今回は宗谷が一気に女神のみんなとの距離を縮めます!
そして、予想外のあのキャラが……
それではどうぞ!
再び意識が戻った時、俺はどこかの部屋のベッドに横たわっている状態だった。
朦朧とする意識を覚醒させるべく、なんとか身を起して頭を左右に振り、頭の中のもやを振り払う。
気付けのつもりでやったが、結構効果があったらしく、そこからは思考がクリアになり、冷静に物事を考えられるようになった。
窓を見ると、さっき、テーマパークに行く前にネプギア達が作っていた雪だるまがある中庭が見えた…
て、ことは…ここはルウィー教会か…そう言えば俺はさっきまでテーマパークにいたはず……何で教会にいるんだっけ?
…テーマパーク……?
………
そうだ! こんなとこで寝てる場合じゃない!
「ロムちゃん、ラムちゃ、っ…ぁ…」
慌ててベッドから降りようとしたが、まだ体に痺れがあるのかうまく動けず、ベッドの上にうずくまってしまった。
くそ、こんなことしている場合じゃないってのに……
「あまり無理をされると……体に響きますわよ?」
突然聞こえた声の方向に俺は首を向けると、そこには部屋のドアの片隅で椅子に座りながらこちらを見ている、ベールさんの姿があった。
「……見張り、ですか?」
「起きた時に誰もいないと、困るでしょう? 私だけ残っておきましたの…」
ベールさんはそう言うと、俺の体をいたわるようにやさしく肩と足に手をまわして俺の体を腰を軸に90度回転、降りやすいようにベッドの端に腰かける体制にしてくれた。
「それほど強い麻痺毒ではなかったので、大丈夫だと思いますが…慣れないでしょう?」
「ええ、麻痺った感覚って…こんななんですね…」
俺は言いながらなんとか立ち上がり、近場に立てかけてあったジャケットを手に取り、羽織る。
あたりをみても、ベールさん以外のみんなの姿が見えない…ネプギアとユニちゃんは無事なのだろうか…
「他の皆さんなら、ほら、あそこに…」
俺の考えを読んだかのように、みんなの居場所を教えてくれたベールさん。
ベールさんが指差した先には、中庭の丸テーブルにベールさんを除くみんなが集まっている。 よかった、ネプギアとユニちゃんも無事だったようだ。
俺はすぐさまその場に向かうべく歩を進める。
だが…
何分、まだ起きたてだったせいか、足がもつれ、前のめりに転倒してしまいそうになる。
いや、麻痺によるもつれじゃない…一瞬だが、足が震えた…
でも、地面に倒れ伏す直前、ベールさんが俺の体を優しく受け止めてくれた。
その時、ベールさんの胸が、俺の右腕あたりに当たった気もするが…今は萌えるような気持ちになる気分にならない…
「無理はダメと言ったではありませんか…」
「……大丈夫です」
俺はベールさんと顔を合わせることもなく、静かに言うが、ベールさんは俺の体をいたわってか、ベッドに押し返そうとする。
「いいえ、大丈夫ではありませんわ…麻痺が抜けるまで、もうしばらくここで…」
「大丈夫だって言ってるのが聞こえないのか!!」
俺はこの時、この世界に来て、初めて誰かに対して怒鳴り声を上げてしまった…
さすがのベールさんも驚いて目を見開いている、とっさにとはいえ、急に怒鳴ったらだめだよな…
それに、俺はこの時点で自分自身へのいらつきをぶちまけたんだ。
俺は恐怖してる…あいつの…トリックと呼ばれた奴の目が一瞬頭を横ぎったんだ…。
そんなわけない、そう思いたいが…一瞬感じた足の震えが、それを裏付けるように印象を強くさせる…。
いや、どっちにしても怖がってる場合じゃないな…
今は、やらなくちゃいけないことを、早くやらないと……
はやく、みんなの…ブランさんのとこに行かないと…
俺はベールさんの肩を持って、それを支えにその場に立ち、ベールさんから二三歩距離を置く。
「……すいません、急に怒鳴って……」
「……」
ベールさんは何も言わず、ただ俺のことを見ている。
そりゃあ、誰でも怒鳴られていい気持ちはしないよな…幻滅、されたかな…
俺は行かなくちゃいけないんだ…ここで、呑気に寝てるつもりはない…
