少し間が開きましたが、今回、重要な展開が!
サブタイトルでなんとなく予想はつくと思いますが、今回の見どころはいーすん!
それでは、お楽しみください、どうぞ。
「……決闘、ですか?」
「あ、決闘と言っても本当の命の掛け合いじゃなくて……なんていうか、模擬試合みたいなものだから、そんなに緊張しなくてもいいよ?」
突然のアスナの提案に動揺の色を見せたイストワール、それを見てアスナは慌てて補足を付ける。
決闘と言えば、聞こえが良くても正式な戦い、悪くて命の取り合いだ。
どちらにしてもいきなり穏やかじゃない彼女の提案にはイストワールも戸惑い気味である。
「何のために、決闘なんか……理由は一体何なんですか?」
イストワールがアスナに問いかけると、彼女はそれを待っていたと言わんばかり、にやりとほほ笑んだ。
「イストワールさん、今悩みごとがあるんじゃないですか?」
「え? ………は、はい、一応は……」
「それがどうしてなのか、分かりますか?」
「……いえ」
左右に首を振って答えたイストワールにアスナはやっぱりと言いたげな表情を浮かべる。
置いてあったティーカップを再び手に取り、一口飲んだアスナはじっとイストワールを見つめる。
その眼光には先程見せたのと同じ、鋭い剣先の様な光を宿している。
「それを見つけてみませんか? 剣を、心をぶつけて……」
そう言われたイストワールは迷った。
本当にそんなことで答えが見つかるのかどうか、自分が求めていた何かを見つける事は出来るのか……。
半信半疑だった彼女だったが、興味本位か、それともアスナの眼力に押されてか……。
暫しあってから彼女は首を縦に振った。
俺の咄嗟の考えが功を奏し、今回のメモリーのキャラクターがメタルギアソリッドシリーズの主人公、ソリッド・スネークであることが分かった。
ようやく正体を掴めた達成感もつかの間、本当の戦いはここからだった…。
―――――ガガガガガガガガガッ!
スネークが両手で持っているアサルトライフルから空薬莢が飛び出し、銃口が火を噴き、けたたましい銃声と共に無数の弾丸が俺に向かって飛んできた。
俺はすぐさま右に向かって走り、アサルトライフルの弾道から外れようとしたが、当然向こうも逃がすつもりはないらしくアサルトライフルの銃口を横に動かして俺を追尾する。
「うぉぉぉぉおおおお!?」
なんとか崩れかけている建物の中に飛び込んで放たれた弾丸をやり過ごす。
壁に弾丸がめり込む音が数回聞こえて、すぐに止んだ。 俺はその間に反撃を仕掛けるべくスキルリンクを発動させようとするが……。
―――カランっ……
「ん? ………げっ!?」
何かが地面を転がる音が聞こえ、足元を見るとそこには俺がこの世界に来た時に早速先例を受けたのと同じ手榴弾が転がっていた。
「やっべ!!」
俺は慌ててその場から逃げようと壁の外に出るが……。
「うわぁぁぁああああっ!?」
時間差で爆発した手榴弾の爆風をもろに喰らって、俺は吹き飛び地面を転がった。
背中に直撃した衝撃による鈍い痛みを気にしつつ、俺はゆっくりと立ち上がる。
立ちあがって周りを見回し、スネークの姿がないかを確認するが既にその姿はない、またどこかに隠れているのか……?
「待たせたなっ!」
突然横から聞こえた声に驚き、視線をそちらに向けると壁に背を付けて隠れていたと思われるスネークが右拳を握って、左手を前に出し俺に掴みかかってきた。
俺は判断が遅れ、掴みかかってきた左手を払う事が出来なかった。
スネークの左手が俺の肩を掴み、俺の腹部に重い膝蹴りが撃ち込まれた。 変身している状態でも奥に響くような痛みが広がる。
「ぐふっ……」
体を曲げた俺に向かって、スネークが拳を俺に振るうつもりか素早く腕を弾いて俺に向けて拳を構えた。
でも、そう簡単にやられるつもりはない!
