今回はコラボ編の中編、意外な出会いを果たした宗谷とヒロム君、そしてネプギアと宗谷が落とし穴に落ちた時のお話です。
それではみなさん、中編をお楽しみください!
どうぞ…。
前回、ギルドからの要請を受けて新たに発見された遺跡型ダンジョン、サンチピンチ遺跡に来た宗谷、イストワール、ネプテューヌ、ネプギアの四人。
遺跡に潜入し、謎を調査する中ネプギアのうっかりで宗谷とネプギアは落とし穴に早速ダイブし、ネプテューヌとイストワールの組と分断されてしまった。
そしてさらにその後、ネプテューヌとイストワールの目の前に謎の触手の群れが現れる。
二人がピンチに陥った時、どこからともなく表れた二振りの剣を携えた青年が二人を危機から救った。
何故か二人の事を知るこの青年、彼が麻痺毒で体が痺れているイストワールに治癒魔法を唱えようとした時。
疲労困憊した宗谷が合流した。
触手に襲われた二人の様子、そして見知らぬ男の姿を見た宗谷は盛大に勘違い、状況は一気に険悪ムードに陥った……。
果たしてこの二人はどうなってしまうのか…?
だが、その前に宗谷とネプギアがいかにして元のダンジョンに戻って来たか……
まずはそこから見て行こう。
「おおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉおお!?」
「め、目が回る~~~~~~~~~~~!?」
落とし穴に落ちた宗谷とネプギア、二人が落ちた落とし穴の下はなんと巨大ならせん状の滑り台になっていた。
強めにドシンと尻もちをついたと同時にとてつもない勢いで滑り台を滑って行った二人、なまじサイズが大きいから手すりもないためまるで転がるようにして滑って行く。
「て言うかネプギア、こうなる前にトラップの可能性とか考えなかったのかぁぁぁぁあ!?」
「ご、ごめんなさいぃ!! つい反射的にぃぃぃぃい!!」
滑りながらネプギアに説教をする宗谷、状況が状況なだけに叫ぶように謝り続けるネプギア。
二人がそんなやり取りを続けている中、宗谷は見た……。
「げっ! もう先がない!?」
遂に滑り台のゴールが見えた、だがその一寸先は暗闇、地面など見えない…。
彼は反射的に自分の隣に滑り込んできたネプギアの腕をタイミングよく掴むと、自分の方に引き寄せる。
「ふえっ!? あ、あの宗谷さん!?」
「しっかり掴まってろネプギア! 人生初………いや、俺にとっては人生ニ度目の紐なしバンジーだ!!」
「い、言ってる事の意味がわかりません!!」
「舌噛むなよぉぉぉ!!」
「いやぁぁぁああああああ!!」
叫び、二人の体を暫しの浮遊感が包み込んだ。
そして、そのまま放物線を描いて自由落下を開始する。
「きゃぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?」
「うおっ、やっぱきっつ!? ね、ネプギア女神化!!」
「むむむむむ無理です! 私まだ女神化したことありません!」
「諦めんなよ! なんで諦めんだよそこで! やれるやれる絶対出来る!! もっと熱くなれよ!!」
「熱い言葉を投げかけても無理ですぅぅぅぅ!!」
宗谷はネプギアに必死になって女神化を促すも、肝心の彼女は目に涙を浮かべてパニック状態になっている。
とてもこの精神状態では女神化なんて偶然でも無理だろう。
このままいつ下に到達するかも分からない、宗谷は意を決して持っていたネプギアの腕を強く握り、更に自分の方へと引き寄せるとその体を両腕で包み込み、抱き締めるような体制を取る。
そのまま自分が下、ネプギアが上に来るよう空中で体の位置を入れ替えて少しでも彼女への衝撃を和らげようという最後の手段に出る。
「そ、宗谷さん!」
「どうなるかはわかんねぇけど…安心しろネプギア! 俺がお前を守ってやるから!」
咄嗟にこのような言葉を言ってしまったのは彼がサブカルチャー好きと言う事が大きな原因だろう。
アニメ、ゲーム、ラノベや漫画や特撮でもこのような状況に置いて必ず一回は出るかもしれないベタ中のベタなセリフ。
しかし、こんな状況のせいか、その言葉に反応したネプギアの頬が一瞬だけ赤くなったのだが、宗谷がそれに気付く事はなかった。
あんな大口は叩いたものの、このままでは最悪の場合転落死、運が良くても大怪我は必須だろう…。
なぜこのタイミングであんな言葉を口走ったのか宗谷は軽く後悔していた。
(せめて空を飛べるスキルがあれば………くそ、なにも出来ねぇのかよ!)
