今回は宗谷の初仕事、果たして何があるのか?
それではお楽しみください。
どうも、先日ゲイムギョウ界と呼ばれる世界に来てしまった天条宗谷です。
18歳、今のところ無職、恋愛経験なし、好きなもの特撮物、漫画、ラノベ、ゲーム、嫌いなものは…言わないでおこう、名前を呼ぶのも嫌なので…
まあ、とにもかくにも、あれから三日が過ぎて、俺はすっかりこのプラネテューヌ教会でお世話になっているわけで…
住み心地? 文句なんてないよまったく、だって見たこともないゲームをネプテューヌに誘われてやれるし、コンパさんの作る料理はうまいし、アイエフさんとはヒーロー物、特にダークヒーローとかについて語れるしで、正直退屈はしない。
退屈はしないんだけど…
(このままじゃいけない気がする……)
だって、ようはこれ仕事もせずにだらだらだらだらしてるヒモと変わりなくね?
いや完全にヒモじゃん、アイエフさんとかめっちゃ仕事がんばってたり、コンパさんも看護学校がんばってるのに…
…これじゃ俺だけ無職じゃん、ニートじゃん、ヒモじゃん、ヒモニートじゃん!やべーじゃん!! …最初っからクライマックスじゃん……だめな意味合いで……
さすがに居候させてもらっといてそれは悪い、と思ったわけです。
「というわけで、仕事が欲しいと?」
「はい、よろしくお願いします」
俺は目の前で本に乗ってふわふわ浮いているイストワールさんに斜め45度でお辞儀をしてお願いする。
いきなりの申し出にイストワールさんは戸惑ったのか何やら困った顔をしている。
「急にそう言われましても、こちらとしてはソウヤさんは保護している身なので、無理に働けと言いたくないのですが……」
「いえ、それでは僕の気が収まりません!あ、大丈夫です、履歴書なら持ってきましたんで」
「よくそんなの見つけられましたね……」
18歳絶賛ハローワーカーとして、忘れるわけがないでしょう!
……アイエフさんに頼んで用意してもらったんだけどね?
大丈夫かな?日本語で書いちゃったけど大丈夫かな? あれ? なんかすっげー不安になってきた……
「あの、別に履歴書は用意しなくてもいいのですけど……」
「え!? ってことは不採用ですか!?」
「話を聞いてください、別に採用不採用じゃなくてですね?」
「なん…だと…じゃあ俺はいったいこの先どんな顔してあの二人に会えばいいと言うんだ…」
「は・な・し・を聞いてください!!」
「あべしっ!」
俺ががっくりとうなだれているとイストワールさんが本の角を俺の後頭部にぶつけてきた。
い、痛い…角は痛いよ? 凶器にもできるよ?
あ、ヤバい涙出てきた…
ていうか、イストワールさんって意外と短期? 暴力反対、痛いの嫌い!
「涙目で睨まれても困るのですが……」
そ、そんな目で俺を見るのか…?
そんな、『このくらいのことで泣くなよ』って言って来た昔のいじめっ子みたいに見える目で俺を見ないで!
それ、この年でやられると結構きついんだよ!!
あ、やべ、これ泣くわ、18歳にして子供みたいな理由で泣くわこれ、いいですか? 泣いていいですか?
「え!? ちょっと!? 本当に泣かないでください!? そんな泣くほど痛かったんですか!?」
「…」
「無言にならないでください! 見えてるんですよ!? 目からちょっと流れてきてる涙が見えてますよ!?」
「……」
「ごめんなさい!そんなつもりなかったんです!そこまで心を痛めるなんて思わなかったので…ああ、こんなときどうしたら…」
「………」
「…ああ! もう分りました!! なんでもしますから! 仕事でも何でも上げますから顔を上げてください!!」
…………なんでも?
何でもするって言ったな? 今…
…ククク…計画通り!
秘儀、泣き落とし!
そりゃあ、目の前で男の俺がこんなことで泣いたらイストワールさんみたいな真面目な女の人なら何かしらのリアクションを出さずにはいられまい……
まあ、痛かったのはマジなんだけどね?