「らあっ!」
俺は腹部に残る鈍重な痛みを堪えつつ、開いている左手で思い切りスネークの顎を突き上げるように拳を振り上げた。
しかし、スネークが後ろに体を傾けた事によってそれは空振りに終わる。
でも、まだ俺は止まらない……離さないようにしっかりと握っていた赤剣を横なぎに振る。
流石にそれは防御せず、スネークは後ろにバク転して躱した。
「なら、こいつでどうだ?」
スネークは着地と同時にそう呟き、腰のホルスターに納めてあった拳銃を抜いた。
銃口の俺の方に向けて、三発続けて発射、反応が遅れた俺の装甲に包まれた体に衝撃が三回走った。
変身しても、やっぱり痛いもんは痛いな……。
俺は銃撃の衝撃に耐えきれずよろけた、だがそれが決定的な隙を生んでしまった。
「っ!」
スネークはその隙を見逃さずに、暗い色の布をかぶせて近くに隠してあった“筒状の何か”を取り出した。
それの先端には壺のような形をした弾頭が付いている。
あれは、銃の種類に詳しくない俺でも知っている。
“RPG-7”、ロケットランチャーだ……。
「俺は手加減はしないぞ、少年……っ!」
いやいや、この距離でロケットランチャーって流石にヤバいだろ……。
直撃したら爆死間違いなしだろこれ……無茶苦茶だなオイ。
でも………上等だよ。
そっちが手加減なしで来るなら、俺だって全力で行く!
スネークの言葉を聞いて、俺の中にある何かが燃え上がった瞬間、RPG-7のトリガーが引かれ、俺に向かって先端に付いてあったロケット弾が発射された。
のどかな雰囲気が漂う野原に、遠くに見える湖。
これから始まる決闘のために開けた場所へとイストワールを案内したアスナの姿は先程のラフな服装とは違い、赤と白の色合いで出来た何かの制服のような服装になっていた。
腰元には翡翠色に輝く一本の細剣が納められている。
ここに着くや否や、アスナは指を下にスライドして呼びだしたメニューウィンドウから彼女の“剣士”としての装備を選び、装備したのだ。
それを見ていたイストワールはモードアクティブを起動、自分の手にした“闘う力”を発動する。
「じゃあ、まず始める前に………」
アスナはそう言うと、腰に納めてあった細剣をさっと抜いた。
「私が決闘に使うのはこの剣のみ、イストワールさんはどうする?」
自信満々の顔で聞いてきたアスナ、それに対してイストワールは緊張した面持ちでアスナを見つめつつ左手に持っていた本を閉じ、右手に持つ細剣をさっと振り上げた。
「………なら、私もこの剣のみで戦います」
イストワールに取って不利になるデメリットしか存在しない事になることなのだが、彼女はそう宣言した。
魔法は今の彼女にとっては唯一、有利に戦うための戦闘手段の中で使いこなしが早かったものだ。
それを封じられると言う事は、彼女はこの決闘を自分が今現在不得意としている近接戦闘の細剣のみで挑まねばならないと言う事だ。
しかし、彼女はそれを受け入れた。
アスナの言った言葉、それが彼女を後押しした。
(剣を、心をぶつける……それで、分かるもの……いったい、何なのでしょう?)