自分に呪詛の言葉を投げかけ、更に強く彼女の体を抱きしめる。
そして、
やがて二人の体を冷たい、液体状の何かが包み込んだ。
いや、この場合はその液体の中に“飛び込んだ”の方が正しいだろう。
――――バッシャァァァァアアアア!
と言う音と共に二人は結構な深さがある四角いプールの様な物の中に飛び込んだ。
プールに溜まっていた水が落下の衝撃を抑え、二人が大怪我を負う事はなかったが代わりに背中から落下した宗谷には水面に強く打ち付けた時の独特の痛みが襲いかかった。
更に言えば、水中に潜った二人は当然驚きはしたものの、同時に呼吸が出来ないのも事実、すぐさま状況を把握した宗谷とネプギアは水面に向かって泳ぐ。
「ぷぅあっ! あああぁぁぁぁぁ……ちょ、背中、背中痛い! 絶対これ背骨やっちゃった!」
「ぷはっ! はぁ……はぁ……はぁ……」
背中を抑えながら悶える宗谷、必死に呼吸を整えるネプギア。
水面で立ち泳ぎをしながらしばらくその場に漂いつつ、状況を再確認する。
自分たちが飛び込んだプールのような場所は掘りも壁も上にあるはずのダンジョンと同じ石造りだ。
地下なのに結構明るく見えるのは回りに炊かれている松明によるものだろう、ぼんやりと明るい光が周りを照らし出している。
同時に上の方を見ると、自由落下した滑り台の先端が大分後ろの方にあるため、また昇るなんて至難の技は当然無理。
しかし、不幸中の幸いか、九死に一生か、下にプールがあったために助かったのは事実、二人はそのまま陸に上がれる場所がないかを探し、それほど離れていない所になんとか上がれそうな場所を見つけたので二人は泳いでそこまで移動しプールから出る。
「はぁぁぁぁ……死ぬかと思った……」
「は、はい……」
「それにしても下がプールになっているとは……俺達運が良かったなネプギ……」
宗谷はそう言って彼女の方に視線を向けた。
その時に彼は目にした。
水分を吸収した彼女の服が、ぴったりと体に張り付き姉のネプテューヌよりも発育がいいバランスが整った体のラインがはっきりと分かる事に………。
しかも、彼女の服は白い部分が多いため、若干透けて彼女が今日身につけている下着の色が見えてしまっている。
(……こ、これはなんとも……)
「……? あの、宗谷さんどうかしたんですか?」
気付いていないのか首を傾げるネプギア、じっくりと宗谷はそんな彼女の体を見ているのだがまだそれには気づいていない様だ…。
「………ピンクのストライプか………」
「……え? ………っ!」
宗谷のふとした呟きで遂に気付いたネプギアはとてつもない勢いで顔を真っ赤にし、慌てて両手で自分の体を抱きしめるようにして、胸のあたりを隠した。
「や、やだっ! 宗谷さん見ないでぇ!」
「お……おお、悪い」
そう言われてようやく視線を横にずらした宗谷、しかし自分の脳裏にはばっちりと先程のネプギアの姿が保存されている。
(これは不可抗力だ、決してわざとじゃない……)
そう自分に言い聞かせつつ自分が着ていたジャケットを絞り、水を切る宗谷。
対するネプギアは恥ずかしそうにその場に座り込んだまま動かない。
だが、ふと彼女が宗谷の方を見つめた。
「あ、あの……宗谷さん、さっきは……ありがとうございます」
「……? 俺なんかしたっけか?」
「え? あ、いえその! ……なんでもないです」
「……?」
すぐに顔を赤くしたままうつむいたネプギア、果たして彼女は何を思ったのだろうか…。
宗谷はそんな彼女の心境は理解できず、今はこの場からすぐさま脱出して上にいる二人と合流すべきだと考えた。
