超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、お待たせいたしました!

ちょっと、進学関係でバタバタしててなかなか続きが書けませんでした…

でもやっと書きあげられました!
それでは、どうぞ…。


stage,20 俺、大切な人が出来ました

プラネテューヌ教会に設置された、最上階、ネプテューヌ達の住むエリアへと向かうエレベーターに搭乗した俺は白髪美人の白ジャージさんと白髪美少女の人見知りの少女と一緒に最上階へと向かう。

 

俺の目の前にいる、白ジャージさんにくっ付いたまま離れようとしない少女は、背を向けながらもちらちらとこちらを見ている。

明らかに俺の事を気にしている。

 

この子が、本当にいーすんを治す事が出来るのだろうか…。

 

ふとそうした疑問が浮かんだ。

やっと見つけた小さな可能性だが、よくわからない部分が多すぎる…。

ここはちょっと、彼女たちに探りを入れておこうか。

 

「なあ、白ジャージさん」

 

「そのあだ名、実にアバンギャルドなものですけどせめて名前で呼びません?」

 

「……そう言われても、あんたの名前を知らないんだが?」

 

初めて会った時からと言うもの、俺の中でのイメージはめちゃくちゃ美人なのに白のジャージ姿の変わった人、と言うイメージが根強く残ってしまっているから、自然と最初に浮かんだ白ジャージさんと言うあだ名で定着してしまっている。

そのため忘れかけてたが、この人にもちゃんとした名前くらいはあるはずだ。

 

白ジャージさんは手をぽんと叩いて忘れてたと言いたげな仕草を見せる。

 

 

「おお、そう言えばそうでしたね! なら、私の事は“ライラ”とでも呼んでくださいな」

 

 

ライラ、という名前らしい白ジャージの彼女は俺に軽くウィンクをして俺の方に向き直った。

 

「それで、何か御用ですか? 少年くん」

 

「あんた達の事だ」

 

俺がきっぱり告げると、ライラさんは少し驚いた表情を見せた。

 

「予想外ですね、ここはこの子について聞くと思ったんですが…」

 

ライラさんは自分の背中に隠れて俺のことをじっと見ている人見知り少女に視線を移しながらそう言う。

 

「どっちにしろ同じだろ? なあ、ライラさんよ、あんた一体何者なんだ? 初めて会った時もそうだが、未だにあんたが何者なのか俺は理解できていない」

 

この人はとにかく謎が多すぎる、寝袋に入ってTGSの会場に野宿していたり、キレっキレのヲタ芸をしてたり、妙に洞察力はあるし、なにより変な発言があることだ。

 

前に俺に向かって言った言葉…。

 

俺の事を見ているという、あの言葉…。

 

この人が何者で、一体何をしているのか…。 まあ、一見するとただのオタクの女性と思っても仕方ないが…。

それについても不思議な面がライラさんには多すぎる。

 

「……ただのオタク趣味の善良な人間ですよ、何の変哲もないただの、ね?」

 

またあのへらへらした笑いを浮かべて俺にそう言って来た彼女は、自分の背中に隠れている人見知り少女を無理やり自分の背中から離れさせる。

 

「ふえっ………はっ! あうあうあうあ……」

 

急に隠れるものから追い出された少女はあわあわと慌てて、再びライラさんの後ろに隠れようとするが、彼女は右手を伸ばして少女のおでこを押し返し、寄せつけようとしなかった。

 

「んで、この子は私の……まあ、従妹みたいなもので、名前は“シンシア”です」

 

シンシア、と言う名前らしい少女は今も尚、必死に彼女の後ろに隠れようとしているがライラさんの手がそれを許さなかった。

やがて、俺の視線に気づいたシンシアは動きをピタリと止めてエレベーターの隅っこにものすごいスピードで移動し、俺の方に背を向けてぷるぷると震えながらしゃがみ込んでしまった。

 

「あうぅ………」

 

「まあ、あんな調子でかなり恥ずかしがり屋なんですよね……さらに言えば、少年くんは男性なんで今回はなおさら激しくなってますね」

 

「………大丈夫なの? 本当に………」

 

「ああ、大丈夫です大丈夫ですスイッチ入ったらちゃんとやる事やるんで」

 

手をひらひらと振ってそう言ったライラさんだが、どうにも不安が残る。

こんな調子の彼女がやる仕事と言うのは何なのだろうか?

