今回はリーンボックスの日常編と言う事で宗谷があの子と出合います!
リーンボックスと言えば、あの子ですよね…
実は自分、結構彼女の性格好きなんですよね…
それではお楽しみください、どうぞ…
宗谷とイストワール、そしてベールの三人が仮面ライダーのヒーローメモリー、そして、ゲイムギョウ界に迫ろうとしていた危機を影ながら、人知れず救ったその日の夜。
宗谷に続いてイストワールとベールも無事に目を覚まし、三人は本当に終わったのだという安堵感と疲労感に襲われた。
疑似的な世界と言えど、精神的な疲労は完全には回復しないのは既に宗谷は知っている。
そのため、宗谷はその日、イストワールと共にリーンボックスで一夜を過ごすこととなった。
そして、
「…なんで、私まで一緒に?」
「あら、せっかくあんな激戦を潜り抜けたんですもの…水くさい事は言いっこなしですわ♪」
リーンボックス教会の大浴場、その隣に設けられている脱衣所。
ちょっとした温泉宿並みに大きな脱衣所で、ちょっぴり怪訝そうな表情を浮かべるイストワールと笑顔を浮かべているベールの二人がそれぞれ身につけている衣服を一枚一枚脱いでいた。
彼女たちがなぜここにいるのかと言うと、ベールがイストワールをここに誘ったのである。
その時の彼女の目が何か獲物を見据える犬の様にその場に居合わせた宗谷は感じた。
しかし、そんなことにまったく気付かなかったイストワールは渋々彼女に着いて行ってしまった。
「それとも、私と一緒というのはイストワールにはご不満かしら?」
「いえ、そう言うのではないんです……ただ、プラネテューヌの教祖である私がリーンボックスの教会でお世話になってしまっていいのかと…」
「まあまあ、そう言わずにせっかくいらしたんですし、共に向こうの世界で貯めた疲れを一緒に流しましょう? ほら、ぐずぐずしてたら風邪を引いてしまいますわ!」
そう言って、尚も渋るイストワールのスカートを問答無用で下ろすベール。
「ひゃあ!?」
「ふふふ……ほらほら、上も脱がないと……はぁ、はぁ……」
「ま、待ってください!」
何か不吉なオーラを感じさせるベールの笑みから何か危険な物を感じ取ったイストワールは上着の下半分を慌てて両手で引っ張って露わになったショーツを隠す。
恥ずかしそうな顔で後ずさる彼女を見て、ベールはふと意地悪そうな笑みを浮かべる。
「……それとも、私ではなく宗谷の方がよろしかったでしょうか?」
「えっ!?」
ニヤニヤとした笑顔を浮かべて言われた言葉にイストワールは一瞬頬を赤くして、その状況を想像してしまった…。
『ほら、いーすん……足、抜いて……』
『そ、宗谷さん……恥ずかしいです……』
宗谷の手によって自分のスカートを下ろされる姿を思い浮かべたイストワールはすぐさまその妄想を振り切るかのように首を左右に振る。
「そ、そんなこと何で聞くんですか!?」
「うふふ…やはり、あなたにとって宗谷は“特別”、ですのね…」
ベールが言った言葉に、一瞬イストワールは何を言っているのかその言葉の意味を理解できずに首を傾げる。
そんな彼女の事を知ってか知らずか、ベールはまた和やかな笑顔を浮かべる。
「でも………私も負けませんわよ?」
そして、何か挑戦的な表情でそう言ったベールを見て、イストワールはますます訳が分からなくなった。
確かに自分は彼の事をちょっと特別な意識を持って見ているのは自覚している、ただそれは彼がいつも世話を焼く“弟”のような感じだったり、時折見せる頼れる“兄”の様な姿を見ているような感覚に近い。
自分でも未だにそれが何なのかはっきりと分からないままだった彼女は頭の中を疑問符で埋めるだけだった。
「………それに、私と宗谷が一緒になって、イストワールも家の教会に来てくれれば…うふふふ…」
ベールが何かを言っているような気がしたのだが、追求するのが怖い笑い声を上げている彼女を見て、イストワールは質問するのは自重しておくことにした。
手早く衣服を脱いだイストワールはこちらもいつの間にか衣服を脱ぎ終わっていたベールと共に浴場へと入った。
そこは、プラネテューヌ教会のお風呂場とはまた違った作りで、一言で言うなら豪華絢爛。
