超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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はい、お待たせしました白宇宙です!

引っ越しに伴い、パソコンも新しいのに買い換えてまだまだ扱いきれていない中、最新話がなんとか完成しました。
いやぁ、やっぱり使い慣れているキーボードとは感触も違うのでかなり違和感ありまくりです(笑)

それでは、最新話、お楽しみください!
どうぞ…



リーンボックス大激突! その名はマジェコンヌ編
stage,36 俺とリーンボックスへの再来


プラネテゥーヌでの新たな修行を終え、なぜか俺の部屋のベッドの中に潜り込んでいたいーすんの謎を残しつつも、その後の一週間は無事に何事もなく過ごすことができた。

……まあ、一応は……うん。

 

そのあたりの説明はおいおいするとして、今俺は………いや、俺達は一か月前にしていた約束を果たすためにある国へと向かう船に乗り込んだ。

 

その船の行先は、大いなる緑の国。

 

ベールが女神として国を治めている、リーンボックスだ!

 

 

 

 

「海だーーーーーーー!!」

 

 

 

 

豪華客船も顔負けな大型船に乗った俺達。

大海原の白波を切り裂きつつ進む船の先端でネプテューヌが両手を振り上げて、エンシェントドラゴンもビックリな大声をあげて海に向かって叫んでいた。

 

「ねぷ子、テンションが上がるのはわかるけどここはビーチじゃないのよ?」

 

「そんな細かいことはどうでもいいんだよ、あいちゃん! 大事なのはこの状況をどれだけ楽しめるか、そこがポイントなんだよ!」

 

「お、お姉ちゃん……わかったからそのくらいで……今、すごく目立ってるから…」

 

周りの人の目も気にせずテンションマックスで叫び続けていたネプテューヌをアイエフとネプギアが宥める。

 

というかここまで騒いでいたら、普通は女神さまがいるー! とかで大騒ぎになりそうなものなのにそうならないのはあいつの普段の行いによるものなのではないかと常々思う…。

しっかりしようぜ、ネプテューヌ……。

 

三人のやり取りを横目で見ながら船の甲板の手すりに凭れ掛かる俺はそう考えつつも船が突き進む航路の先に視線を向ける。

 

「何ぼーっとしてるのよ?」

 

「おろ?」

 

ふと声をかけられ後ろを振り向くと、そこにはお馴染みの黒髪ツインテールが今日もお似合いのノワールがいた。

その後ろには黒髪ツーサイドアップがトレードマークのユニちゃんもいる。

二人そろって黒髪の二つ結び系の髪型が今日も眩しい二人の女神姉妹に、俺は軽く手を挙げて挨拶をする。

 

「おいっす、ノワール、今日もいいツインテールだな」

 

「な、何よ唐突に……別にそんなこと言われてもうれしくもなんでもないからね」

 

「ツンデレ乙」

 

「ツンデレ言うな!」

 

よし、いい挨拶だ。

やっぱりノワールとはこのやり取りがないと落ち着かないよな。 ツンデレ万歳、ツンデレ上等、ノワールのツンデレに栄光あれ!

 

「ユニちゃんも、元気そうだな?」

 

「はい、今日も絶好調です! この前も狙撃の練習で新記録が出たんですよ!」

 

「そいつはすげーな! 今度は俺にも見せてもらいたいな」

 

ユニちゃんの方はあれから俺とした約束を果たすために頑張っているらしい。

努力家なところはやっぱりノワールとそっくりだ。

たまにツンな所が入るのを見るとより一層そう見えてくる。

 

「ふっふ~ん、見てなさい! 女神候補生の中で一番早く女神に変身するのも。きっとそう遠くないわ!」

 

「自信過剰乙」

 

「ふえっ!?」

 

調子に乗ると失敗するからなここは厳しく指摘しておく、邁進は失敗の素だからな。

 

「宗谷の言う通りよ、ユニ。 あまり加重して自分を評価するのはただの驕りでしかないわ」

 

「う……ごめんなさい」

 

「……反省できるなら次は大丈夫ね、頑張りなさい」

 

「お姉ちゃん……うん!」

 

なんだ、なんやかんやで仲よくできてんじゃんこの姉妹。

これは、俺の心配も不要だったかな?