 

というか、スイッチってどういうことだ? やる気スイッチ的なものか?

 

「まあ、現場に着いたら嫌でもこの子やる気になると思いますので、御安心を」

 

「……シンシアは何が出来るんだ?」

 

「う~む………強いて言うなら魔法使いですかね」

 

特に隠す様子もなく、さらっとそう言った。

魔法使い、その存在はこの世界では割とメジャーらしい…。

響きだけならまだ頼り甲斐があるけど、実際にそれがいーすんの今の容体を治すのに役に立つのだろうか…

そもそも回復系魔法が効くなら、最初からそうしている。

 

「魔法が効くなら、もう試しているさ……」

 

「まあ、そうでしょうね、でも………彼女は特別です」

 

ライラさんが言うように仮に特別な魔法使いだとしても…。

この子の性格を見る限りじゃあ、どこか不安が残るな…。

すると、俺の視線に気づいたのか、それとも話を聞いていたのか、はたまた単に耐えきれなくなったのか、こちらに背を向けてしゃがみ込みながらも、シンシアはちらりと俺の方に視線を向けてきた。

 

「………ら」

 

「ん?」

 

すごく小さな声でよく聞こえなかった。

もともと声が小さいのかな?

 

「………たす…ける………から」

 

俺が聞こえなかった事を配慮してか、今度はなんとか聞こえる大きさでとぎれとぎれだけどそう言ってくれた。

 

「…………大切、だから……」

 

「………ああ、そうだ」

 

シンシアの言葉に続くように、俺はそう言った。

そして、俺はまたじっと彼女に視線を向ける。

すると、彼女は慌ててまた壁の方を向いてしまう、でも、この際だ。 俺からも伝えるべき事は伝えておこう。

 

 

「………ありがとう、シンシア………いーすんを頼む」

 

 

俺が一言そう伝えると、シンシアは小さく、本当に小さく頷いた…。

 

 

 

 

そうこうしているうちに、エレベーターは最上階のネプテューヌ達の居住区画へと到着した。

俺はエレベーターのドアを開けて、二人をみんながいるであろう、リビングへと案内する。

 

「あ、ソウヤおかえりー、っと? その人達だれ?」

 

リビングに通じるドアの手前で氷の入ったたらいを持ったネプテューヌと出くわした。

すぐに俺の後ろにいる二人に気付いたのか、俺にそう聞いてくる。

 

「ああ、俺のちょっとした知り合い、かな?」

 

「どーもどーも」

 

にっこりと笑みを浮かべるライラさんに対し、余程人前に出るのが苦手の様子のシンシアは今も尚、ライラさんの背中にぴったりと張り付いたままだ。

 

俺はそんな二人を一瞥して、ネプテューヌへと再び視線を戻す。

 

「お前はどうしたんだ? 金だらいなんか持って」

 

ネプテューヌが重そうに両手で抱えるその用器はまさにお笑い芸人が体を張って笑いを取るための必須アイテム、金だらいだった。

中には水と氷がこれでもかと言うほど入っている。

 

「ああ、これ? いやぁ、もう何回も水入れて氷入れてって繰り返すのめんどかったからさ~、もういっそ大量に入れちゃえ、みたいな?」

 

「看病のつもりなら後のこと考えろよ……それで氷なくなったらどうするつもりなんだ?」

 

「………あ」

 

考えていなかったらしい。

めんどいからって後先考えずに行動するなよ……。

 

俺は軽く彼女の頭に拳骨を落としてやろうかとも考えたが、今はそんな事をしている場合じゃないと自分に言い聞かせる。

 

握り拳を造りつつも、彼女に今のいーすんの様子を聞く。

 

「………いーすん、どんな感じだ?」

 

「…う~ん、あんまり良いとは言えないかな…」

 

一応そう覚悟はしてはいたが……

やっぱり、早々良くはなっていないか…

 

「あ、でもね! みんな頑張ってるんだよ!」

 

