超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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今回からルウィー編です。

やっと本編に入りました…

お待ちさせて申し訳ありません(汗)

それでは、お楽しみください!
どうぞ…


いざ雪国へ! ルウィーとロリコンと配管工編
stage,14 俺、ルウィーに行きます


青かった空がまるで、黒い絵の具をぶちまけ、塗りつぶされたかのように黒く染まり、其の上を優雅にふわふわと灰色の雲が浮かぶ。

 

夜に包まれ、今日も雪に覆われた国、“ルウィー”。

白と黒が入り混じった幻想的な時間帯、国民はすべて寝静まるころ。 このルウィー教会に置いても、この国の女神候補生、ロムとラムがハート型のかわいらしいデザインをしたベッドですやすやと寝息を立てて今では二人一緒に夢の中…

 

しかし…

 

 

―――カタカタカタカタ……

 

 

打って変わり、二人とは別室、ルウィーの女神、ブランが仕事に励む彼女の執務室では、この時間帯になってもキーボードを忙しく操作する音が黙礼する。

デスクに向かい合い、休む間もなくキーボードを打つ彼女の表情は暗がりでよく見えないが、口元だけは…笑みを浮かべているのが分かった。

 

「あと、もう少しで……ふふっ……」

 

果たして彼女は、何にいそしんでいるのだろうか……

 

 

 

 

 

時を同じくして、ルウィー教会の裏手。

ここに雲の間からのぞいた月明かりに照らされ、きらきらと光り輝くものがあった。

 

M、と刻まれたクリスタル…紛れもない、宗谷が探し求めるもの、ヒーローメモリーだ。

月明かりに照らされたそれは、しばらく月の光を反射するだけだったが…

やがて、一瞬だけ赤く光り輝くと、クリスタルを核に何かが形成され始めた。

 

空中に浮遊するクリスタルに赤い光が集まり、それは着実に人型を作り上げていく。

物の数分で前進が構築され、雪の大地に降り立ったその人物は肩を回したり、手を握ったり開いたりして調子を確認する。

 

『何のつもりだ、あんた…?』

 

突然聞こえた声に、さっきまで調子を確認していた人物が振りかえると、そこには自分と同じ境遇の、既に“彼”にスキルを譲渡した自分と同じ“主人公キャラ”、ソードアート・オンラインのキリトが自分を訝しげな表情で見ていた。

 

『やあ、久しぶりだね? でも君が何でここにいるのかも僕からしたら不思議なことなんだけど?』

 

『俺達ヒーローメモリーに記録されたキャラの意思はみんな共有しているからな……既にスキルを与えたキャラは、クリスタルがなくても意志を別のキャラに送ることはできる』

 

『おっと、そう言えばそうだっけ?』

 

『むしろ俺は、まだ宗谷にスキルを与えてないのに、ヒーローメモリーから出てきたあんたの考えが理解しかねるよ…』

 

呆れ気味にキリトが言うと、その人物は陽気な笑顔を浮かべてまあまあ、と言うと自分の頭にある“特徴的な帽子”のつばをピンと弾いて見せる。

 

『あまりじっとしているのは、僕の性分じゃないからね? それに感じたんだよ、もうすぐ彼がここに来るって…』

 

『……だから、あいつが見つけるより先に自分が動いて宗谷を見定めようと?』

 

キリトが質問を投げかけると、その人物は人のよさそうな笑みを浮かべて頷いた。

やれやれと首を振ったキリトはまたバツの悪そうな表情をするが、彼の目の前にいる人物はそんなことはお構いなしにその場で準備体操の軽い跳躍を始める。

 

 

『やっぱり、それが長年培って得た、あんたのキャリアの違いって奴なのか?』

 

『キャリアと言うより…僕の宿命、かもね?』

 

『……何でもいいけど、妙なことをして正体がばれるようなことはしないでくれよ? 特にあんたはゲームの中じゃ、かなり有名なんだから…』

 

 