 

俺が初めてラステイションに滞在したころは、ユニちゃんもノワールのことで悩んでたみたいだけど、俺の貧乏根性が功を奏したのだろうか?

だとしたら、俺もちょっと安心だ。

 

「すごーい! 広ーい!!」

 

「待って……ラムちゃん……」

 

俺がラステイションの女神姉妹と話している最中、近くの方で元気が溢れんばかりの声とそれを追いかける小さな声が聞こえてきた。

これは言わずもがな、あの双子の声だな。

 

「久しぶりだな、ロムちゃん、ラムちゃん」

 

「あ、そうやお兄ちゃんだ!」

 

「そうやお兄ちゃん……久しぶり♪」

 

俺を見つけて近づいてきた双子の姉妹に俺は笑顔で返すと、俺の足元まで二人は近づいてきた。

 

「ロム…ラム…勝手に言っちゃダメって言ったでしょ……?」

 

そんな二人の後を追いかけてか、息を切らした様子のブランが遅れて二人の後に続くようにやってきた。

ブランの方は相変わらずやんちゃな妹二人を相手にてんてこ舞いって所か?

 

「あ……宗谷」

 

「おう、ブランも久しぶりだな」

 

「……ええ、そうね、久しぶり」

 

少し控えめな笑顔で返してくれたブラン、最初の時とは打って変わってだいぶ表情も読めるようになったもんだ。 ブランも表情豊かになったな、ほんと。

 

俺がブランの変化に感心していると、突然ブランの表情が申し訳なさそうな沈んだ表情になった。

急にどうしたんだ?

 

「……この前のことなんだけど、せっかく誘ってもらったのに……行けなくてごめんなさい」

 

「ん? ……ああ、この前のピクニックのことか」

 

どうやら彼女はこの前、俺たちが行ったピクニック兼修行に参加できなかった事を言っているらしい。

 

「別に気にしなくていいって、また今度同じようなイベントがあれば参加すればいいことだろ?」

 

「………新作の目処がもっと早くついていれば………」

 

「ん? 新作?」

 

「い、いえ別に……気にしなくていいから……」

 

………もしかしてブラン、同人小説の締め切りギリギリだったのだろうか?

ふと俺はちょっと聞こえたブランの言葉からそう推理してみたのだが……ありそうだなぁ。

 

「……今度誘ってくれたら、私も妹たちを連れて参加するわ……二人も喜ぶだろうし」

 

そういってブランはユニちゃんと楽しく談笑しているロムちゃんとラムちゃんの二人をちらりと見る。

 

「………できれば、お弁当も作るから」

 

「お、そいつは楽しみだな」

 

ブランの一言に笑顔で俺が返すと、ブランはほんの少し頬を赤くして微笑んだ。

うん、癒されるわぁ、この小動物のような笑顔……。

 

「……けど、作るのはいいとして味が悪いようだと意味はないわよ?」

 

「………ノワール、それはどういう意味?」

 

俺がほっこりしているのもつかの間、ノワールがブランに挑戦的な眼差しを向けてそういったのでブランは小動物モードをガラリ誓えて、あの狂犬の如き威圧感を秘めた睨みをノワールに向けた。

 

「そのまんまの意味よ、あなたのことだから小説とか書いてばかりで、ろくに料理とかも作ったことないんじゃない? そんな子が作ったお弁当ってある意味心配になるわ」

 

「……舐めないでほしいわね、これでも私は日々、成長促進に効果的な食べ物については日々勉強しているのよ?」

 

「ふぅん……でも、味がいいのかどうか保証はないじゃない、ちなみに私はちゃんと言われたわよ? おいしいって、“宗谷”に」

 

「なっ!?」

 

突然俺の名前を強調するように言ったノワールの発言にブランが一瞬たじろいだ。

おい、というかなぜ俺の名前のところを強調した? そこに何の意味があるんだ?

