超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。

今回はリーンボックスの5pb.登場編、5pb.編と言っておきながらメーカーキャラがもう一人でてきますが。

まあ、とにもかくにも、本編をお楽しみください!

どうぞ…。


stage,29 俺と歌姫、歌ってみた

 

「つまり、彼女……5pb.ちゃんはアイドルなんだけど極度の人見知り、と?」

 

「ええ、そう言う事ですわ」

 

ベールの部屋で偶然にも再会を期してしまった俺と5pb.ちゃん。

俺と対面する形で座っているベールの横で未だに不安げな表情でこちらを見ている5pb.ちゃんをちらりと見る。 すると、それに反応してか5pb.ちゃんはびくりと体を強張らせた。

 

 

俺と彼女の絶叫の二重奏の後、事情を飲み込んだベールが5pb.ちゃんの事を俺に教えてくれたおかげで最初に彼女と会ったときになぜ俺を見るなり絶叫を上げて逃げだしたのかは理解できたのだけど…。

 

「人それぞれ苦手な物はあるだろうけど……まさか人見知りとは……」

 

「その………ごめんなさい………」

 

「いや、謝ることないって…何も知らずに急に声かけた俺の方に落ち度があるわけだし、別にどこかに言いふらしたりなんかしないからさ」

 

「ひっ…」

 

「いや、だから言いふらさないって……」

 

警戒心バリバリの彼女の緊張をほぐすためになるべく笑顔で接して見るも、効果は薄いか…。

同性のベールとかならまだしも、俺は異性の男だし何より初対面なんだ…仕方ないこととはいえ…この空気は結構きついなぁ…。

 

「……そう言えば、ベールとは仲がいいみたいだけど?」

 

空気に耐えきれなくなった俺はベールに話を振る。

 

「ええ、彼女とはデビュー時代から付き合いがありますの、これでも一時期は彼女のプロデューサーなんかも務めたくらいですのよ」

 

えっへんと言いたげに発育のよろしすぎる胸を更に張るベール。 今その反動で胸が揺れた、久々にいいもの見れた気がする…。

 

それにしても、ベールがプロデューサーか…。 この人、どれくらいのレベルかは知らないがゲーマーだから、そう言う育成系の分野もそつなくこなせるのだろうか…、だとしたらゲームの感覚で5pb.ちゃんをリアルでトップアイドルにまで育てたベールの実力って……。

 

ベールの敏腕プロデューサーぶりに軽く身震いを感じた所で、ベールが隣にいる5pb.ちゃんの肩にやさしく手を置いた。

 

「この子、本当は素直でやさしくて、とても頑張り屋ないい子ですのよ? ここまでのアイドルになれたのも彼女の頑張りのたまものですわ」

 

そう言われて、5pb.ちゃんは気恥かしそうに頬を赤らめた。 なるほど、確かに素直だな。

 

「でも…こう言っちゃなんだけど…人見知りがひどいのによくアイドルになれたよな」

 

俺の言葉を聞いて、5pb.ちゃんが今度は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「仕事とか、大変じゃないのか? …ああ、でも仕事ぶりを見る限り特にそんな風には見えないよな…」

 

「その………ボク、ステージとかに立ったり……歌を歌ってる時なんかは……スイッチが…入るというか…没頭できるというか……」

 

「あ、なるほど……普段おとなしいのにバイクなんかに乗ったりすると、ヒャッハー! みたいになったりする感じの白バイの警察官みたいなのか…」

 

「…その表現はちょっと違うような気もしますけど…」

 

俺が自分なりの解釈で理解した所で、同時に彼女の人柄を徐々に理解する事も出来た。

確かに5pb.ちゃんは感情がすぐに表情に出てくるのを見ると素直と言うのは確かなようだ、それに仕事に没頭できるという解釈をするなら頑張り屋と言うのもあてはまる。

以上の事を踏まえるとこう言う純粋な頑張り屋系ヒロインは俺的に結構好みだ、ラノベとか漫画のヒロイン的に考えて。

 

それに何より、“僕っ子”と言うのが高得点だ。

 

頑張り屋で素直でアイドルで僕っ子、これは萌える!