好奇心と答えを見つけたいと言う彼女の意思がそうさせたのだ。
承諾したのを確認したアスナはふっとほほ笑んだかと思うと目線を上へと向けた。
イストワールもそれに釣られて視線を上に向けるとそこには二桁の数字が空中に浮かんでおり、それがカウントダウンを始めていた。
「これが0になったら決闘スタート……勝敗のルールは聞かないでも分かるかな?」
「はい、なんとなくは……」
「じゃあ、大丈夫だね……」
決闘とまで言われた以上、それはどちらかが戦えなくなるまで続く。
イストワールはおおよその覚悟はしていたのだ。
10秒程からスタートしていたカウントダウンは徐々に減っていき、あっという間に5秒台に入った。
アスナが細剣を縦に構え、鋭い眼光でイストワールを捕らえる。
一方のイストワールも以前にノワールに教えてもらった構えを使って細剣の切っ先をアスナに向ける。
細剣の先を真っすぐに向けた状態でアスナの出方を窺うイストワール。
息をする時間すらも削るように、その場の空気が凍りつくように冷たくなっていく錯覚を感じた。
そして遂に、カウントダウンが0になった。
DUELの文字が空中に浮かびあがり、弾けたその瞬間、まさにそれは一瞬の出来事だった。
「っ! うっ……」
イストワールのすぐ目の前まで、アスナが素早く距離を詰めてきたのだ。
瞬間移動でもしたのかとも思えるその速さに加え、イストワールが遅れて感じた衝撃と強めの電撃の様なピりっとした痛みが体に走ったのはほぼ同時なのではないかと錯覚するほどである。
初撃をまともに受けたイストワールは後ろに大きく吹き飛ばされ、地面を転がるように倒れた。
「い、今……のは……」
体に走る慣れない感覚を堪え、目線を持ち上げたイストワール。
そして彼女の眼に映ったのは、こちらにあの高速の刺突を放った状態で制止するアスナと彼女の握る細剣の刃が放つ“眩い光の残光”。
そう、今彼女が放った剣撃は彼女たちが二年間閉じ込められ、その中で己の武器として使い続けてきた唯一の戦闘手段、“ソードスキル”である。
彼女は開始の合図と共に、細剣カテゴリにある突進系ソードスキル、“シューテングスター”を容赦なくイストワールに浴びせたのだ。
よろりとふらつきながらもなんとか立ち上がったイストワールは果敢にも再び剣を握る力を強めた。
それを見たアスナは一瞬口元に笑みを浮かべる。
「まだ、行けるみたいだね? なら、こっちも手加減なしで行くよ!」
“閃光のアスナ”の異名を持つ彼女が地を蹴り、再びイストワールに迫る。
「………はぁぁぁああああああ!!」
真っすぐに迫ってきたアスナとの距離を測りつつ、イストワールはタイミングに合わせて細剣を振るった。
しかし、甲高い音と共にイストワールの最初の攻撃はあっさりと彼女の刃に憚られた。
受け止めたイストワールの剣を押し返し、後退した彼女をアスナは容赦なく攻め立てる。
基本的に二人の使う細剣の攻撃判定は突きか振りのどちらかになる。
イストワールの最初の攻撃であった振りは防御がしやすいのに対し、アスナが今イストワールを攻撃している突きの攻撃は辺り判定がほぼ一点に集中している分、防御をうまくできないイストワールは自然と回避に回るしかなかった。
次々と放たれるアスナの刺突がイストワールの集中力をじりじりと削る。
「はあ、はあ、はあ、はあっ!」
息も切れてきて、もう剣を握るのも忘れているほどの状態の彼女にアスナは再び痛烈な一撃を放った。
「せぇええっ!」
「ぐぅっ!」
翡翠色の刃が再び鮮やかな色の光を放ち、イストワールの腹部にその刃を突き立てた。
細剣系ソードスキルの基本技、“リニアー”。
基本中の基本でもあるこの技だが、アスナ自信の動きもプラスされスピードが通常よりも早くなったこの一撃を詰められた間合いの中で避けるか防御するかと言うことはイストワールにはできなかった。
再び襲いかかった重い衝撃と電撃の様な感覚にイストワールは再びよろめいた。
(強い……この人は本当に強い……今の私じゃ……)
「絶対に勝てませんよ」
イストワールの思考を読んだかのように、アスナは言った。
驚き、目を丸くするイストワールに構うことなくアスナは続けた。
「今のあなたは迷いがある、その剣を持つ理由が何なのかを理解していない……今のイストワールさんじゃ私に勝つことも……あなたが見ているあの人にも到底追いつかない」
イストワールの胸の奥にズキリと痛むような感覚が走った。
その通りだと思った、でもそう思いたくなかった。
隣にいても、彼はその先に行っている。 自分には到底できなかった事を彼は普通にやる。
そんな彼と自分にできた何かを分からぬままに剣を握ったイストワールに取って、その言葉はナイフよりも鋭い刃となって突き刺さった。
その感覚に一瞬、イストワールの思考がぐらりと揺れた。
確かに、アスナの言うとおりだと思った。
自分は何のためにこの力を使うのか、イストワールはまだそれを理解していない。
分からないままに力を使う事がこんなにも苦しいなら、もう、捨ててしまった方がいいのではないか?