 

「それに……」

 

さらにノワールは追い打ちの意味も込めてか視線を彼女のある一点に向ける。

あ、ノワール、そこは触れたらあかん場所や。

 

 

「それ以上成長する見込みはあるの?」

 

「テメェ、今どこ見て言ったんだコラァ!!」

 

 

ブランの最大のタブーとされる貧乳を指摘するような発言に、さすがのブランも無視を決め込むとはできなかったようだ。

完全にキレたブランがノワールに食って掛かろうとするのを、俺は必死になって止める。

 

「お、落ち着けブラン! 大丈夫、貧乳もステータスだから!」

 

「それを気にしてるやつだっているんだよ! 少なくとも私はそうだ!!」

 

「の、ノワールもどうしたんだよ急に、いきなり挑発めいた言葉をブランにかけるなんて……」

 

「……別に? そんなつもりはないわよ?」

 

しれっとそっぽを向いたノワールに尚も掴み掛ろうとするブラン、一触即発の空気だ。

下手をするとここで乱闘騒ぎになるのも時間の問題だ。

 

「ケッ、テメェだってベールに比べればたいしたもんでもないだろうが! 偉そうにしてんじゃねぇぞ!」

 

「別に大きければいいってものじゃないのよ? それにサイズだってあなたよりも三ランクは上だし、ほぼないようなあなたとは違うわよ」

 

「よし、決めた! テメェのその胸の肉、真っ平らになるまでぶったたいてやる!!」

 

「やれるものならやってみなさいよ! こっちは今を生きる最先端の女神よ? ローカル女神になんか負けないんだから!」

 

「ノワールもブランも落ち着けぇーーーー! ここでお前らがバトルしたら船がタイタニ○クよろしく真っ二つになるから!!」

 

ブランが自身の獲物の巨大ハンマーを取り出し、今にも殴りかかりそうになったので、俺は全力で彼女を羽交い絞めにしてそれを阻止する。

いったいどうしたんだお前ら、そこまで仲悪かったっけ!?

 

「お、お姉ちゃんどうしたの!? なんだかお姉ちゃんらしくないよ!?」

 

「下がりなさいユニ、これは引くことのできない戦いなのよ!」

 

「うがぁぁぁぁああああ!! 離せ、は・な・せ!!」

 

「あははは! お姉ちゃん怒ってるー!」

 

「怒ってる……」(ぶるぶる)

 

「ちょ、ロムちゃんとラムちゃんも見てないで、ブランを落ちつ………け」

 

ユニちゃんはショートソードを抜刀したノワールを、俺は何とかロムちゃんラムちゃん姉妹にも協力してもらってブランを宥めようと奮闘する。

すると、そんな中、俺の視界の横にちらりと見覚えのありまくる金髪のツインテールが移りこんだ。

 

 

「いーすん……」

 

「あっ………」

 

 

彼女目が合った瞬間、突然俺の顔が火のごとく熱くなるのを感じた。

 

まただ、最近になってこんなことがよくあるんだよな…。

 

実はあの日以来、なぜかいーすんと目が合うとこんな反応をしてしまうことが多くなったんだ。

いや、まあ、そこまでひどいわけじゃないんだけど……なんていうかこう、ふと目があったとき限定で……みたいな感じか?

