超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回、いーすんが大活躍します!
そして…宗谷の前には…

それでは、お楽しみください、どうぞ!


stage,24 俺と憧れ 私と心配

 

 

 

「うん、こっちは予定通りや……うん、大丈夫、問題あらへんよ」

 

持ち前の携帯端末を使用し、あるものに腰かけてプラネテューヌで待機している仲間に連絡を取るエネミー。

彼女は今、リーンボックスの外にある森林地帯のダンジョンの中にいる。

こんな場所でも通信が開けるあたりは、さすが開発改造修復に関してはぴか一のロボティックが開発しただけあると感心してしまう。

 

自分が今左手に持っている、ロボティックお手製のサーベル型白兵戦用特殊カーボンブレイドも、懐に収納している中遠距離特化強化型ハンドガンも、“昔”ほどではないにしろ、その時の自分に匹敵するほどの性能があるおかげで、こうして…

 

 

 

「モンスターが血眼で襲ってこんかったらやけどな」

 

 

 

今腰かけている、通話中に襲いかかって来た上位危険種モンスターも圧倒できる。

 

 

もちろん、彼女自身の戦闘能力もあってこそなのだが、それをより際立たせるのはこの武器もあってこそだと彼女は思っている。

 

止めを刺さず、四本の足の腱を切られ、犬の芸のふせの状態で身動きの取れない“フェンリル”の頭の上に腰かけている彼女は、焦る様子も何もなく、ただ普通に会話をしている。

 

『まあ、あなたの能力が能力ですからね、敏感なモンスターならそうなって当然でしょう』

 

「こっちはいい迷惑やで…」

 

そう言いながら止めの一刺しをフェンリルの眉間に突き立てたエネミー。

 

最後の一吠えの後、フェンリルの体が光の粒子となって消滅。

地面に降り立ったエネミーは腰にサーベルを収め、再び通話相手のトランスの声に耳を傾ける。

 

『それで、例のデータもメモリーに流し込めたんですか?』

 

「うん、そっちも大丈夫、ちゃんと稼働してるはずやで」

 

今回の自分の仕事、リーンボックスで発見した仮面ライダーのヒーローメモリーにバグデータを流し込み、宗谷をメモリーの中に送り込むフラグを建てるのは成功した。

 

もちろん、メモリーの中で簡単に事が進まず、困難な状況が生まれるように“こちら側の布石”もショッカーのデータと共に、バグとしてメモリーに投入する事にも成功した

 

「私が言うのもなんやけど、たぶん………あれ相当厄介やで?」

 

『まあ、そうでしょうね、そうでなくては困りますもの』

 

なんせ、あのデータから作り出した、あの“強敵キャラ”は………

 

 

 

『あの少年くんじゃ、倒せない位に強くないと』

 

 

 

バグとしてメモリー内に送った時に自分も感じたのだが、流石にこれは大丈夫なのかと心配になるほどだったのだから。

 

「よおあんなの考え付いたなぁ…?」

 

『まあ、その辺りは私のデータインストールとロボティックの“構築”の能力あってのものですから』

 

トランスの“変身”の能力は変身のために元ネタのデータを解析してこそできるもの、もちろん“仮面ライダーがなんたるか”も既に閲覧している彼女なら、あの様な設定のキャラを作れてもおかしくはない…。

それを完全に構築してしまったロボティックもロボティックだが…。

 

「………私ほんまに知らんからな? これで今後の予定しっちゃかめっちゃかになっても、知らんからな!?」

 

『大丈夫、大丈夫ですって! そのあたりも心配なさらずに』

 

今、絶対通話中の画面の向こう側で、ニタニタと笑っているであろう彼女に、エネミーはただただその場で疲れたという感情を抑えきれずため息をつく…。

 

『………大丈夫ですって、なんせ、少年くんは“あの人”が選んだ“主人公”なんですから』

 

このような事に巻き込まれた彼に今さらながら同情の念を感じてしまう、エネミーなのであった…。

 

 

 

 

 

 

メモリーワールド…。

 

 