もう戦わない方がいいのではないかとさえ思えてくる。
その力の大きさは、本来戦いとは無縁だったはずのイストワールにそう感じさせるまでの重みとなって振りかかった。
イストワールの剣を握る右手が次第に緩む。
(………宗谷さん)
――――なに諦めてんだよ! なんでそんな顔してんだよ!!
「ッ……」
脳裏にあの時の、仮面ライダーのメモリーワールドで自分が諦めかけた時に聞こえてきた彼の言葉が浮かび上がった。
自分はまた諦めかけている、あの状況でも彼は諦めなかったのに自分はまた諦めかけてしまった。
それがイストワールに自分に対する強い怒りと、自分を振るい立たせる炎となった。
(……宗谷さん、あなたがあの時諦めなかったのはあなたがそう言う人だからですよね……)
誰かを守るためなら自分がどうなっても構わない、そんな宗谷だからこそあの時の状況で諦めると言う選択肢を選ばなかった。
それこそがイストワールと宗谷の間に出来た不可視の大きな溝だったのだ。
守るべき存在、大切な存在、それが彼には当たり前のように存在した。
そして、今イストワールもそれをはっきりと理解した。
自分自身が理解できなかった物、それは“守るべき存在”なのだと。
そしてなぜ、先日宗谷を咄嗟に庇ったのか、なぜ、宗谷の事を見続けていたのか、なぜ、彼に置いて行かれるのが怖くなったのか……。
(あなたが誰かを守りたいと願うなら、私も守りたい……だから!)
さっきとは違った強い意志の光を放つ彼女の瞳が、アスナを映し出した。
彼ならきっとこう言うのではないか、そう思い浮かべながら……
「私は諦めません! 私が剣を、力を持つ理由……それは守るためにあります!」
力強く言い放ったイストワールが、細剣の切っ先を再びアスナへと向けた。
それを聞いていたアスナは再び静かに剣を構え、口元に、しかし今度は満足げな笑みを浮かべた。
「やっと、見つけたんだね……」
爆煙が辺りにもうもうと立ち込める中、スネークはしっかりとその目を向けていた。
RPG-7の弾頭がしっかりと命中した事を……。
そして、
宗谷がまだ倒れていない事を……。
「ようやくテンションMaxだぜ……さあ、ゲームスタートだ、コンティニューは効かないぜ?」
首元に巻かれた赤い深紅のマフラーは、彼が完全変身の力を全て解き放った証だ。
彼はロケット弾が当たる直前にフルパワー状態に変身、その時に発生したエネルギーの余波をぶつけて爆発の衝撃を相殺したのだ。
「……運がいいな、いや、これもお前の強さと言うわけか!」
スネークは今までよりもさらに熱の籠った口調でそう言うと、再びアサルトライフルを構え照準を宗谷に向けた。
しかし、宗谷はそれを見越して素早く赤剣と連結したV.phoneの画面を二回続けてタップする。
選んだのは先程自分がスネークを見つけるために使った感覚強化系スキルのスキル 緋弾のアリア、そして、剣撃強化のスキル ソードアートオンライン。
この二つの組み合わせは、以前のピクニック兼修行の際にユニと協力して一度試しておこうと考えていた組み合わせだ。
これによって発動するスキルチェインの能力は、今の状況を打破するには有効な手になる。
『Skill Chain! Hidan no ARIA! Sword art online!』
「名付けて、バレットスラッシャー……っ!」
けたたましい銃声と共に放たれた弾丸の雨、それを前にして宗谷は至って冷静に、じっとその弾丸が進む弾道をしっかりと目に焼き付ける。
そして、極限まで上昇した視力と、反射神経をフルに使い次の行動へと移行する。
振りあげた赤剣の刃をその弾道に合わせて、真っすぐに走らせ、自分に迫った弾丸を文字通り、真っ二つに叩き斬った!