「……でも、俺…二人を一刻も早く助けたいんです……それに、ブランさんにも…謝らなくちゃいけない……」
あの時、俺が油断したせいで二人は連れ去られた…
戦う力は確かにあった…でも、俺は無力だった…
でも、だからこそ、俺は行かなくちゃいけないんだ…二人を助けるために…。
細かい理由なんかいらない、ただそれだけで十分だ…。
俺はそのまま部屋を出ようと、足を前に出す。
「お待ちになって」
とたんにベールさんが俺を止める。
やっぱり、ただでは行かせてくれないわけね…いざとなったら力づくでも…
「お優しい方ですのね、宗谷さんは……」
その言葉を聞いた時、俺は反射的にベールさんと目を合わせた。
その時の彼女の顔は柔和な笑みを浮かべ、さっき怒鳴られたばかりの表情とは思えなかった。
「私、今日はあなたがどんな人なのか観察していましたの…… 異世界から迷い込んだ人だと言うのに、特に困ったような様子もなく…すぐにネプテューヌと打ち解け、あのノワールともあんなに仲睦まじくなったのですから…興味がわいてしまって…」
ベールさんはそう言うと、俺との距離を縮めるかのように一歩前へ出た。
「でも、今のあなたの顔を見て、何となくわかりましたわ……あなた、自分のことよりも他人の事を思う人だと……」
「……あんなことがあったのに何も思わない方が、おかしいでしょ…」
「それでも…あそこまで必死になる方はなかなかいないと思いますわ。 女神を怒鳴り飛ばすほど、必死になるお方は…」
俺はそれを聞いて一瞬だけ、うっ、と声を上げてしまった。
よくよく考えると、やつあたりもいいとこだよな……反省しないと……
「お優しい方は今までたくさん見たことはありますわ……ですが、なぜでしょうね…」
俺が俯いていると、いつの間にここまで近づいていたのか、ベールさんが俺の目の前にまで近づいてきた。 驚いて後ろにうまく下がることもできず、そして、まだ麻痺の余韻があったのかまた足をもつれさせてしまった。
転ぶ…、そう思った…
思ったはずなのに…
「わっ…」
俺の体はベールさんによって引き寄せられ、俺の体はそのままベールさんの体にまた密着した。
さっきのような凭れかかるのではなく、抱きしめられるような形で…
俺はパニックのあまり、言葉も出ずなんとかしようにも何をしたらいいのか分からないままわたわたしていると、ベールさんが耳元で何かをささやいた…
「あなただけは……なぜか、放っておけない気がしますの……」
「え…」
ベールさんはそう言って、尚もやさしく、壊れやすいものを扱うかのように両手でやさしく俺を包み込んでくれた。
鼻腔に流れ込んでくる、花の様な、甘く、それでいて爽やかな香り…、布団に包まれているかのように柔らかい彼女の体に、なぜか俺は慌てることを忘れ、妙に落ち着いていた…。
「初めてですわ……こんなに人を心配するなんて……」
「何で…そんなに……」
「分かりませんわ……分かりませんの……ただ……」
ベールさんはそう言って、じっと俺のことを見つめる。
その目を、俺は…どこかで見た気がした……俺の大好きな記憶のどこかで…
「今は、あなたが無理をする姿を見たくありませんの……宗谷さん」
ああ、そうか…思い出した…
俺が小さいころ、施設にいた姉ちゃんの中に……こんな風にやさしく、泣いていた俺を慰めてくれた人が居たっけ……
覚えてる…
あの時は、俺と同い年の奴が街でも有名ないじめっ子にいじめられたから、俺がやり返しに行ったんだっけ…
一体三、きつかったな…痛い目何度見たことか…
でも、いじめたあいつらが許せなくて、親が居ないことをバカにしたあいつらを見返したくて、俺は必死にあいつらに飛びかかったんだよな……
しばらくして、話を聞いた施設にいる同世代の他のみんなも協力に来てくれて、なんとかその場は俺達の勝利に持ち込んで、その場はなんとか収まった。
高校に上がった時、何年振りかにそいつらに会った時は、その昔話をネタに笑いあって、いつの間にか友達になってたんだよな、最初はそのいじめっ子って気付かなかったけど…話してみれば根はいいやつで、昔は悪ぶっているのがかっこいいと思ってるタチだったそいつは、俺と彼女いない同盟を結び、三年間を共にしたものだ…
