超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、ご無沙汰しています。

最近、伏見つかさ先生の『エロマンガ先生』にハマってる、白宇宙です。
紗霧ちゃんがかわいすぎる…。

さあ、インフルエンザが流行っておる中、マスクが手放せなくなりましたね。
健康に気を使って書きました。
それではどうぞ、お楽しみください


stage,19 俺、探します

 

あたりが騒がしく、ごく一般的な人々に加え、老人や子供の声があたりに響き渡る中、ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフの四人は診察室と書かれた部屋の前に設けられたベンチの上に座り、ある知らせを待っていた。

 

ここは、プラネテューヌでも一番医療機器や技術が集まっている病院だ。

彼女たちが今ここにいる理由、それはただ一つ。

イストワールが倒れた事だ。

 

倒れてからというもの、容体が良くなる気配は見られず、急いで病院に駆け込み。 緊急でイストワールをこの病院で診てもらっているというわけだ。

幸い、今病院にはコンパが以前世話になったという腕利きの医者がいて、なんとかその医者に頼んでみたところ、すぐさまOKを貰った。

 

やはり、こういう病気関連の事は本職である医者に頼むのが心強い、コンパも医療に関連する看護師ではあるものの、それでも限界はある。

ほんの少しの安堵と、先程までのイストワールの状態を見ての不安感、その両方が心中を駆け巡る中、アイエフはじっとベンチの上で座ったまま結果が出るのを待っていた。

少しでも、いい結果が出るように願いながら…。

 

「いーすん……大丈夫かな……やっぱり、私がいーすんにいろいろ面倒かけちゃったからからかな?」

 

「……落ち着きなさいよ、ネプ子」

 

隣でそわそわしたままの旧知の友を諭しながら、自分も今日何度目か、持ち前のスマホの画面を見て時間を確認する。

既に一時間近くが経とうとしている。

さすがに長すぎる、アイエフはスマホをポケットに押し込んで再びじっと目の前の部屋を見る。

 

「…きっと、大丈夫です! 先生はすごい人ですから、きっと大丈夫ですよ!」

 

ネプテューヌの肩にやさしく手を乗せて言い聞かせるコンパ。

幼馴染の彼女の言葉を聞いて、少しだが肩の力を和らげたアイエフ。

 

(…そうよね、第一、あのイストワール様に限って大きな病気にかかるはずないわよね)

 

いつも元気に仕事をこなす彼女の姿を思い浮かべて、不安がってた気持ちを自分で励まし、そうである事を願う。

アイエフの願いが届いたのか、部屋のドアが開き、中から白衣に身を包んだ女性が出てきた。 紛れもない、イストワールの診察を請け負ってくれた医者だ。

 

「先生、イストワール様は……」

 

開口一番、アイエフが急かすように問うたが……

 

返ってきた言葉は、アイエフの心にさらに影を落とすには十分すぎるものだった。

 

「………やるだけやったんだけどね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急いでくれブラン、嫌な予感がするんだ!」

 

「分かってるって言ってんだろ、これでも急いでるんだよ!」

 

今俺は女神化したブランに両腕を持ってもらって空をブランと一緒に飛行中。

目的地はプラネテューヌだ。

理由は至極簡単、プラネテューヌ教会の方でいーすんが倒れたと言う一報を受けたからだ。

 

一体、いーすんに何があったのか…気になることではあるが、今は何よりいーすんの容体が心配だ。

 

だから俺はブランに頼み、今現在は彼女を急かしてプラネテューヌに運んでもらっている。

ブランも一生懸命なのは分かるけど欲を言うと更にスピードを上げてほしい。

今すぐにでも、プラネテューヌに到着するくらいに……。

 

日もだいぶ傾いてきたな…。

 

いーすん、大丈夫かな…。

 

 

「……それにしても、妙だな……」

 

 

ブランが不意にそう呟いた。

何が妙なのだろうか、俺の頭に疑問符が浮かんだ。

 

「何が妙なんだ?」

 