 

とにかく、なぜかいーすんと不意に目が合ってしまうと、こんな反応をしてしまうことが多くなったのだ。

あの日を境に……。

 

「あ……」

 

俺とブランたちのやり取りを見ていたいーすんは何を言うでもなく、ただその場から背を向けてどこかへ行ってしまった。

 

「ちょ、いーすん!」

 

俺は彼女を追いかけるべく、ブランを離してその後を追いかけた。

 

 

 

「……ねえ、ブラン、今の」

 

「………あなたも気づいたの? ノワール」

 

「……宗谷さん、どうしたのかしら?」

 

「お姉ちゃん、どうかしたの?」

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

「い、いーすん、あの!」

 

前を歩く彼女に俺は少し声を上擦らせて呼び止めた。

その声を聴いてか、立ち止まったいーすんが俺の方に振り向いた。

 

「は、はい……どうかしましたか?」

 

「あ……いや、その……い、いい天気だな?」

 

「え、ええ、そうですね…」

 

「………」

 

 

 

なんだこの空気!?

 

何今のセリフ! 口下手なキャラの典型かっての!

ちっくしょー! なんなんだよ、なんでいつもみたいに気軽に話せなくなっちまったんだ!

 

あれぇ、そもそも俺っていつもどんな話をいーすんとしてたんだっけ?

 

なんかそれすらもはっきり思い出せねぇぞどういうことだ!

 

ほんとなんなんだ?

あの日、いーすんが俺のベッドの中に入ってきた日からというものなぜかいーすんを変に意識してしまう!

くそ、落ち着け俺、そうだ、フランクに、フランクに接すればいいことじゃないか何事も変わらずに普通に生きるのが一番なんだ、たとえそれは違う世界に迷いこんだとしても変わらないことなんだ……。

 

 

………あれ、普通ってどんなだったっけ?

 

 

あああああああああああ、だめだ! 振出しに戻ってる!!

 

畜生どうすんだよ、こんなこと初めてだからどうすればいいのかわかんねぇよ!!

 

俺がそんなことを考えながら頭を抱えていると…。

 

「あの、宗谷さん大丈夫ですか?」

 

「ふえっ!?」

 

いつの間にか俺の隣にまで近づいていたいーすんが俺の顔を覗き込みながら話しかけてきたので、びっくりした俺はラノベのヒロインが驚いたときに出すような声をあげてしまった。

 

この時、いーすんの顔を見た瞬間さらにまた顔が熱くなってしまうのを俺は感じた。

本当に一体どうしちまったんだ、俺は……。

 

「だ、大丈夫だ、問題ない!」

 

「そうですか? 顔も赤いですし、熱があるんじゃ……?」

 

「いや、本当、本当に大丈夫だから!」

 

そういっていーすんが手を俺のおでこに近づけてきたので俺は全力で誤魔化した。

こんな状態でいーすんに触れられたらどうなるかわかったもんじゃない…。

それこそ、顔から火が出てもおかしくないぞ?

 

………本当におかしい、俺はどうしたんだよ本当に……。

 

「………ごめんな、なんか最近変だよな……俺」

 

少し頭をクールダウンさせて、俺は一歩ほどいーすんから離れてそうつぶやいた。

その言葉はしっかりといーすんにも聞こえてたみたいで、どこか俺のことを心配しているかのような素振りを見せる。

 

「……大丈夫ですよ、私は気にしてません、それに…」

 

いーすんはそう言うと、そっと俺の方に近寄って俺の襟元に手を伸ばし変な方向に折れ曲がっていた襟元をきちんと直してくれた。

さっきブランを止めていたときに変な方向に曲がったみたいだ。

 

その時のいーすんとの距離とほのかに香ってきた彼女の香りに、俺はまたドキリと心臓の鼓動を跳ね上げる。

 

「あなたはあなたの思うように振る舞ってください、そうでないと宗谷さんらしくありませんよ?」

 

にこりと笑ったいーすんの笑顔が、この時とても暖かくて安心する笑顔だった。

……未だになぜこんな風にいーすんのことを見ているのかわからない。

だけど、それでも………俺は、今のいーすんとの関係は大事にしておきたい。

その思いは変わらない、絶対に。

 

「……そうだな、ありがとういーすん、おかげでだいぶ落ち着いた気がする」

 

「そうですか、ならよかったです」

 

俺達はどちらから問うこともなく笑顔でそう言うと、またたわいもない話を始めた。

今は、たぶん、これでいいんじゃないかな?