こういう高級スパがあっても通じるくらいの造りをした大浴場だった。
シンプルイズベストと言う作りをしているプラネテューヌとは大違いである。
そんな大浴場の造りに圧倒されつつも、二人は湯船につかる前に体を洗うためシャワーの方へと向かった。
イストワールが体に巻いていたタオルを取り去り、自分のすぐ近くに綺麗に畳んで置く。
「お背中、お流ししますわ♪」
「わっ!?」
突然後ろから声をかけられて、イストワールは驚き自分の髪をツインテールに結わえていた片方のゴムを外した所で硬直してしまった。
すぐさま後ろを向くと、そこにはにこにこと笑顔を浮かべながら、お背中、と言っていたはずなのになぜかシャンプーのボトルを手に取っているベールがいた。
「あの……それ、シャンプーですよね?」
「あらーまちがってしまいましたわー」
「なんで、棒読みなんですか…?」
「細かい事は気になさらずに♪ サービスと言う事で…」
イストワールの質問をあっさりと流したベールはボトルに入っていたシャンプーを手に出しゆっくりと泡立て始める。
「あの、一人で大丈夫です…女神様にこんなこと……私には……」
「うちの“チカ”なら喜びそうですけどね?」
「そもそも私はチカさんじゃありませんし…」
“チカ”と言うのはリーンボックス教会の教祖を務めている少女の事だ。
女神の中で唯一、妹を持たないベールを“お姉さま”と姉同然に呼び慕っている彼女は今現在別件の仕事をベールに頼まれて教会を留守にしている。
もし、この現場を彼女が見たらどうなっていた事だろうか…。
「まあ、チカの事はいいとして……さあ、一度シャワーで髪を流してくださいまし、私が洗って差し上げますので」
「は、はい……」
ここまで言われたら流石のイストワールも断りづらくなったのか、さりげなくチカの扱いが雑に感じるベールに従い、イストワールはもう片方の結わえた髪をほどき、ウェーブのかかった自分の髪にシャワーから出した程良い温度のお湯をかける。
一通り流した所で、ベールは待っていましたと言わんばかりに泡立てていたシャンプーでイストワールの髪を洗い始める。
「痒いところがあったら言ってくださいね?」
「は、はい…」
そんな受け答えをしつつ、イストワールの髪を優しい手つきで丁寧に洗っていくベール。
されるがままのイストワールは少し緊張気味なのか、肩に力が入っていた。
「イストワールの髪……柔らかくて、綺麗ですわね」
「そ、そうですか?」
「ええ、こうして大きくなったからはっきりと分かりますわ」
「………それって、前の私だと小さすぎて見えなかったってことになりませんか?」
「何の事でしょう♪」
イストワールの言葉を笑顔でスルーしつつ、ベールは何故かうっとりとした目つきで鏡越しに映るイストワールを時折、ちらりちらりと見る。
その行動は既にイストワールは気付いていたのだが、何を考えているのか理解できない彼女はとりあえず見て見ぬふりをしてその場はスルーに徹した。
「そ、それじゃ…流しますわね…」
なぜか、何かを堪えるような声で髪に着いたシャンプーの泡をシャワーのお湯で流す。
水を含み、しっとりと濡れたイストワールの髪が体にぴったりと張り付く、結わえていた髪を解いているのもあってかその姿はまるで別人のよう。
「………はぁ、はぁ……これは、予想以上に……」
「あ、あの…ベールさん? どうかなさいました?」
「はっ! い、いいえ別に何でもありませんわ!」
慌てて手を振って誤魔化すベールだったが、イストワールを見ていた目がどこか邪に見えたのは言うまでもない…。
「………」
「なんで警戒して体を隠すんですの!?」
「いえ、ただ…なんとなく…」
自分の体を抱くようにしてベールの事を警戒した眼差しで見つめる。
流石に危機感を感じ始めたイストワールだったのだが…。
「さ、さあさあ、まだ体が洗い終わってませんわ! ほら、前を向いて!」
「え、ちょっ…」
「早く!!」
「は、はい!」
血気迫る勢いで言われ、イストワールは反射的に前を向いてしまう。
彼女は気付かなかったのだが…この時、ベールがにやりと笑った。
その笑みは、計画が成功したのを確信した勝利の笑み………のように感じさせる感じの笑い方だった。