 

とまあ、久々の萌えモードはこの辺にしておいて…。

 

せっかくだ、昨日何で森の中にいたのかも一応聞いておこう。

 

「で、昨日の事なんだけどさ?」

 

「えっ!?」(びくっ

 

「いや、そんな怯えなくても………まあ、答えたくなかったら答えなくていいんだけどさ、どうして昨日あの湖の畔で歌ってたのかな? やっぱ、歌の練習?」

 

「………それは……」

 

5pb.ちゃんは若干渋るように口ごもるが、小さく弱弱しい声だけどすぐに口を開いた。

 

 

「練習もそうだけど………悩んだりとか、落ち込んだりしたときは…よくあそこに行くんだ……」

 

「…悩んだり?」

 

 

5pb.ちゃんの言葉を俺は聞き逃さなかった。

つまり、昨日あそこに居たのも、なにか悩みごとがあったからという事になる…。

隣にいるベールも深刻そうな表情をしているな…

 

5pb.ちゃんが教会を訪れたのって…もしかして…

 

 

「ベール…彼女がここに来たのも、それが関係しているのか?」

 

 

ベールは少し間を開けてからしっかりと頷いた。

どうやら、ただの顔出しとかそんな軽い話じゃなくなってきたみたいだな…。

 

「……なあベール、何があったか教えてくれないか?」

 

「…よろしいのですか?」

 

「せっかくリーンボックスに来たんだ、ヒーローメモリーを見つけてくれた借りもあるし、手伝えることなら俺にも手伝わせてくれ」

 

俺が笑顔でそう言うと、ややあってベールも笑顔で返してくれた。

 

「分かりましたわ」

 

「ベール様……でも、これは…ボクの…」

 

「大丈夫ですわ、彼これでも結構心強い方ですのよ? それに、こう言う事に首を突っ込むのが大好きなようですし」

 

おっと、見透かされてたか。

 

まあ、目の前で困りごとを持ってる人がいるなら助けないってのがそもそも俺にとっては野暮な話だ。

こう言う事は、どうにも放っておけないんだよな。

 

「ま、そう言うわけだから…改めてよろしくな、5pb.ちゃん、今さらだけど自己紹介しとくと、俺はプラネテューヌに住んでる天条宗谷だ」

 

「ど、どうも……よろしく、おねがい……します」

 

「おう、よろしく」

 

俺がにかっ、と言う感じの効果音が似合いそうな笑みを浮かべると、心なしか彼女がうっすらと笑顔を浮かべたような気がした、ちょっとだけど警戒は解いてくれたのだろうか?

 

「…さて、では本題に」

 

―――コンコン

 

ベールが本題に入ろうとした所で部屋のドアを誰かがノックしてきた。

 

 

「失礼します、ベール様…」

 

 

ノックの後に入って来たのは、リンゴのように赤い髪のツインテールが特徴的な女性だった。

 

ひと目で見た感想は、ベールに負けず劣らずの美人だという事。

身長も高めでスタイルもかなりいい、出る所は出て締まっている所は締まっている感じ。

スラっとした太ももが眩しい、露出の多い特徴的な制服の様な衣服の効果もあってかまた何とも言えない…。

顔つきも凛々しい目つきが印象深い整った顔立ち、イメージ的にはいーすんとはまた違ったタイプのしっかりした人って感じだ。 大人なクールビューティーな女性、と言う感じだろうか?

 

 

「あら“ケイブ”ではありませんか、調べ物は済みましたの?」

 

「はい、一通りは………そちらは?」

 

 

ケイブと呼ばれた赤髪ツインテールの女性が俺の方を見て言った。

俺は立ち上がり軽く会釈する。

 

「彼はプラネテューヌに住んでいる私の友人ですわ、それに今回の事にも協力してくれるそうですわ」

 

「なるほど……初めましてね、私は“ケイブ”、リーンボックス特命課に所属しているわ」

 

ベールの説明を受けたケイブさんは俺の方に右手を差し出してきた。 あまり表情は読めないが友好的と見てくれたのだろうか? それに特命課と言ってたな……警察組織か何かに所属しているのか?