ネプテューヌは持っていた金だらいをその場に置き、俺の手を握って急かすようにリビングへと導く。

ドアが開け放たれて、中に入ると……そこにはさっきと打って変わって必死になって動きまわるみんなの姿があった。

 

「ネプギア、新しい汗拭き様のタオルお願い!」

 

「はい!」

 

「いーすんさん、お水です……ゆっくりでいいですからね?」

 

「氷が少なくなってきたわね……追加はまだかしら……」

 

アイエフが汗をかくいーすんの顔をタオルで拭き、ネプギアが忙しくそれをサポートしている。

コンパさんは極小サイズの吸いのみという特殊な小さな急須の様な用器に入った水をいーすんに少しずつ飲ませる。

ブランは桶に入った氷水の残りの氷を気にしつつ、新しい手ぬぐいを用意している。

 

さっきまでの空気とは打って変わった雰囲気に俺は少し、その場で固まってしまった。

 

「ソウヤを見ていたら…いつの間にか、みんながまた動きだしたんだよ」

 

そう言って俺の事を見つめるネプテューヌ。

さっきまで半ば諦めかけた様子だったアイエフも今は必死にいーすんの看病に勤しんでいる。

 

「ソウヤがあんなに必死なのに、私達が立ち止まってちゃいけないもんね……どんなゲームでも先に進まなきゃ、クリアはできないしね」

 

「………ああ、そうだな」

 

俺は隣にいるネプテューヌの頭を無意識に撫でる。

最初は驚いていたネプテューヌだったが、まんざらでもないのか小さく微笑んだ。

 

「………よほど大切な方、なんですね?」

 

ふと、俺達の後ろについて来ていたライラさんがそう言って、リビングに入ってきた。

彼女は、彼女の更に後ろに身を隠しているシンシアに視線を向ける。

 

「お仕事、開始しますよ?」

 

その言葉を聞いて、シンシアがゆっくりと顔を出し、こくりと頷いた。

 

 

それを皮切りに、ライラさんとシンシアがアイエフ達の間に割り込んで行った。

半ばライラさんが強引に割り込み、シンシアは大人しくその後ろにちょこちょこと付いている。

 

「ちょ、ちょっと何よあなた!?」

 

「そこの少年くんに依頼された者です」

 

「え? ……宗谷! 戻ってきてたの!?」

 

俺の方を向いたアイエフが慌てて俺の方に駆け寄ってきた。

俺はああ、と答えて彼女たちの事を簡潔に説明する。

 

「………俺も正直、あの人たちが何者かはよく分からない……でも、事情を知らせたら心当たりがあるって言ってたくらいだから、何かわかるかもしれない、小さな望みだけど賭けてみようぜ?」

 

俺がそう言うと、アイエフはまだ彼女たちを不信感の籠った目で見る。

 

今、ライラさんが他のみんなをいーすんから離れさせて、シンシアがいーすんの事をじっと観察し始めた所だ。

不思議なことに、いーすんが視界に入ってからは周りの目が気にならなくなったのか隠れるような仕草は見せない…。

 

「心当たりって……あの子?」

 

「ああ……」

 

俺はただそう言うと、アイエフはシンシアをこれまた疑問を込めた目で見つめる。

 

ライラさんは魔法使いと言っていたが、シンシアはいーすんを見て何を判断するのだろうか…。

彼女は医療専門の魔法使いなのか、はたまたただ回復系魔法が得意な魔法使いなのか、どっちにせよこれで原因が分かればいいのだが……。

 

しばらくすると、シンシアがライラさんの方を見た。

その時、一瞬見えた彼女の目が少し潤んでいたような気がしたが…。

 

そして、小さく何かを呟くと、ライラさんは俺の方を向き、きりっとした顔つきを見せる。

 

 

 

「治せそうですよ、彼女」

 

 

 

その瞬間、俺達の心の不安感の闇に希望の光が差し込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

 

トランスは部屋のドアを閉めて、小さく安堵の息を吐く。

この部屋は宗谷が仮の住まいとして使用している部屋、シンプルなデザインの部屋に置かれたベッドでは先程までソファで苦しそうに息を荒げていたイストワールが寝かされている。

宗谷達に開いている部屋はないかと聞いた所、宗谷の部屋を提供してくれたのだ。

 