なんでいーすんを見ているとあんな風になるのかが分かる、その時までは……。

 

 

 

 

 

 

船の通路の脇で、互いに楽しそうに談笑に花を咲かせている宗谷とイストワール。

そんな二人の様子を通話の曲がり角に身を隠しながら覗き見ている二人の影がいた。

 

「………あれは、一体どういうこと?」

 

「あの二人、なんかいい雰囲気になってるんだけど?」

 

さっき口喧嘩から乱闘騒ぎになりかけた元凶のノワールとブランの二人である。

二人は傍から見ていていい雰囲気をバリバリに醸し出している二人を見ながら、どこか腑に落ちないような表情を浮かべている。

 

「………あれじゃあまるで、ラノベとかで見られる典型的な主人公とメインヒロインの思わせぶりな会話シーンじゃない……しかも、明らかにフラグ回収後の感じだわ……」

 

「そ、そんな、まさか宗谷に限ってそんなこと……」

 

「いや、そうとは限らないわ……宗谷に自覚はなくても、むしろイストワールが自覚ありの可能性が……」

 

「………それは」

 

ないとは言い切れない、ノワールから見ても今のイストワールの顔はどこか変化が見受けられるようになっている。

楽しげに会話している彼女の横顔がどこかほんのりと明るくて、柔らかなこの雰囲気。

それはまるで、恋愛ゲームのヒロインのような……。

 

 

「…べ、別にいいんじゃない? 宗谷がだれに好かれていようが、私と宗谷はただの友達なわけだし? 二人がいい感じだろうと私には全然関係な」

 

「あ、二人が手を握って人気のない場所に……」

 

「ちょっとそれどういうこと!?」

 

 

そっぽを向いて自分の意見を述べていたノワールだったが、ブランの唐突な言葉を聞いて慌てて二人の方に視線を戻す。

今の別に気にしてないし? 的な雰囲気とは一変して、慌てまくりな声色と勢いで二人の方を見たノワールだったが、そこには変わらずに会話を続ける二人の姿がまだあった。 特に変化も移動もしているようには見受けられない。

 

「……初めてのまともに友達と呼んでた相手なだけ、やっぱり特別なのね」

 

「な、なによ……ブラン、あんた嵌めたわね!?」

 

ノワールにしてやったりと言いたげな視線を向けたブランだったが、その視線は再び二人の方へと向く。

 

すると、

 

 

 

「なんだか最近、いーすんさんも宗谷さんもあんな感じなのです」

 

「のわぁ!?」

 

「あなたは……いつからそこに?」

 

いつの間にいたのか、二人の後ろで同じように宗谷とイストワールの様子をうかがっているコンパの存在に驚くノワールとブラン。

しかし、それは二の次だ、問題は最近こんな状態が続いているということにある。

 

「一週間くらい前ですかね、なんだか二人ともぽわぽわした感じでまともに会話するのも難しそうだったですけど、今は楽しそうに会話できててよかったです♪」

 

コンパはさしあたりなく二人の今の現状を見て安堵の表情を浮かべたが、二人の心境はそうもいかない。

 

 

(………これは、まさかの展開ね……やっぱり、無理してでもピクニックには参加するべきだったかしら?)

 

(うぅ……なんか悔しい! 私だって、この世界で宗谷が初めて友達って呼んだ相手なのよ!? ……友達ってだけだけど)

 

 

どこか、悔しそうな二人の眼差しに気付くことなく、宗谷はイストワールと談笑を続け、そしてそのまま船は着々とリーンボックスへと近づいていく。

 

そして、宗谷が彼女とした約束の日時まであと少し……。

 

 

 

 

 

 

 

 

リーンボックスで最も大きいとされるイベント会場、そこには既に何万人という人たちが集まり、その時を今か今かと待ちわびていた。

かくいう俺の方もすでにスタンバイはOKだ、場所も確保したし、みんなともそれほど離れていない。

 

時刻は着々とせまり、そして、遂に………その時が来た!