でも、実は、あの日の喧嘩のあとになって自覚したんだけど、ほんとは初めての喧嘩で…めちゃくちゃ怖かったんだよな…・
それを知ってた年上の姉ちゃんが、喧嘩した俺と、後に来て協力してくれたみんなを叱って、俺だけ残されて…
まだ、俺だけ怒られるのかなって思ったんだけど……その姉ちゃんはこう言ったんだっけ…
―――大丈夫だった? 痛くない? って……
傷口を触られて痛かったわけじゃない、俺はその時、安心しきって……泣いたんだよな。
その姉ちゃんは俺が泣きやむまでずっと、やさしく…俺のことを抱きしめてくれてた…
そう、今と、同じように……
「……ぅ…ぐっ……ぐずっ……」
ああ…駄目だ…
やっぱり、俺は怖がってたんだ……
あの時みた、あいつの目を…心のどこかで、怖がっていたんだ…そう言うことにしておこう…
そうでないと、悔しさとか悲しさでもなくこんな安心した気持ちで涙なんか……出るはずないもんな……。
「……やっぱり、無理をしていたではありませんか……しょうがない人ですね」
ベールさんはそう言うと、その場に俺と一緒に座り込み俺の背中に手を回し、その手を更に上へと上げて、俺の後頭部をやさしく撫でてくれた。
「もう、大丈夫ですわ……大丈夫ですから……ね?」
ただ、そう言われただけ……それだけなのに……なにも解決したわけじゃないのに…俺はその瞬間、まだ決壊寸前に収まっていた何かが、崩壊したのを感じた。
目からは涙が止まることなくあふれ…、喉からは声にならない声を出し…、己の体にあった恐怖心や不安感をすべてベールさんに向けて出してしまった……
あの時と同じように……
「すみません、お見苦しいものを…」
「いえいえ、御気になさらずに」
ひとしきり泣いて、今は落ち着き、何枚目かのティッシュで鼻をかんだ後。 俺はひとまずベールさんに頭を下げた。 それに対して、ベールさんは何事もなかったかのように笑顔で返してくれた。
不思議なもんだな、なぜかああいう泣き方をして、妙にすっきりした…誰かに気持ちを共感してもらうってこう言うことなのかな?
「……また、泣きたくなったら私のとこに来てもいいのですよ?」
ベールさんがそう言って俺の頭を再び撫でてくる。
いたずらっ子のような笑顔を浮かべて、そう言われたので妙に恥ずかしくなり、俺はその手を払いのける。
「そ、そんなに頻繁に泣いたりしませんよ! 子供じゃないんだし…」
「あら、でも私から見たらまだまだあなたは子供っぽいですわよ?」
そう言われて俺はなぜかいい返す言葉が見つからず、そっぽを向いてしまった。
「うふふっ♪…やっぱり、可愛いですわ、“宗谷”?」
え?
今、ベールさん…俺のこと宗谷って呼び捨てに……
俺が突っ込む暇もなく、ベールさんは俺の手を引き、立ち上がらせるとドアの方へと誘導する。
「さあ、もう、毒も完全に抜けたでしょう? みんなのとこに行きましょう」
「あ、ああ……」
俺はされるがまま、ベールさんに手を引かれていく。
なんというか、このままだとやられっぱなしで男としてどうも……
よし、ここは…俺もお礼を兼ねて、反撃してやろう…
「……ありがと……ベール……」
呼び捨てで返してやったはいいが…いいよな? さっき俺も呼び捨てで呼ばれたし…
しばし、ベールが俺の方を見てきょとんとした眼をしていたが…ややあって頬をほんの少し赤くして笑顔になった。
「どういたしまして、ですわ♪」
妙にうれしそうにしてたから…失礼にはならなかったようだ…。
ベールさんに連れられて、中庭に到着。
すぐさま、ネプテューヌとネプギアが俺を見て駆け寄ってきた。
「ソウヤ! 良かった~、起きたんだ!」
「目が覚めないから、心配したんです…無事で何よりです!」
二人は安心感からかほっと胸をなでおろしたように、一瞬肩の力が緩んだのが分かった。
それはいいけど…さっき泣いたばっかだからな…大丈夫かな、目腫れてないかな?