そして、部屋の外には宗谷達が待機している、理由は至極単純。

 

これから開始する“調整”を見せないためだ。

 

「………苦しい、よね」

 

イストワールの隣で彼女を心配そうに見つめるシンシア、トランスは彼女に近づきその肩に手を乗せる。

一瞬ぴくんと、その小柄な体が震えたがシンシアは尚もイストワールから目を離そうとしない。

 

「まあ、そりゃあオーバーヒートしている状態ですからね……そりゅあ苦しいでしょうよ」

 

オーバーヒート、それがイストワールをこのような状態になってしまった原因。

この事は宗谷達にも伝えてはいない、まだ伝える時期ではないからだ。

 

そもそも、何故オーバーヒートが起きたのか…。

それは彼女が宗谷と行動を共にするうちに起こした一つの行動。

 

 

V.phone……ブイホの解析である。

 

 

「彼女の中には今、彼女の容量を持ってしても維持することが出来ないほどのデータが詰まっています…、彼の持つデバイスのデータは本来、彼女本来の役目である“歴史を記録する”という目的には一切関係なく、不必要なデータでしたからね」

 

 

宗谷が初めてヒーローメモリーと精神リンクを成功させたあの時、彼女はヒーローメモリーの解析し、その後にブイホも解析した。

 

彼女にとってそれは許容量をオーバーするほどの異質なデータだったのだ。

ただ解析するという行為により、彼女とブイホに繋がりが生まれ、そのデータは彼女の知らない内に、彼女の中にインストールされた。

その影響として、彼女と宗谷の試作アプリが製作できるようになったのが何よりの証拠。

 

宗谷の操るデバイス、V.phoneは少なくとも女神の歴史を記録するための存在である彼女にとっては余分なデータにしかならない。

 

そして、時間がかかるにつれて徐々に彼女の体にエラーが起き始め、オーバーヒートに至ったのだ。

 

「しかし、それは予想の範囲内………」

 

トランスはそう言うと、そっと右手でイストワールの頬に触れる。

 

 

 

「彼のデバイスとリンクする事が出来るのは、彼女だけ………彼女こそが“リンカー”となる存在なのですから」

 

 

 

遅かれ早かれ、彼女と宗谷が関係を持った時点でこうなる事は予測できていたのだ。

そうなるように………宗谷と言う存在をより強化させる為に、イストワールは存在するのだから……。

 

仮に宗谷とイストワールの仲が親密にならないとしても、彼女は念のためと言ってブイホを解析したであろう。

 

そう、プログラミングされているのだ…。

 

人工的に作られた彼女は…。

 

 

「………唯一の救いは、植え込まれた意識とは違って、彼女自身の意思で解析を行った事でしょうか……」

 

もし、プログラムされた思考が働き、何故か理解できぬまま解析を行うよりか、彼女自身の意識で解析を行ったことは、彼女自身が生きているという証だ。

人口生命体であっても、生きていることに変わりはない。

 

生命とは意思があることで初めて成り立つものなのだから…。

 

 

「………でも」

 

それまで黙っていたシンシアが口を開いた。

 

「………つらいよ、こんなの……本当はこの子がこうなる必要なんてないのに………」

 

気付くと、彼女の目元に涙が浮かび始めていた。

それがなぜか悟ったシンシアはやさしく彼女の頭の上に手を置いた。

彼女の気持ちは、痛いほどわかる。

 

「…大丈夫です、苦しいのは今だけです…この後何が起きようとも、彼女の事は彼が守ってくれるはずです」

 

これは、イストワールに課せられたもう一つの使命…。

歴史を記録し、新たな女神を導く存在である彼女に課せられた、もう一つの役割…。

 

「あなたなら………分かるでしょう? この子はしっかりしてますから…きっと大丈夫です」

 

トランスはそう言って、シンシアの頭を数回撫でる。

 

「………さ、彼女を救ってあげましょう」

 

トランスはシンシアにそう言い聞かせると、シンシアは小さく頷いた。

 

そして、ゆっくりと立ち上がり、祈るように手を組んで目を閉じる。

 

すると、ベッドに寝かされていたイストワールの体がふわりと浮かびあがり彼女の体の周りをやさしい白い光が包み始めた。

 