キリトの言葉を聞いたが最後、その人物は今までで一番深く身をかがめ、思いっきり地面を蹴り、そのままルウィー教会の壁に、ぴょんぴょんと飛び乗っていった。

そして、ルウィー教会の一番上で一言、既に姿を消したキリトに投げかけた…

 

 

 

『okey dokey!』

 

 

 

意味は、OK、という言葉を……

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!きれいな街!」

 

太陽が昇り、ルウィーの街がにぎわい始めたころ、プラネテューヌの女神姉妹&俺こと、天条宗谷を乗せた馬車がルウィーの街をかけて行く。

ごとごとと程よく、心地いい振動と、雪に覆われた幻想的な町並みは俺の世界の外国の北国を思わせる。

 

馬車の窓から顔を出し、風景に見入っているネプギアはいつもより無邪気な子供のように見えてくる。

 

「私、ルウィーに一度来てみたかったんだ♪」

 

「ネプギアがそう思っているような気がしてさ~♪」」

 

「お前はテレパシー能力でもあるのか?」

 

妹が楽しんでいる様子をこちらも楽しそうに見守る姉であるネプテューヌに俺は突っ込みを入れておいて、馬車の後ろのドアにもたれかかる。 スライド式のドアだから外に転がり落ちる心配はないので気兼ねなく凭れかかれるぜ。

座るスペースがない分、体重が預けられる所って言うのは落ち着くからな…。

 

「ところでソウヤ、なんでそんな厚着してるの?」

 

「寒いからだよ」

 

ちなみに、今ネプテューヌが言ったとおり、俺はいつもよりも防寒対策として厚着をしている。黒いマフラーに手袋、ニット帽をかぶって今出てるのは鼻先と目元だけだ。

 

「だからってそこまで着込むかな~? そのかっこだと、まるで暗殺者みたいだよ?」

 

「むしろ俺は薄着なお前たちの方がおかしいと思うんだけど?」

 

俺は生まれつき寒いのが苦手なんだ、冬は極力おこたで蜜柑食ってそのまま年を越したいタイプなんだよ。

 

ネプテューヌ達は女神だからか、そんなに厚着することもなく普通しているようだけど、街のを行き交う人たちは結構みんなコートやらなんやらで防寒対策は万全なんだぞ? 寒さを知らんのかお前らは…

 

「そもそも、何で急にルウィーに行くことにしたんだ? いくらなんでもネプテューヌの気まぐれってわけじゃないよな?」

 

「ああ、実は…前から、ロムちゃんとラムちゃんに遊びに来てって言われてたからなんです、TGSも一段落したし、せっかくだから遊びに行きたいなって…」

 

俺の問いかけにネプギアが答えてくれた。

なるほど、それなら納得だ…まあ、要は今回は仕事とは違って休暇ついでの観光って感覚か。

しかし、理由はそれだけじゃないらしくネプギアがさらにそれに付け加えた。

 

 

「それに、ロムちゃんもラムちゃんもブランさんに他の国には遊びに行ったらダメって言われてるみたいで…」

 

「へぇ…あまりいいこととは思えないけど、ブランさんなら分かるかも…」

 

「ブランってお堅いイメージがあるからね」

 

 

俺とネプテューヌが互いに顔を見合わせて頷く。

初めて会った時もそうだけど、ブランさん、女神化した時めちゃくちゃ怖かったからな…普段はあんな小動物みたいに大人しそうなのに…

 

「そんなにお堅いままだと、ノワールみたいにボッチになっちゃうのにね~、宗谷?」

 

「だな、たまに素直になった方が可愛かったりするのにな~、ネプテューヌ?」

 

 

「目の前にいるんですけど?」

 

 

おっと、聞こえてたか。

まあ、ネプテューヌ達の目の前にユニちゃんと一緒に座ってるんだから嫌でも聞こえるか。

 

ちなみになぜノワールたちがここにいるのかと言うと、今日ここにいないアイエフとコンパさんの代役、要はネプテューヌの監視役だ。

 

実は、今回秘密裏に観光目的の裏で俺といーすんの裏目的があるんだ。

一応、観光の様なものとはいえ、これを気にネプテューヌにも女神としての自覚を一層深めてもらおうと言う、俺といーすんの裏の目的のため、今日はノワールにも同行してもらったというわけだ。