だとしたら、こちらとしても心強いな。

 

 

「プラネテューヌ教会の教祖補佐をしています、天条宗谷です、こちらこそよろしくお願いしますケイブさん」

 

 

俺は彼女の手を握り笑顔で自己紹介をする。

 

「………」

 

「…どうかなさいました?」

 

「いえ、その………今の天条さん、さっきとは雰囲気が違う気がして………」

 

「ああ、そう言う事でしたか…彼もあなたと同じように切り替えが早いのですわ、主に人に対してですけど」

 

なんか隣で俺の方を見ながら何か言っている気がするけども、とりあえずスルーしとこう。

これも仕事なんだ、別に俺の人柄どうこうは関係ない! あ、今誰かスルーしようとか言ってた割には聞いてんじゃねぇかとか思ってるやついたな?

 

とにかく、目の前にいる彼女、ケイブさんは俺にとっての今回の協力者となる人らしいし、プラネテューヌ教祖補佐を務めている俺としてもしっかりと対応しないとな。

 

「それで、今回の事というのは?」

 

「それも踏まえてさっきの調べ物について教えるわ……隣に座ってもいいかしら?」

 

「ええ、どうぞ」

 

俺は自分の隣の席を引いて彼女の席を確保する。

ケイブさんはありがとう、と言って俺の隣の席に座った。

 

「……その、狭くはない?」

 

「え? どうしてです?」

 

「いえ、その……私、体が大きいから……」

 

若干恥ずかしそうに俯き加減でそう言うケイブさん。

なんだろう、結構大人な女性に見えるけど、こんな些細な事を気にするとは…ギャップ萌えだ。

 

と、いかんいかん。

ここは軽く会話を挟んで少しこの人と距離を縮めてみようか、信頼関係を得れば損する事はないだろうし。

 

 

「別に大丈夫ですよ、それに気にしなくてもケイブさん、モデルさんみたいで俺的にはむしろ好ポイントですよ」

 

「………お世辞がうまいのね」

 

「事実です」

 

「………そう、ありがとう」

 

 

あれ? フォローに回ってみたのだけど、外したか?

う~ん、ケイブさん表情に出ないからどう感じているのかが分かりにくいな…。

 

「………」(じ~…

 

………なんか、さっきからベールが俺の事をじっと見てるんですけど?

 

なんかめっちゃ怖いんですけど? なに、俺何かまずい事でも言った!?

 

「…そ、それで今回の事と言うのは?」

 

俺が強引に話を戻すと、ケイブは思い出したかのように持っていた携帯端末を開いた。

そこから空中に四角い電子モニターの様な立体映像が映し出される。 さすがリーンボックス、進んでるな。

 

モニターに目を通すと、それ何かの基準を示した棒グラフが表示されていた。

 

「…このグラフは?」

 

「…これはここ数カ月の間の5pb.のシングル、およびアルバムのCDの売り上げを調べてそれを纏めたものよ」

 

「見て分かるように、ある時期を境に5pb.ちゃんのCDの売り上げが急に落ちていますの…」

 

ベールの言うとおり、一定の時期までは高い数を叩きだしていた売上枚数が、ある時期を境に急にがくんと減っているのが見て取れた。

一体どういう事だ?

 

「5pb.ちゃんは今もトップアイドルとして人気を得ている…それなのにCDの売り上げが急にこんなに落ちるなんて…」

 

「そう、これが最近5pb.ちゃんが抱えている悩みごと、と言うわけですわ」

 

なるほど、昨日の夜、湖に訪れていたのもこれが原因ってわけか…。

 

「………売り上げが落ちているのは、CDだけですか?」

 

「不思議な事にね………」

 

そう言うと、ケイブさんは別のグラフを映し出す。

内容はCDとは別のグッズ関連の売り上げグラフだ、何故かこれは減っていない、むしろ安定した数値を叩きだしている。

 

「………なぜCDだけが?」

 

「原因は不明、それを調査するために私が呼ばれたの…」

 

ケイブさんはそう言うと、端末を一度閉じてそれを仕舞った。

俺の向かい側にいる5pb.がさらに深刻そうな顔をして俯いている。

 

「………つまりはなぜ5pb.ちゃんのCDが急に売れなくなったのか原因を調べるってことでいいのか?」

 

