てられる刃を受けても全く動じない、まさに鋼そのものとでもいえるかのような……グリーンハートの物とはまた別の威圧感を秘めていた。

 

「………」

 

「……この前と同じように、無口なのは変わりませんのね……つれないですわ」

 

二人の不可視の威圧感がぶつかり合い、今まさに火花が飛んでいる……しかも小さなものなんかじゃない、計り知れないレベルの大きさ、気を緩めれば一瞬で身をすくませてしまいそうなほどのものだ。

自身の肌をぴりぴりと刺激し、反射的に肌の産毛が逆立つような感覚を感じ取った宗谷は改めて相手の強大さを感じ取る。

 

「………宗谷さん、以前に戦った時よりも………」

 

「あぁ、ベールも負けてないけど……あっちも以前よりパワーアップしてるっぽいな……」

 

感じ取る闘志の衝突の最中、その一端を担っているジャッジ・ザ・ビショップから感じ取る強烈な威圧感はそれこそ以前の比ではない、下手をすれば新・犯罪神と対峙した時に勝るやもしれないレベルだ。

油断はできない……今の自分でも、真っ向から対峙して負けることがあってもおかしくない……自分の奥に秘められた戦いにおける危険を知らせる警報を最大限鳴らした宗谷は息を飲みこみ、再度気を落ち着かせるように深呼吸をした。

 

……恐れていても、引くわけにはいかない……。

 

自分たちは今、この国を……ベールが守ろうとしている、この国を守るために戦っているんだ。

 

仲間の想いを、無駄にするわけにいかない……。

 

再度戦う覚悟を固めた宗谷は自身のベルトに手を翳し、そこから赤剣を取り出すと左右に切り払ってからもう片方の手でV.phoneを取り出す。

 

「最初から全力で行くぜ……いーすん」

 

「はい……私も、そのつもりです」

 

宗谷がそう言うとそれに答えるようにしてイストワールも自分の腕に巻かれたリンク・コネクターブレスを構える。

そして、宗谷もイストワールが装着しているのとはまた逆の腕に装着しているブレスに目をやる……。

 

 

 

 

 

「行くぜ………リンク!!」

 

「お姉さまぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「え? ひゃぁああああああああああああああああああああああ!?」

 

「ん? どうし、あぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!?」

 

 

 

 

 

今まさに自分たちも臨戦態勢に入ろうとした刹那、割り込むようにして聞こえてきた叫び声染みた声、それを聞き何事かと戸惑う二人の真上を勢いよく何かが通り越していった。

危うくぶつかりそうになったところを咄嗟に避けたので直撃こそしなかったが、けたたましい音を立てながら宗谷とイストワールの真上を飛び越して言ったもの、その特徴的な音と後に僅かに香る燃料の匂いを鼻腔に感じた時、宗谷は今何が自分たちの真上を飛び越していったのか理解した。

 

「ちょっ!? 誰だ今バイクで俺らの上飛び越していったの!? 危うくぶつかりかけたじゃねぇか!! ていうか今のタイミングでそんなことするか普通!?」

 

「し……心臓が……心臓がドキドキ言っています……! こ、怖かった……!」

 

何者かがバイクに乗り、自分達の真上を飛び越えていったことを理解した宗谷は非常識にもほどがあることをした何者かに抗議し、イストワールは危うく大事故に会うかもしれなかったということに恐怖を感じ、その場で息を整えながらちょうど自分の心臓の位置に手を置いて涙目になっていた。

 

大胆にもバイクで人の上を飛び越えてこの場に割り込んできた何者か、その人物はブレーキによる甲高い音を立てながら着地すると同時、バイクからすぐさま降りると長い若草色の髪を揺らしながら、余りの事に驚きを隠せない様子のグリーンハートに近づいていった。

 

 

 

「ち、チカ!? あ、あなたなぜこんな所に! 教会で待機と言ったはずですわよ!?」

 

 

 

その人物は、なんとここに来る前に彼女が前線ではなく教会で待機を命じたはずの箱崎 チカその人だった。

チカはいつもよりも鋭角になっている気がする目じりを更に吊り上げるようにしてグリーンハートを睨むとずずいっとグリーンハートの目の前まで詰め寄る。

 

「アタクシだってお姉さまのお役に立ちたいのです! それなのにチカをのけものにするのはいくらお姉さまでも横暴がすぎますわ!」

 

「そ、それは……今回の事に関しては正式な理由があるからですの、理由は後でちゃんと話しますから、今はここから離れなさい!」

 

「いいえ、そうはいきませんわ! アタクシはリーンボックス教会の教祖、箱崎 チカ! お姉さまがこの国のために奮闘していますのに、何もするわけにはまいりませんの!!」

 

開口一番、先程にも負けない勢いでグリーンハートにそう言い放つチカ、先程言われたことに対して不満があるのか彼女の内に秘めた不満と思いが爆発したかのようなその発言にグリーンハートも若干のたじろぎをみせながらも彼女にはなれるように指示をする。

だが、チカはそん言葉を頑として受け入れようとはしない、グリーンハートに詰め寄りなおも激昂するチカ、次第にそれは二人の口論へと転じ初めていた。

 

「だいたいお姉さまはなんですの!? アタクシだけでは不満というかのように他の国からの救援まで呼んで! そんなにアタクシの事が邪魔者ですの!?」

 

「なっ、そんなこと一言も言っていませんわ、むしろ私はあなたのためを思って!」

 