 

「ていうか、誰がボッチよ!」

 

「あはは、ごめんごめん、でも面と向かって言われると自分を変えるきっかけになるよ?」

 

「あんたみたいなグータラ女神に言われたくないわよ! それに私はもうボッチじゃないの!」

 

「もう、ってことは以前はボッチと認めていたことに…」

 

「宗谷、何か言った?」

 

「いえ別に?」

 

以前はノワールとこんな風にいじったりできる関係になれるとは思ってもみなかったが、今はこんな風に気兼ねなくノワールを弄れるぜ、うん、いいよツンデレノワールカワイイヨ!

 

「ていうか、目の前にいるんだから、少しくらいフォローしなさいよ! あんたはその…私の……と、とも…とも…」

 

「ツンデレ乙」

 

「ツンデレ言うな! ていうか今のツンデレとは違うでしょ!」

 

既にこの掛け合いもテンプレになってきたな、やっぱノワールとはこの掛け合いがないとノワールって感じがしない、うん。

 

 

「まあまあ、ツンツンデレデレは結構だけどあんまり意識してると妙な誤解を生むぞ?」

 

「…何よ、誤解って…」

 

「そうだな……異性として意識してる、とか?」

 

「っ!?」

 

 

俺の冗談交じりの言葉にノワールはすぐさま顔を真っ赤にして数歩後ずさる。

そうそう、このリアクション、こんな典型的なリアクションをリアルで見られるのはノワールだけだよな。

 

「ば、ば、ば、バカ! 別にそんな気持ちなんてここここれっぽっちも…」

 

「冗談だぞ?」

 

「うっ!? ……~~~! もう! 誘いに乗ったの…失敗だったかしら…」

 

そう言ってぷいっとそっぽを向いてしまうノワール、いやぁ、いいですなぁ…

やっぱツンデレはノワールさんが似合いますなぁ…

 

「……なんか、宗谷、やけにノワールといーすんとは仲いいよね? 隣にはこんなに可愛いヒロインが居るって言うのに~……」

 

「お前はちゃんと仕事できるようになってから言うことだな、話はそれからだ」

 

「はうあっ!?」

 

これは差別ではないぞ、辛いがこれはお前が立派な女神になってくれることを願って言っているんだ…

 

まあ、半分は本心だけどな?

ネプテューヌも少なからず美少女の類には入っているというのは認めるが、中身をちゃんとしてほしいわけだ。

居候先とはいえ、国のリーダーがこんなんだと、この先心配だからな…

 

とまあ、道中はこんな感じのやり取りをしつつ、たまに真面目にノワールとユニちゃんの最近の調子だとかを聞きつつ、俺達が乗る馬車は確実にルウィー教会を目指していた。

 

 

 

ようやっと、ルウィー教会に到着した俺達は教会の中に入り、この教会の主であるブランさんと会うべく、ブランさんの部屋へとみんなで歩を進める。

 

教会の中は結構暖房が利いているおかげで俺が来ていた毛糸の防寒着がいらないほどだ。

 

「ふぅ、やっと一息つけるぜ…」

 

俺がそう言ってマフラーと手袋、ニット帽をはずし乱れた髪を手で簡単に直す。

防寒具は持ち前のバッグに一通り詰めた。

その様子を見て、ネプギアが何かを思ったのか俺のバッグをまじまじと見つめていた。

 

「そう言えば、何で宗谷さんだけそんな荷物を持ってるんですか?」

 

まあ、他のみんながそれほどの荷物を持ってきてないから思うのは普通か…

俺が今持っているのは、ラステイションにいた時に購入し、滞在グッズを入れるのにお世話になったバッグだ。

何故これを持っているのかと言うと、俺のもう一つの目的に関係してくる。

 

「一段落したらルウィーにもしばらく残ろうと思ってな、ヒーローメモリー集めのために」

 

ここ最近は忙しくって碌に集められてなかったからな、ちなみにそのうまは既にいーすんには相談済みだ。

マフラーなどの防寒具はいーすんがあらかじめ用意したものでもある。

 

 

 

 

―――お~ま~え~ら~!!