 

 

 

―――――――おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

 

 

会場の人間たちが一斉に沸き立つ、その視線の先には上にスライドしながら上昇する一人の女の子の姿があった。

サファイアブルーの髪が今日も眩しい。

そう、5pb.だ。

 

そして、ここは5pb.のライブ会場。

そこに今、俺たちは来ていた。

 

「~~~♪」

 

彼女が歌いだすと同時に会場にいた人たちも同時に湧き上がる。

今彼女が歌っているのはヒット曲、“きりひらけ!グレイシー☆スター”だ。

 

「さすが、リーンボックスの歌姫、5pb.ちゃんね」

 

後ろの方でアイエフの称賛の声が聞こえ、ネプテューヌの感嘆の声も聞こえる。

 

上空の方では彼女の歌声に合わせて飛び立った二機のジェット機が旋回しつつ、煙幕を引き何かのラインを描いている。

 

「うわぁ、ジェット機を演出に使うなんて、やっぱベールのとこは進んでるというか、スケールが違うというか……」

 

「今回のライブの演出もすべてベール様がプロデュースしているの」

 

驚くネプテューヌに落ち着いた声で説明しているのは、前に俺がこっちに来た時に一時的にコンビを組んだケイブさんだ。

港で俺達と合流した後、ここまで案内してくれたというわけだ。

 

「それにしても、前よりも楽しそうだな、5pb.」

 

「……あなたのおかげなのよ? 宗谷」

 

「え、俺の?」

 

「そう、あなたと出会ってから、彼女も仕事にさらに熱が入ったみたいでね、今さっきも張り切っていたところよ?」

 

「へえ……そうなのか」

 

あの時、彼女を悩ませていた事件を解決したおかげかどうかは知らないが、そんなに張り切ってくれるのは、俺としてもうれしいことだ。

こんな風に彼女の元気な裏声が聞けるなら体を張った甲斐もあるというものだ。

まあ、モンスターを不意打ちで秒殺したくらいのことだけど……。

 

 

歌が最も盛り上がるサビを迎え、終盤に差し掛かると二木の戦闘機が描いた煙幕のラインがハートをかたどり、その真ん中に一本の閃光が走っているかのようなデザインが出来上がった。

こりゃすごいな、よくもまああんなアイデアが思いついたもんだ……。

それを完成させたパイロットの腕もすごいけど……。

 

 

 

『みんなー! ありがとうー! 次の曲は、“Dimension tripper!”』

 

 

 

曲が終わると、今度は新曲をすぐさま歌い始めた5pb.。

世界を飛び越えるような躍動感のあるリズムに、俺のテンションも一気に跳ね上がる。

 

「おっしゃーーー! 燃えてきたぁーー!!」

 

「そ、宗谷さん!?」

 

隣で一緒に聞いていたいーすんに目もくれず、俺はこの時のために準備していたサイリウムを二本取り出す。

俺はみんなよりも前に歩を進め、サイリウムを曲げて光を灯し、すぐさまヲタ芸の準備に入る。

 

するとそこへ、

 

 

 

「やあやあ、またお会いしましたね、少年君?」

 

 

 

聞き覚えのある透き通ったこの声は、まさか…

 

俺はすぐさま声が聞こえた方に視線を向ける、そこにいたのは相変わらずの白いジャージ姿の爆乳美人さん、白ジャージさんことライラさんだった。

彼女の両手にはまだ光を灯していない二本サイリウムが握られている。

 

「白ジャージさん、まさか、またこんなところで会うとはな……」

 

「偶然というのは起こるべくして起こるわけではないのですよ、少年君……」

 