「…前に聞いたんだが、イストワールは大昔の女神がゲイムギョウ界の歴史を記録し、後の女神の教育係としての役割を受けて造られた、人工生命体らしいぜ?」

 

「人口生命体?」

 

ブランが今言った事は初耳だ、確かに今までいーすんと同じような姿をした人間をゲイムギョウ界では見たことがなかった…。

だから、いーすんがどうやって生まれたのか気になってはいたが…まさか、女神の手で造られたなんて…。

 

「だからかは知らねぇけど、イストワールが今の今まで病気にかかることも、ぶっ倒れるなんて事もなかったんだ…」

 

「…確かに、それは俺も思ってた…いーすんが疲れてるような姿見たことないし…」

 

でも、だからこそ不安が拭いきれないんだよな…。

そんないーすんが何で倒れたのか…なんでこんなことになったのか…。

 

嫌な予感が尽きることはなかった。

いつの間にやら、プラネテューヌが近づいてきた、ブランはさっきよりも若干スピードを速めて教会へと向かってくれた。

 

 

 

 

教会のベランダに着いた俺はブランに早口でお礼を言って急いで教会の中に入った。

廊下を駆け抜けて、目指すのはみんなが居るリビング。

 

目の前に扉が見えてきた、電気が点いているからたぶん中にみんないるはずだ。

俺は跳び込むようにしてリビングの扉を開けて、中に入る。

 

「いーすん!!」

 

名前を呼んであたりを見渡すと、丁度、ネプテューヌがいつもテレビゲームをしている部屋の中央にみんな集まっていた。

みんな一斉に俺の方を向き、それぞれが言い知れぬ不安を感じさせる表情をしているのが真っ先に目についた。

 

「ソウヤ!」

 

「ネプテューヌ、いーすんは…いーすんはどうなったんだ!?」

 

俺がネプテューヌの肩を揺さぶり、問いただす。

すると、彼女はゆっくりと視線を自分の後方、ソファーの上あたりへと移した。

 

そこには、いーすんに合ったサイズの枕と掛け布団が用意され、簡易ベッドになったソファの上でいーすんが苦しそうに息を荒くして寝ていた。

 

俺はすぐさまいーすんに駆け寄り、彼女の様子を見る。

顔は赤く、息も荒い…汗も凄い…。

風邪か何かにしても、ここまでひどいか?

少なくとも、ただ具合が悪いとか、風邪とかのレベルには到底見えないのは確かだ。

 

「…医者には診てもらったのか?」

 

俺はアイエフに視線を向けてそう聞くが、アイエフは不安な表情を浮かべたままだった。

 

 

「診てもらったんだけど………原因は分からないって………」

 

「なんだって…?」

 

 

原因不明って…そんなことあるわけないだろ。

俺は立ち上がり、アイエフに詰め寄った。

 

「どうしてだよ、いくらなんでも原因不明なんてことないだろ!!」

 

アイエフの両肩を掴んで俺は半ば強い口調でそう言うが、アイエフはその手を強引に払った。

 

「普通じゃないのよ、イストワール様の容体は!」

 

俺はそれを聞いて、さっきまでの言い知れぬ嫌な予感が、完全な不安と言う感情に変わるのを感じた。

 

ブランもさっき、いーすんは人工生命体だって言っていた…。

だからって原因が分からないって言うのか? そんな……そんな訳あるかよ……。

 

「……イストワール様に触ってみたらわかるわ……」

 

アイエフがそう言って、いーすんに視線を向けた。

俺も続いて彼女の方に振り返り、ゆっくりと彼女の隣にしゃがみこんでゆっくりと彼女に手を伸ばす。

 

指先が彼女の頬に触れた時、俺は反射的に手を引っ込めてしまった。

 

 

……熱い、しかも人肌とかそんなレベルじゃない、ストーブとかのそれに近い感じだ。

 

 

いくらなんでもこんな高熱、普通じゃない…。

 

 

「どういうことだよ…これ…」

 

「…熱は異様に高い、だけど咳やくしゃみもないし、扁桃腺も異状なし、ってお医者さんが言ってたです…」

 