 

 

 

突然、どこからともなく聞こえてきたどすの入った声に、俺は反射的にびくついてしまった。

それに対して、他のみんなは落ち着いている、みんな慣れているんだな…

 

今の声は、完全にブランさんのものだ…うん間違いない、あの感じ女神化してアラブっている時のブランさんの時の声だもん。

しばしあって、俺達の目の前の曲がり角から見覚えのある双子ちゃんが飛び出してきた、それに続いてブランさんが飛び出してきたが…一瞬だけめちゃくちゃ凄い形相をしていたんですが…なにがあったのかな?

 

 

「ネプギア! ユニちゃん! それにお兄ちゃん!」

 

「みんな、来てくれたの?」

 

 

二人は嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた、対するブランさんはさっきとは打って変わってびっくりした顔になってるな、まあ、突然のことだし仕方ないか。

 

ちなみに、ラムちゃんが言ったお兄ちゃんとは俺のことだ、なんやかんやでこんな呼び方で落ち着いてしまったんだ、TGSの時からな。

 

「うん、遊びに来たよ!」

 

「やっほ~、ブラン~!」

 

ネプ姉妹二人組はそれぞれに挨拶して答えたので、俺もロムちゃんラムちゃんに手を振ってからブランさんにお辞儀する。

 

「今日はお世話になります、ブランさん」

 

「……」

 

ブランさんは特に何も返さず、無言のまま俺達を見つめていた…。

あれ、なんか外した?

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、中庭。

雪が残るここで、丸テーブルを囲むように四女神の四人が座り、紅茶とお茶菓子を片手に何か話し合いに耽っていた。

ちなみに、何故ベールがルウィーに来ているのかと言うと、何やらブランと話があったそうだ。

 

「まあ、そんなわけで…ルウィーに新しいテーマパークが出来たって聞いて、みんなで遊びに来たの♪」

 

「……イストワールからは、女神の心得を教えてやってほしいって聞いたけど?」

 

これに関しては事実、事前にイストワールからブランに伝えられたことである。

イストワールは少なくとも、ただ遊びに行かせるで終わらせるつもりはないのだ、そのために事前に宗谷とも話、ノワールにお目付け役を頼んだわけだが…

 

「ああ、それはもういいよ、前回あんまり役に立たなかったしね」

 

「……悪かったわね」

 

「それにさ…」

 

ネプテューヌが首を横に向け、見つめる視線の先、そこには…

 

 

 

「よし! ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲、完…」

 

「あんた何作ってるのよ!!」

 

 

 

めっちゃくちゃのりのりで雪を集め、固め、丸めて、作ったネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲なる謎の巨大な砲台型の棒と二つの雪玉で構成された謎の雪像を前に一仕事終えた感じに額の汗をぬぐう宗谷の姿があった。

 

ちなみにその横では負けないぞと言いながら女神候補生の四人が、かわいらしい雪だるまを作っている。

その様子はまさに天と地の差にも見える…

 

そして、今宗谷が作ったものに気付いたノワールがとてつもないスピードで雪像に駆け寄り、見事なハイキックで雪像を木っ端みじんにしていた。

 

「あーーーー!? ノワールお前何すんの!!」

 

「何するのじゃないわよ! よく小さい子もいる上に私たちの前であんなもの作ったわね!?」

 

雪像の形があまりにもダメなものだったそれに、ノワールがだめだしするが宗谷はむしろ何のことやらと言いたげにやれやれとかぶりを振った。

 

「ノワール、あれは俺達の世界じゃ有名なネタなんだよ? そりゃあ、ネオアームストロンサイクロンジェットアームストロング砲の名前を聞いたら、分からない奴はいない位の…」

 

「聞いたことないわよそんな変な名前の大砲…ていうか、あんたの世界からしたらそうかもしれないけど、私達の世界でそれが通用すると思ったら大間違いよ!!」

 