そこは、ヒーローメモリーの中に広がっている、疑似的な世界だった。

 

俺はこの世界が外部から来た謎のバグにより、突然現れたショッカーによって消滅の危機にさらされている事を、メモリーワールドの中にいた二人の仮面ライダー、進ノ介さんと紘汰さんから聞いた。

 

そして、この様なことがもしも起きてもいいように防衛処置として主人公キャラと関係の深いキャラクターがそのバグに対処するように設定されているのだが、それらが今回起動する事が出来ず、さらには動けたキャラがいたとしても本来の力が出せないという致命的なバグが発生している…。

 

正直、状況は圧倒的不利だ…。

 

……それでも、今の状況を覆す事が出来る方法はある。

 

ショッカーが現れた時と同じくして姿を消し、メモリーの本来の内部機能を停止させてしまった原因である仮面ライダー1号を探し出し、メモリーの本来の機能を再起動させることだ。

 

そう、俺がこの仮面ライダーのメモリーワールドでやるべき事は彼を見つけ出す事なんだ。

 

 

 

 

 

 

「以上、解説終わり!」

 

「誰に話してんだよ?」

 

俺の後ろであたりを見渡しつつ、的確に突っ込む紘汰さんに俺は、お気になさらずに、と返して再び1号の捜索に戻る。

今俺達がいるのは、もう既に廃墟と化した街の中央付近のショッピングモールと思われる建物の中だ。

 

あの後俺達は早速1号の捜索を開始して、まだ探していないこのあたりのエリアへとみんなで向かった。

ちなみに、その時は俺が紘汰さんのサクラハリケーンの後ろに乗せてもらい、いーすんをトライドロンの助手席に、ベールには女神化で飛行してもらって、なるべくショッカーに見つからないように、裏道を通って来た。

 

ちなみに俺がなぜサクラハリケーンに乗せてもらったかというと、同じようなイベントを再び起こしていーすんにボッコボコにされるのは勘弁だからだ…。

 

で、到着すると同時に二手に分かれて捜索開始、俺と紘汰さん、そしてベールの三人でモール内を、進ノ介さんといーすんで外の方を探すという事になった。

 

「………どこにもいないな」

 

捜索のために割れたショーウィンドウが目立つ元ブティックショップと思われる店内に入り、手に持っていた埃だらけの衣服を投げ捨てて俺はそう呟いた。

開始して30分、もう探せるような所は探しつくしたと思うのだが、1号の影すらも見つからない。

 

「宗谷、そこにはいましたか?」

 

「いや、手掛かりすらなし、ベールは?」

 

「こちらも同じくですわ………特徴的な姿をしているようなのですぐに見つかると思ったのですが……」

 

店の外でしょんぼりとしているベールを見て、俺も無意識の内に肩を落としてしまう…。

ベールが店内に入ってきたので、俺は残りの探索場所を彼女に聞く。

 

「あと探していないのはどこだっけ?」

 

「えっと……もうこのあたりは全部探したはずですわ」

 

「まじか…」

 

再び、がっくし…。

 

ただでさえ時間がないというのに、このままで大丈夫なのか?

なし崩し的に焦る気持ちが大きくなっていく…。

 

「………宗谷、また必死な顔をしていますわ」

 

「ん?」

 

ベールが突然、俺の顔を見ながらそんな事を言って来た。

 

「なんだよ、急に…」

 

「いえ、特に大したことではないのですが…余程その、仮面ライダーという方を心配しているのですね?」

 

薄暗い部屋の中で俺の表情を見てなぜそこまで俺の心の内を読み取れるのか不思議に思えるが、確かにベールの言っている通りだと思う。

心配してるのは、まあ、今に始まった事じゃない…。

仮面ライダーの姿をテレビで見た時は何度も心配になったしな…。

 

「憧れのヒーローだからな…」

 

「憧れ、ですの?」

 

俺はベールの言葉に対して、頷いて返事をする。

 

「いつもいつも、仮面ライダーは人知れず人類の平和を守るために、強力な悪の改造人間と戦って来た………たった一人でな」

 