……何も言われないから大丈夫と受け取っておこう。
テーブルの方ではノワールとユニちゃんも安心したかのような頬笑みを見せてる。
多少なりとも、心配かけてしまってたんだな…
「ごめんな、もう大丈夫だからさ…」
俺はそう言って、ネプテューヌとネプギアを交互に見やり、ノワールとユニちゃんにも手を振って大丈夫だと言うことをアピールする。
そう言えば…気になったんだが…
「ブランさんは?」
俺がそう聞くと、みんなの表情が沈んだのが分かった…
どうやら、こっちはこっちで深刻みたいだな…
みんなに聞いたところ、ブランさんに一度会おうとした時、既にブランさんは2人が誘拐されたことを知っているようだったという。 しかし、なぜかブランはみんなとの謁見を拒否、それどころか帰れと言ったらしい…
……いくらなんでも、そこまで言う必要はないんじゃないかな……
たぶん、いろいろ考えることがありすぎて整理がついていないのかもな、自分自身の…
…でも、ダメだ、それじゃ…
一人で考えてるだけじゃ何も変わらないよ、ブランさん…
「まったく、ブランにも困ったものだわ…こんなときに意地張ってどうすんのよ…」
「素直じゃないのは、ツンデレノワールの専売特許なのにね~?」
ネプテューヌの言葉を聞いてノワールがネプテューヌを睨むが、俺が間に入ってまあまあ、と言ってその場は取りつくろう。
「でも、ブランさん……責任感じてるのかもな……」
「責任? どういうこと?」
俺がなんとなく言った言葉にノワールが首をかしげて聞いてくる。
「自分の妹や弟が、危険な目にあってるかも…そう思ったら、誰でも……自分がなんとかしなきゃって思うはずだ……ブランさん、今回の事件…自分に負い目を感じているのかもな……」
俺がそう言うと、ノワールはユニちゃんを、ネプテューヌはネプギアを見つめた。
しばらくすると、二人とも共感してくれたのか、こくりと頷いた。
二人も同じ心境に至ったようだ。
俺は一瞬、ブランさんの事を思い、彼女のいる部屋の方を見る。 あの部屋は確かガラス越しに見えるんだっけ? もしかしたら…ここから見えるかも…
俺が視線を彼女の部屋の方に動かした時、ガラス越しに…ブランさんの後ろ姿と……みたこともないピンクのゴスロリ衣装に身を包んだ気の強そうな女性がマイク片手にブランさんに何か聞いている姿をみた。
その女性の後ろには……テレビカメラと音声マイク……
「ブランさん!!」
「あ、ちょっと宗谷!?」
俺は考えるよりも早く、先に体が動いていた…
一気に足を忙しく動かし、走ってブランさんのいる部屋の方へと向かう。
ブランのいる執務室。
ここに訪れてきたのは、“アブネスチャンネル”なる報道関係のキャスター、“アブネス”とそれを生で放送するために同行したカメラマンと音声を任された胡散臭い着ぐるみを身にまとった二人組だった。
一体どこから情報が漏れたのか、彼女たちはいち早くそれを察知、攫われた二人の姉であり、女神のブランに突撃でインタビューを仕掛けてきたというわけだ。
「つまり、ロムちゃんとラムちゃんが誘拐されたのは、あなたの責任って事ですね? ブランちゃん」
「っ…それは……」
アブネスの言葉にブランはそれ以上何も言うことができず、押し黙ってしまう。
その表情は苦悶、いや、悲愴という表現があっているだろうか…暗く、すぐにでも壊れてしまいそうな儚ささえ感じさせる。
この時のブランの心中は、怒りか、それとも、悲しみか、悔しさか…いや、むしろそれらすべてをひっくるめていたのかもしれない。
妹たちが何者かに誘拐されただけでなく、ルウィーの国中に生放送でこのようなことを大々的に放送されてしまった…
―――すべて、自分が不甲斐ないばかりに…
尚も俯くブラン、それを見たアブネスはカメラに目線を送り、尚も放送を続ける。
「見てください! 幼女女神は何の釈明もできません! やっぱり、幼女に女神は無理なんです!」
その言葉が再び、ブランの心を深々と抉る。
(…こいつの言うとおりだ…自分のことばかりで妹たちを助けることもできず、国民には何の釈明も言えない…)
女神としてのプライド、ブラン個人としての苦しみ…それがさらに彼女を追いこんでいく。
ブラン自身、このルウィーを建てた時から、今まで絶え間ない苦労と努力を積み重ねてきたつもりだった。 それは妹が生まれても同じ、女神としてこの国を、ルウィーをよりよい国にしていくために、今まで頑張ってきたのだ。
国も妹たちも大事だ…。
でも、こんなことになって、国民は自分を自分の妹も守ることもできないダメな女神と思っているだろう…
こんな簡単に、自分の頑張りも何もかもが壊れて行く…
今まで、自分のしてきたことは…すべて無駄な努力だったのか…
彼女の目じりに徐々に出したくない液体が、涙が溜まっていく。
「幼女は楽しく遊ぶべき! 幼女に仕事は絶対無理! アブネスチャンネルは幼女女神に断固反たっ」
「はいはい、ちょっとすみませんね~」
アブネスの声が途中で切れ、それに続くように聞き覚えのある男の声が聞こえた。
とっさにブランは顔を上げ、その声の主の顔をみる。
そこには、今日ここに来て、今はどこかで休んでたはずの見覚えのある黒髪の青年が居た…。
「天条……宗…谷!?」
宗谷はアブネスの服の襟をむんず、と掴み、もう片方の手でカメラマンの襟を握る。
そのまま、ずるずると引きずるようにして廊下へと通ずるドアへと歩き始めた。