防水加工が完璧に施されているため、故障はしなかったV.phoneを取り出し、イストワールとの連絡用アプリ、“いつでもいーすん”を久々に使用するが音沙汰なし、と言うより通信用電波がここまで届いてないようだ。
「やっぱ圏外か……しゃあねぇ、自力で出るしかないよな」
彼はそう言うと、念のためとV.phoneのライトを起動し周りを照らし始める。
光で映し出されているのは松明が続く形で伸びる一本の道。
それ以外には見当たらない分、脱出へのルートはここしかないと判断した彼は目線を逸らしつつネプギアに声をかける。
「ネプギア、行けるか?」
「は、はいなんとか……うぅ、絶対にこっち見ないでくださいね?」
「………極力努力する」
二人はそう言うとその一本道を歩きだした。
だが、本当に大変なのはここからだった……。
道中、ネプギアが誤ってなにかのスイッチの様なものを踏んでしまうと……。
「典型トラップキターーーーーーーー!?」
「いやぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」
巨大な鉄球に追いかけまわされ……。
道中、ネプギアが何かに足を引っ掛けて、ぷつん、と何を切ると……。
「あ、あぶねぇぇぇえええええええ!?」
「ご、ごめんなさいぃぃ!」
壁に仕込まれた矢が発射され、宗谷の目の前ギリギリを通過して壁に突き刺さったり……。
道中、休憩と言う事で一度その場に腰を下ろした時、ネプギアが何かのスイッチの上に座ってしまうと……。
「おごぉっ!?」
「だ、大丈夫ですか宗谷さん!」
宗谷の頭上に金だらいが落下してきたり……。
とにかくその後もトラップのオンパレードに見舞われ、ネプギアが誤って作動させたトラップに宗谷が何度も引っ掛かると言う展開が続いた。
「……なあ、ネプギア……俺に恨みでもある?」
「ご……ごめんなさい……」
既にボロボロの状態になってしまった宗谷が、後ろを歩くネプギアに疑心感たっぷりの質問を投げかける。
ネプギアは申し訳なさそうに俯きながら歩き続け、何を言っていいのか分からず、ただ謝ることしかできないという状態になっていた。
ここまで作動したトラップの原因が全て自分、ネプギアは嫌がおうにも宗谷に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
(私、宗谷さんの足引っ張ってばかり……うぅ、どうしよう……絶対宗谷さん怒ってるよね……)
ほとんどの被害が宗谷に向いてしまっているため必然的に彼が怒っているのではないかと思えてならなかった。
現にさっきから宗谷はあまり喋らずに黙ったままだ…。
ネプギアが自己嫌悪に陥ったまま歩を進めていると……。
「きゃっ!?」
不意に足が何かに引っ掛かり、彼女は前のめりに転倒してしまった。
まさかまた何かのトラップを作動してしまったのかと思い、自分の足を見ると……。
「え? なに……これ?」
自分の足には見た事もないおどろおどろしい色合いの触手が巻きついていたのだ。
気付くと同時、触手が何本も彼女の両足に巻き付き彼女の体をあっさりと持ち上げてしまう。
「いやぁぁぁああああああ!? は、離してぇぇぇ!!」
逆さまに持ち上げられたために、反射的にめくり上がるスカートを必死に抑えつつネプギアは脱出を試みようと足を動かすが触手はそんな彼女をあざ笑うかのように彼女に近づいてくる。
触手が彼女の体にも巻きつこうとした、その時、
「ネプギアに何してんだコラァァアア!!」
彼女の声を聞きつけた宗谷が変身し、赤剣を振るって彼女の足に巻きついている触手を切り裂いた!