みんなも一回殴られたら分かるよ? 角って結構痛いからね? 一回分厚い本で殴られてみるといい、うん今の俺の気持ちわかるはず!
………なんか、すっげー大人げないわぁ
後になって気付いたけどこれすっげー下種な奴の考え方じゃん、主人公にあるまじき行為じゃん…なんかすっげー悪いことした気分になったなぁ…
……今後はイストワールさんの仕事、全面的にお手伝いしよう
俺はこの時、そう心に誓ったのだった。
「地質調査みたいなもんですか?」
「簡単に言うとそうなります」
俺は涙が目立たなくなったのを待って、イストワールさんから俺の初仕事の内容を聞かされた。
彼女曰く、プラネテューヌの付近で新たに発見されたダンジョンと言われる場所がどんなものなのか調査してみる、ということらしい。
「今回のお仕事には私も同行します、何かがあった時、役に立てるかもしれませんからね」
「イストワールさんがいるならいろいろ安心ですね」
俺がそう言うと、イストワールさんが小さく笑った。
「褒めても何も出ませんよ?」
そう言って見せた笑顔は、なんだかやさしくて一瞬見惚れるくらいだった。
イストワールさん、サイズは俺とだいぶ違うけど……普通にきれいな人なんだよなぁ
顔つきも美人だし、性格も真面目。
状況が状況なら俺はガチで惚れていたかもしれないが、今は一応上司の関係なのだからそういう気を起しちゃいけない、社内恋愛はタブーだって聞いたことがあるからだ。
ここが会社かどうかは別として…
さて、気を緩めるのはここまでだ、ここからは気を引き締めていこう!
そんなこんなで、俺は今、イストワールさんと一緒に最近発見されたという遺跡に来ていた。
遺跡って言うよりか、神殿みたいだけどな……
そこらには石造りの紋章みたいなものがあるし、建物の作りも俺が元の世界で見たファンタジーの神殿と何ら変わりない。
それにしてもなんだろうこの紋章、Vの文字に翼が生えたみたいな…
機動戦士かな? 光の翼を出せる機動戦士のうちの一機かな?
「この神殿はダンジョンのように入り組んでいますが、不思議なことに女神と似た恩恵を受けているのかモンスターが一切いないのです」
「恩恵?」
「はい、本来私たちの住むゲイムギョウ界の四つの国の外には様々なモンスターがいて多少なりとも、様々な被害を受けます。しかし、女神が守護する国は女神の恩恵を受けることで外からのモンスターの被害を受けないでいられるのです。」
へえ、女神様って結構重要な役割を持ってるんだな……
ん? ていうか待ってくれ、今モンスターって言った?
「え、じゃあここ以外のダンジョンはモンスターがいるって言うことですか!?」
「まあ、ぶっちゃけるとそうです」
マジかよ、下手したら俺単独でモンスターがごろごろいるとこに自分で行こうとしてたのか…
うわぁ、今になって危ないと思ったぁ…
よかった~、イストワールさんが安全なとこ選んでくれて……
だって、装備もなんもないからね?俺
これじゃスライムにも一撃でやられるからね?
レベル1だからね?俺
でも、今後もしこういう仕事があるんなら、自分の身を守れるようにはしとかないとな……
「あの、イストワールさん」
「はい?」
「武器ってプラネテューヌで売ってますか?」
「え? …ええ、普通に売ってますよ? ネプテューヌさんたちも町で武器を買いますからね」
「そうですか、ありがとうございます」
俺はそれだけ確認すると何事もなかったかのように歩を進める。
イストワールさんはなんか怪しいと感じたようで、じっと俺のことを見てるけど、今は何も言わないでおこう、あまり世話をかけたくない。
さっきの交渉で卑怯な手を使ったのもあるし…反省…
そんなこんなであたりを見渡していると何やら開けた場所に出て、目の前には大きな扉が俺達の前に現れた。
かなりでかいな、俺だけじゃ絶対に開かなそうだ。
「なんだろ、この扉」
「調査の時もこの扉の先には行けず、実際にこの目で確かめようと思ってここに来たのですが……これは力で開くわけではなさそうですね」
ということは、この仕事もここで終わりかな?