 

 

「ごめんね……イストワール……今、助けるから」

 

 

 

そう呟いた彼女の目の前に無数の四角い画面の様なものが浮かび上がった。

そして、光で出来たキーボードが彼女の体の周りに生成され、シンシアは先程の弱弱しい姿とは打って変わり、真剣な眼差しを浮かべて、目にもとまらぬスピードでキーボードを叩いて行く。

 

 

そして、徐々に彼女の体が、新たなデータに馴染めるように“調整”されていく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会のバルコニー、もうすっかり日も暮れて、夜になってしまった街の様子を俺は手すりに体を預けて、ただひたすらにいーすんの治療を待っていた。

 

今、俺の部屋では白ジャージさんこと、ライラさんと超絶人見知り少女のシンシアがいーすんの事を診てくれている。

その間みんなはさっきまで忙しく動いていた反動もあったのか、それぞれ休憩を取り始めていた。

 

俺がこのだだっ広いバルコニーに出ているのも、そのためだ。

 

既にもう二時間近くかかっている…。

…良くなってくれるといいが…。

 

いや、もうここまで来たらあの二人を信じるしかないんだ、今はそれ以外に道はない。

 

「…外、寒くない?」

 

ブランの声がしたので、振り向くとそこには彼女だけじゃなくネプテューヌもいた。

ブランの手には白いマグカップ、ネプテューヌの両手には赤と紫のマグカップが握られていた。

どちらもほかほかと湯気が立っている。

 

「こんぱが入れてくれたココアだよ、はいこっち宗谷の」

 

「…ごちになります」

 

俺は差し出された赤いマグカップを握り、持ち手を持って少量を飲む。

口いっぱいに広がる、甘い味と濃厚なのど越しと程よい温かさ。 どこか安心する味わいに俺は無意識に笑顔になっていた。

 

「………余程心配なのね、イストワールが」

 

ブランが俺の事を見つめながらそう言って来た。

元々の無表情と暗がりのせいなのか、どうもの彼女が何を思っているのかうまく読めない。

でも、聞こえた声はいつもよりもどこか不安げに聞こえた気がした。

 

「…まあな、心配にもなるさ」

 

俺はマグカップを持っていない左腕の肘を手すりにつけて、光が灯るプラネテューヌの街並みを見る。

 

 

「……いーすんはこの世界で俺が、初めて迷惑をかけた人だからな……」

 

 

思えば、俺が初めて仕事が欲しいという我儘を言った相手はいーすんだった。

そして、初めてあの神殿を訪れ、そこで俺は今の力を手に入れた。

その時、俺が気を失っている間、彼女は俺の事を相当気にかけていたというのは、アイエフから聞いたことだ。

まだ、役目を終えて消えなかったヒーローメモリーを解析し、俺に何が起こっているのかを調べたのもいーすんだ。

 

俺は彼女にさせる必要もない心配をさせすぎた…。

 

「だから、少しでも恩を返したいんだ……この世界の事をいろいろ教えてもらったのもいーすんだし」

 

何より俺が勝手に約束した事だけど、俺はいーすんの仕事を全面的に手伝おうって決めてたし。

でも、サポートするつもりが逆にサポートされっぱなしだった事の方がしょっちゅうだ。

 

仕事の事とか、特にな。

 

今は安定しているけど、前はいろいろミスとかが多くて、よく彼女を困らせたりしたな。

でも、そのたびに適切に俺を注意してくれて、アドバイスもくれた…。

 

世話になりっぱなしだな、いーすんには…。

 

「……なんでソウヤは、そんなに他人の事になると必死になるの?」

 

ふとネプテューヌが俺にそんな事を聞いてきた。

 

「………昔からの癖、かな」

 

俺はそう言って、彼女たちに向き合うように振り向いた。

 

 

 

「俺は…孤児なんだ………生まれた時から、な」

 

 

 

俺は二人に初めて、俺の出生を明かした。

この事を知っているのはいーすんだけだ、他のみんなには話す事はなかったが、なぜ俺がここまで必死になったのか説明をするには俺の昔の事を話さないと始まらない。

 

 

 

俺は二人に簡潔に俺の生い立ちを聞かせた。

 