「何っ!?」
その一振りで止まることなく、宗谷は次々と自分に迫って来る弾丸を赤剣の刃を素早く、光の如きスピードで閃かせ、次々と斬り落としながら前へと進み、確実にスネークとの間合いを潰していく。
「ちぃっ!」
スネークはアサルトライフルを腰だめに構えて掃射しながら、もう片方の手で腰に付いてあった手榴弾のピンを抜き、宗谷に向かって投げつける。
だが、それすらも宗谷は冷静に対処してみせた。
投げつけられた手榴弾を爆発する前に左手でキャッチし、明後日の方向へと投げ返す。
もちろん弾丸を赤剣で斬り落としながらである。
そして、時間差で遠くで爆発した手榴弾に目もくれず、宗谷は尚もスネークとの距離を縮める。
人並み外れた行動に驚くスネークを余所に、遂にアサルトライフルの残弾が尽きた。 それと同時に宗谷の赤剣のリーチにスネークが入った。
「らあっ!」
宗谷はスネークの持つアサルトライフルを最初に狙い、すぐさまそれを一刀両断、使用不可能にした。
武器を失ったスネークはすぐさま得意のCQCで迎え撃つべく、拳を握り宗谷の顔面めがけて放つ。
しかし、スキル 緋弾のアリアで反射神経が上昇している宗谷にとってそれを回避するのは弾丸を躱すよりもたやすいことだった。 頭を左右に動かし直撃を避け、足元を狙って放たれた足払いを軽く跳躍して回避する。
着地と同時に宗谷は持っていた赤剣を素早く引き戻し、突き出すがスネークは体を横に傾けてそれを回避し宗谷の右腕を掴み、彼の持つ唯一の武器を封じた。
しかし、宗谷は右腕を捕縛して距離がほぼ埋まっている状態のスネークとの距離を逆に利用し開いている左手でスネークの左側の襟元を掴むと右足をスネークの足の間に入れて彼の左足をすくい取り、そのままグルンと回転させる勢いでスネークを横に投げ飛ばした!
空中に身を浮かせたスネークは受け身を取り、なんとかダメージを流し、拳銃を構えようと腰のホルスターに手を伸ばすが宗谷は更にスネークとの距離を詰め、今度はスネークが行動を起こす前にその首元に赤剣の刃を突きつけた。
「………これで、どうだ?」
「………認めよう………俺の負けだ」
いっそ清々しく感じる笑顔を口元に浮かべたスネーク、宗谷はこうして伝説の傭兵との勝負に終止符を打った。
己の剣を握る理由、力の意味を見つけたイストワールの戦いは今までの彼女の防戦一方のあまり器用とは言えない戦い方とは打って変わった、積極的なスタイルへと様変わりしていた。
決闘が始まって既に数時間は経過しようとしている頃、最初は攻めあぐねていた彼女だったが今は迷いを振り切り、一心に細剣を突き出し、振り、アスナに果敢に斬りかかっている。
しかし、二年間もの間、デスゲームと化したソードアート・オンラインの“浮遊城アインクラッド”の中で戦って来たアスナもそうやすやすと彼女に押されはしない。
彼女もまた持ち前のスピードの乗った剣技を駆使してイストワールと剣を交える。
「やぁぁああ!」
「せいっ!」
キィン、と聞こえる透き通った、それでいて響くような金属の衝突音が辺りに響く。
イストワールの細剣の振り下ろしを、アスナは下からの勢いの付けた振りあげで対応し刃がぶつかり合う事で起きた音だ。
攻撃が防がれてすぐに、イストワールは腕を引いて次の攻撃に移る。
ノワールからの指導で練習した刺突による連撃、それをアスナに見舞う。
だが、アスナもまたそれに迎え撃つべく彼女が持つソードスキルの中でも特に上位に位置するソードスキルを放った。
鮮やかな紫の光と共に、アスナの放つ流星の如き刺突がイストワールの連撃を迎え撃つ。
それは彼女が心をぶつけ、心を通わした大切な人から受け継いだ彼女が持つ最強のオリジナルソードスキル、“マザーズ・ロザリオ”。
その剣の輝きを見た時、イストワールは直感的に悟った。
これは彼女の全力の攻撃なのだと、なら……
(私も、それに答えます!)