終わってみるとあっけないな、昔みたいな溢れる冒険スピリッツが出てきてたのに……
俺はなんとなしにその扉に近づいてみるが、やっぱり大きさ的にも俺一人でどうにかなりそうもない。
ゲームとかだと大体は何かしらの条件をクリアすると開くんだけどな……
俺がそう思いながら扉に触れた、その時だった…
―――キィイン!
「え?」
俺の腰に未だに付いているベルトが急に光り出した!
今までうんともすんとも言わなかったのに……何で急に?
「宗谷さん一体何を!?」
「いや、俺に言われても何が何だかわからないです!」
―――ゴゴゴゴゴゴゴ…
この音は別に俺がジョジョ立ちしているわけではない…
目の前の扉がひとりでに開いている音だ!
このあたり全体が振動してちょっとした地震みたいになってるが……なんだよこれ、まるっきりゲームの世界じゃねぇか!?
地響きが収まるころには扉は完全に開いていた。
その先には先が見えない位に深い階段があった。
一体何段あるんだよこれ……
「これは…」
「……?」
階段が見えてから、俺のベルトの輝きがさらに強くなって点滅している。
まるで何かに導いているような…
……………………まあ、これはつまり。
「先に進めってこと、だよな」
「え!? そんな急に言われても危険ですよ! ここは応援を呼んで」
「大丈夫です」
俺がぴしゃりとそう言うと、イストワールさんはそれ以上何も言わなかった。
それに、今から応援を呼んでも来れるかどうか怪しいところだ……アイエフさんは諜報員の仕事、コンパさんは看護学校、ネプテューヌとネプギアちゃんは朝からどこかに出かけてる……
何であれ、今すぐ来れるってわけでもないし、これは後回しにしちゃいけないイベントだ。MMORPG的に考えて! だってほかのプレイヤーに横取りされたくないもの!
…まあ、ここは現実世界なんだけども…
それにさっきからこのベルト、俺を急かすように輝いている…。
早く行け、そう言っているような…
「危険だと判断したら俺も帰りますよ、安心してください」
「し、しかし・・・」
「ここで何もしなければ、俺がこの世界に来た理由が…分からなくなりますから」
俺はそう言うとイストワールさんの表情が一瞬びっくりしたような顔になった。
今はまさにそのチャンスなんだ。
俺がこの世界に来た理由、なぜこの世界に来てしまったのか、唯一のヒントがこのベルトだ。
この先にこのベルトに関わる何かがあるなら、今はそれを活かすチャンスなんだ。
イストワールさんもかたくなな俺に業を煮やしたのか、それとも意思を察してくれたのかは分からないけど渋々首を縦に振ってくれた。
「……危なくなったらすぐに逃げてくださいね?」
「わかってますよ、イストワールさん」
俺はそう言うと足を踏み出し、階段を降り始めた、その後をイストワールさんも付いてくる。
さあ、冒険だ!!
と、意気込んでいた時が俺にもありました……。
「な、長い……」
俺はもう何段ぐらい下りたか分からないが、階段の上に腰かけて休憩をとっていた。
もう何時間降りてんの? 一体ビル何階ぐらい降りたの? 冒険ってもっとこう、いろいろと危険が付きものじゃない? なのになんもないし、階段が永遠に続いてるし、まあ危険がないのはいいことだけども、それでもちょっと覚悟してた俺の立場はどうしてくれようか!!
「もう、自分で言っておいて何ですかそのありさまは!」
「うぅ…すみません…だってこんなに長いとは考えてなかったんですよ…」
「ここまできた以上、もうやめるは聞きませんからね!」
「イストワールさんはいいですよね、空飛べて……俺にも翼が欲しいです」
「ぐだぐだ言わないでください! それにこれでも結構疲れるんですよ?」
ぐちぐちと愚痴る俺にイストワールさんもちょっとご機嫌斜めな様子だ。
だって、空飛べるとか人類の永遠の夢ですよ?