「ええ、そう言う事になりますわね」

 

俺は再度確認するように言うと、ベールはそう返してくれた。

 

「このままいくと、彼女のアイドル活動そのものに支障をきたす可能性がありますし…なにより一ヶ月後のライブイベントにも影響が出かねませんわ…」

 

「…ライブイベント?」

 

「ええ、一世一代の5pb.ちゃんのリーンボックスでのライブイベントですわ」

 

ベールはそう言うと、また、あの胸の谷間収納を使ってそのライブのチケットと思われる物を取りだした。

…眼福にはなるけど、それってどうしてもやらなくちゃいけないのだろうか?

 

でも、彼女の言うとおりだ。

CDの売り上げ金はアイドルにとっても重要な物だというのは俺でも分かる…。

他のグッズで補えるとは言っても、これじゃこの先が心配になる…。

 

 

「……ここ最近、ずっとこんな感じで……もしかしたら、ボクの曲がみんなから……世間から遠ざかってるんじゃないかって……」

 

不安を隠しきれないと言った表情とどこか寂しさが入り混じった表情、その二つが合わさったような表情でそう言った5pb.ちゃん。

アーティストとしてはやっぱりそう言う風に感じるのかな?

 

でも、

 

「それは違うんじゃないかな?」

 

「……え?」

 

俺の言葉を聞いて、5pb.ちゃんだけじゃなく隣にいたケイブさんとベールも俺の方を視線を向けた。

 

「いくらなんでも、この減り方は人気がなくなったとか思う前に明らかにおかし過ぎる……ですよね、ケイブさん」

 

「…ええ、だから私も呼ばれたわけだし……彼の言うとおり、それは考えすぎよ5pb.」

 

「………でも」

 

それでも、どこか不安げな彼女の肩にベールが優しく手を置く。

 

「そうですわ、あなたが誰よりもファンの方達を思って曲を作っているのを私が一番知っていますし、何よりこの私がプロデュースしたアイドルですのよ?」

 

「ベールさん……」

 

優しく笑顔を向けるベールに、5pb.の表情がどこか明るくなったような気がした。

 

 

「何でこんなことになったのか、必ず解き明かしてみせる、だから5pb.ちゃん…安心してくれ」

 

 

俺がそう言うと、5pb.ちゃんは小さく、本当に小さくだけど頷いてくれた…。

まだ、表情に陰りは見えたままだったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、まずはどうするの?」

 

「実際に5pb.ちゃんのCDを取り扱っているショップに行って張り込み調査します」

 

5pb.ちゃんと約束を交わした俺とケイブさんはリーンボックスの街に出て調査を開始した。

道行く人の間を抜けて俺とケイブさんは近くのCDショップへと向かう。

 

ちなみに今外に出ているのは俺とケイブさんの二人だけだ。

 

5pb.ちゃんは言わずもがなアイドルだから何が起こるか分からない。 ベールは5pb.ちゃんの様子見で教会に残っている。

 

「犯人を捜すと言うの?」

 

隣を歩いているケイブさんが俺の提案に対してそう聞いてきた。

 

「いえ、まずは買い手、つまりファンの人たちが5pb.ちゃんのCDに対してどのような反応を示しているのかを調査するんです」

 

「なるほど…」

 

まずは実際に買う可能性が高い人たちの様子を見て何で売り上げが落ちたのかを調査する。

そこから何かわかる事があるかもしれないからな。

 

…それにしても、

 

「人多いなぁ……」

 

さすがリーンボックス、ラステイションもそうだったけど昼の時間帯になってくると人ごみが多くて仕方がない…。

ふと俺の隣を歩いていたケイブさんを見ると、

 

「あれ?」

 

いつの間にやらケイブさんは俺よりもはるか先の方に進んでいた。

 

よく見ると、ケイブさんはこの人ごみの中をすいすいと容易くすり抜けて行っている。

見失わないように必死に彼女に着いて行かないと、置いてかれるなこりゃ…。

 

 

 

なんとかケイブさんを見失わずに目的地に到着できた。

 

「はぁ…やっと着いた…」

 

「おつかれさま、大丈夫?」

 