「で、では……さっそく……」
ベールは恍惚とした顔でスポンジにボディーソープを……
垂らすように見せかけて、ちゃっかり自分の手にボディーソープをかける。
そして、いろんな意味で不安を抱えているイストワールの体の前側へと気付かれないようにそっと両手をまわして…
「えい♪」
「きゃあっ!?」
小ぶり、と言うよりかはほんの少し、本当にほんの少しありそうな体が大きくなってもサイズはさほど変わらなかった彼女の胸と、程よくしまった腹部のあたりを抱えるようにして彼女に抱きついた。
身長差もあってか、イストワールの体はベールの腕の間にすっぽりと包まれる。
「ちょ、ちょっとベールさん何を!?」
「ああ…この抱き心地、このスマートでほっそりした体、そしてこの綺麗なゆるふわな髪…もう我慢できませんわ~!」
「い、いやぁぁぁ!?」
「ネプギアちゃんも十分にかわいいですけど……大きくなったイストワールも、こうしてじっくり見て触ってみると……なんだか、こう…溜まらないものがありますわ~♡」
「べ、ベールさんそれ以上は…あ、そこは……や、め…んっ!」
何かのタガが外れたのか、むぎゅむぎゅとその両手でイストワールを抱きしめつつ、体をボディーソープの付いた手で撫でまわすベール。
にちゃにちゃという泡立ったボディーソープが艶めかしい音を出し、さながらそれは後一歩で年齢指定が付きそうな感じの光景である。
「ネプテューヌから連絡を聞いた時はまさかと思いましたけど……じっくり目にするとなかなかどうして……はぁ、あなたの魅力に気付かなかった私をどうか許してください…」
「そんな…ことは……はぁっ…い、いですから……んぁっ!?」
「この未発達、いえ、発達前のような小さな体……それに、私と同じ金髪の髪……まるで、まるで私の“妹”のように思えてなりませんの~!」
「ひやぁぁぁぁぁぁっ!?」
まさかそんな事を考えていたとは露知らず、イストワールはされるがままにベールに体をボディーソープで撫でくり回される。
確かによくよく見てみると、いつもツインテールだった金髪は解かれて長髪になり、顔こそ違うように見えるが一見するとさながら“姉妹”のようにも見えなくもない。
姉妹と言う存在に強い憧れを持つベールからしてみれば、そう感じても不思議ではないのかもしれないが…
そもそも、彼女が小さいサイズのままだとそうは思えなかったのだろうか…?
体を走るくすぐったいような妙な慣れない感覚に絶叫を上げるイストワール、しかし、そんなことお構いなしにベールはさらなる手段を使い、彼女の体を堪能しようとする…。
「さあ、背中も…しっかりと洗ってあげますわ…ふふ、ふふふふふ…」
「い、いったい…なにを…ひゃうっ!?」
途端にイストワールの背中に冷たいとろりとした感触が広がった。
ベールが片方の手であらかじめ蓋を開けて置いたボディーソープを彼女の背中に流し始めたのだ。
「怖がる事はありませんわ…すぐに気持ち良くして差し上げますから…」
そしてベールは更に体を密着させる。
すると、彼女の豊かな胸がイストワールの背中にぴたりと吸いつくように押しつけられる。
「はわわ…」
背中に感じる程良い弾力のすべすべとした二つの極上の感触にボディーソープの泡のぬめりも相まって言い表せないほどの感覚を背中で感じ取るイストワール。
更には、再びベールの両手が動き始めて………。
「さあ……隅から隅までお互いを知ることから始めましょう、イストワール♪」
「い、いやぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」
その後しばらく、二人の激しすぎるスキンシップは続いた…。
なんか、教会の方でいーすんの声が聞こえた気がする……
……まあ、気のせいかな?
俺はベールといーすんがお風呂に入っている間、一旦教会の外に出て夜の散歩をして時間を潰すことにした。
こうして夜空を見ながらの散歩って言うのも、たまにはいいもんだ。
涼しげな夜風を感じながら俺が今歩いているのはリーンボックス教会の近くにある小さな森の様な所。
一応リーンボックスの国内にあるのでフィールドではない、これ重要な?