特に1号はそうだ、最初、仮面ライダーと呼ばれる存在は彼一人しかいなかったのだから。

俺は小さい頃、DVDで見た仮面ライダー1号の活躍を見て何度もハラハラして、1号、頑張れと応援したものだ…。

 

「それを見ていたからかな、俺がちっさい時の最初の将来の夢が、“仮面ライダーになる”だったからな?」

 

俺が半笑いでベールにそう言うと、自然とベールも笑顔を浮かべた。

 

「まあ…余程大好きだったのですね?」

 

「ああ………」

 

あの頃の俺が施設のみんなと共に助け合ったり出来たのも、たぶん…仮面ライダーになりたかったからなんだろうな…。

優しくて、強くて、絶対に悪を許さない正義の心を持ったヒーロー、仮面ライダー…。

自分も仮面ライダーになって、一緒に戦うんだって思って…。

少しでも早く追いつきたくて、早く大人になりたかった…。

 

まあ、結果的になったのはただのオタクな18歳だけど…。

 

でも、たとえ違う世界でも、憧れのヒーローの…仮面ライダーのピンチを俺が救えるって言うんなら、俺は助けてやりたい…。

 

 

そして、彼に言いたい、“いつも勇気をくれて、ありがとう”って…。

 

 

ゲイムギョウ界に来て、戦えるだけの力も十分ある事だしな…。

 

「それで、今はどうなんですの?」

 

「ん? 何が?」

 

「宗谷は今でも仮面ライダーになりたいと思っていますの?」

 

「ああ…そう言うことね」

 

ベールは昔の俺の夢は今も変わっていないのかと聞いているらしいけど…。

まあ、それに関しては…。

 

 

 

「………なれるものならなりたいけど、ね」

 

 

 

 

あの時、俺がゲイムギョウ界に初めて来たとき、俺はみんなに言った………。

 

 

“ヒーローを目指しています”って………。

 

 

………でも、俺にヒーローになる資格なんてあるのかな………。

 

 

 

 

 

――――――ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!

 

 

 

 

 

――――――宗谷っ!! もういい、もういいよぉっ!! お願い宗谷!! 宗谷ぁっ!!

 

 

 

 

 

俺の拳に、正義を名乗る資格なんてあるのだろうか………。

 

 

 

 

 

「宗谷? どうかしましたの? 宗谷?」

 

ベールが俺の肩をトントンと叩いてくれた事で、俺はやっと我に返る事が出来た。

 

「え、あ、うん…大丈夫、どうってことないから」

 

「そう、ですの?」

 

「ああ、大丈夫、ばっちりだ」

 

俺はにかっと笑ってアピールすると、ベールはまだ少し気にとめてはいたようだが納得はしてくれた。

 

いかんいかん、ブルーになったらだめだ!

 

今は今でやらなくちゃいけない事があるんだから、しっかりしないと!

 

「とりあえず、紘汰さんと合流しぃっ!?」

 

「へ?」

 

外に出ようとした所で、俺がさっき投げ捨てた衣服を踏んでしまい、足を滑らせて思い切り前のめりに倒れかかる、というか、待って! このまま倒れたら…っ!

 

 

―――ふにゅん…

 

 

「あらあら…」

 

「っ!?」

 

咄嗟に倒れまいとした出した右手が掴んだもの、それは…

ベールのけしからんまでに育った胸…。

 

ベールが支えてくれたから転倒こそしなかったものの、しっかりと右手で掴んでしまっている事は間違いない…。

 

よくラノベとかではこの世のものとは思えないほどだとか、マシュマロのようにとかの表現があるが………。

 

まさに、その通りじゃないか!

 

なんだ、この指が埋もれるかの如き柔らかさでありながら、しっかりと指を押し返すこの張りのある弾力! 服越しでもしっかりと感じる感触………こ、これが巨乳と言うものか!?

 

 

―――むにっ

 

 

「あんっ…」

 

しまった!! この最高の感触の虜になったがために、つい故意で揉んでしまった!!

巨乳、恐るべし! って、んなこと言ってる場合じゃねぇ!!