「ちょっと! 何するのよ、まだ放送の途中でしょ! 聞いてるのあんた!!」
「……」
わーわーと騒ぐアブネスを完全にスルーし、宗谷は歩を止めることなくドアまで二人を引きずりながら歩く。 二人を追いかけて残された音声スタッフも慌ててついて行く。
そして、宗谷が部屋を出る時、ブランの方を振り返り何やら口を動かした。
声は聞こえなかったので、口パクで何か伝えているのだろう。
目じりにたまり始めた涙をぬぐい、ブランは目を凝らして彼の口元を見る。
『大丈夫』
ブランには、確かに、そのように彼の口が動いた気がした…。
ずるずると二人を引きずりながら、宗谷は最終的に教会の玄関まで到達すると、外にまで出てそこで二人を外の雪が覆う地面に向かって投げた。
雪がクッションになったようで、二人とも特にけがはないようだ。 アブネスがすぐに立ち上がり、彼に対して文句を言おうとマイクを振り上げる。
「ちょっと何!? 急に出てきて邪魔者扱い? 何も言えないからって記者を外に放り出すなんて…」
その先をアブネスが言より先に、宗谷はあの場で足を揃えジャケットのしわを伸ばし、体の横に腕を添え、その場で勢いよく頭を下げた。
突然の彼の行動にアブネスはきょとんと、目が点になってしまった。
約3秒ほどの静寂…
そして、宗谷がすっと頭を上げ、自分に向けられているカメラのメンズに目を向けた。
「ルウィー国民の皆さん…私は、今回の、ロム様、ラム様誘拐事件の際、二人のそばにいた者です」
いたって真剣、今まで彼がここまでの真剣な表情を見せたことがあったかわからないほどの真面目な目とはきはきとした声で話し始めた宗谷。
「私は、二人が攫われた瞬間をこの目で見ました…しかし、何もすることができませんでした……今回、二人が誘拐されたのは私の責任と言っても過言ではありません」
彼がそこまで言った時、彼の後ろに彼の後を追いかけてやってきたネプテューヌ達がやって来た。 ブランの姿は見られない…
それでも、宗谷は話を止めるつもりはない。 目線をそらさず、真っすぐにカメラのメンズと向き合っている。
「ですが、私は…いえ、我々はブラン様、そして、プラネテューヌ、ラステイション、リーンボックス、四カ国の持てる限り、力の限りを尽くし、我々は二人の捜索を行い、必ずやお二人を救出します。 そして、皆さん…どうかブランさんが、お二人の事を心配しているということ……そして、この国を今まで支え、発展させる為に絶え間ない努力をしてきたということを…忘れないで下さい…本日は誠に、ご迷惑をおかけいたしました」
宗谷は最後、もう一度深々と頭を下げ、今度はさらに長くお辞儀をして見せた。
その姿を見た誰もが、言葉を失い、何も言えないでいた…
彼を撮影していたカメラマンと音声は、つい、終わったのかと、機材の電源を落とした。
それを確認した瞬間、宗谷はアブネスに詰め寄る、その表情はさっきとは打って変わったふてぶてしい笑みを浮かべている。
「と、言うわけだ…これでインタビューはおしまいだ」
「なっ…」
そこで我に返ったアブネスは再び宗谷に食って掛かる。
「よ、要するに今回の事件、あなたが原因ってことじゃない! だったら、今のだけじゃ足りないわ!洗いざらいすべてここであんたのこと全国ネットで放送してやるわ!」
そこまで言った時、宗谷は身を百八十度回転させ教会の中に入ろうとしていた、慌ててアブネスが宗谷を追いかける。
「ちょっと! 今度は逃げる気!? 待ちなさいよ、私に恥をかかせた分も含めてここで土下座なりなんなりして…」
そこまで言った時、アブネスの目にさっきとは全く違う物が映った。
それはさっきまでふてぶてしい笑顔を浮かべていた宗谷の目…
さっきの妙に人をいらつかせる目とは違い、今の彼の眼はまるで自分を射殺さんばかりの殺気を放っていたからだ…。
そして、彼女にだけ、聞こえるくらいの声量で……
「……同じことを言わせるな………消えろ………」
「ひっ……」
それに気押されたアブネスはその場に怯えた顔で身を震わせ、座り込んでしまった。
カメラマンと音声スタッフも機材をつけることも忘れ、その場から慌てて一目散に逃げて行った。
それを見た宗谷はそのまま教会の中に入り、扉を閉める。 我に返ったアブネスが二人のスタッフを追いかけてその場を一目散に逃げたのはそれから数分後の出来事だったという。
「あ~…緊張した…」
俺はその場で体を伸ばして、大きくため息を吐く。
いや~、まさか十八歳にして記者会見を開くとは思わなかった…史上最年少じゃね? これ
俺はそんなことを考えつつ、みんなの元へ戻ると、みんな俺を見て驚いたような意外そうなと言うか、そんな風に言いたげな顔で俺を見ていた。
「宗谷、あんた…」
「今の会見だと……国民はおそらく、全部宗谷が悪いと言う風に受け取ってしまいますわよ?」
ノワールとベールがそう言うが、俺はふーんと言って二人の横を通り過ぎる。
「別に、それでいいんじゃない?」
「でも、それじゃあなた!」
ノワールがそう言って俺の肩を強引に掴むが、俺はその手に右手を添えて、ゆっくりと彼女の方に振り返る。
「さっき言っただろ? 必ず救い出すって……それが出来たら、他はどうでもいいよ」
俺はそう言って、ノワールの手をやさしく離すとその場にいたみんなが驚きのあまりその場できょとんとしてしまった。
さすがに無理があるか?