 

 

「そう、だったの………」

 

「えっと…ごめんね、変な事聞いて……」

 

「気にすんなよ、俺は別に寂しいなんて感じてないからさ」

 

俺は二人に出来る限りの笑顔を見せ、マグカップに入っているココアをもう一口飲む。

小さく息を吐いて、俺は施設にいた頃の俺について話す。

 

「俺のいた所は、みんな仲が良くてさ……やれ誰かがいじめられたとなったら何人かで仕返しをしたり、やれ誰かが誕生日だとなったらみんなで祝って、やれ誰かがいなくなったとなったらみんなで探したりしたよ……誰かが病気の時もそうだった……」

 

俺は昔の事をぽつりぽつりと落ちる滴のように話す。

あの時の光景が目に浮かぶ、そんな感覚が今まさにそうだと思う…。

脳裏に、俺が中学に上がりたてになった時の記憶が浮かび始めたからだ。

 

「その時、施設にいた子供は俺を含めて七人いたんだ、13歳の俺ともう一人、そしてそれより下が三人と、年上の兄ちゃん姉ちゃんが二人…」

 

あの時は、確か……冬の日だったかな……雪が降っていたっけ。

 

「俺と同い年だった奴が急に熱出してな、40度の高熱だった…」

 

夜遅くだったが、苦しそうなそいつの声が聞こえて部屋を覗いた時、そいつはベッドの上で苦しそうにしてたんだよな…。

 

いてもたってもいられなくなった俺は、年上の二人と施設の経営者であるおっちゃん呼び起こして、騒ぎに気付いて起きた年下三人が駆けつけて大騒ぎになった。

 

「…病院に行こうにも、夜遅くだからどこの診療所もやってないだろうってなってな、ならせめてって言って俺達でそいつを付きっきりで看病したんだ」

 

その甲斐あってか、そいつはその日のうちに容体がだいぶ落ち着いた。

後に発覚したが、インフルエンザだったそうで、案の定、付きっきりだった俺達のうちの何人かは一週間後にインフルエンザに感染してしまったが…。

 

 

「まあ、その時の感じから言うと、放っておけなかったって事だと思う…大切だからな」

 

 

俺はそう言ってマグカップに入っていたココアを一気に飲み干した。

二人は話を聞き終えるても、特に口を出す事はなく黙っているだけだった。

 

しばらくすると、ネプテューヌが俺の隣に来て同じように手すりに凭れかかった。

 

「じゃあ、その時のみんなと一緒でいーすんも大切な人、なんだね…宗谷には」

 

「いーすんだけじゃねぇよ」

 

即答で答えてやるとネプテューヌが面を食らった表情になったのが分かった、周りが薄暗くてもこいつの表情は一瞬で見てとれる。

 

「お前も、ネプギアも、アイエフも、コンパさんも、ノワールも、ユニちゃんも、ブランも、ロムちゃんも、ラムちゃんも、ベールも、そいていーすんも………みんな俺にとってはもう、大切な人たちだ」

 

俺には家族とかがどういう感覚なのかいまいちよくわからない、でも、一緒にいるみんな、一緒に騒いで、たまに喧嘩して、迷惑かけて、遊んで、いろんな事やって……笑いあって。

そういう経験を一緒にしてきた奴らは俺にとってはもう、大切な人になるから。

 

それでいいんだ、繋がりは………そいつらと一緒にいた時の思いや出来事は俺にとっての決して消える事のない繋がり…“リンク”なんだ。

 

今のみんな、今の俺の大切なリンク先だ、この先いろんなことを経験して繋がっていく。

それはたぶん、家族とか友達とかを超えた、“絆”なんだと俺は思う…。

 

「………あなた、いつか苦労するかもしれないわよ?」

 

ブランが俺に頬笑みを向けながらそう言う。

何が苦労なのかは知らないが、そんなのは朝飯前だ、苦労も面倒も迷惑もすべてひっくるめて、俺は受けとめてやるさ。

 

「上等だよ」

 

俺はマグカップを掲げてそう言うと、隣にいたネプテューヌが手すりから離れて俺の前に出てきた。

 

「それじゃあさソウヤ! もし私がピンチになったら、助けに来てくれる?」

 