まあ、とにかく俺は今二人のお風呂タイムが終わるまではここで暇つぶしをすることにした。
「………それにしても、あの時のベールの目………なんだったんだ?」
二人がお風呂場に行く前にベールが見せた獲物を見つけた狼のような鋭い目…。
ややこしい事になってないといいけど……大丈夫かな、いーすん……。
「はぁ……はぁ……ベールさん……んくっ…もう、許し、て…ふあっ……あぁっ!」
「あぁ、いいですわ…ネプギアちゃんと引けを取らないすべすべの肌とやわらかなこの感覚………二人の妹と言うのも、いいですわね…うふふ♪」
※(大丈夫じゃありませんでした)
なんて事を考えつつ、前へと進み続けていると…。
「おぉ…隠れた名所発見…」
やがて俺は綺麗な湖に来た。
空に浮かんでいる月を反射している湖面はまるで宝石のように美しく、それでいて神秘的な雰囲気を感じさせる。
俺は近くに生えていた木の陰に腰をかけて、その風景をブイホに備え付けられたカメラでパシャリと撮る。
そして、カメラに保存されたのを確認して、俺はブイホのホーム画面に新たに追加された俺の新たなスキルを見つめる。
(メモリーワールドで俺が変身したあの姿……そもそも、俺は何でこの力を手にしたんだろう……)
仮面ライダーのメモリーワールドの出来事もそうだが、なによりあの時、完全変身したことで得た強力なパワー、そして、“スキルチェイン”の能力。
プラネテューヌの遺跡で赤剣を手に入れて以来、俺の中で芽生えたこの力は未だに謎が多い…。
そもそも俺は何でこの世界に来てしまったんだ…?
この力を手にしたという事は、やっぱり何かしらの理由があるはずなんだ…。
でも、それが未だにはっきりしない…。
考えれば考えるほど頭がもやもやする…。
そして、気になる事はもう一つ…。
「ヴィクトリオン・ハート………」
ルウィーでブランから教えられた大昔に現れた伝説の魔神、“ヴィクトリオン・ハート”。
これが今の俺の力と関係がある可能性が唯一高いのは間違いないんだろうけど…。
「話だけ聞くと、どうにも負に落ちないんだよなぁ……」
大昔に戦争ばっかり起こしてた女神と共に消えた、それだけ聞いたら女神と対立するような存在にしか思えない…。
少なくとも、今のネプテューヌ達が作り上げたこのゲイムギョウ界はその時と比べたら遥かにましだろうし…。
やっぱり、はっきりしない謎な部分が多すぎる…。
「本郷さんは、何があっても前へ進めって言っていたけど……」
これじゃまるで、ボードゲームの本筋の目的も分からないままコマを進み続けているみたいだ…。
でも、
「………まあ、誰かを救える力には間違いないんだし……別にいっか」
俺が憧れた主人公キャラ達が協力してくれるってことは、この力はきっと誰かを守る、救うための力には違いない…きっと、そうだ…。
俺はそう信じてブイホをポケットの中に戻す。
すると、
――― ~~~♪
「………歌?」
どこからか、とても静かなメロディーが聞こえてきた。
澄んだ声で奏でられているその曲を、俺はどこかで聞いたような気がした…。
「……えっと……ふ~ふ~ん、ふ~……で、この音程だから……確か……5pb.ちゃんの曲?」
鼻歌で確かめたり音のパターンで浮かんだのは、俺といーすんがこのリーンボックスに来た時に巨大電光掲示板から流れていた、“5pb.ちゃん”の歌っていた曲だった…。
自分で言うのもなんだけど、俺は絶対音感を持っている。
伊達に施設でチビたちの前でピアノを弾いたりしてたわけじゃないんだぞ?
「………えっと、こっちからか?」
俺は立ち上がり、声を頼りにして歌の聞こえる方へと足を進める。
湖面の畔を辿るようにして進んで行くと、次第に聞こえる声が大きくなっていった。
「…近いな、たぶんここら辺に………?」
一番大きく聞こえる所まで辿り着き、辺りを見渡す。
すると、俺はある人物を見つけ、驚きのあまり咄嗟にすぐ近くの木の陰に隠れてしまった。
「うっそ……あれ、5pb.ちゃん本人!?」
そこには湖の畔で一人、歌っている5pb.ちゃん本人の姿があったのだ。
あの露出多めのピンクのフリルが特徴的な服とお腹にあるト音記号とハートを合わせたマーク、海の様なサファイアブルーの髪に俺好みな二本のアンテナ付きの近未来風のデザインのヘッドホン。
見間違うはずもない、ここに来る途中…メモリーワールドに飛び込む前に見た電光掲示板で見た、5pb.ちゃんの姿そのものだ!
マジかよ、こんなとこでアイドルと出くわすなんて…。
俺の中じゃテレビとかに出てくる人って、もはや色違いのポケットなモンスターに遭遇するレベルなのに…まさか、こんなばったり出くわすなんて…
…声とかかけていいのかな?
え…でもなんて声をかければいいんだ?
こんな状況、そうそうないから分かんないぞ?