腕組みをして少々ふくれっ面になっているので俺は渋々再び立ち上がって階段を歩き始める。
「そもそも何で急にそんなに積極的になったんですか? ここ三日あなたを見ていましたけど、そんな素振り、一切見せなかったじゃないですか」
そう言われて俺はここ三日間のことを振り返ってみる。
確かに今の状況を打開するにはどうすればいいかとか考える以前に、むしろその兆しが見えなかったから行動を起こすこともなかったな…
まあ、あるとすればこの扉が開いたことと…後は…
「子供のころを思い出したからかも…」
そう言うとイストワールさんはちょっと意外そうな顔をした。
え、俺なんかおかしなこと言った?
「それはどういう?」
「えっと……まだ言ってませんでしたよね? 俺、実は孤児なんですよ」
まだ明かしていなかった俺の過去の一部を言うと、イストワールさんの表情が如何にもいけないことを聞いたな、という表情になったのが分かった。
もう、そういう表情が見慣れてるからすぐにわかるんだよな…
「赤ん坊の時に段ボールの中で毛布にくるまれた状態で養護施設の前に捨てられていたんですよ…だから、物心ついたときから親の顔を知らなくて、ずっと施設で育ったんです」
まるで、何事もないような表情で俺は彼女に俺の生い立ちを聞かせると、イストワールさんがさっきよりも明らかに雰囲気が沈んでいるのが分かった。
「すみません……私、余計なことを…」
「気にすることありませんよ? 別に俺それで辛い想いとかはしませんから」
本当に何事もないという表情を浮かべて淡々と言った俺にイストワールさんも少々違和感を感じたようだ、じっと俺のことを見ている。
「なんでですか? 普通ならだれでも、何かしら思うでしょう?」
「あー…まあ、そうなんでしょうけど俺の場合意外とそうじゃないんですよねぇ」
「どういうことですか?」
「だって、施設にいる奴らはみんな兄弟みたいなもんですし」
親がいないから寂しい、特にそんなことを感じなかったのは施設にいる自分と同じ境遇の仲間がいたからだ。
年上の人たちは俺にとっては兄さんや姉さん、年下の奴らは弟や妹、むしろ家族が多くて寂しくない。
施設の人たちも俺たちにとっての父さん母さんと何ら変わりなかったからな。
だから、一緒に遊ぶ時とかもいろんなとこに行ったりして、常に冒険だったからな…
「だからこう言う場所を見るとうずうずしてじっとしていられないのかも・・・」
「……そうだったんですか」
イストワールさんはしばらく何も言わなくなった…
やっぱこういう話っていい気持ちはしないよな…
「ふふっ…」
え? 笑った? あれどこかに笑う要素あったかな…
「やっぱり思ったとおりです」
「え?」
「最初の自己紹介の時からそうでした…どこか子供っぽい、純粋な目をしているのにそういう素振りを一切見なかったので、考えていることが分からなかったんです、でも、心の奥底は純粋な人なんだって、今はっきり思えました」
「そ、そうですかね?」
「そうですよ……だって」
そう言うとイストワールさんは俺の目の前にまで飛んできた。
「過去の辛いことを気にせず、今を楽しめるなんて、あなたみたいな年頃の人はなかなかできないと思いますよ?」
……そういうもんかな?
俺は率直にそう思ったが、まあ、そうなのかもしれないなとも思った。
思春期の年頃なんて誰しも悩むもんだ、それこそ親とのこととか……
でも、俺はそれがなかったから過去をあまり見なかった、だから見るのは今の目の前のことだけだったからな。
笑顔を見せてきたイストワールさんの頭を指先でつついてみる。
単純にちょっと照れ臭かったからだ、こんなこと言われたのは生れてはじめてだったし…
「ひゃ! な、何ですか急に…びっくりするじゃないですか」
「…なんでもありません」
俺はちょっとだけ笑顔を見せてまた階段を降り始める。
つつかれた頭を両手で気にするしぐさを見せるイストワールさんは…ちょっとかわいかった…
ようやっと、階段を降り切った…
長かった……やった、やったぜ…もうゴールしてもいいよね?
「ほらしっかりしてください、まだこれからじゃないですか!」
「ちょ、ちょっと休憩…」
「ダメです! ここまで来たらきっちり調べてもらいますからね!!」
俺の服の裾を持って急かすように俺を引っ張るイストワールさん。
なんやかんやであなた、この状況一番楽しんでません? 少なくとも俺はあなたの口元が笑顔になっていることでそう見えるんですが?