突然聞かれた質問に、俺は一瞬驚いたが、選択肢に迷うことはなかった。

 

「当たり前だ、どんな状況でも助けてやるよ、なにがなんでもな」

 

俺は彼女のマグカップに俺のマグカップをかちんと打ち合わせてそう言ってやった。

その答えを待ってたと言わんばかりにはつらつとした笑顔を浮かべたネプテューヌに俺は同じように笑顔を見せる。

そして今度はブランの方にも近づいて同じようにマグカップを打ち合わせる。

 

「もちろん、ブランもな?」

 

「………そうね、期待しておくわ」

 

ブランもネプテューヌとは違った静かな、優しい笑みを浮かべる。

 

ああ、絶対に助けてやるさ…。

いーすんも、ネプテューヌも、ブランも、そしてみんなも、絶対な…。

 

 

 

「青春している所申し訳ありませんが、ちょっとよろしいですか~?」

 

 

 

突然聞こえた声に、俺達は驚いてバルコニーから廊下へと通じる扉の方を向いた。

そこには人仕事を終えた感じに手拭いを肩にかけているライラさんと彼女の後ろにまた隠れているシンシアの姿があった。

 

「終わりましたよ、もう大丈夫なはずです」

 

その言葉を聞いた時、俺の心の中を安堵の感情が込められた風が吹き抜けた。

両隣の二人も安心したのかさっきよりも明るい表情になっていた。

 

「彼女頑張ってくれましたよ、さすが私が見込んだだけの事はあります♪」

 

後ろにいるシンシアを撫でながらそう言った白ジャージのライラさん。

そう言えば、気になる事が一つあったな…。

 

「なあ、シンシアは本当に魔法使いなのか?」

 

俺がそう聞くと、ライラさんは人差し指を自分の唇にあてがってウィンクをして見せた。

 

「それは、ひ・み・つ、ですよ♪」

 

結局、シンシアもライラさんも何者なのかは分からないままだったが…。

とにも、かくにも、これで一段落の様だ…。

 

 

 

 

 

 

 

二人にお礼を言って、二人を見送り、ブランもロムちゃんとラムちゃんが心配するからと言って教会を後にしてから、俺達は自室に戻り、いーすんの容体を確認することにした。

もう先程のように苦しそうに息を荒げる事はなく、落ち着いた様子で寝息をたてるいーすんに俺達は一安心と肩の力を抜いて、みんなが安堵と疲労が混じった表情で部屋を出た後も俺は部屋に残っていた。

だって、ここは俺の部屋だし、それに一応彼女の様子も見ておかないといけないからな。

 

俺はいーすんの小さな顔にそっと触れる。

もう先程の様なストーブ並みの熱さは感じられず、程よい人肌の温度に戻っていた。

 

ベッドの上で眠るいーすん、俺はその隣、ベッドの横に座って彼女の事を見る。

 

こんな小さい体でいつも頑張ってくれているんだ…彼女が起きたら、また一緒にどこかに出かけようかと考えながら。

 

「…どこに行こうか? いーすん…」

 

俺はそう呟いて彼女の頭を、いつものように指でちょいちょいと突く。

すると、一瞬、彼女の口元が笑みを浮かべた様な気がした。

 

俺も自然に笑顔になって、そっと、手を引き、そのまましばらく部屋の中で彼女の隣にいた…。

 

 

この時、俺はいつの間にか俺は寝入ってしまい、気付く事はなかったが………この後、いーすんの体が白く発光し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと、いつの間にか朝になっていた…。

どうやら俺はいつの間にか眠っていたらしい、床の上で寝るという体験はあまり経験していなかったせいか…体の節々が痛い。

俺が身を起して、ふと、窓の方を向く。

 

カーテン越しに漏れる、朝日の光が部屋を照らす、こんもりと膨れたいーすんの眠るベッドにも程よい光が……………。

 

 

 

 

あれ、ちょっと待って?

 

………なんでベッドがこんなに膨れてんの?

 

 

 

俺が目線をベッドに向けると、そこにはこんもりとベッドの掛け布団が丁度人ひとり分くらいに膨れ上がっていた。

 

え? どういう事?