「~~~♪」
俺が木の陰で四苦八苦している間にも、歌の練習をしているのか、5pb.ちゃんは一人歌を歌い続けていた。
夜空の月の光でぼんやりと照らされるその姿は、まるで湖に現れた妖精…。
……こうして見ると、かわいいな……
いや、俺アイドルとかあんまり興味なかったんだけど…、素直にそう思えるわ。
整った顔立ちの上にあの美声、そりゃファンも多くなるってもんだわ…。
…やっぱ、声とかかけてみようかな…こんな機会、もう一生ないかもしれないんだし…。
でも、どういう風に話しかければいいんだ?
サインください? いやそれじゃあからさま過ぎるし…。
いい歌ですね? 何様だよ…。
キミかわうぃ~ね! ……論外だよバカ野郎。
ダメだ、まともな考えが出てこねぇ…。
う~ん、やっぱここは静かに見守っとくべきかな…、もしかしたら向こうは練習中なのかもしれないし…。
「~~~♪ ………あ」
「………あ」
やべ、気付かれた上に目が合っちゃった…。
「………」
「………」
気まずい沈黙が辺りを包み込む。
そこからしばらく俺と5pb.ちゃんはお互い目があったまま微動だにしないという状態を数十分くらいあるいは数秒くらいか短いような長いような間続けて、この空気に耐えかねた俺は…
「えと………初めまして」
とりあえず、笑顔であいさつしとけばイメージが悪くなる事はないだろうというその場しのぎの考えで挨拶をしてみた。
しかし、帰って来たのは予想打にしない反応だった…。
「き、きゃぁぁぁあああああああああああああああああああ!?」
突然叫ばれた!?
俺は驚きのあまり、どうしていいか分からず両手を右往左往させる。
ていうか、俺あいさつしただけなのになんでそんな叫ばれるの!?
「え!? ちょ…なになになに!?」
「あわわわわわわわわわ………」
「え、え、え………え~っと?」
「ひゃあああああああああああああ!?」
俺の姿を見た途端、慌てた様子を見せた5pb.ちゃんは再び叫びながらその場から逃げ去ってしまった…。
え~…どういう事これ?
俺ただあいさつしただけなのに、なんで不審者みたいな反応で叫ばれなくちゃいけないわけ…?
俺なんか変な顔してたかな?
それとも、俺の服装は黒が多いからイメージ悪く見えたのかな?
どっちにしても、イメージ最悪だろうけども………。
「………どうしよ?」
その場で呆然と立ち尽くしたままの俺は暫し考えて、彼女のあとを追う事に決めた。
このまま誤解されたままってのも癪だし、なにより驚かしてしまった事を謝りたい…。
俺はそう決めて彼女が走り去って言った方向に走り始めた。
走る事数十分、再び森の中に入った俺は彼女が走ってきたであろう道なき道を進み続ける。
そして、やっとのことで…
「あ、やっと見つけた……」
ようやく彼女の姿を見つける事が出来た。
彼女は木の陰に座って、どうやら休憩しているようだった。
俺はまた気付かれないようにこっそりと木の陰に隠れつつ彼女の様子を窺う…。
「………~~~♪」
また歌い始めた…。
やっぱり、歌の練習中なのだろうか…。
穏やかな声色で歌っている彼女の姿はさっきの慌てふためく姿とは全く似ても似つかない。
それにしても、なぜあそこまで驚く必要があったのだろう…。
謎は多いが、ここで留まってても仕方がない、一度彼女に声をかけてみよう。
せめて、一言謝るくらいならアイドルだってプロデューサーだって許してくれるはずだ。
決心した俺はゆっくりと彼女に再び近づく。
「こんばんは~…5pb.ちゃん、ですよね?」
出来るだけ優しい口調と笑顔で声をかける…。
「………」
そして、再び辺りを包み込む沈黙…。
…嫌な予感がする。
「き、きゃあああああああああああああああああああ!?」
「ストーップ!! 落ち着いて、別に怪しいものじゃないから! ただ驚かしてごめんって謝りに来たんだよ、今も驚かしちゃったみたいだけども!!」
再び叫び、逃げ出そうとした彼女を俺はすぐさま呼び止める。
まだびくついている様子だったけど、なんとか足を止めてくれた5pb.ちゃん。
俺は彼女をなだめつつ、なんとか同じ轍を踏まないで済んで一安心する。
しかし、肝心の5pb.ちゃんは未だに俺と目を合わそうとしてくれない。
え、俺ってそんなに嫌われてる? 会って2、30秒くらいしか経ってないのに? だとしたら相当ショックなんだけど…
「………それにしても、リーンボックスの電光掲示板で見た時とだいぶイメージが違うな………まるで別人みたいだ」
「…っ」
俺のなんとなしな独り言に反応してか、5pb.ちゃんがびくりと体を震わせた。
おお、さすがアイドル耳もいいんだな…って感心してる場合か…。
「こ、来ないでください…」
「あ~……驚かせたのは本当に悪かった、でもこっちは…説得力ないだろうけども、別に怪しい者じゃないから安心してくれ、あと服が黒いからってお酒の名前をコードネームにしてる黒の組織とかと勘違いしないでくれよ?」
「……あうぅ」
必死に弁解しても、5pb.ちゃんの警戒が解ける様子もない。 ここまで警戒されるといっそ清々しい物を感じるな…。
いや、別に俺はそんな趣味は持ち合わせていないからな?