 

慌てて、右手を引いてベールの胸から手を離す。

 

「ご、ごめっ! あの、今のはわざとじゃ…いや、今さっきのはつい手が動いたんだけど………その、あの…ごめんなさい」

 

取り繕って、口ごもりながら謝罪するも、ベールは両手を自分の胸を前に交差するようにして腕で隠して、じっと俺の事を睨んでいる…。

 

ああ、ヤバい…俺とした事が…なんて不健全な事を…。

 

自分のしでかした事に軽く涙が出そうになる…。

すると…。

 

「………ふふっ」

 

…笑った?

 

何故か、ベールが小さく、確かに笑った…。

普通ならここはビンタの一発くらいあるもんだと思うんだけど…なんで?

 

訳も分からず、きょとんとしている俺にベールはほほ笑みながら詰め寄ってきた。

 

「やっと、元の宗谷になりましたわね?」

 

「………は?」

 

「さっきの宗谷、どこか暗い顔をしていましたから………元の宗谷に戻って良かったですわ」

 

どうやら、俺のさっき、昔を思い出していた時の表情をまた読まれていたらしい。

やっぱり、出やすいのかな? 表情に…。

さすがベール、良く見てらっしゃる……。

 

「やっぱり、宗谷は元気な時の方があなたらしくて素敵ですわ♪」

 

そう言われて、俺はベールに頭を撫でられた。

ルウィーの時の事を思い出して、反射的にすぐに顔が熱くなってしまった…。

そういえば、何でベールは俺にこんなに気を使ってくれるんだ?

 

俺がそう疑問を持った所でベールが手を離してくれた。

 

「………ただ、だからと言って私の胸を触った事は見逃せませんわよ?」

 

「…やっぱり?」

 

「あたりまえですわ」

 

そう言ってベールはプイとそっぽを向いてしまった。

 

 

「殿方に触られたのは初めてですのよ………だから、責任、を………」

 

「ん?」

 

 

後半に行くにつれてどんどん声が小さくなっていって良く聞こえなかったんだけども…。

 

「あの、ベール?」

 

俺が彼女に何を言ったのかもう一度聞こうとした時、奥の方から見覚えのある人影が走ってきた。

あれは、紘汰さんだな…。

 

「よお、宗谷、ベールさん………二人ともなんかあったのか?」

 

「え!?」

 

「い、いいえ、別に何もありませんわ! 何も言っていませんわ!」

 

俺とベールが慌てて手をぶんぶんと横に振りながらそう言うと、紘汰さんもなんとか理解してくれたのか追及してくる事はなかった。

 

「えっと、それはそうと…紘汰さんは何かありましたか?」

 

念のために話題を逸らそうと結果はどうたったか聞くと、紘汰さんは首を左右に振った。

 

「…いや、こっちは手掛かりなしだ…そっちもか?」

 

「そうですの………私たちの方も、まったく……」

 

「そうか…」

 

どうやらここは外れの様だ、紘汰さんは自分の頭をがしがしと掻いた。

 

 

 

「せめて、別行動を取ってるあの“二人”と連絡が取れればな……」

 

 

 

そう言えば、前から気になっていたのだが、紘汰さんと進ノ介さんと一緒になんとか起動する事は出来た、あとの二人って、一体誰なんだろうか?。

 

こんな状況だから、その二人も1号を探しているはずなんだろうけど………。

 

 

「紘汰さん、その別行動の二人って一体………?」

 

 

俺がそれについて聞こうとした時……

 

 

「………?」

 

 

どこからか足音が聞こえてきた………。

 

 

音からして俺達の位置からそれほど遠くない、もう近くにまで来ている…。

 

俺は辺りを見渡して、足音の正体を探す。

もう気付いたのか、ベールも紘汰さんも同じように辺りに目を凝らして正体を探す。

 

そして、俺が後ろを振り向いたとき…その正体の姿を見た…。

 

 

「1号?」

 

 

その姿を見て、俺は反射的に自分たちが探している1号かとも思ったが…。

すぐに、違うと理解した…。

 