支えを失って落下し始める彼女の体を抱きとめて、触手がまた襲いかかって来る前に脱兎のごとく走り出して逃亡を図る。
「ったく、こっちはこれ以上ネプギアがトラップに引っかからないように気を使ってたのに……触手プレイは嫌いじゃないけどタイミングを考えろよ……」
「……え、宗谷さん今なんて……?」
彼が言った言葉を聞いたネプギアが彼の顔を見ながらそう聞くと、宗谷は彼女を抱き抱えた状態で走りながら答えた。
「これ以上ネプギアがトラップに引っかかると、俺もネプギアも身が持たないって思ってな……なら、これ以上引っかからないようにって俺が先を歩いてトラップがないルートに誘導していたんだ、あからさまあやしい物は避けるように歩いてな」
「じゃ、じゃあ途中からあまり話さなくなったのも……」
「集中してたからだな、身落とすと後が厄介だから」
あっさりとそう言った宗谷に、ネプギアは呆気に取られたような表情を見せる。
しかし、それはすぐに安堵の表情へと変わった。
「宗谷さん、怒ってたわけじゃなかったんですね……」
「怒ってもしかたないだろ、ネプギアもわざと引っ掛かってたわけじゃないんだし」
走りながらそう返した宗谷の、マスクに包まれた顔を見つめつつネプギアはそっと彼の肩に手を回した、振り落とされないようにしがみついたのと、安心したあまりにした行動である。
所謂お姫様だっこと言う状態で抱えられているのも少し気恥ずかしいものだったが、ネプギアは気にすることなく彼にしっかりと掴まる。
「……宗谷さん、ありがとうございます」
その呟きを彼は聞いたのか、それとも聞こえなかったのか、定かではないが彼はネプギアを抱えた状態のまま触手から逃れるために通路を走り抜けた。
ここまでが宗谷とネプギアに起きた出来事である……。
そして、なんとか触手から逃れ、上に続く階段を見つけた宗谷は、ネプギアを一旦下ろし二人一緒にその階段を上った。
長い階段を登り切り、上のダンジョンに戻って来た宗谷は、先程の状況に遭遇したと言うわけだ。
茶髪の青年に赤剣を向ける宗谷を見て青年は呆気に取られた表情を浮かべたままゆっくりと立ち上がり彼に語りかける。
「お、おいおいちょっと待てよ……何がどうなったら俺が強姦野郎になるんだよ?」
「そこにいる二人……服は着崩れてる上に、お前今いーすんの胸に触ろうとしてただろ、どっからどう見ても完全にヤル気満々じゃねぇか!」
「極端だなオイ!? いや、それは誤解だ! 俺は彼女に治癒魔法を……」
「問答無用じゃコラァァァァァァァアア!!」
「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!」
彼の弁解を聞かず、赤剣を大上段に振り上げた宗谷は素早く青年との距離を埋め、リーチに入るとその刃を勢い良く振り下ろした。
だが青年はその刃を両掌を合わせて受けとめた、所謂“真剣白刃取り”だ。
「な、白刃取り!?」
「あ、危ねぇぇ………やってみるもんだな」
あっさりと受け止められた事に驚く宗谷だったが、そのまま止まることなく刃を押し込もうとする。
しかし、青年は赤剣の刃を横に往なし、体勢が崩れた宗谷の隙を付いて跳躍、彼の上を飛び越えて距離を取った。
「…っと、なんだ今の…あいつどんな身体能力してんだよ……」
「あのさ………メタルヒーローみたいなカッコしてるあんた、まずは話を聞いてくれ……俺は別にあんたが考えているような事はなにも……」
「でも……そう簡単に逃がさねぇぞ!」
「だから話を聞けよオイ!!」
青年の話を聞かず、宗谷は問答無用で再び赤剣を振るう、青年はうんざりしながらも咄嗟に取り出した二本の剣を使って宗谷の斬撃を防御する。
しかし、この程度で宗谷は止まらない……赤剣を素早く引き戻し、連結したV.phoneの画面をタップしスキルを選択する。
『Skill Link! Sword art online』
「こいつで、どうだ!!」
スキル ソードアートオンラインによって強化された宗谷の剣撃が青年に襲いかかる!
「なっ!? 早っ……」
繰り出された刺突をギリギリで剣を交差させることで防いだ青年だが、続けざまに繰り出された横なぎの斬撃への対処が遅れた。
この時宗谷は相手はどうであれ人間と言うのに変わりはないという判断から青年に直撃する数センチ手前で止めるつもりだった。
しかし、
「リフレクト!」
彼が何かを唱え、それに伴い宗谷が数センチ手前で止めようとした刃が不可視の何かによって弾かれた。
よろめいた宗谷はすぐさま赤剣を構え直し青年と対峙する。
(なんだ、今のは………魔法か何かか?)