「……全身検査しても、イストワール様の体のどこにも異状は見られなかった…唯一ある以上は、尋常じゃない高熱ってことだけ……」

 

だから、原因不明…。

 

 

俺はコンパさんとアイエフの2人の説明を聞いて、背中に氷を入れられたような感覚に襲われた。

 

俺は何も言い返せず、その場で押し黙る。

後ろの方でドアがまた開く音がした、たぶんブランが入ってきた音だろう…。

でも、今はブランにいらっしゃいとか言える余裕はない…。

 

俺はいーすんに再び目線を向ける、まだいーすんは苦しそうに息を荒げていた。

 

こんなに、苦しそうなのに…何もできないなんて…

 

そんなの……

 

(そんなこと……あってたまるかよ!!)

 

俺はその場で立ち上がり、身を翻して今入って来たばかりのドアの方へと向かう。 なるべく早足で、すぐに外に出られるように。

 

みんなの横を通り過ぎ、一番後ろにいたブランの横を通り過ぎた所で誰かが俺の肩を掴んだ。

 

「あんたどこに行くつもり?」

 

アイエフだ。 正直それを伝える時間も惜しい所だが…しかたないか…

 

「…どこか、もっと詳しく検査してくれる病院を探す……」

 

「……残念だけど、無駄足よ」

 

「なんでだよ!!」

 

俺は振り向いてアイエフに食って掛かる。

しかし、アイエフは引き下がろうとはせず俺の目をじっと見たまま、言葉を続けた。

 

「プラネテューヌで一番医療機器が充実してる大型病院でイストワール様を全身くまなく診てもらったのよ? それで原因不明、これ以上診てもらっても意味ないわ」

 

「まだ分からないだろ! もしかしたら、もっと腕の立つ医者がどこかにいるかもしれないだろ!!」

 

「これは現実なのよ!!」

 

半ば叫ぶようなアイエフの強い言葉に、俺の方が気押されてしまった。

 

「……経験のある医者に診てもらったの…おそらくプラネテューヌにはこれ以上にないってくらいのね……」

 

プラネテューヌの最高の技術を持つ医者をもってしても、原因は分からなかった…。

看護師であるコンパさん経由で、信頼できる腕利きの医者に頼んだそうだけど、結果はご覧のあり様…。

 

だから、これ以上、別の病院で診てもらっても無駄だと…そう言うことらしい。

 

ドラマや漫画なら、ゴッドハンドと呼ばれるくらいの腕の立つ医者が一人や二人いるだろう。

それこそ、全身継ぎ接ぎだらけのぼったくりの医者やドラゴンの名を持つチームの名外科医とか…。

でも、そんな医者はプラネテューヌにはいない…。

 

俺自身も、あまりそんな医療関係の情報は詳しくないし、そんな人がいるなんて聞いたこともない…。

闇雲に探したところで、結局は時間の無駄なんだ。

 

…医者を探しても、無駄…

 

だったら……

 

 

「なら、薬を探す……熱を下げる薬くらいあるはずだ!」

 

 

俺はそのままさっきよりも更に足早にドアへと足を進めた。

肩を掴んでいたアイエフの制止も振り切り、街へと出るために…

 

 

 

 

 

宗谷が慌ただしく部屋を出て行った後、残されたアイエフ達はただ立ち尽くすしかなかった。

自分たちが出来る事はやった、でも、何も身を結ばなかった…そんな自分の無力さが恨めしい、アイエフは歯噛みしながら俯いていた。

先程部屋を出て行った青年は、あんなに必死だった…。

それなのに、自分はもう何もしようとしない、いや、出来ないのだ…。

 

どうすればいいか、何をすればいいのか、見当もついていないから…。

 

出来る事があるなら、自分も外に飛び出すだろう…。

しかし、それが出来ない…何をすればイストワールの容体が良くなるのかもわからない、今では…

 