「お願いします…来ないで……来ないでください…」
「俺も悪気があったわけじゃないんだ、本当ごめん……あんた、アイドルの5pb.ちゃん…なんだよな?」
尚もすっごいおびえた目で俺を見る5pb.ちゃんに俺がさりげなくそう確認すると…
「ひ、人違いですぅぅ!!」
「えっ……のわっ!?」
再び彼女はものすごいスピードで俺の横を突っ切って、走り去ってしまった…。
…人違いって、いやいや、他人の空似にしてもそっくりすぎるだろ…。
一人取り残された俺は、彼女が走り去って行った方角を見つめたまま暫くそこで立ち尽くすしかなかった…。
しばらくして、俺は彼女の事は諦めて教会に戻ることにした。
どうせ今回限りの出会いなんだし、また出会う事もないだろうし、しつこく付きまとってたらストーカーとかと勘違いされそうだしな。
それにしても、あそこまで引かれるとは…結構ショックだわ…。
この傷ついた心は、何らかの方法で癒すとしてまずはさっき走って余計に疲れた体を癒したい…。
そう思って教会に戻ってみると…
「ひくっ……ぐすっ……」
「はぁ……満足ですわ…」
………何があった?
いーすんは涙目でなんかどんよりとしてるし、ベールはつやつやして満足そうな表情を浮かべてるし…。
俺がいない間にベールといーすんは何があったの…?
数多き謎を残したまま、俺はとりあえずこの状況には触れたくなかったので一人でさっさと風呂に入ってベールが用意してくれた俺の部屋で寝ることにした…。
翌日、俺は早くに目が覚めた。
特に目立つようなことはせずに手っ取り早く持ってきた着替えに着換えて、洗面台で歯と顔を洗って目立つ寝癖を直す。
そしてベールの部屋へと向かい、朝の挨拶をしようと彼女の部屋の方へと向かう。
恐らく隣の部屋にいるはずのいーすんは先にベールの部屋に言っている事だろう、いつも早起きの彼女だから別にネプテューヌみたいに起こす必要もないはずだ。
ベールの部屋の前へと来ると、中から何やら話し声が聞こえる。
予想通り、先に起きていたいーすんがベールと話でもしているのかな?
昨日何やら不穏な空気漂う様子だったけど…
俺は気を取り直して二人に挨拶すべく、ベールの部屋の前に立ちドアを二回くらいノックする。
「ノックしてもしも~し?」
『あ、どうぞですわ~』
了承を得たことで俺はドアノブをまわして部屋の中へと入る。
するとそこには案の定、昨日と変わらず人当たりのいい優しい笑顔のベールが対面に座る、いーすんと………
あれ? いーすんじゃない?
ていうか、この人…。
「あ、宗谷は初めてお会いするのでしたわよね? この子は、私の国、リーンボックスが誇る歌姫…“5pb.”ちゃんですわ」
「………」
再び、昨日の夜と同様に固まったままお互いを見つめる俺と、昨日と変わらない格好をしていた5pb.ちゃんが三回目の邂逅を果たした。
そして、次に出たのは…
「「えーーーーーーーーーー!?」」
互いの口から出た、驚きの絶叫だった。
昨日と変わらず、肝心の5pb.ちゃんは怯えに怯えきった表情だったけども…。
この日、俺はリーンボックスの歌姫と出合いました。
いかがでしたか?
次回は、5pb.と宗谷がやっと落ち着いて会話を…そして、また何やら不穏な空気が?
それでは、また、お会いしましょう…。