「ええ、まあ………それにしても、ケイブさん足早いですね?」

 

俺が気になったのでそう聞くと、ケイブさんは若干自慢げに口元を上げた。

 

「これでも当たり判定は小さいのよ、この程度の弾幕…どうと言う事はないわ」

 

「弾幕…ですか…」

 

ケイブさん曰く、弾幕を躱すのは得意とのことだ…。

人を弾幕として扱うのはどうかとも思うけど、何気に役立ちそうでそうでないような特技である。

 

さて、早速本題に…

 

「あの、気になったのだけれど…」

 

「はい?」

 

店内に入ろうとした所でケイブさんが俺の肩を叩いてきた。

 

「あなた、プラネテューヌの教祖補佐なのよね?」

 

「ええ、まあ一応は…」

 

「話によるとその教祖様もこちらに来ているそうだけど………」

 

「ああ………一応呼んだんですけど…なぜか、部屋から出てきてくれなかったんですよね…どうしたんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐす……ひくっ………あんなことされて……もう、お嫁にいけません……」

 

※(まだ昨日の精神的な傷が癒えてませんでした)

 

 

 

 

 

 

 

今頃いーすんどうしてるんだろう? 昨日のこともあるし心配だな…。

 

帰ったらちょっと部屋に入れてもらえないだろうか…。

俺はそう思いながら本題の要件をこなすべくショップの中へと入った。

 

ここは、リーンボックスでも有数の大手企業が経営しているショップだ。

懐かしいものから最新のヒット曲まで幅広いジャンルの音楽関連の商品を取り扱っている。

 

自動ドアを潜って、店内に入ると店頭には早速5pb.ちゃんの最新シングルが予約できると言う宣伝文句が目立つ位置に張られていた。

 

「これが最新の?」

 

「ええ、彼女の新曲よ、初回購入特典に加え、予約特典には次回のライブイベント後に開催される限定サイン会の抽選権が同伴されているわ」

 

「わお、何気に豪華……」

 

これならファンがこぞって買いに来そうなもんだけど…。

特に繁盛しているようにも見えない…。

 

「………しばらく別の位置から様子を探りましょうか?」

 

「ええ、そうね」

 

俺とケイブさんはこのお店の商品棚の裏手に隠れて5pb.ちゃんのCDがどれだけ予約されるか、調査を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

数時間の見張りの結果、新曲のCDを予約した人の数は少なく見積もっても一桁というあまりにもな結果が監視によって分かった。

念のためケイブさんに頼んで、ネット予約をしている人たちがいるかどうか調べてもらった所、そっちの方も閑古鳥がピーチクパーチク状態だったらしい…。

 

話に聞いた時はまさかとも思ったけど、現実を見てしまうと嫌がおうにも認めざるを得ないな…。

 

俺とケイブさんは一旦店を出て休憩のために辺りをふらふらと歩きまわっていた。

 

「なぜこんなにも売れ行きが悪いのかしら…」

 

「……そうですね……」

 

問題はそこなんだよな…。

 

今を輝くトップアイドルの最新曲、それならコアなファンでも普通のファンでもこぞって買いに来るのが大体のセオリーのはずだ…。

どんな形であれ、欲しいものなら喉から手が出るほど欲しいのは一オタクである俺が一番知っている。

しかし、今日の店内予約をしてきた人は見ている限りかなりコアなファンなのだろうか、三枚も予約するあたりは本物だったな…。

 

 

「でも、全ての人が興味をなくしたわけじゃなさそうなんですよね…」

 

「…あなたも気付いてた?」

 

「ケイブさんも?」

 

「ええ、何人か気にはしていたようだけど、予約しなかった…と言うより予約したいけどするのを諦めた感じの人を何人か…」

 

 

そうだ、彼女の言うとおり俺は監視をするにあたって何人かそう言う人を目撃した。

見えないように棚の陰で様子を見ていると…、何やら一人の客が5pb.ちゃんの最新曲の宣伝告知と値段が書かれた札をちらちらと見つめてそのあたりを右往左往していたのだ。

 

しかし、その人は小一時間悩んだ結果、予約はせずに帰って行った…。

 

迷うようなそぶりを見せつつも、何故か買わないお客…。

 