簡易ベッドの上では今もイストワールが目を閉じたまま呼吸を荒くして苦しんでいる。

今、彼女に意識はあるのだろうか、とアイエフは考えたが、今の今までこちらの呼びかけにも答えず、さっき宗谷が来たのに何の返答も示さなかった事から、おそらく彼女は今意識もない、あったとしても意識が朦朧としていて状況を判断する余裕がないのだろうと判断した。

 

ふと、イストワールの一番近くにいたネプギアが彼女の額に乗せてあった小さな手拭いを摘まみ上げた。

 

「…もう、温くなってますから、交換してあげようと思って…」

 

「………そうですね」

 

コンパが答えた。

そして、コンパは近場に置いてあった氷水を手に取りネプギアの隣に座った。

 

その様子をただじっと見つめているアイエフ、その隣にネプテューヌが並び立った。

 

「…やれる事をやろうよ、あいちゃん」

 

「……ネプ子」

 

「お医者さんが分からないって言ったからって、正直関係ないんじゃないかな? …今は私達も宗谷みたいに、出来る事をしようよ、ね?」

 

ネプテューヌの言葉にアイエフは拍子抜けした表情を浮かべた。

 

「…まさか、あんたにそんな事を言われるなんて、思ってもみなかったわ」

 

「ねぷ!? 私っていい加減な奴って思われてる!?」

 

「結構思ってる」

 

アイエフがバッサリと言い捨てると、その場にネプテューヌは崩れ落ちそうになるもなんとか踏みとどまった。

アイエフはネプギアとコンパの介抱を受けるイストワールを一瞥する。

 

「でも、少し元気でた…ありがと、ネプ子」

 

隣にいる親友にそう言って、今はいない新しく出来た友にも思いをはせる。

 

「……そうよね、だからって何もしないってのは……人でなしだものね、宗谷」

 

何も分からないなら、少しでも状況が良くなるように努力しよう。 アイエフはそう決心すると、イストワールの元に駆け寄った。

 

そうだ、医者の言う事がすべてではない。 分からないのなら、自分たちで解明していけばいい、それで何か掴めるものもあるかもしれない。

自分は何を弱気になっていたのだろうか…

 

いや、今までなかった事が突然起こったのだ、正直混乱していたのかもしれない。

イストワールは今の今まで、情報を調べるのに大体三日かかるというデメリットはあっても、それを十分に補うほどの力量を持っていた。

 

自分達はそんなイストワールに頼っていた節があった…だからこそ、そんな彼女が倒れた事に対し、どうすればいいか分からなかったのだ。

彼女がこうなった今、この中で一番しっかりしなくてはいけないのはおそらく自分だと、アイエフは自身に言い聞かせ、イストワールのそばに座る。

 

 

 

思えば…最初に諜報活動員の仕事を褒めてもらったのは、イストワールが初めてだったかと振りかえり、その時の思いを再び心の中に浮かび上がらせた。

 

 

 

今の今まで自分達が迷惑をかけ、そして応援してもらった恩の分を、ここでしっかり返せるように今できる最善を尽くそうと、アイエフを始め、その場の全員が動き出していた。

 

そこへ、アイエフの隣に宗谷を運んできたブランも座った。

 

「……私も手伝うわ、人手は多い方がいいでしょ?」

 

「ブラン様…」

 

ブランはふっ、と頬笑みを浮かべると手早くコンパに指示を仰いで何が必要かを聞きだした。

アイエフとネプテューヌもそれに続いて慌ただしく動き始める。

 

今まで自分たちを見守っていた彼女を、イストワールを助けるために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌの外、森型ダンジョンの奥深く…

 

『Skill Link! Sword art online』

 

「邪魔だどけぇぇええええええ!!」

 

俺は喉が裂けんばかりに叫びながら目の前のモンスター、“ヤマイヌ”にスキル ソードアート・オンラインで強化された高速の剣術を叩きこんだ。

すれ違いざまに三体のヤマイヌを切りつけ、光の粒子へと変換させた俺は変身して上昇した脚力に物を言わせて、立ち止まることなく、駆け抜ける。

 

まだ残っていた二体のヤマイヌが俺の前に躍り出て牙をむき、俺に再び飛びかかってくる。

俺はさっきスキルを発動させる為に左手で握っていたブイホを強引にポケットに押し込んで赤剣を両手で握る。

 