 

訳も分からず、俺はいーすんが寝ていたはずの掛け布団をツンツンと押す。

 

ふかふかの布団の奥に妙に弾力のある感覚を感じる。

 

『んっ………』

 

一瞬、布団の中から声が聞こえた。

 

あー、さては誰かが寝ぼけてベッドの中に入ったんだな?

ったく、いーすんが寝ているのにどういうつもりだよ、もし間違って押しつぶしでもしたらどうすんだよ。

 

俺はそう理解して、布団の端を掴んだ。

大方めくるとネプテューヌあたりが寝てるんだろうと思いながら俺はひと思いに布団を引っぺがす。

 

しかし、俺の目の前に現れたそれは、予想を遥かに上回るものだった…。

 

「………え?」

 

そこには確かにいた…。

でも、ネプテューヌでもネプギアでも、アイエフでもコンパさんでもなかった…。

 

でも、見覚えのある顔をしたその人は…。

 

「……んぅ…ふにゅ………」

 

すやすやと寝息を立てている、“全裸”のこの女の子は……。

 

間違いない、いーすんだ…。 いーすんなんだけど………。

 

 

 

 

何で、人と同じくらいの大きさになってんの?

 

 

 

 

俺は目を疑って改めて、その人間サイズのいーすんをじっくりと観察を始めた。

まず顔、いつもの彼女の金髪はツインテールが解かれてゆるふわウェーブの髪がベッドの上に広がっている。 顔は、確実にいーすんだ…うん、間違いない…。 それに彼女の顔の隣にはいつもいーすんが乗っていた本が置かれている、こうして見ると事あるごとに角が俺に打ち付けられ、鈍器という名になりつつあるこの本が、ただの本に見える。

 

体は、完全にサイズが普通の人間サイズにはなっているが………うん、いーすんだ。

この胸のあたりに膨らんでいる小さな小山がそれを裏付けている。 見た目の割に結構膨らんでたのね…それでも平均サイズよりも下だと思うが…。

 

俺がそこまで確認すると…。

 

「ん………ん~?」

 

あの、透き通った鈴の音の様な声が聞こえ、大きくなったいーすんが目を覚ました。

 

「あれ…宗谷さん? どうしてここに? …それよりも、私はいったい? ……確か妙に体が熱くて、それで……」

 

体を起してきたいーすんは俺の姿を見つけるや否や、昨日までの自分の事を思い出そうとし始める。

それはいい、それはいいんだが…

この状況はいろいろとやばいのでは?

 

いや、いーすんがあの妖精さんサイズじゃなくなったのも大変なんだけど…。

よくよくこの状況を見ていると、俺は今、全裸の女の子の前にいるというわけで…。

 

こう言う場合さ、どっちに否があるの?

今こうして全裸のでっかいーすんを見ている俺? それとも、いつの間にか全裸になっていたいーすん?

 

「へくちっ!」

 

いーすんが突然可愛らしいくしゃみをした。

 

「…何故でしょう、妙に寒い…って、へ!?」

 

自分の手で己の体を抱くようにして擦るいーすんは、その時初めて自分の状態を知った。

急激に真っ赤に顔を染めて、俺が引っぺがした布団を見つけ、すぐさまそれで体を覆った。

 

「な、な、な、なんで私…裸に!? というより、え? この布団…確か宗谷さんの…何でこんなに小さく…?」

 

頬を朱に染めながらも、自分が体に巻き付けた布団を見て疑問を抱き、目の前で今もなお硬直している俺を見て、自分の体を再び見てと数回繰り返すいーすん…。

 

「……………」

 

「……………」

 

そして、互いに顔を見合わせて………。

 

 

 

「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」

 

 

 

朝から鶏もびっくりの大絶叫を二人で迸らせるのだった………。

 

 

 

俺…というよりいーすんはこの日…大きくなっちゃいました…。

 




いかがでしたか?


…え~…まず、いーすんファンのみなさんすみませんでした!

彼女はこの物語のために大きくなっていただきました…。
ちっちゃいーすんが好きな方には申し訳ありませんが、ご理解いただきたく…。

とまあ、それはそれとして…。
次回、大きくなったいーすんと宗谷が…

それでは、またお会いしましょう…。
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