俺の視界に現れたそいつは、姿形こそ1号とそっくりだが明らかに違う雰囲気を放っていた。

あの、正義の光を宿したかのような銀色の手袋とブーツは漆黒の黒色をしていて、真っ赤なマフラーも同じように黒い…。

腰のベルトの風車もどす黒く。 赤い目も、血の様な暗い色をした赤になっていて…。

 

何より、目を引いたのは胸に刻まれたあの、地球を足で掴んでいる鷲のマーク…。 ショッカーのシンボルだ

 

「……なんなんだ、お前は!」

 

紘汰さんが仮面ライダーの姿をした何者かに問いかける。 すると、そいつは機械の様に無機質で、それでいて悪魔の如く冷たい笑いを俺達の耳に響かせた。

 

 

 

 

「ギッギッギ………俺は………いや、俺こそが、仮面ライダーのあるべき姿……“ショッカーライダー・パーフェクト”!」

 

 

 

 

俺達の事を血の色をした複眼で見ている奴から感じたのは、純粋な破壊と殺戮と憎悪の感情だった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、時間は少し遡り…。

ショッピングモール跡地の外では、イストワールと進ノ介の二人が1号の捜索を続けていた。

トライドロンを目立たない場所に隠し、砂埃に塗れているショッピングモールの周りをくまなく探す事数十分、一向に手掛かりは見つからなかった。

 

「はあ、また手詰まりだな、こりゃ…」

 

瓦礫に腰かけて、そう呟く進ノ介に対しイストワールは懸命に捜索を続けている。

 

この時、進ノ介は彼女を見てある疑問を感じていた。

なぜ、彼女は関係ないはずなのにここまで付いてきたのだろうかと…。

 

それに何より、捜索をしながら時折、ある方向を見る彼女…。

 

それを含めて、彼はさっきまでのイストワールの様子を振り返りながら、推理する。

 

そして、しばらく考えて…。

 

ある結論に至った。

 

 

「…繋がった」

 

 

そう言って、進ノ介が胸のネクタイを締める。

 

しかし、これはこれで少々デリケートな問題だ…。

ストレートに聞くと、帰って彼女の心に迷いを生み出してしまいそうだ。

進ノ介は自分でも十分にデリカシーというものを持っているという自覚はある。

すっ、と立ち上がってイストワールの方へと足を進める。

 

すぐ近くまで来ると、足を止めた進ノ介は辺りをくまなく探しているイストワールに声をかける。

 

「なあ、宗谷の事、気になるのか?」

 

「え?」

 

その言葉にイストワールは振り向き、疑問に満ちた目をこちらに向けてきた。

 

「突然、どうしたんですか?」

 

ほんのり頬を染めた彼女の反応を見て、自分の言い方が少々露骨だったと事を悟った進ノ介は慌てて取り繕う。

 

「いや、君、彼の事、結構心配してるんじゃないかなって思ってな…違うか?」

 

進ノ介がそう聞くと、イストワールはやや考えるような仕草を見せてから、優しく微笑んだ。

 

「はい……確かに、宗谷さんの事は心配です、ここに来たのもそれが理由ですから」

 

予想通り、進ノ介は自分の推理にほぼ確信を得ていた。

危険と分かっていて、彼と一緒にこの世界に来て…。

トライドロンを降りた時の二人のやり取りを見て…。

なにより、時折、モールの中の様子を気にするような行動を見せていたら…誰でも気付くのではないだろうか?