確かに、置かれている位置が位置なだけに、ノワールからしてみたらとんでもないものにしか見えなかった。

何に見えたのかはあえて伏せさせていただこう…

 

すると、その様子を見ていた丸テーブルに座っていたネプテューヌが…

 

 

「ねえ、宗谷今のって、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲?」

 

「お、知ってたのかネプテューヌ?」

 

「ええ!?」

 

 

意外な一言にノワールは驚きのあまり目が点になってしまった。

 

「うん、私も実物はあんまり見たことないけど、すごいね~、あの最強の砲台を再現しちゃうなんて…」

 

「完成度、高かったろ?」

 

ネプテューヌにサムズアップをして見せる宗谷にネプテューヌもうんうんと答える、その光景を見たノワールは尚も混乱が収まらないでいた。

 

「な、なんでネプテューヌが知ってるの? 結構、この世界でも有名なものだと言うの?」

 

頭を押さえて俯き、ぶつぶつと呟くノワールに宗谷が駆け寄り、ノワールの肩をぽんぽんと叩く。

それにつられ、ノワールが顔を上げて宗谷と目が合う。

 

 

「なあ、ノワール…何を想像したんだ?」

 

「~~~~~~!!」

 

 

顔を今までにないほど真っ赤にしたノワールは俯いたまま声にならないうめき声を上げてその場にしゃがみこんでしまった。

 

しかし、その光景を見ていた宗谷とネプテューヌが目線を再び合わせ、してやったりと言う顔でサムズアップをかわしていたのことをノワールは気付かなかった。

すべては、宗谷とネプテューヌの計算のうちにあったのである。

 

ただ、悶えるノワールを見たかったがために…

 

全くの無駄な努力以外の何にものでもない…

 

 

「あらあら、もうすっかりノワールとは仲良しなのですね、宗谷さんは」

 

「まあ、いろいろあったみたいだよ? 何があったかは知らないけど」

 

今の宗谷達のやり取りを見て何も言わず寛大な態度で接するベールの心のうちがいかに広いことか…

何も知らない人から見たら、あの雪像を見た時点でドン引きせざるを得ないであろうものを、簡単に流してしまうのはある意味彼女の持ち味なのだろうか?

 

「まあ、それはそれとして…テーマパークの話は私も耳にしていますわ、みんなで遊びに行ったら楽しいのではないかしら?」

 

その提案を聞き逃さなかったロムとラムがすぐさま四女神の座るテーブルの方に向かう、それを追いかけてネプギアとユニもついて行き、宗谷もそれを見て妙に満足げな顔で合流した。

 

「スーパーリテールランド!? 行きたい行きたい!」

 

「連れて行って、ワクワク♪」

 

無邪気にはしゃぐ二人の目はもう既に行く気満々と言いたげである。

なんともほほえましい光景だが、なぜかその視線の先にいる姉のブランは表情を変えることはないまま、さっきとは違う真剣なまなざしに変わった。

その表情を、いち早く宗谷は察知していた。

 

(…なんだろう、前のブランさんとは違う…)

 

落ち込むでも、悲しげでもない、いつもの無表情、だがどこか影を見せる表情を見て、宗谷は疑問に思ったのだが、その心理までを理解するに至ることはできなかった。

そして、ブランはそのまま口を動かした。

 

「妹達を連れてってくれないかしら…?」

 

その場にいた全員はこの一言に疑問をいやがおうにも感じたはずだ。

なぜ、ロムとラムだけ行かせてブランは行かないのかと…

 

「え、ブランは?」

 

「お姉ちゃん、行かないの…?」

 

ネプテューヌとロムが問いただすが、ややあってブランは若干うつむきながら答えた。

 

「私は、その……行けないの……」

 

この時、どこか躊躇した言葉を発したブランの目を見て、宗谷だけがある違和感を感じていた。

 

(……ブランさん、本心では行きたいんじゃないのかな?)