「らああああああああああ!!」

 

上段に振り上げた赤剣の刃を真正面から飛び込んできたヤマイヌの鼻先に振り下ろし、両断する。

 

更に後ろのもう一匹の上を飛び越えて、ヤマイヌの後ろに着地するとそのまま勢い良く振り向き、横薙ぎに赤剣を振るって撃退する。

 

 

―――ガサッ

 

 

近くの草むらが揺れ、そこから隠れていたもう一匹が飛び出してきた。

不意打攻撃だったが、俺はもう何度も精神世界でとんでもない奴らのいろんな攻撃にさらされた。 こんな攻撃、今さら驚きはしない。 彼らのビームや剣やら拳やらに比べると、むしろ遅く見えるほどだ。

 

俺は飛び出してきたヤマイヌに左手の裏拳を一発、後方に弾き飛ばす。

 

それ以上の追撃はないことから、恐らく撃退したか、逃げたと判断し、赤剣をベルトの中に戻す。

 

だいぶ反射速度も上がったものだ、前なら反応しきれなかっただろうに…。

 

今までの戦闘経験で、俺はさっきのヤマイヌ達を一人で撃退できた。

前まではネプテューヌ達がいないと苦労していたモンスターを、だ…。

 

 

もしここに、いーすんがいたなら…なんて言うかな…。

 

 

と、こんな呑気に考え事している場合じゃない!

確かこのへんに生えているはずだ…。

 

俺はプラネテューヌで一番大きな薬局に言って、速攻で効く解熱作用の薬はあるかと聞いた、あいにくそれほどすぐに聞く薬もないようで、何より原因不明の高熱となったらどんな薬を処方すればいいのかもわからないとのことだった。

だが、この森で熱を冷ますのに最も効果的なアイテムがあると聞いて、俺はそれを回収するために来たというわけだ。

 

結構レアなアイテムだそうで、名前は“ネツサマシード”という種から生えた薬草、“ネツサマ草”と言うらしい。

聞いたところによると、そのネツサマ草をすり潰した物をタオルか何かに染み込ませておでこに乗せると解熱作用にかなり効果があるらしい。

 

俺はそれを聞いてすぐに薬局を飛び出した。

薬剤師さんが何か言っていた気もするけど、時間が惜しかったから聞いてこなかったが、ばっちり資料となる画像は貰ったし、どんなものかは知っている…。

後は実物を探すだけだ。

 

「待ってろいーすん…必ず見つけるからな…」

 

俺はあたりに目を凝らして手に持ったネツサマ草の画像を見ながらあたりを探し回る。

 

そして、俺の視界に特徴的な青い斑点をした葉っぱの生えた植物が飛び込んできた。

間違いない、あれがネツサマ草だ!

 

俺はすぐにネツサマ草の方へ駆け寄り、引き抜こうと手を伸ばす。

 

 

 

「無駄ですよ」

 

 

 

どこからか聞こえた、澄んだ綺麗な声に…俺は反射的にネツサマ草まであと三歩と言った所でぴたりと動きを止めた。

そして、声が聞こえた方向、ネツサマ草のすぐ後ろにある茂みの方に視線を上げると、そこには見覚えのある白いジャージ姿の女性がいた。

 

「あんたは……白ジャージさん」

 

「分かりやすくて同時に妙に失礼に感じるニックネームをありがとうございます、純情チェリーの少年くん」

 

飄々とした笑顔でちょっぴり棘のある返しをしてくれた、て言うか何で俺がまだ未経験だって事を知ってんだよこの人は……。

白髪美人の白ジャージさんは茂みを割って俺の方に寄って来たので、俺は手を引っ込めてネツサマ草を横目にしつつ、さっき白ジャージさんが何故無駄と言ったのか気になり、彼女に聞いてみた。

 

「……何で無駄なんだ?」

 

それに対し、白ジャージさんは相変わらずのへらへらとした感じの笑みを口元に浮かべて、俺が右手に持っていたネツサマ草の画像を取り上げ、俺が見えるようにそれを広げた。

 