(どういうことだ……さっきとは打って変わって剣のスピードが段違いに上がった?)
互いを見て、分析するように相対する両者。
そして、
「「………おもしれぇじゃねぇか」」
この時両者は本来の自分たちの目的を忘れた。
本能的に感じた相手への興味、意欲、関心、それらが相まって本能的にこう感じたのだ。
―――こいつとはマジで闘ってみたい……、と
マスクの下でうすら笑いを浮かべる宗谷と、闘志をみなぎらせた青年がそれぞれの武器を構え、視線をぶつけ、火花を散らす…。
二人の剣の切っ先がきらりと光り、じりじりと足元を踏みしめる。
沈黙した空気の中、先に行動を起こしたのは………
「何をやってるんですか!」
「あ痛っ!?」
二人が妙な闘志に包まれている間に遅れて到着したネプギアが出してくれた状態異常回復アイテム“パララキシン”を飲んで麻痺から回復したイストワールだった。
沈黙した空気で張り詰める二人の間にある何かを本の角で宗谷の後頭部ごと叩き、粉砕した彼女は変身状態でありながら悶絶する宗谷を目尻を吊り上げながらいかにも怒ってますよと言う雰囲気を出して威圧する。
「い、いーすん……俺はただ二人に何かをしようとしてた変態野郎をぶちのめそうと……」
「おい、いくらなんでも変態野郎はねぇだろ、メタルヒーローモドキ」
流石に、さっきまでの空気がぶち壊れたのもあるが、宗谷の見逃せない発言には文句を言う青年。
そこへ、二人の様子を見守りつつ着崩れていた服を着直しながらネプテューヌがネプギアの制止を振り切りその中に割って入った。
「もう、ダメだよいーすん! きっと今から二人は拳と拳で語り合った後、心の友と認め会ってボロボロの体になりながら空を見て……『やるじゃねぇか…』、『お前もな…』……って感じの展開になる所だったのに、邪魔しちゃダメだよ!」
「お、お姉ちゃん! まだちゃんと服着れてないよ!」
「いつの時代の展開ですか!? と言うか動けるネプテューヌさんが宗谷さんを止めていればこんな面倒なことにならなかったんですよ!?」
イストワールは持ち前の本を一旦仕舞い込んで、ネプテューヌに一括してから深くため息を付く。
「宗谷さんも宗谷さんです、仮にも教会補佐を務めているなら、ちゃんと人の話を聞いてください、あなたらしくありませんよ?」
イストワールはそう言うと、目の前で両手の剣を仕舞い二人の様子を窺っていた青年の方に向き直り、ぺこりと頭を下げる。
「宗谷さんがご迷惑をおかけしました、申し訳ありません……せっかく助けていただいたのに」
「へ? 助けて……?」
首を傾げる宗谷にイストワールはそうです、と返して青年を指し示しながら宗谷に説明する。
「この人は、私とネプテューヌさんが変なモンスターに襲われている所を助けていただいたんです! それなのに宗谷さんったら……変な勘違いをして……」
頭を抱えながらやれやれと言いたげに頭を振るイストワール。
真実を知った宗谷はしばらくその場でフリーズし、状況を頭の中で整理し始めた。
着崩れた服がそのモンスターに襲われていた影響なら? 麻痺した状態がモンスターによるものだったら? 目の前の青年が差しだしていた手が彼女達を助けるためのものだったとしたら?