俺は一瞬苦笑いを浮かべるが…・
「…ぷっ! あはははははははは!!」
ネプテューヌが急に笑い出した、逆に俺はこの反応は予想していなかったのでついハッ、となってネプテューヌの方を見てしまった。
そして、彼女はしばらく笑った後、俺の方に駆け寄り、急に飛びついて来た。
「ちょっ!? 何すんだよ!」
「いやぁ~、ソウヤってばやっぱりソウヤだよ! 自分のやりたいこと以外周りはどうでもよくなるって言うかさ! 自分勝手だよ! いい意味で自分勝手!」
「意味分からん! とりあえず離せ!」
俺が飛びついて来たネプテューヌを引き離そうとしていると、他のみんなもなぜか頬が緩み、笑顔になっていったのが見えた。
まあ、これで少なくともみんなのさっきまでの沈んだ雰囲気は緩んだみたいだな…。
「そうね、あんたがそう言っちゃったんだし、しょうがないから付き合ってあげるわ」
「ええ、あんなに真剣な姿を見せられたら逆に断りにくいですわ」
他のみんなもどうやら賛同してくれるようだ。
まあ、最初っからそのつもりなんだろうけどな。
「……あなた、なんで……」
すると、そこにブランさんがやってきた。
まだ少し驚いた感じが残っている表情をしているな、突然すぎたから仕方ないか…
ブランさんがゆっくりと俺の方に足を進めてくる。
俺はネプテューヌを強引に引き離し、ブランさんと対面する形で向き合った。
「…さっきのは俺が勝手に判断して、勝手に宣言させてもらいました」
「……だからって、何であなたがすべて背負おうとしているの……」
ブランさんはそう言うと、一瞬、俺を見る目が鋭くなった。
でも、俺はそこで引くつもりはない、素直に思った心の内をブランさんにぶつける。
「俺は……悪いのは全部ブランさんだとは思っていません、あの時何もできなかった俺も、ネプギアもユニちゃんも同じように苦しい思いをしています」
俺がそう言うと、ネプギアとユニちゃんもそれに同意するように縦に首を振る。
「だから、ブランさん一人で抱え込まないでください、ここにいる俺達は全員……あなたの味方です」
「……余計なお世話なんだよ……」
「いや、世話は焼きますよ、俺そう言うのに慣れてるんで」
ピシャリと言い放つとブランさんははっとしたようにさっきまで俯いていた顔を上げた。
「さっきの会見で、俺はただあったことをそのまま話しただけです、だから俺が何を言われようとどうだろうと俺は知ったこっちゃありませんし、痛くもかゆくもありません……」
俺は反射的に、彼女の頭に手を乗せる。
後で怒られるかもしれないが、覚悟の上だ…
俺は彼女の目をじっと見つめる…。
「でも、さっき国民の前で堂々と言ったんで……二人は必ず助ける、みんなで」
ブランさんはしばらく俺のことをじっと見つめていた。
俺もじっと彼女の瞳を見つめ、出来るだけやさしげな笑顔を浮かべる。
「だから、一人で背負いこむな……ブラン……俺達が、付いてるから」
「……っ」
その時、ブランさんの目じりから一筋の涙が流れた、そして……
「っ!」
彼女の体が糸の切れた人形の如く崩れ落ち、俺は慌てて彼女の体を支える。
急にどうしたんだ…
「もしかして、さっきの会見でシェアが下がったから?」
「いいえ、たぶん違うと思うわ…いくらなんでも影響でるのが早すぎよ」
ユニちゃんが恐る恐る口にするが、俺もノワールと一緒で、どうもそうは思えない。 さっきの会見で出来る限り国民の意識は俺に向くように話したつもりだ、万が一にもそれで多少ブランのシェアが下降したにしても、これは急すぎるし、影響が早すぎる…
俺は彼女の体を楽な姿勢にさせるために仰向けにし、やさしく抱き上げる。
「……理由は何にせよ、今はブランをどこか休める場所に運ぼう」
「そうですわね……とりあえず、彼女のベッドに……ああ、それと皆さん」
俺がブランを抱き抱えていた状態からおんぶの状態にし、立ち上がった時ベールが何かを思い出したようにみんなを呼びとめた。
その目には何かを決心したかのような強い意志が宿っている…。
そして、この時…
俺達に光明が差した…。
ブランを自室のベッドに寝かせた俺はみんながいるブランの執務室へとすぐに駆け込んだ。