「まるで、予約する事が出来ない理由があるみたいに……」

 

一体、ファンの間に何が起こっているのだろうか…皆目見当がつかない…。

 

俺が悩ましげに頭をガシガシと掻いていると…、ケイブさんが何かを見つけて足を止めた。

 

「ん? ケイブさんどうかしました?」

 

「あ……その、ちょっと、あれが気になって」

 

そう言って指差した先には、可愛らしい色合いが特徴的な移動式のクレープの出店があった。

店員さんが小さな子供にクレープを配っているのを見る限り、どうやら営業中の様だ。

 

「もしかして、クレープとか好きなんですか?」

 

「ええ、クレープと言うより…甘いものは特に…」

 

なんだよ、大人っぽい見た目なのにかわいい好物しやがって………萌えるじゃねぇか!

 

…まあ、丁度いいや。

さっきから頭使ってて疲れたし、休憩がてら甘いものでも食べるのも一興かな?

 

「ちょっと寄って行きますか?」

 

「え? いや、そんな…別にいいわよ…」

 

「遠慮しなくてもいいですよ、俺も結構甘いもの好きなんで」

 

俺はそう言うものの、何故かケイブさんは申し訳なさそうに目線を数回そらす。

どうかしたのだろうか?

 

「その………私、教会に財布を置き忘れて………」

 

「……ああ、そう言う事」

 

どうやら財布がないから自分の分が買えないと言う訳らしい。

でも、目がどうしても食べたいって言ってんだよなぁ…この人感情は表に出さないと思ってたのに、甘いもの目にした途端すぐに分かるようになったよ…。

 

しかたない、ここはひと肌脱ぎますか…。

 

「せっかくなんで、奢りますよ?」

 

「そんな、悪いわよ…」

 

「気にしないでくださいよ、一緒に捜査してる仲じゃないですか」

 

俺がそう言うと、ケイブさんは二三回俺とクレープ屋台を見てから少々恥ずかしそうに小さく頷いた。

まあ、欲望には勝てないよね、自分の好きなものとなったら…。

 

 

どんなものにしろ、“お金が足りなくて買えない”って言うのが一番………ショック………。

 

 

 

「値段……?」

 

「? どうかしたの?」

 

 

 

お金……、買いたい……、でも買えない……、買えないとすればどうすればいい……? 買える手段を見つける……、お金をためる……、でも時間がない……、手っ取り早く手に入る方法……、お金が足りる値段……、製品版よりも安く……。

 

安く………。

 

もっと安く………。

 

 

俺の頭の中をいくつもの考えがよぎり、それがまるでパズルのピースの如く繋がりあっていく。

 

 

「………確か買わなかった客は値段を気にしていたよな、ケイブさん?」

 

「え……ええ、確かに値段を気にしているようだったわ」

 

 

そうだ、買わなかったお客の何人かは最初は宣伝告知を見た後に、必ず値段をチェックしていた…。

当たり前のことなんだけど、普通のCDの販売価格としてはあの店の価格は至って普通だった…。

それでも、買うのを躊躇っていた…。

 

理由はたぶん…“お金が足りない”……あるいは……

 

 

 

「………製品版よりも破格の値段で安く買える算段を知っている………」

 

 

 

「っ!」

 

俺の呟きを聞いて、ケイブさんも気付いたようだ…。

 

「それって………」

 

「………ああ、これはさらに調べないといけないかもな………」

 

俺はポケットの中に入れていたブイホを取り出し、ある人物に電話をかける。

俺の知っている中でそう言うのに詳しい情報を調べてくれる知り合いだ…。

 

ちょっと、“痛々しい思い出”がある、俺のこの世界の友人に俺は通話をかけると三回コールした所で向こうは出てくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーンボックス教会のとある一室。

ここで5pb.は一人、自分の愛用のギターを片手に毎日欠かすことのない練習に励んでいた。

 

この部屋は5pb.が教会を訪れた時も練習しやすいようにとベールが特別に設けた部屋だ。

防音設備も完璧なうえに、宿泊もできるようにベッドなども完備されている。

 

「~~~♪………はぁ……」

 