嫌々、歩を進めていくと…
「……さっきまでの雰囲気とは違うな」
「ええ、まるっきり違いますね……」
さっきまでの神殿の作りは石造りで時間が経っていることもあって相当古ぼけていたのに、このあたりはまだ真新しい…むしろ壁とか床が石と言うよりも、クリスタルって言うか大理石って言うか…すごいきれいできらきら光っている…だからかは知らないが全然薄暗くない。
なぜ、ここだけがこんな造りになっているんだ?
疑問だけが頭に浮かんでくる。
「お、広いとこに来たな…」
さっきまでの通路を抜けて、辿り着いたのは円形に開けた大広間のような場所、相変わらず何もない空間だが、なぜかこの場所が他と明らかに違う雰囲気が漂ってくることがなぜかわかる…。
「宗谷さん、あれを…」
イストワールさんがそう言って部屋のちょうどド真ん中を指差す。
どうやら、なにもないというのは訂正しないといけないな…
丁度円形の部屋のど真ん中、そこには翡翠色に光り輝く一本の剣が台座に差し込まれていた。
ゼル伝のマスターソードみたいだな…
形はだいぶ違うけど…
刃の部分は意外と細く、鍔の装飾がやたらと近代的だ。逆さになっているが中央にはVの紋章、その両側には何かボタンの様な装飾が付いている……これは……ゲームのコントローラーか? 左側には四つの丸いボタン、右側には十字キー、間違いないゲームのコントローラーだ。
一体なんだこの剣…まあ、ゲイムギョウ界っていうくらいだから世界観的にはあってるっちゃ、あってるか…
「こんな剣、見たこともありません……私の記録にもこんな剣は……」
どうやらゲイムギョウ界の歴史に詳しいというイストワールさんにも分からないようだ。
ていうかもう、この先どうすればいいかなんて大体想像はつくけどな…
さっきからベルトが強い反応を示しているのを感じる。
これはつまり、俺にこれを抜けってことなんだろうな…
ビンビンにフラグが立っている……これを手にして何かをしろって言うフラグが……
やはり、ちょっと思ってたんだよな…もしかしたらこんなことがあるのかもって…
なぜかは知らないけど、俺はこうしてゲイムギョウ界に来てしまった…そして今のこの状況、俺に何かしらの役割があることは確かだ。
それが何かはまだ分からないが、とりあえずは目の前のイベントをスルーするわけにはいかんでしょう!
俺はゆっくりと右手をのばして剣の柄を握ろうとする……
もう少しで届く……と思った、その時だった……
「なっ!?」
「これは、一体!?」
急に剣が凄まじい光を放った。
ま、眩しい…何も見えない…
目の前を手で隠して指の隙間から剣を確認する、でもそこにはもう既に剣の姿はなかった。
え、なんで? ここは普通、剣を抜いて新しい冒険の始まりだろ? 何で武器が消失してんの!?
あたりを見渡すが剣はどこにもない、なら、この光は一体どこから?
すると…
「宗谷さんあぶないっ!!」
イストワールさんの焦った声が聞こえた時、俺は剣が今どこにあるか気付いた。
俺達の上。
正確には台座から一直線に上に浮かんでいて、切っ先が……“こちらを向いている”……
「っ!!」
焦って逃げようとした時、剣が一直線に飛んできた。
俺の腹目掛けて……
時間差で体中に響いた衝撃、後ろに弾き飛んだ俺の体
ああ、今度こそ死んだ…
俺はこの時そう感じた。
そりゃあそうだ、これは現実だ、そう簡単にヒーローになんかなれやしない…
これは何かの罠だったんだ…
俺は心の底から後悔して、そのまま意識を遮断するのをただ待った…。
―――…さんっ………そ……っ!
誰? 俺を呼んでるのは……
もしかして死神? あ、やっとお迎えですか、長かったですね…いつ来るかと思ってましたよ。
―――そうやさん! おきてください! そうやさん!!