「よく見てください、こっちと本物、どこか違いません?」

 

画像と本物を交互に指差しながら逆に問いを投げかけてきた白ジャージさん、俺はそれに釣られて画像を見た後、実物へと視線を移す。

 

緑の葉っぱに、特徴的な青い斑点模様。

これはどっちも共通している、色合いも、斑点の大きさも大まか一緒だ。

 

だが、一個だけ、ひと目見ただけで決定的に違うと感じる所があった…。

 

 

「………花?」

 

 

そう、花だ。

俺が持っていたネツサマ草の画像の方には、茎から広がる緑に青の斑点付きの葉っぱだけなのに対し、実物の方にはその葉の間から青い一輪の花が咲いている。

 

俺の答えを聞いて、白ジャージさんはにっこりと笑顔を俺に見せた。

 

「ぴんぽ~ん♪ 大・正・解~♪ さて、正解を見つけた少年くんにはとっておきの情報をプレゼント!」

 

俺を左手の人差し指でびしっと指差して言った白ジャージさんに、俺は困惑気味でたじろぎながらも、反射的に聞き逃すまいとする。

そして、その情報とは………。

 

 

 

「ネツサマ草は、“花が咲く前の状態”でないと解熱作用はありません♪」

 

 

 

俺はその時、目の前が一気にブラックアウトしたかのような感覚に襲われた…。

 

唯一見つけた光明なのに、それが一気にかき消され、俺はどう返答していいのか分からなくなった…。

 

「……そんな……」

 

「ガチですよ、マジガチで、ガチムチで………あ、これは違うか」

 

俺の反応なんてお構いなしと言った感じにへらへらとした態度を保ったままの白ジャージさん。

俺はいきなりの事もあったせいか、無意識に彼女のジャージの胸倉を掴んでいた。

 

「……冗談だろ」

 

「残念ながらこれに関してはマジです♪」

 

「………本当はドッキリなんだろ」

 

「いいえ、紛れもない真実です、こればっかりは決して揺るぎません、真実はいつも一つ!」

 

「冗談だと言えよ!!」

 

へらへらとした態度を尚も変えないままの白ジャージさんを、俺は怒鳴りつけながら突き飛ばした。

白ジャージさんはよろけはしたものの、バランスを保ったまま俺と少し距離が離れたところで立ち止まり、俺の方を見ながらジャージのしわを直し始めた。

 

「女性を突き飛ばすなんて、ドメスティックの気がおありですか? 感心しませんねぇ、私粗暴な人より可愛げのある純粋な男性が好みなんです」

 

あんな態度を示しても、自分のスタイルを貫いたままの白ジャージさんはそう言いながら俺をジト目で見た後、近場に生えていた気に身を預け、胸をあえて強調するように腕を組み、また意地の悪いへらへら笑いを浮かべた。

 

―――付き合いきれない…。

 

俺はその場で180度身を翻して、来た道を戻ろうとする。

 

「なんでそんなに必死になってるんですか?」

 

不意に白ジャージさんが今の状況からして俺に対してであろう質問を投げかけてきた。

 

「理由もなしにあんな必死になって解熱作用のある薬草なんて探さないでしょう?」

 

いつの間に動いたのか、俺の目の前に身を出した白ジャージさんがしゃがみこんでわざとらしく上目遣いで俺を見上げた。

 

「今度は私が答えて上げましょうか? 正解は、自分の身近にいる大切な誰かが病に苦しんでいる、と言ったところですかにゃ?」

 

ニヤニヤとした笑みを最後に浮かべて、言われた答えに俺は反射的に目を見開いてしまった。

こっちは何も言っていないのに、今の俺の現状を見抜いたからだ…。

 

「……図星ですね?」

 

俺は言葉を返せなかった…。

そして、もう他に考えもあてもなかったからか…俺は白ジャージさんに、いーすんの今の状態の事を、なるべく纏めて分かりやすいようにして話した。

 

 