そこではベールがデスクの上にあるキーボードを操作し、モニターに表示された何かのプログラムを急いで起動させている最中だった。
これが、俺達がロムちゃんとラムちゃんを見つけるための光明だ…。
「私、実はブランとは今日ある計画を進めるために会談していましたの」
彼女はそう言うと、モニターに表示された何かのプログラムにパスワードを打ち込み起動させる。
「皆さんは、ルウィーで人工衛星を使ったサービスが行われていたのは知っていますわよね?」
「えっと…確か、“お寺ビュー”だっけ?」
「10年前に終わったってやつよね?」
またずいぶんと偏ったネーミングのサービスに感じるが…
とにかく、ビューって言葉が付いているということは、何かを見るサービスなのかな?
…人工衛星でお寺を見るって言うイメージしかわかないんだけど…
しかし、俺のそんな思考とは裏腹に、みんなはすっごい真面目な顔でモニターを見つめる。
「実は、あの人工衛星はまだ起動中でアクセスすれば地上写真のデータを送ることが可能なのですわ……低解像度なのが難点ですけど」
そう言うと、モニターにこのルウィー教会を真上から見たと思われる画像が表示された。
おお、なんか俺の世界でもこんなの見たことあるな…
しかし、画像はベールの言うとおり画質が粗くあまり鮮明には見えない…
「ですが、その画像を解析しより精密な高解像度にするソフトウェアをリーンボックスが開発しましたの」
そう言ってベールがキーボードを操作すると、画質の荒かった画像が一瞬で高画質にグレードアップ、まるでHD画質だ。
俺がつい、おお、と声を上げてしまうと、ベールは俺を見てにこっと笑った。
「さっすが、ベールのとこは進んでるね~」
ネプテューヌも絶賛するが、このソフトウェアを使って二人は何をしようとしていたのかが気になるな…。
ここまで鮮明だと、用途がかなりありそうだが…
「そこで、私はブランにある提案をしましたの…ルウィーが写真データを送っていただければ、我が国はこのソフトを提供する、と…」
「! それって…」
ノワールが何かに気づいたようだ。
いや、今ので俺も大方わかったけどな…
「そうなれば、二人の国は世界の情報を余すことなく目で知ることができる…どこの国に何の工場があるだとか…どこで、なにが建設されているだとか……覗き放題だな」
「え~! それ私たち見られすぎて困るじゃん!」
覗き放題って言葉は男性的にやけに魅力的な言葉だけど…真面目に考えると、かなり不利になるソフトだよな、これ…
要はダンジョンの攻略のためのマップを好きな時に好きなだけ向こうが見れるのに対し、持っていない俺達が見れないっていう感じだな…。
あまり、喜べるような内容ではないが、ベールの次の言葉で俺はその不安が一気に解消された。
「いいえ、私たち…そのデータをみんなで共有しようと考えていましたのよ? ブランが言い出したのがきっかけで」
「「「「「え?」」」」」
つい、俺も声に出してしまったが…余計な心配だったようだな、こりゃ…。
そりゃあ、向こうに有利になるものがある分、警戒するのは当然だけど、今さら疑りをかける人たちじゃないしな……
短い時間の中で、ベールがどれだけ他人を思っているのか、十分わかったし…
「友好条約を結んだんだから、みんなで等しく、利用するべきだと…」
ブランも、意地を張ってるとこはあるけど…根はみんなのことを考えてたんだな。
ここにいるみんな、支え合ってる…
一見不安を感じさせる組み合わせだけど、しっかりとした信頼と絆で結ばれてる。
いいな、こう言うの…燃えるな。
「だから、公開する機会を窺っていたのですわ…サプライズプレゼントみたいで、洒落てるでしょ?」
「…サプライズって言うより、今の俺達にとってはジョーカーみたいなもんだけどな?」
「うふふ…そうですわね」
ベールはそう言うと、モニターを一瞥する。
どうやら、このシステムを応用してロムちゃんとラムちゃんの女神としての証、シェアエナジーを元に位置を割り出しているんだろうな。
このソフト、この事件が終わったらベールに頼んでブイホにインストールしようかな…
何かに使えるかもしれない。