頭の中で状況を一つ一つ纏めていった宗谷は、ようやく今までの自分の考えが全て勘違いだった事に気付いた。
彼はそれに気付くと変身をすぐさま解除し、頭で地面を割り砕かん勢いで、目の前の青年に綺麗な土下座を見せる。
「す、すんません! 俺、なんか変な勘違いをしてたみたいだ! 本当にすんません!!」
「あ、いや……分かってくれればそれでいいんだ、だから頭を上げてくれ、このままだと今度はあんたが脳しんとうでぶっ倒れるぞ?」
何度も頭を地面に振り下ろす宗谷を若干引いた目で見る青年、そんな彼の言葉にイストワールも一緒になって土下座を繰り返す宗谷を止める。
ようやく宗谷の土下座を中断させた二人は、その場の空気を落ち着かせる為に一旦この場で何が起こっているのか情報交換を行う事にした。
「じゃあ、まずは俺から聞きたいことがある……ここはゲイムギョウ界なのか? ネプ子やネプギア、それに……でっかくなってるけどイースンもいる辺りそうだと思ってるんだが?」
「はい、確かにここはゲイムギョウ界でおねえちゃ……パープルハートが納めるプラネテューヌの近くのダンジョンです」
「ネプ子が? ………ってことはやっぱりここは俺の知ってるゲイムギョウ界じゃないのか?」
ネプギアの返答を聞いた青年は顎に手を添えて何かを考え込むように呟いた。
その時の彼の動作や表情を見て宗谷は違和感を感じ、ある疑問を持った。
「俺の知ってる、ってことは……ここはあんたの知ってるゲイムギョウ界じゃないってのか?」
彼はすぐさま感じた疑問を青年に投げかけた、あの様な言葉を呟くと言う事は彼にとってはここではない別のゲイムギョウ界の事を指しているのは明らかだ。
宗谷はこの時、彼は自分と似通っている状況に置かれているのではないのだろうかという考えが頭を横切ったのだ。
「……信じられないかもしれないが、イースンが成長して大きくなってたり、見たこともないダンジョンの中にいつの間にかいた事を考えると……俺はどうやら違う世界のゲイムギョウ界に紛れこんじまったみたいだ」
青年が言った言葉にすぐさま反応したのはネプテューヌだった。
急に声を上げて青年と宗谷を見比べるように交互に見る。
「違う世界!? 宗谷といっしょじゃん!」
「……一緒? どういう事だネプ子?」
彼女の反応を見た青年はすぐさま聞き返す。
「実はここにいる彼、天条宗谷さんもあなたと一緒で異世界から迷い込んだ人なんです」
ネプテューヌの代わりに宗谷の隣にいたイストワールが宗谷の方手で指し示しながら青年に簡潔に説明する。
それを聞いた青年は驚き、目を見開いて宗谷の事を見つめる。
「………マジでか?」
「まあな、と言ってもあんたの話を聞く限り、あんたはこことは違うゲイムギョウ界から見たいだけど、俺の場合は本当の名も分からない平凡な世界からだけどな?」
「そうか……でもまあ、似たような境遇には変わりないな。 ああ、そう言えば自己紹介が遅れたな、俺の名前は“ヒロム”、よろしくな」
「おう、俺は天条宗谷、宗谷で構わないぜ? よろしくなヒロム」
すっかり打ち解けた二人はその場で自己紹介をしながら堅い握手を交わす。
状況は違えど、境遇は一緒、シンパシーを感じた者だけの特別な雰囲気にその場に居合わせた三人も微笑ましく二人を見る。
「それにしても、お互い大変だよな? 急に訳の分からないまま変な世界に飛ばされるなんて……」
「だよなぁ、まだ録り溜めたアニメとかあるのに帰れるのかな?」
ふと、ヒロムがこぼした言葉を聞いた宗谷がぴくりと体を震わして反応した。
アニメ? 今彼は、アニメと言ったか? と自分の中で自問自答しながらもう一つ、彼と共通するものがある可能性を見出す宗谷。
「………なあ、ヒロム……お前もしかしてサブカルチャーとか結構詳しいか?」
「え? ……一応、これでも自分はオタクだとは思っているが……そう言えばさっきお前と戦った時、なんかソードアートオンラインって聞こえたよう気が……」
「………」
「………」
なんとなくその可能性が濃くなってきたことで、二人はその場で押し黙ったまままったくピクリともせず、互いを見つめあうと言う状況が唐突に始まった。
「………えっと、宗谷さん? ヒロムさん? どうかしたんですか?」
イストワールが戸惑いながら二人に聞くが、その声が聞こえていないのか二人は無反応のままだった。
「………インフィニット?」
「ストラトス」