すべてを聞いた白ジャージさんはその場で立ち上がり、俺の隣に並んだ。

 

 

「なるほど、つまり…その人は、あなたにとって重要な人なんですね?」

 

「…ああ」

 

「………何故ですか?」

 

再び聞き返された言葉に、俺は反射的に隣の白ジャージさんの方に目線を向けた。

相変わらず横顔には、あの美麗な顔でより小悪魔のように見える飄々とした表情が浮かんでいるのかとも思ったが、そうじゃなかった。

 

いたって真剣な、真面目な眼差しだった。

表情もさっきとは打って変わって、どこかきりっとしている。

 

俺はこの表情に押されてかは知らないが、この問いは無視できないと判断した。

 

 

「………理由なんてない」

 

 

俺の答えを聞いて、白ジャージさんの目が僅かに細くなったのが分かった。

しかし、俺は言葉を止めることなく続ける。

 

 

「………大切な人を助けるのに、理由なんているか?」

 

 

正直、それ以外に答えなんてないと思った。

いーすんはこの世界で初めてお世話になって、そして初めて迷惑をかけて、初めて一緒にいて楽しいという感情を共有した人だ。

大切な人と言ったら、いろいろあるだろう…。

家族、友人、恋人、仲間…。

正直、いーすんがどれに当てはまるかなんて俺には分からない。

 

でも、これだけは言える…。

 

 

「いーすんには元気でいてほしいと思える………だから大切だ」

 

 

これが俺の今必死になる理由だ。

これ以外に、理由なんてない…。

 

 

俺の答えを聞いた白ジャージさんは一度目を閉じると、すぐにまたあの飄々とした笑顔を浮かべた。

 

「そうそう、やっぱそうでないと♪」

 

白ジャージさんはそう言うと、いきなり俺の頭を腕で抱え込み、ヘッドロックを決めた。

急にされたせいで反応しきれずに俺の口の方に腕が回され、口が塞がってしまう。

脇腹に抱え込まれたまま俺の頭をぎゅうぎゅうと絞める白ジャージさん。

 

「やっぱそうでなくちゃ、目を付けた意味がありませんもの♪」

 

「ふぐぐっ………」

 

彼女の腕を手で叩いて、離してほしいアピールをするものの、彼女は離してくれそうにない。

……今気付いたんだけど、俺の頭に何か柔らかい感覚があるのは気のせいだろうか?

 

俺が不謹慎にもそう思った瞬間、白ジャージさんが俺に聞こえるようにぽつりと呟いた。

 

 

「私に心当たりがあります」

 

 

俺はそれを聞いた瞬間、抵抗をやめて彼女の言葉に聞き入ってしまった。

その後すぐにヘッドロックが解け、俺は首を抑えながら白ジャージさんに向き直ると、白ジャージさんはにんまりとした笑みを浮かべた。

 

「これでも結構、顔は広いんです♪ 私の知り合いに心当たりがあるんです」

 

「本当か!?」

 

俺はもう藁にもすがる勢いで彼女に詰め寄った。

しかし、白ジャージさんはそんな俺のおでこに人差し指を添えて押し返した。

 

「ただし、性格に少し難がありますが……いいですか?」

 

俺を真剣な目で射抜くように見る白ジャージさんに、俺は躊躇することなくすぐさま首を縦に振った。

 

「………よろしい♪」

 

白ジャージさんはそう言うと、俺から視線を外して、俺のすぐ後ろの方に視線を向けた。

 

「だ、そうですよ~」

 

俺も反射的に後ろを振り向き、誰に対して言ったのか確かめようとあたりを見渡すが…。

鬱蒼とした茂みや木があるだけで、他には何もなった。

俺が首を傾げていると、珍しく白ジャージさんが大きなため息をついて俺の前を通り過ぎ、俺から少々離れた所に生えていた木の後ろに入って行った。

 

「ほら、隠れてないでお仕事ですよ!」

 

「…………………り」

 

「無理じゃないですよ! あんたそんな人見知りしてたらなにもできないでしょうが!」

 

「そ……………………しぃ………」

 