 

「彼が心配だから、か…」

 

「はい………それに、心配だから、私も助けになりたいんです………」

 

彼女はそう呟きながら、手に持っていた本をぎゅっと抱きしめるように腕で包み込んだ。

 

「………宗谷さんは自分の事は全く見てませんから」

 

「………というと?」

 

進ノ介が聞き返すと、イストワールはショッピングモールの方に視線を向ける。

 

 

「宗谷さんは…どんなに自分が危ない目にあっても、どんなに自分が苦しくても、誰かの事を優先させる人ですから……だから、本当は見守るだけじゃなくて……私も宗谷さんの助けになりたいんです…少しでもいいから、あの人が辛い目に会わないように………」

 

 

自分が意識不明の状態、オーバーヒートを起こしていた時。

彼はプラネテューヌ中を駆け巡ったと聞く、それに、ラステイションではノワールのピンチを、ルウィーではブランとロムとラムの危機を、自分の事より誰かの事を優先させてそれに介入したと聞く…。

 

そんな、彼を今さら止めようとは思わない、ならせめてと…彼女は思ったのだ。

 

 

イストワールの思いが自分の予想以上に大きいものだと理解した進ノ介は中にいるであろう、宗谷を思い浮かべる。

 

(……あいつ、たぶん後々苦労するんじゃないのか?)

 

どうにももどかしい思いをしつつ、この二人のことはそっと見守っておこうと決めた進ノ介はこれ以上何も言わない事にしようと判断した。

 

「そっか…ごめんな、変な事聞いて」

 

「いえ、別に気にしてませんから」

 

二人は互いにそう言って、再び作業に戻る。

 

 

そうするはずだったのだが………。

 

 

 

 

「うぅぅぅぅううううう!」

 

 

不気味な唸り声が響いた直後、進ノ介の体に粘着質の白い糸が巻き付いた。

 

「なっ!?」

 

そのまま進ノ介は信じられない力で体を引っ張られ、近くの壁に体を強く叩きつけられてしまった。

 

「がはっ!!」

 

「進ノ介さん!!」

 

体に走る鈍い痛みと、肺の空気が強制的に吐き出させられる感覚に、進ノ介はその場にうずくまってしまった。

体に巻きついている糸によって、まともに身動きもとれずにいる進ノ介を見て、イストワールが彼の方に慌てて駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

 

彼の体に巻き付いた糸を何とかしようとして、イストワールは両手で糸を左右に引きちぎろうとするがワイヤーの如く堅くなってしまった糸が切れる事はなかった。

 

「まずい…逃げろ!」

 

進ノ介が一瞬、自分の後ろを見てからそう言ったことに気付いたイストワールはすぐさま後ろを振り向く。

すると、そこには…

 

「うぅぅぅぅぅうううう!」

 

体を黒い体毛で被い、真っ赤な牙をむき出しにしたひと目で蜘蛛というイメージを持たせる怪人がいた。

 

ショッカーの改造人間、その名も“クモ男”である。

 

不気味な唸り声を上げるクモ男を前にして、イストワールは逃げることもせず、その場にじっとしたままただ目前の敵を睨んでいた。

 

どうやら、ここに自分たちが来ているのをクモ男は知り、奇襲を仕掛けてきたようだ。

しかし、周りにはクモ男以外の敵の姿は見えない、恐らくまだ駆けつけていないか、あるいは元々一人で行動しているのか…どちらにせよ、今二人が危機的状況にあるのは変わりない。

 

だから、尚更、進ノ介はイストワールを逃がそうとした。

 

「何してんだ! 俺の事はいいから、早く中に!」

 

自分がこのような状態になっている以上時間を稼ぐこともできない、なら、まともに戦えるベールか宗谷もモールの中に彼女を逃がそうとしたのだが…

イストワールは頑としてその場を動かなかった。

 

 

 

「………」

 

 

 

その場に立ちあがったイストワールは逃げようとせず、ただ、自分がいつも持っていた本を取り出して、ページを開いた。

 

「おい、聞こえないのか! 早く…」

 

「逃げません!」

 

ピシャリと言い放ったイストワールは、ちらりと、一度だけ進ノ介の事を見ると、すぐに視線をクモ男へと向けて、意識を集中させた。

 

「私は…少しでもいい、宗谷さんの助けになりたい……だから……」

 

その時、彼女の体の周りを四色の光が回り始めた。

その中に立つイストワールが決意に満ちた眼差しを目前の敵に向ける。

 

本当は、怖い…。

自分がどうこうできる相手かどうかなんてまったく理解できない…。

 

でも、それでも、逃げ出したくない…。

 

 

 