 

誰しも、特に兄弟や姉妹であれば尚のことみんなでどこかに行くのなら自分も連れて行ってほしいと思うだろう。

かく言う宗谷も昔はのけものにされるのが嫌で、施設の年上の兄や姉によく付いて回ったものだ。

いくらなんでも、ブランがロムとラムを嫌っているわけではないだろう。 初めて会った時やTGSの時もロムとラムのことをやけに気にかけていたようでもあった…

 

(それなのに、何故…)

 

宗谷の疑問は募るばかりだった…。

 

「仕事ならやめなよ~、昔の偉い人も言ってるよ? 働いたら負けかなと思ってるって!」

 

「ネプテューヌ、ちょっと黙ってろ…」

 

これ以上ネプテューヌが余計な事を言わないように彼女の口に手をやり、問答無用でチャックさせる宗谷。

しかし、今の言葉を聞いてかそうじゃないのか、ブランは荒々しくその場で立ち上がった。

 

 

「とにかく、私は無理……」

 

 

それ以上は何も言わず、ブランは身を翻し、自室へと戻ってしまった。

この時の彼女の姿を見て、宗谷はあるものを連想していた…

 

 

(……そう言えば、施設にいたころ…バイトで忙しかった姉ちゃんもイライラしててあんな態度取ってた時あったな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、ここはスーパーリテールランド。

どこか俺の世界の有名なゲームを連想させるこのテーマパークにて…

 

「おっ! ニンジンダー模様のコイン発見!」

 

「宗谷さん、私アエルーでした!」

 

「こっちはスライヌよ!」

 

俺、結構楽しんでます。

いや、施設のみんなとお金出しあって遊園地とか結構行ったことあったからさ、こう言うとこは結構好きなんだよな。 童心に変えるって言うのかな?

 

ちなみに俺達はパークの中に無数に浮いているコインの中にある、レアなコインを求めて集めているところだ。

 

「テリトス…」

 

「私はテスリト…つまんない~!」

 

レアなコインが見つからず、何やら不満そうなロムちゃんラムちゃん姉妹、俺は二人に近づいて頭に手を乗せて撫でながら笑顔を見せる。

 

「ほらほら、諦めずに探そうぜ? 出なきゃレアなのは全部俺とネプギア達でもらっちゃうぞ?」

 

「えー!」

 

「絶対…やだ…」

 

「なら、頑張ってレアなの見つけるぞ?」

 

「「おー!」」

 

よし、なんやかんやで二人もノリノリだな、やっぱりこういうとこに来た時は楽しむのが一番だ。

遠くの方では、何やらベールさんとノワールがベンチに座って話しているのが見える、一瞬ベールさんの視線が俺をとらえ、その後やさしい笑顔で手を振られたので、俺はこっ恥ずかしくなり、頭を掻きながら軽く頭を下げて、ロムちゃんとラムちゃんの後をついて行こうとした。

 

その時…

 

―――~♪~♪

 

「おろ?」

 

ブイホに突然の着信、画面を見るといーすんからだった。

なんだろう、突然…

 

俺は画面を操作していつでもいーすんを起動させる。

 

「どうしたいーすん、寂しくなって連絡か?」

 

『別にそんなんじゃありません! ちょっと、気になることがあって…』

 

「気になること?」

 

いーすんの言葉に俺は疑問符を浮かべ、首をかしげる。

 

『はい、今さっき、私宛に妙なメールが届きまして…その内容が…』

 

いーすんはそう言うと、ややためてからぽつりとそのメールの内容を読み上げた。

 

 

『君の相棒に伝えろ、いつも見ているぞと……というメールが…』

 

「いつも見ている?」

 

 

俺はそれを聞いて、真っ先に浮かんだのがTGSの時に出会ったあの“白ジャージさん”のことだった。

TGS初日の前日、準備の時に彼女に言われた言葉…

 

 

―――ずっと、見ていますからね?

 

 

あの言葉が、また頭の中でこだまする…。

それだけインパクトが強いかったのかな…

 

でも、文面の感じから行ってもあの人って感じではないように感じるな…

そもそも、既に俺に同じようなことを言っているのにいーすんにまで言う必要があるのか? ていうかなぜいーすんのアドレスを知っているんだ?