「宇宙刑事?」
「ギャバン」
「ファイナル?」
「ファンタジー」
「進撃の?」
「巨人」
「ヨスガノ?」
「ソラ」
「艦隊?」
「これくしょん」
「機動戦士?」
「ガンダム………ちなみに俺は00派だ」
「………奇遇だなヒロム、俺も00派だ」
二人しか分からない様々なタイトルを問いかける宗谷と、それにヒロムが答えると言うシュールな光景がしばらく続き、最後のやり取りの後二人は再び沈黙したまま一度距離を取った。
「そうか……なら、ヒロム……これも答えられるよな?」
宗谷はそう言うと、大きく息を吸いその場で勢い良く両足を広げ、バッ、と右腕を前に突き出し目を見開いてヒロムを覇気が溢れんばかりの表情で睨みつけた。
「答えよヒロム!! 俺達の世界における、サブカルチャーは!!」
「オタクの風よっ!!」
急に大声で叫んだ二人は凄まじい勢いで走り出し、互いの拳をものすごい速さで打ちあいながら言葉を続ける。
「全新!!」
「系列!!」
「「天破狭乱!!」」
最後に、互いの拳を勢いよくぶつけた二人は何故か浮かび上がった日の出をバックにして熱く、こう叫んだ。
「「見よ!! ゲイムギョウ界は赤く燃えている!!」」
そんな二人のやり取りをぽかんとした表情で見つめる三人をしり目に、宗谷とヒロムの二人は全てを理解し、清々しい表情で元の体勢に戻り、再びがっちりと硬い握手を交わし、挙句の果てには抱擁までする始末にまで親睦をこの一瞬で深めた。
「同士よ!! 俺はようやく巡り合えた!! 俺はお前を待っていたぞヒロム!!」
「ああ、宗谷! 俺達は同士だ! 心の友だ!!」
何故か熱く語り合う二人を理解できず、蚊帳の外になってしまった三人は何のことやら理解する事も出来ずただただその様子を見つめることしかできなかった。
謀らずも、同じオタク趣味を持った者同士の邂逅と言うだけの事なのだが、何故か三人は二人が織りなす熱い雰囲気に押され、割り込む事が出来なかった…。
「いやぁ、ごめんな、つい夢中になっちまった」
「18歳にもなるのになんであんなにはしゃいでるんですかまったく……」
「あれぇ? いーすんってば、もしかしてやきもち~?」
「ち、違います! そうじゃありません!」
熱いかたらいから戻って来た宗谷にジト目を向けるイストワールをネプテューヌがからかいつつ、二人のオタク同盟の結成をとりあえず置いておいて、話は再び真面目な方に向こうとしていた。
と言っても、その内容と言うのは既にこの場にいる全員が目にしているあれの事だ……。
「私やお姉ちゃん達を襲った触手型のモンスター、あれは一体何なんでしょう?」
「だよね~、今まであんなの見たことないし……」
ネプ姉妹が若干巻きつかれた感触を思い出し身震いしながら問題の触手モンスターのことを話題に上げる。
それに対しては、宗谷とイストワールも同意見だった、今まで見てきたモンスターの中では特に異質で、見たこともない。
そのために要注意するべき存在だと二人は本能的に感じ取った。
その中で一人、ヒロムが真面目な表情ですっと手を上げた…。
「あのモンスターなんだが………」
溜めるように言葉を飲んだヒロムは皆の視線が集まる中静かに告げた。
「あれは、俺の世界のモンスターだ……奴はたぶん、俺と一緒にこの世界に紛れこんだんだ」
それは、異世界から来た嫌な贈り物……。
いかがでしたか?
前回の予告で大暴れとか言ってた割りに暴れてねぇじゃねぇかと言うツッコミは…この際見逃してください…すみません(汗
次回、後篇! 宗谷とヒロム君のタッグがおぞましき魔物を切る!!
そして、明日……3月11日は、あの東日本大震災から四年。
当時、報道でその様子を見た時はこれが本当に日本で起きているのかと驚きました…。
今現在、被災地では完全に復興がなされてはいないのかと思うと、他人事のようには思えません。
震災の被害にあった被災者の皆様、そして、犠牲となった人々のご冥福をお祈りします。
宗谷「たとえ、あの時のような災害がまた振りかかったとしても……俺達人はまた手を伸ばす……」
イストワール「それで誰かを救えるなら、私達は手を繋ぎます」
ネプテューヌ「みんなは一人じゃない、私達みんなが手を取って協力していけばどんな事でも乗り越えられる!」
宗谷「だからこの事を、俺達は忘れない……人の思いの強さを忘れないために」
ここに、被災地にエールを送らせていただきます。