そうこうしているうちに解析が完了し、モニターから電子音が鳴った。
そして、画像に映し出されてた場所は…
「あら?……ここは…」
「……木を隠すなら森の中…テーマパークで誘拐して、隠れるならここってわけか……」
そこは、俺達が事件にあった、テーマパークの建設中のアトラクションを示していた。
俺達は特定できた奴らの隠れ場所、建設中のテーマパークのアトラクションにすぐさま駆けつけた。
まさか、こんなとこに隠れているとは予想もしていなかったが…
それ以上に、ここに来て早速俺とネプテューヌがやる気満々で殴りこもうとした時にベールが言ったことも予想外だったな…
俺とネプテューヌを止めて、開口一番、言った言葉が…“人質交換”だもんな…。
確かに、それはそれで安全策だけど、それであのロリコンモンスターがやすやす受け入れるとは考えにくいんだよな。
小さい子と巨乳のお姉さんじゃ、全くの間逆だからな…。
で、俺とネプテューヌとネプギアは、現在テーマパークの裏口の警備をしている。
不本意だけど、俺達が全員で乗り込んで奴に逃げられでもしたら作戦が水の泡だからな…
「さあ、どっからでもかかってこい誘拐犯! ふるねっぷにしてやんよ~!」
ネプテューヌがやる気満々で日本刀を素振りしているけど…もう少し、静かにしていようぜ? 気付かれたらどうすんだよ…
俺は二人の後ろに立ち、あたりを警戒して周りを確認する…
「…?」
その時、俺の左側…離れたところに誰かの影が見えた…
あれは……
あの時の黒ローブ!
「野郎!!」
「あ、宗谷さん!?」
ネプギアの制止も聞かず、俺は黒ローブを追いかけて走り出した。
奴も当然、それに気付いてすぐに逃げ出すが、今回は逃がすつもりはない!
俺はすぐにブイホを取り出し、変身アプリをタッチする。
「リンク・オン!!」
叫び、両手両足、胸と頭にアーマーを装着、そのまま上がった瞬発力を最大限に生かして奴を追いかける。
建設中のアトラクションを外から回り込むように俺は黒ローブを追いかける。
あいつも、もしかしたら奴らの仲間かもしれない。
あの時俺の前に現れたのは、俺の注意を二人から離す作戦だったかもしれないからな…
とにかく、あいつには知ってることを話してもらわないと気が済まない!
俺はスピードをさらに上げ、奴を追いかける。
昼間の時は追いかけるのに精いっぱいだったが、今の俺はそう簡単に振りきれないぜ!
しかし…
急に黒ローブが足を止め、俺の方を振り替えった。
周りはフェンスで囲まれ、逃げ道はもうないはず…観念したのか?
「…お前、何者だ…なんであの時俺の前に現れた?」
「……」
俺が黒ローブに問いかけても、そいつは黙ったままだ。
俺は徐々に苛立ちを感じ、今よりもさらに張り上げた声で奴に問いかけた。
「答えろ!!」
しばしの沈黙…
しかし、それを破るように、奴は行動を起こした。
右手でローブのフードをぎゅっと握り、その場でバサッと、脱ぎ捨てたのだ…。
小柄だったその体をローブがうまい具合に目隠ししてすぐには正体を見ることはできない…。
―――キィイン!
「っ!?」
その時、俺のベルトが急に光だし、反応し始めたのだ。
この現象が起こるのは…ヒーローメモリーを探知した時だけ……
……まさか……
あいつは……
俺が視線を再び奴に戻す…。
その頃には、ローブが地面に広がり、その姿があらわになっていた。
俺はその瞬間、いつもの如く、言葉を失った…。
小柄な体を包む、青いつなぎと赤いシャツ、両手には白い手袋をし、両足には茶色の靴。
そして何より…あの、特徴的なひげと特徴的なMが刻み込まれた“真っ赤な帽子”…。
彼はその場で帽子のつばをピンと弾くと、その場でくるりとターンし、帽子を深くかぶりなおした。
『It`s me Mario!』
そう、俺の目の前に現れた…あの黒ローブの正体は…
俺の世界でゲームと言ったら彼の名前は必ず出てくるであろう、あの有名な配管工…
『マリオ』だった…。
この日、俺はみんなの絆を知り……とんでもない奴に出会いました。
いかがでしたか?
次回、ロムとラムの救出を前に、マリオと出合った宗谷は…
次回でお会いしましょう!
それでは…