そして、それに対抗してイストワールが放ったのはノワールに伝授された燃え上がる炎のような勢いのある剣技の一つ、名付けられた名は“イグニッション・ブレイズ”。
ノワールが編み出した連撃をそのまま教わり、後は独自の練習でなんとか形にした彼女の持つ唯一の純粋な剣技である。
彼女の最大の剣技とイストワールの全力の剣撃がぶつかり合う。
そして、
「やあぁ!」
「っ!」
アスナの鋭い最後の11撃目が、イストワールの細剣を弾き飛ばした。
十字のライトエフェクトを残して、イストワールとアスナから離れた場所に宙を舞った白銀の細剣の刃が地面に突き刺さる。
「………負け、ですね」
呟いたイストワールに対し、アスナは勝ち誇るでも残念がるでもない表情を浮かべて持っていた自信の武器を腰の鞘に納める。
「決闘は私の勝ちだけど、イストワールさんは答えを見つけられた?」
その問いに、イストワールは迷いのない純粋な頬笑みを浮かべて頷いた。
彼女はこの戦いを通して、見つけたのだ、もう迷いはない。
「……良かった。 なんだかね、イストワールさんを見てたらどこか親近感が湧いちゃってさ」
「親近感、ですか?」
「うん、私もそうだったから……私も、ずっと、知らない内に見続けていた人がいるから悩んだし、逆に強くなる事も出来た……剣を握る覚悟も見つかった」
アスナはそう言うと、栗色の髪を揺らしてイストワールに笑顔を向ける。
「だから、なんとなく放っておけなかったの……ちょっと、お節介だったかな?」
最後は申し訳なさそうな表情を浮かべたアスナに対し、イストワールは左右に首を振って返答する。
「そんなことありません、おかげで私も大事な事を知りましたから……」
「……そっか」
そう言ったイストワールにはこの世界に来る前の曇りのある表情は微塵も感じなかった。
それを見届けたアスナは小さく頷いて、彼女の手を優しく両手で包み込む。
「頑張ってね! イストワールさん!」
「……はい!」
その頑張っての声が何を意味するのか、イストワールはこの時なんとなく理解する事が出来た。
そして、それを境に彼女の意識が再びホワイトアウトしていく……。
「………ぅ」
精神リンクによるヒーローメモリーの修行を見事に終えた宗谷は、その意識をだんだんと現実に引き戻し始めた。
決死の突撃が成功し、スネークを追い詰める事が出来た宗谷は見事に新たなスキル、“スキル メタルギア”を手に入れる事が出来た。
鮮明になって来る思考の中、最初に彼はその達成感を感じた。
ふと部屋の窓の方を見ると、徐々に外が白けて行くのが分かる。
もう、朝方になっているようだ。 結構な時間を向こうで過ごしたがこちらでは約数時間ほどらしい、早速朝風呂にでも入ろうかと思った時、ふと、自分の体の右側に何か違和感を感じた。
「……なん、だ……え?」
ふと顔を横に向けた宗谷、その目に飛び込んできたのは見覚えのある可愛らしい少女のようなイストワールの寝顔だった。
しかも、その体制は右手を彼の胸の上に置き、まるで抱きついているように見える。
(な、な、ななななななぜいーすんがお、俺のベッドにぃ!?)