 

 

『……一体どういうことなのか分かりませんが…念のため、知らせておくべきかと思いまして…』

 

 

心配そうな顔をするいーすん、妙に最近心配性になってきていないか? 俺はいーすんを精神的な面で気にかけつつ、愛想笑いを浮かべる。

 

「そんなに気にすることないんじゃない? もしかしたら悪戯メールかも……」

 

 

 

しれない、と言いかけた俺は視線の先に、何やら不審なものを見つけてしまった。

ロムちゃんとラムちゃんが向かった通路、その陰で何やら俺の方を見ている怪しい人影。

 

その人影は俺に気付くと、反対方向に走り出した。

 

 

「……ごめん、いーすん、後でかけなおす」

 

『え、宗谷さん!?』

 

俺はいつでもいーすんを切り、その人影を反射的に追いかけた。

 

 

 

最初に感じたのは、妙な視線だった…。

まるで俺の様子を窺っているかのような怪しげな視線、そして、俺が奴に気付いた時、向こうは全力で逃げだしたこと。

 

明らかに怪しい、少なくとも…いーすんあてに出したメールの犯人である可能性があるかもしれない…。

 

俺は目の前を走る妙な人影を追いかけているが、相手は妙に素早く追いつこうにも一苦労を強いられた。

一見すると、小柄で動きにくそうな黒いローブの様なもので姿を見せないようにしているが、それでもなお素早く動き回るそいつは、時折、俺の方を振り返りながら走るスピードを緩めることなく、走り続けた。

 

 

だが、しばらく追いかけていると、奴の目の前に高い壁が現れた。

うまいこと行き止まりに追い込んだようだ、後はローブをはぎ取って正体を拝むだけ…

 

「よし、捕まえたっ!」

 

壁の手前で立ち止まったその黒いローブに、俺が飛びかかろうとした…

 

だが、その直前、黒ローブは壁に向かってジャンプ、なんと壁をさらに蹴って見事な反転ジャンプをして見せたのだ。

俺の後ろに入れ替わるように着地した黒ローブは、一瞬手を見せると超発お意味を込めてか指をくいくい、と曲げて見せた。

 

 

「……上等」

 

俺は一気に奴との間合いを詰めるべく、身を低くして地面を蹴り一気に走り出す。 だが、黒ローブはそれを見て逃げることなく、その場に身構え、俺との距離が一番縮まった瞬間、大きくジャンプ!

 

「なっ……あうっ!」

 

俺の肩を踏み台にして更にジャンプし、そこから前転宙返り、地面に着地し更に身をひねりながら更に高くジャンプし、なんとさっきの高い壁の上に飛び乗ってしまった。

 

「……うそだろ?」

 

黒ローブは一瞬俺を見た後、すぐに壁の向こう側に行ってしまった…。

 

一体、何だったんだ…あいつは…

 

俺は呆然とその場に立ち尽くす。

そこへ、さっきの黒ローブとは段違いの背丈の人物が現れた。 ネプギアだ。 まあ、そこまででかいわけじゃないんだけど、さっきの黒ローブと比べると…なおさらそう見えたんだよな。

何かを探しているようだけど…どうかしたんだろうか?

 

 

「あ、宗谷さんどうしたんですか? 急にいなくなって…」

 

「え? ……ああ、別に何でもない…それよかネプギアはどうしたの?」

 

 

俺がそう聞くと、ネプギアはあたりを見渡す…俺以外の誰かを探しているようだ。

 

「ロムちゃんとラムちゃんが居ないんです…」

 

「え? そんなはずはないだろ…このあたりからそう遠くに行けるはずもないし…」

 

俺はそう言って、ネプギアと一緒に最後に二人を見たあたりに戻ってみる。

案の定、いるわけもなく、あたりにはさっき俺達が集めていたコインが浮かんでるだけだった。

すると、近くにユニちゃんを発見、すぐさまネプギアと一緒にユニちゃんに問い詰める。

 

「ユニちゃん、ロムちゃんとラムちゃん見なかったか?」

 

「さっきから見当たらなくて…」

 

「え? 二人なら…」

 