ギターを鳴らしながら歌を歌っていた彼女だったが、急に歌うのをやめてベッドの上に座り込んでしまった。

愛用のギターを一旦手放してすぐ横に立てかける。

 

「………安心しろって言ってくれたけど………」

 

彼が言ってくれた言葉、それを信じていないわけではない。

ただそれでも、一人のアーティストとして今の現状を知って不安になっているのだ…。

 

自分が手がけた曲、それを聞いてもらえない…。

 

たくさんの人に聞いてもらいたかった自分の曲を、誰も聞いてくれない…。

 

そもそも、自分はなぜ音楽を作っているのか、それすらもぼやけ始めている…。

 

「……ボク、どうしたらいいのかな……?」

 

傍らに立てかけている自分と共にアイドルの道を走って来た相棒に聞いてみるが、相棒は何も言ってくれない。

 

「…答えるわけないよね」

 

なにをしているのだろうと、自分で自分をおかしく感じてしまう。

でも、そう言うジョークか何かをしていないと不安に駆られて仕方がなくなってしまうのだ。

 

作った曲が売れていないと言う事は誰も自分の曲に教訓してくれないと言う事なんじゃないか…。

 

そんな考えが自分の中を何度も何度も渦巻いてしまう。

 

気付けば夕暮れ時、やがて日は暮れて夜が訪れる…。

 

 

 

「へこたれてんなよ?」

 

 

 

突然聞こえた声に5pb.は一瞬どきりとして、慌ててドアの方に視線を向けた。

そこには昼前に自分を励まして、今起きてる事がなぜ起こっているのかを調べるために出て行ったはずの青年が片手に何かを持ってパタンと音を立てて閉まったドアの前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

宗谷がリーンボックス教会に返ったころ、ベールは一人自室で彼ら二人の帰りを待っていた。

程なくして部屋に駆け込んできた宗谷とケイブにベールはすぐさま駆け寄った。

 

「何かわかりましたの? 宗谷、ケイブ」

 

「ああ、まだ確証は得ていないけど…大方な…」

 

「今は彼の知り合いの筋からの情報を待っている所です」

 

「そうですの…」

 

無駄足にならなかったことへの安堵か、ベールがほっと胸をなでおろす。

対して宗谷は何かを探すように部屋の中をきょろきょろと見回していた。

 

「……5pb.ちゃんは?」

 

その問いかけにベールが少し気まずそうな表情を浮かべて下を向いてしまった。

 

「…実は、二人が出て行った後、部屋に籠ったままで……深刻そうな顔をしていましたから……」

 

「………あの子、いい意味でも悪い意味でも真面目だから…考え込んでないといいけど」

 

ベールとケイブの話を聞いて、宗谷はふむと考え込んだ。

真相は大方突き止めた、しかし、今起こっているであろう出来事を今の彼女の心理状態で話すのはどうにもいい気持ちがしない。

 

何より、自分たちが出て行く前の彼女の陰りのある表情が今でも色濃く脳裏に焼き付いている。

 

せめて、真相を話す前に彼女を元気づけられる事が出来ればいいのだが…。

 

宗谷はしばし考え込むような仕草を見せると、宗谷の脳裏にある言葉が浮かんで来た。

 

 

 

――――歌を歌ってる時なんかは……スイッチが…入るというか…没頭できるというか……

 

 

 

「………やっぱアイドルだし、これしかないかな?」

 

宗谷はそう言うと、ベールの方に視線を向けた。

 

「なあ、ベール、ちょっと用意してほしいものがあるんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、天条……さん」

 

「宗谷でいい、名字は堅苦しくて嫌いなんだ」

 

彼はそう言うと、片手に持っていた何かの黒いケースを床に置き、それを開いて中から何かを取りだした。

それは白と黒の鍵盤を持ったギターの様な楽器だった、所謂“ショルダーキーボード”と呼ばれるその楽器を5pb.は知っていた。

宗谷はショルダーキーボードのストラップを肩にかけて、専用の配線を近くに置かれていたアンプと接続した。

 

「あ、あの…なにを…」

 

「なんか、帰ってきたらベールが5pb.ちゃんが落ち込んだまま部屋から出てこないって言うもんだからさ、励ましに来た」

 