「恥ずかしいじゃないですよ! ここに来る前に頑張るって言って来た所でしょうが!」

 

一体何を騒いでいるのだろうか、誰かいるのは分かったがその人が何を言っているのかなかなか聞き取れない…。

余程相手の声が小さいのか、耳を澄ませても白ジャージさんの声ばっかり聞こえてくる。

 

「ええい、じれったい!」

 

やがて、痺れを切らした白ジャージさんが何かを鷲掴みにしてこちらに戻ってきた、何かを引きずりながら茂みを掻き分けて、出てくると…。

 

 

 

「ふやぁぁぁぁぁ!」

 

「っ!?」

 

 

何とも言えない子猫の様な愛らしい声と共に、白ジャージさんが引きずって来た何かを見た時、俺は目を見張った。

 

白ジャージさんが右手でむんず、と握っているのは空色をした布、それにたどって視線をそれに向けて行くと、白地に可愛らしい猫のイラストがプリントされた紛れもない下着が目に入ってきたのだ。

と言う事は白ジャージさんが掴んでいるのは女性のスカートと言うわけだな…。

 

「は、はなしてぇ…っ」

 

そして、こんな時でも反射的にそれに目が行ってしまったのは男としての運命か、はたまた俺の萌えモードが誤作動したのか…。

ともかく、俺は今にも泣き出しそうな感じの声を聞いて慌てて思考を切り替えたのと同時に、白ジャージさんが俺の目の前に連れて来た。

ようやっとスカートを離した瞬間、猫さんパンツを必死に隠すようにして慌てて身を起き上らせた人物を見て………今度は目を奪われた………。

 

 

かなりの美少女だったからだ……。

 

 

白ジャージさんと並ぶ、いや、もしかしたらそれ以上かもしれない…。

 

空色の所謂エプロンドレスと思われる服を着た少女は白い花の髪飾りをした肩にかかるくらいの長さの白い髪、涙目になった目は淡い紫色の瞳をしている。

顔つきは俺よりも年下、もしかしたら中学生くらいにも見えるほどの幼さを感じさせ、可愛らしさと美しさの黄金比を体現したかのような少女に、俺は言葉も出せずに見入ってしまった……。

 

「ひ、ひどいよぉ……こんな、強引なんて……」

 

「あんたがいつまで経っても出てこようとしないからでしょ、自業自得です」

 

ピシャリと言われた少女はその場でしゅんと明らかに分かるほど落ち込んだ。

その場で未だに突っ立っている俺を見て、白ジャージさんが俺に分かりやすい様に、少女を指差した。

 

「彼女が、その心当たりです」

 

そう言われた少女は俺の方を一度振り返ると、びくり、と体を震わせてすぐさま白ジャージさんの後ろに隠れてしまった。

 

 

ああ、なるほど…性格の難ってこういうことか…。

 

 

相当な人見知りの少女に俺は苦笑いを浮かべて手を振るも、少女は依然として白ジャージさんの後ろに隠れたままだ。

それを見兼ねた白ジャージさんはまたため息をついた。

 

俺は一か八か意を決して、白ジャージさんの後ろにいる少女に頭を下げる。

 

「頼む、手を貸してくれ! 俺の大切な人が…苦しい思いをしてるんだ! だから、お願いだ、助けられるかもしれないならその人を……助けてくれ!!」

 

俺は全身全霊を込めてその場で頭を下げる、しばらくの沈黙…。

ややあって、僅かにだが、俺の耳にそよ風のように小さな…本当に耳を澄ましていないと聞こえない位の声が俺の鼓膜を震わした。

 

「………………大切、なの?」

 

ばっ、と顔を上げると僅かに白ジャージさんの後ろからほんの少し顔を出して聞いてきた少女と目が合った。

俺はすぐさま首を強く縦に振った。

 

「………………ぅ」

 

そして、彼女も小さく頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの日、小さな、本当に小さな希望を見つけました。

 




いかがでしたか?

次回、果たしていーすんはどうなるのか!!

次回でお会いしましょう、それではまた…。
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