ユニちゃんは近場にあった曲がり角を指差す。

 

「あそこの角に入っていくのを見たけど……」

 

有力な情方を得て、俺とネプギア、ユニちゃんは角の方に行く。

この時、俺は近くに浮いているコインの絵柄を見てある不信感を抱いた…。

 

(このコイン…デッテリュウのマーク、レアものだな…しかも、こんなに…)

 

そのコインはまるで曲がり角の奥に誘い込むかのように連なっていた。

 

 

 

……嫌な予感がする。

 

 

 

そして、曲がり角を曲がった先…

俺の予感は、的中してしまった……

 

 

「アックックックックックッ……」

 

 

目の前に、ロムちゃんとラムちゃんの口を手でふさぎ、長い舌を出した無骨なカメレオンの様な顔をした丸い体の怪物がいたのだ。

隣には灰色で、妙な柄をしたパーカーを着た緑の髪をした眼球の小さい目、三白眼が特徴的な女もいた。

怪物に口をふさがれた二人はうめき声を上げながら抵抗しようと足をじたばたさせるが、怪物の力が強いのか振りほどくことができないようだ。

 

「ロムちゃん!! ラムちゃん!!」

 

「あんた達、二人に何してるのよ!」

 

ネプギアとユニちゃんが怪物に食って掛かるが、怪物は聞き耳持たないとでも言いたげににやりと笑った。

 

この時、俺は悟った…

こいつ、タチの悪い奴だ…、しかも相当に…と…

 

奴の目を見ればわかる、うすら寒い、妙な悪寒を感じさせるあの目…

俺は、あの目を知っている…

 

 

 

あの時に見た目だ………

 

 

 

次の瞬間、怪物は長い舌で俺達めがけて不意打をかけてきた。

 

「危ないっ!!」

 

反射的に二人を突き飛ばし、下の射程距離からはずす。

しかし…

 

「ぐっ! がぁっ!?」

 

「宗谷さん!!」

 

代わりに俺が舌の攻撃を食らい、その場に打ちのめされてしまった。

やけに重い一撃をもろに浴びた俺は、なんとか立ち上がろうと震えながらも体を起き上らせるが……

 

「てめぇはそこでおねんねしてな!」

 

怪物の隣にいた女が、俺めがけて何かを飛ばした。

俺はそれをかわすことができず、鋭い痛みが俺の肩に走ったと共に体全身の力が抜ける感覚に襲われた。

いや、これは抜けるんじゃない…痺れて……麻痺してる?

 

「毒、針か……くそっ…」

 

俺が悪態をついた瞬間、怪物が再び舌を使って二人を襲った。

 

「「きゃあああっ!?」」

 

ネプギアとユニちゃんも地面に倒れてしまった。

 

「幼女以外に興味はない!」

 

「うまく行きましたね? トリック様」

 

「アックックックック!」

 

女の言葉に再び妙な笑い声を上げる怪物…トリックと言うらしいが……

奴は不敵な笑い声を上げながら両手のロムちゃんとラムちゃんを交互に見やる。 その時の二人の目は怯えきった様子で目に涙をためているのが見えた。

 

「お楽しみは…これからだ……アーックックックック!!」

 

そのまま背を向けてその場を立ち去っていくトリック。

 

 

ダメだ、奴を行かせたらだめだ……

 

 

俺は必死に痺れた手を動かし、ジャケットのポケットにあるブイホを取り出そうとするがうまく動かすことができない……

 

 

畜生……俺は、“また”……何もできないのか……

 

 

 

“あの時”とは違う……今の俺には戦う力があるのに……

 

 

 

動け、動けよ! 動け畜生!!

 

 

 

「待、てよ……この、ロリ…コ、ン……野郎っ……」

 

 

俺はその言葉を最後に、意識を暗闇に手放してしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの日……“また”、何もできなかった……

 

 




いかがでしたか?


次回、トリックに攫われたロムとラムに魔の手が迫る! その時宗谷は! そして、宗谷の前に現れた黒ローブの正体とは!

それではまた次回でお会いしましょう!

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