だから彼女は、決心を固めた。

 

 

 

「私も、守ります………守ってみせます!!」

 

 

 

光はやがて、四つの力を持った魔力の塊へと姿を変える。

 

一つは電撃、一つは炎、一つは氷、一つは風。

 

四つの魔力の塊がイストワールの周りを飛び交い、そして本の中へと吸い寄せられるように集合する。

その瞬間、彼女の背中から透き通った蝶の様な翅が広がり、両肩を煌びやかな美しい輝きを放つ装甲が包み込む。

 

 

 

 

 

「“モード・アクティブ”………ッ!」

 

 

 

 

そして、さっと右手を横に広げる。

すると彼女の右手に白い、一本の細剣がどこからか現れ、イストワールは迷うことなくその剣を手に取り左右に素早く切り払う。

 

「イストワール………」

 

この時、進ノ介は一瞬、彼女の姿に見入ってしまった。

童話や物語に出てくる妖精の剣士、はたまた、タクトを振るうかのような彼女の姿は美しく、目を見張るものがあった。

 

 

ちなみに、この状態になったのは今回が初めてではないし、この状態になったイストワールを、宗谷はもう既に知っている。

 

これこそが、“グレードアップ”した彼女の新たな能力。

 

 

“モード・アクティブ”、所謂、彼女の戦闘モードである。

 

 

左手に開いた本を、右手に美しい白い細剣を持ったイストワールは細剣の切っ先をクモ男に向ける。

クモ男は目の前の標的の突然の変貌に少々戸惑いの色を見せたが、すぐさま彼女に敵意を向ける。

 

 

「あまり時間をかけたくありません………だから、すぐに決めます!」

 

 

クモ男にそう言い放ったイストワール、それについては理由がある。

 

それは単に、彼女が戦い慣れていない事だ。

 

今までこうしてモンスターと戦闘したりする機会があまりにもなかったイストワールにとって、このモードは一見すると役に立ちそうに思えるのだが…。

このモードを発見したのは、彼女のサイズが人間大になった時から翌日のことだ。

 

これを知った宗谷は最初、このモードに慣れるまで戦闘になるような事は極力避けて置いた方がいいと言っていた。

そして現在、まだこのモードにはイストワールは慣れていない。

 

しかし、それでも…。

 

彼女にはここから逃げ出したくない訳があった、理由があった…。

 

 

―――宗谷が憧れた、ヒーローである彼を、宗谷の大切な人である進ノ介には指一本触れさせやしない。

 

 

その思いが彼女に戦う決心を与えたのだ。

 

 

クモ男がイストワールとの距離をじりじりと開け、彼女もその様子を窺いつつ、準備に入る。

敵の様子を見ながら、自分は意識を手に持つ白い細剣へと集中させる…。

 

この戦いを左右するのは、たった一度しかないタイミングの見極め………。

 

長引けばこちらが不利になるのは戦い慣れていない自分にはもう分かりきっている事…。

 

ならば、一瞬で、一撃で決められるくらいの攻撃を相手に与えなければならない。

 

そのためには、それを可能にするためのチャンスを見極めなければいけない…。

 

イストワールは待つ、その時が来るのを…。

 

そして………。

 

 

 

「うぅぅぅぅうぅぅうううううう!!」

 

 

 

クモ男が口から、即死レベルの毒を滴らせる強力な毒針を放った!

 

毒針は猛スピードでイストワールとの間合いを潰し、針先が彼女の喉へと―――

 

 

 

「今っ!!」

 

 

 

―――届かなかった。

 

 

集中していた意識を、魔力の流れとして解き放ったイストワール。

魔力は風の障壁へと変わり、毒針を弾き飛ばすと、自身もそのまま力強く地を蹴り、背中の翅を展開してクモ男へと迫る!

 

今の一撃をあっさりと防がれた事に驚いたクモ男は呆然とし、タイミングが遅れた。

 

 

ここしかない…。

 

 

イストワールは細剣を思い切り引き、再び魔力を細剣の先へと集中させる。

 

やがて、魔力が……電撃、炎、氷、風の四つの魔力が、細剣の刃へと纏わる…。

 

 

「あなたを……この世界から消去します!」

 

 

呆然と立ち尽くすクモ男の目前に、細剣の切っ先を勢いよく付き出す!