「そうか……なら、聞かなくてもいいよな?」

 

「ええ、もちのろんです」

 

俺たちは互いの闘志を確認したところで、ライラさんがサイリウムに光を灯す。

そう、今から始まるのはオタクによるアイドルの応援合戦、もとい、大いなる戦いだ。

 

 

 

「「っしゃあ行くぞーーーーー!!」」

 

 

 

曲がサビに入ると同時に、俺とライラさんは激しくロマンスを開始する。

 

ヲタ芸合戦第二陣の火ぶたが切って落とされたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブで沸き立つイベント会場からそう遠く離れていないビーチの底、水中用のダイビングスーツに身を包み、海底を跳ねるようにして前へ進む一つの小さな影があった。

その手には懐中時計のような形をした何かの機械があり、それが指し示す反応がある方へとその影は足を進める。

 

「ライブだかなんだが知らないけど、うるさいっちゅねぇ~……」

 

水の中でも呼吸ができるようにかぶっているマスクの下から覗くその顔は、まぎれもないネズミそのものである。

かわいらしくデフォルメされたキャラクターのようにも見えるそのネズミは、機械の画面に目を落としながら愚痴をこぼしつつ海底を跳ねる。

 

「大体なんでネズミが海に潜らないといけないっちゅか? 海の鼠って書いたら海鼠っちゅよ!」

 

ためになるようなならないような雑学混じりな愚痴はさておき、そのネズミは近くなってきた反応の素を探るべく、あたりをきょろきょろと見渡す。

 

「最後の一個の反応はこのあたりのはずっちゅが……どこっちゅ?」

 

海底の砂の中に埋もれているのか、お目当てのものが見当たらないままその場で右往左往するネズミ。

探すこと数十分、海底の底できらりと赤く、怪しく光り輝く何かをネズミはようやく見つけた。

 

「ちゅ? ………見つけたっちゅ!」

 

見つけるなり、すぐさまそれを拾い上げたネズミ。

手のひらには赤い宝石のようなもので作られた小さな十字架がある、いや、作られたというより自然とこうなったのだろうか、どこかいびつな部分も残しているあたりそうなのかもしれない。

 

すると、ネズミが呼吸を確保するために用意したマスクに内蔵された通信機に無線が入った。

 

「ちゅ? だれっちゅか?」

 

『私……お目当て、見つけた?』

 

「ああ、白ゴスロリ娘っちゅか。 おかげで最後の一個、見つかったっちゅよ、情報提供感謝するっちゅ」

 

『………そう、ならいい……あとはそっちの指示を待つ』

 

「了解っちゅ」

 

そう言って通信を切ったネズミは、意気揚々ともと来た道を帰り始めた。

一体、ネズミが見つけたこの十字型の石は何なのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

ライブイベントの会場からそれほど離れていない海域の小さな浮島、そこにトランスを除いた、ロボティック、エネミー、そしてレヴォリューションことシンシアが集まっていた。

 

ロボティックはおつきの大型ロボ、ギガントールに内蔵された通信機で現状を確認するとエネミーにサムズアップを見せて順調に事が進んでいるのを報告する。

 

「さよか、なら、あとはあのおばはんが動くのを待つだけか?」

 

「それも、あるけど……こっちの最終調整もしとかないと……」

 

「……そういえば、あんたが持ってきたそれは何なん?」

 

エネミーがそう言って指差したのは、顔も何もないほとんどマネキンのような姿をした人型の機械だ。

ロボティックはそれの前に立つとえへんと胸を張ってそのロボットに手を置いた。

 

 

 

「てれれってれ~……“コピペロイド”~」

 

 

 

そういって人型マネキン、もとい“コピペロイド”をわざとらしいだみ声(古い方)で紹介するロボティック。

 