無言で彼女の顔を見続けながらも、内心では相当パニックになっている宗谷。
それもそうだろう、朝起きて突然隣で可愛らしく寝息を立てながら美少女が自分に抱きついて寝ていれば自然と誰しもがそうなってしまうはずだ。
(………あ、いーすん……いい香りがする)
ふわりと薫る彼女の柔らかで優しい香りが宗谷の鼻腔をくすぐり、反射的に女性的な存在を改めて認識した宗谷は本能的に彼女に意識を奪われてしまった。
それはある意味、男子が必然的に経験するであろう一種の興奮と言うものである。
(違う違う違う違う違う!! お、落ち着け俺! 確かに俺はこう言うイベントは好きだけど、それ以前に俺は健全に生きると決めた身だ、だから決してこの状況でやらしいことなんて一切考えていない! これもあれだ俺が今なっている朝の男の生理的現象による物で、決して俺がそんな事を考えているわけでは……)
だが、そんな思考とは裏腹に今宗谷がイストワールに見とれているのは事実である。
彼女の柔らかで本物の金で出来ているのかと錯覚しそうな美しい髪。
花の様に甘く、それでいて宗谷の何かを激しく刺激する甘美な香り。
見ているだけで、さながらマシュマロのように柔らかそうに見える彼女の唇。
この時、そのすべてに宗谷は見とれてしまっていたのだ。
そして、
「………お、起こすため、起こすために仕方なくだ……」
などと呟きながら、そっと彼女の頬に自分の手を添えようとした……その時
ぱちり、とイストワールの目が突然開いた。
あまりにも急すぎる覚醒に驚きを通り越して硬直してしまった宗谷。
そんな彼をじっと見つめるイストワール。
「………」
「………」
互いを見つめあったまま無言になる二人、その場の空気が凍りついたかのような静寂が部屋を包み込む。
ふとイストワールが視線を宗谷の顔から、彼の体の方へと向ける。
宗谷の胸の上に置いてある自分の手、何故か絡めていた自分の足、そして、もうほぼ密着状態にある自分と宗谷との距離。
「………~~~っ!」
全てを理解したイストワールは途端に顔を真っ赤にし、それに釣られて宗谷も顔をリンゴよりも赤く染めた。
すぐさま飛び起きた二人は互いに背中を向けてベッドの両端に座る。
気まずい沈黙が再び訪れる。
「お、おはようございます……宗谷さん」
「あ、ああ……その、おはよう、いーすん……」
しかし、静寂は二人のぎこちない挨拶でわりとあっさり破れた。
宗谷に向けて背を向け、顔を赤くしたまま自分の胸を手で押さえるようにし、早まる心臓の鼓動を抑えようとしているイストワールはなんとか落ち着かせようとして深く深呼吸を数回繰り返す。
「な、なあ……いーすん……」
「は、はい!」
あまりにも彼女が自分のベッドにいる事が気になっていた宗谷が、イストワールに一か八か声をかけると、反射的にイストワールは彼の方を振り向いた。
まだ宗谷は彼女に背を向けたままだったが、その後ろ姿はどこか気恥かしそうに見える。
「その……なんで、俺のベッドに?」
率直な問いかけ、しかし、イストワールは覚悟を決めた様にぐっと拳を握った後、こう答えた。
「……秘密です」
「ええっ!?」
そう、これは……。
彼女が得たこの思いは彼には秘密なのだ。
メモリーワールド、そこで出会った閃光の剣士との決闘で己の心を見つめ直したイストワールが見つけた物。
それは、誰かのため必死になる宗谷を、彼を守りたいと言う気持ち。
大切で、いつの間にか思いを寄せていた……彼への思い。
(守るために戦うあなたを、私は守ります………だって)
その思いは、まだ彼には言えないとても大事な気持ち。
(私は……宗谷さん、あなたの事が………好きだから)
これは、私が初めて抱いた………恋心。
いかがでしたでしょうか?
いーすんが恋心に自覚しましたよ(汗
さて、この恋心がどうなることやら…
次回、遂に再びリーンボックスへ!
次回でお会いしましょう、それでは…