 

 

 

「エレメンタル・カルテット!!」

 

 

 

四つの魔力を纏わせた刺突が、クモ男の頭を抉った!

 

そこからクモ男の体内に、強力な魔力の激流が流れ込み、やがて、それはクモ男の体を内側から破壊していく。

 

 

「ううううぅぅうぅぅうぅぅぅううううううぅぅううぅうううううう!!」

 

 

最後の断末魔を上げる瞬間、イストワールは細剣を抜き、後ろに飛んで距離を取る。

遅れて、クモ男の体から四色の魔力が溢れだし、爆発!

 

 

たったの一撃で、イストワールはクモ男を撃破する事が出来た…。

 

 

「はぁ………はぁ………はぁ………」

 

肩で息をするイストワール。

 

しばらく、クモ男が爆発した場所をじっと見つめ…

 

―――勝て、ました…。

 

理解した瞬間に力が抜け、その場に座り込んでしまった。

同時にモード・アクティブも解除され元の姿に戻る。

 

「私も………守れた………守れたんですよね………」

 

うわ言のように呟く彼女の肩に、そっと手を置く一人の人物。

 

「ああ、そうだ……ありがとうな、助けてくれて」

 

進ノ介だ。

 

クモ男が倒された事によって、糸が解け、身動きが取れるようになったのだ。

彼女の心の内に、安心感が広がって行く。

 

そう言えば、こう言う時、彼は何というのだろうか?

 

しばらく、考えたのち、彼女はこう言うのではないかという言葉が浮かび上がった。

 

「…気にしなくていいです」

 

全く自分で誇ったりはしない、彼らしい言葉はこれなのではないだろうか?

そう思いながら、彼女は頬笑みを浮かべた。

 

その言葉に、同じように頬笑みを返した進ノ介が彼女の手を取り、優しく立ち上がらせた。

 

「もしかしたら、中の方にも奴らの仲間がいるかもしれない、早く合流しよう」

 

「はい!」

 

一番安心できるのは、今回はあのクモ男一人だけということなのだが、確認できない以上まだそうはいかない。

 

二人が急いでショッピングモールの中に向かおうとした、その時だった。

 

 

 

 

「がぁぁぁぁあああああああ!!」

 

 

 

突然、モールの壁を突き破って、誰かがこちらに吹き飛ばされてきた。

その人物は地面を数回バウンドして、丁度二人のすぐ近く転がって来た。

 

「っ! 神様!!」

 

それは紘汰だった。

しかし、体中がボロボロの傷だらけになっている、口からも血が流れてかなりダメージを負っているようだった。

 

「一体、誰が………」

 

イストワールが紘汰が飛んで来た方向を見ると………。

 

そこには、目を疑いたくなる光景があった……。

 

壁に出来た穴の前に立っていたのは、バッタを思わせる姿をした怪人だった。

両手両足に黒い手袋とブーツ、そして首に漆黒のマフラーを巻いた、血のように赤い複眼を持つその怪人の手には…。

 

 

 

「がっ……ぁ……あぐっ……」

 

「ギッギッギ………」

 

 

 

 

片手で首を掴まれ、持ち上げられている、変身状態でありながらも傷だらけになり、苦しそうにもがく、宗谷の姿があった…。

 

 

 

 

「…………宗谷さんっ!!!」

 

 

 

 

 

これが、俺の出会った、“最初の強敵”…。

 




いかがでしたか?

いーすんの戦闘モード、これはネプリバ1の方でDLCにいーすんが参加した時に前から考えていた設定です。
もし、いーすんが大人モードで戦うとしたら…?
と考えた結果がこれです、イメージは魔法剣士と言った所ですかね?



次回、宗谷を追い詰めるショッカーライダー・パーフェクト…。 その強さの前に果たして宗谷の運命は…!

それでは、次回でお会いしましょう…
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