そこは隠すべき発言じゃないのかと5pb.は思ったが、宗谷はそんな事はお構いなしにショルダーキーボードの鍵盤を押して軽くリズムを奏でる。

 

―――~~~♪~~♪~~~~♪

 

「わぁ………」

 

彼が奏でたリズムは適当なものじゃなく、練習することで得た技術によるものだと彼女はすぐに理解した。

そつなく和音やコードを弾いている、彼の意外な姿に5pb.は一瞬目を奪われた。

 

宗谷は一通りの調整を終えると、再びキーボードケースの方に歩み寄り、何かを取り出した。

それは数枚の紙だった、彼はその内の数枚を5pb.に手渡す。

 

「え…あの、これって…」

 

「いいから、一度会わせてみようぜ?」

 

手渡されたのは数枚の楽譜だった、四本の線の列の中にはびっしりと四分音符や八分音符などの音符や休符が書き込まれている。

ギター用にアレンジされているようだが、その曲は5pb.には見覚えのない曲だった。

 

気になった彼女は楽譜の上に記されている曲名を読む。

 

 

 

「………『恋愛勇者』?」

 

 

 

聞いたこともない曲だった、この楽譜を渡して来た彼はタイトルを聞くと頬笑みを浮かべた。

 

「俺が個人的に好きだった曲だ、一度聞かせてやるから5pb.ちゃんは楽譜の通りにギターを弾いてくれ、俺はキーボードでやるからさ」

 

この曲は彼の世界の曲で所謂、ボーカロイド、というジャンルの曲の一つである。

その中でこの『恋愛勇者』と言う曲を選んだのは彼の直感的な選択で特に意味などない。

励ましになるようなメッセージを含んでるわけでもないし、今の彼女にぴったりというわけでもない。

 

 

ただ、宗谷にはある確信があった、誰よりも音楽に没頭できる、そんな彼女なら“必ず乗って来る”はずだと…。

 

 

言われるがままにギターを手に取った5pb.はピックを構え、いつでも弾ける体勢を取る。

 

宗谷はそれを確認すると、サインを出してタイミングを合わせる。

 

 

 

―――~~~♪~~~♪

 

 

 

まず、5pb.がイントロの部分を弾き始める。

ギターの音色が激しく躍動するようなリズムがアンプから響き渡り、楽譜を見ながら5pb.はこの時点でどんな曲なのか気になり始めていた。

 

宗谷はそれに続く形でショルダーキーボードの鍵盤を素早く叩き始める。

そして、近くに置いてあったスタンドマイクに近寄り…。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

彼の口から歌詞が流れ始めた。

歌い始めたのだ、その声は基本的に音域が狭いと言う男性のイメージを十分に補える歌唱力だった。

そして何より、5pb.は歌っている時の彼の感情を即座に感じ取っていた。

 

(…楽しそう…)

 

彼が指で奏でるリズムも、歌声も、何もかもが楽しんでいる…。

 

そして、自分の中にもその感情が伝わって来る…。

 

そして、そのリズムに共鳴するかのように、彼女の中にあった不安な気持ちが徐々に和らいでいった。

 

 

(ああ…そうか………ボクは最初、みんなに何かを伝えたくて歌を歌ったんだ……)

 

 

いつの間にか見失いかけていた彼女の音楽に対する思い、それが鮮明に彼女の中に浮かび上がった。

 

不安に押しつぶされそうで、自分が一番やりたい事を忘れていた…。

 

 

(どうすればいいかじゃない、ボクはこの気持ちをみんなに伝えたいから歌っていたんだ!)

 

 

そして、5pb.もまた一心不乱にギターをかき鳴らした。

宗谷と5pb.、二人の奏でるメロディーが部屋の中に鳴り響く。

 

最終的にはサビの部分を二人で合唱したりして……。

 

 

 

 

 

これが、俺とリーンボックスの歌姫のセッション…。

 




いかがでしたか?

やっぱ、彼女を励ますには音楽が一番ではないかな?
と思って、書いたお話です。
別に曲に深い意味はありませんが、個人的に好きなんですよね『恋愛勇者』。

さて、それではまた次回でお会いしましょう!
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