「ならなぜアタクシにも協力させてくれませんの! あまつさえ、最近はいつもあのステラという小娘にばかり構って! もうお姉さまはアタクシの事を必要とはしてくれませんの!?」

 

自身の中につもりに積もった不満を爆発させ、言葉にするチカ、やがてその目には再び涙が浮かび始めていた。

 

 

「お姉さまの事を想い、お慕いする心は誰にも負けないつもりですのに……なぜお姉さまは何も答えてくれませんの! ずっとそばにいたのに……“あの時”からずっとお姉さまと一緒に歩んできたのに!! なぜ……なぜ!!」

 

 

悲痛にも似た彼女の叫び、それは恐らく彼女が抱いていた想いを秘めた心が上げている叫び声だ。

涙ながらに訴えかけるチカにグリーンハートは一瞬、はっ、とした表情を浮かべる。

 

「………チカ」

 

そしてそれは後ろで一連の様子を見ていたケイブも同じだった、どこか複雑な表情を浮かべる彼女、そしてグリーンハートもまた同じような表情を浮かべる。

 

「……チカさん………」

 

自身の中に秘められた感情を爆発させ、問いかけるチカ、その姿に先程の彼女の見せたこともないような表情を見た宗谷は言葉に言い表せないような困惑を感じずにはいられなかった。

彼女が流す涙の訳、いったい彼女が言う“あの時”とは何なのか……なぜベールが彼女を遠ざけるような言い方をしたのか……複雑に絡み合った幾つもの疑問抱く宗谷……。

 

だが、その時だった……。

 

 

 

「………該当、確認………行動、開始」

 

 

 

不意にジャッジ・ザ・ビショップが動きを見せたのだ。

今まで沈黙を保ってきたジャッジは右手に持ったモーニングスターを構えると大きく一振りし、先端に備え付けられた鉄球と柄を分離させると、ぎゃりぃぃぃいいいいん! という金属音を響かせながら鎖を鳴らし、思い切りベールとチカのいる方向へと向けて柄を振り下ろした。

 

「っ!! ベール! チカさん! 危ない!!」

 

それを見た宗谷は咄嗟に赤剣とV.phoneを連結させクロス・ヴィクトリーへと変身すると、彼女たちに迫る鉄球を弾こうと赤剣を振るった。

深紅の刃が赤剣の刃と衝突し、甲高い金属音と火花を散らせる、だがその瞬間とてつもない衝撃が赤剣を通してクロス・ヴィクトリーに伝わる。

 

「ぐっ……がぁあああ!?」

 

「宗谷! きゃあ!?」

 

鉄球から生み出されたとてつもない破壊力を受け止めることが出来ずクロス・ヴィクトリーはそのまま後ろに弾き飛ばされてしまい、咄嗟にチカを押しのけるようにして前に出たグリーンハートを巻き込むようにして二人はそのまま近くの建物の壁へと突っ込んだ。

 

「宗谷さん!!」

 

「お姉さ…きゃああ!!」

 

激しい土煙を上げながら建物の壁を突き破り、辺りに瓦礫をばらまきながら先制攻撃を受けてしまった二人を心配して咄嗟にチカとイストワールが二人を呼ぶ。

だがその時、不意にチカは体にとてつもない圧迫感を感じ咄嗟に悲鳴を上げた、どうしたのかとイストワールがチカに目を向けると、ジャッジ・ザ・ビショップのモーニングスターの鉄球に繋がっている鎖が彼女の体にがんじがらめに巻き付きチカを捕縛してしまったのだ。

 

「この……! は、離しなさ……あぁ!?」

 

「チカ! よくも!」

 

「待て、下手をすれば彼女を巻き込みかねない!」

 

捕縛したチカを強引に引き寄せ、自らの手元に手繰り寄せたジャッジ・ザ・ビショップ、それを止めようとケイブが遠距離攻撃用の銃を取り出そうとするが、今発砲すれば彼女に当たりかねないとMEGES.がそれを止める。

 

成すすべなく彼女を人質に取られてしまい、悔しそうな表情を浮かべるケイブ。

 

 

だがしかし、ジャッジ・ザ・ビショップはこの時彼女を人質に取ったというわけではなかった。

 

 

手元までチカを手繰り寄せたジャッジ・ザ・ビショップは鎖で彼女のみ動きを封じながら、その顔を兜の合間から覗く眼光を向けて睨み付ける。

 

「っ! このアタクシに……何をする気かは知りませんが早く放しなさ……けほっ!」

 

眼光から感じる迫力に気圧されることもなくチカはそう言うが、なにやらすぐに苦しそうに咳をしはじめた。

だが、それに構うことなくジャッジ・ザ・ビショップは怪しい緑に輝く目を彼女に向け続ける。

 

 

 

「………対象、“衝動”、該当………適合、可能、………」

 

 

 

そして、何かを呟いたのち左手から何かを取り出し、それをチカに向ける様に翳してみせる。

 

ジャッジ・ザ・ビショップの左手の上で禍々しく、濁った緑の光を放つ何か………チカはそれが何なのかと目を向ける。

 

 

 

 

 

「………同期、開始………」

 

 

 

 

 

だがその直後、その禍々しい光がチカの体を包みこみ、彼女の中に“何か”が流れ込んできた………。

 




いかがでしたか?

ジャッジ・ザ・ビショップによって捕縛されたチカ、果たして彼女はどうなるのか!

次回をお楽しみに!
そして感想もお待ちしております…m(__)m
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