あれ? 死神って結構かわいい声なんですね? もっと死神代行みたいな勇ましい声かと思ってました。
―――宗谷さん! しっかりしてください!! 起きてください!!
…………ていうかこの声、イストワールさんじゃね?
「宗谷さん!! 起きてください! あなたは死んでませんよ!!!」
―――ゴスっ!!
「いっっっっっってえええええええええええええええええええええええ!?」
お、おでこに! おでこにイストワールさんの乗っている本の角の角がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
痛い! これは痛い!! 血ぃ出た! これ絶対血ぃ出た!!
どんくらい痛いかというと死ぬほど痛い! 死ぬほど痛いぞ、てセリフの意味が今わかった!!
………ていうか………あれ? 俺生きてる?
「あれ?」
さっきまでそこら中を転げまわって痛がっていたのをぴたりとやめて、俺はむくっと起き上がる。
体をぺたぺたと両手で触ってみるけど…どこも怪我してない?
剣も腹に刺さってない…あれ? でもあの角度だと絶対俺の腹を貫いたはずなんだけど……
「驚きましたよ本当に…最初は本当に死んだかと思いましたけど、剣もいつの間にか消えているし、宗谷さんは気を失っているしで」
イストワールさん曰く、光が晴れると自分の遥か後方に俺が吹っ飛ばされて仰向けに倒れていたらしい、俺の体には傷どころか剣も刺さっておらず、命にも別状はなかったそうだ。
一体何がどうなってんだ?
俺は未だにずきずきするおでこをさすりながらその場に座ったまま大きくため息をつく。
すると、イストワールさんが小さな体でがんばって何かを運んできてくれた。
「その代わりに、なぜか宗谷さんのそばにこれがありました」
「ん? …なんだこれ…」
それは手にひらサイズの透明なクリスタルのようなものだった。
しかも三つ…
よく見るとそれぞれに違う紋章がある。
一つは二本の剣のような紋章、もう一つは拳のような紋章、最後のは流れ星のような紋章だ。
これがいったい何なのか……振ったり、眺めたり、ぶつけたりしてみたが何の反応もなかった。
……なかったのだけど……
「あれ? 消えた!?」
突然、手に持っていたはずのクリスタルが消えた!?
どこに行ったのかあたりを見渡してみると…
「なんじゃこりゃ…」
風景も変わっていた…
さっきまで殺風景な何もない大広間だったのに、いつの間にか野原みたいな場所になっていた…
イストワールさんの姿もいつの間にか見えなくなっている。
もう何が何だかわからないぞ……
急に剣に刺されそうになるわ、それでも生きているわってだけでも分からないのに、今度は一体何なんだ、また違う世界にでも来たって言うのか?
そう思ってあたりを見渡していると…
………………なんかいた…………
正確に言うと、人、のように見えなくもない…
シルエットは完全に人型だ、でもそれが誰なのかは分からない、まるっきり影みたいなので覆われているようだった……。
しかも三人、それぞれが多分俺のことを見てるんだろうけど……
え? 何この状況…
何で影みたいなのが俺を見てるの?
とりあえず、何かコンタクトを取らないと…
もしかしたら言葉が通じるかもしれない…
「あの~、すいません、付かぬことをお伺いしますが…」
―――シュン!
「…え?」
何かが、俺の横を通った…
そして時間差で俺に左腕に今までに感じたこともない痛みが走った。
痛い…焼けるみたいだ…
痛みが来る所を見ると、俺がさっきまで着ていた服の袖の一部が破れてそこから赤い血がじわりと広がっていった…
「っ!? …ぅ、何を!!」
俺の後ろにいる黒い影の一人を、俺は反射的に殺気立って睨んだ。
すると、そいつの手のあたりにはなにか細長い何かが両手に握られていた……。
……剣、か?
すると、ほかの二人も動きを見せた。
明らかな臨戦態勢だ、同時に俺の体にピリピリとした何かが走る……
これが……殺気?
この日、俺は上司と神殿の調査をして死んだと思ったら死んでなくて……そして謎の三人組に襲いかかられました。
いかがでしたでしょう?
いきなりの超展開になってしまいましたが、そんなに長くはなりません。
それでは次回でお会いしましょう。