これは、彼女が以前にライダーメモリーのメモリーワールドに送り込んだショッカーライダー・パーフェクトのデータを基にして作られたマシンなのだ。

もともとあのショッカーライダー・パーフェクトはトランスの変身能力のためにあるデータバンクから情報を引っ張り出し、ロボティックが“データとして”具現化したものだ。

その技術を応用して、そのデータを“現実に具現化する”ためのマシンを作ったのである。

 

 

「これがあれば、駄肉のアイデンティティは、塵も残さず砕け散る……」

 

「いや、今回の場合はあのあほが二連続で変身するっちゅう無茶して、しばらく変身できないから、仕方なく用意したんやろ?」

 

「既に、三個ほど量産済み……」

 

「……あんたほんまにあいつ嫌いなんやな」

 

そんなにしてまで彼女のアイデンティティを壊したいのかというエネミーの戦慄をものともせず、ロボティックは用意した三体のコピペロイドの前に立つ。

 

 

「このコピペロイドに、あらかじめトランスが用意したデータが入ったチップを……ペースト」

 

 

そう言って、ロボティックはコピペロイドの胸のあたりにそれぞれ違うデータが込められたチップを張り付けた。

 

すると、三体のコピペロイドはバチバチというスパークをあげて、その姿をデータを基にした姿へとコピーさせる。

 

 

 

『Break up……』

 

 

 

一体のコピペロイドは、紫の無骨なボディが特徴的で、まるで改造したバイクのような姿を思わせる戦士へとコピーし、

 

 

 

『ウォォォォ……』

 

 

 

二体目は、黒と赤の体に銀のラインを備え、赤い目が特徴的な戦士の姿にコピーする。

コピーが完了した瞬間、その戦士の周りには“虹色に光り輝く微粒子”のようなものが飛び交う。

 

 

 

『爆竜、チェンジ……』

 

 

 

最後の三体目は白のボディースーツに黒の鋭利なラインが特徴的で、“翼竜トゥプスアクラ”を思わせる姿の戦士へと姿をコピーする。

 

見事にコピーを成功させた三体を満足げに頷きながら見るロボティック、その隣に歩み寄ったエネミーが目の前にいる三体を一瞥しながらふとした疑問を投げかける。

 

「そういえば、トランスは何で特撮ヒーロー物のキャラばっかりに変身するんや? その気になれば今の女神の姿にも変身できるんやろ?」

 

その言葉に、ロボティックは少し呆れ気味に小さくため息をついて、やれやれと首を振った。

 

「……ロボットといえば、ロケットパンチ……変身といえば、特撮ヒーロー……これ常識」

 

「あんたの常識やろ?」

 

呆れ気味なエネミーには目もくれず、ロボティックはコピーを完了したコピペロイドに自身の端末をつなげて最終調整を開始する。

 

この三体がこれから起こる“最初の困難”の重要な盛り上げ役になるのだ、きっちり動いてもらわなければならない……。

 

 

 

そんな二人のやり取りには一切入らずに、両耳にイヤホンをつけてロボティック製のパッド型のデバイスに移る映像を一心に見ているシンシア。

彼女が今見ているのはリーンボックスで絶賛開催中の5pb.のライブイベントである。

 

人混みが極端に苦手な彼女はこうして生配信の映像を見て、イベントに参加しているのだ。

 

 

「………♪」

 

 

その表情は、どこか楽しそうで、いつもの彼女ではなかなか見られない笑顔を浮かべていた。

 

だが、その表情の奥にはひそかに不安と罪悪感の感情が渦巻いていた……。

 

本当は、こんなことはしたくないのだ……。

 

しかし、やらなければいけない……。

 

自分が愛したこの世界のためにも……。

 

 

 

(………つらいことをさせてごめんね)

 

その渦中のど真ん中に立つであろう、彼とその仲間たちに謝罪しながら、シンシアは流れている映像を見続けた。

少しでも、不安を紛らわせるために……。

 




いかがでしたか?

次回は、今回出番がなかったベールさんの元へ!

それでは次回でお会いしましょう…。
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