超絶次元ゲイムネプテューヌ おーばーどらいぶ!   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回のお話は、リーンボックス教会の大掃除。
その最中、黒い影が宗谷達に迫る……!?

それではお楽しみください、どうぞ……。


stage,37 俺と大掃除

 

 

ヒートアップした会場の熱気の中、俺と白ジャージさんのヲタ芸合戦は以前よりも白熱した激戦となった。

俺は俺のもつヲタ芸の技の中でも最も苦労し、最も美しく見せるために努力し、会得した不知火を披露し、対抗してかライラさんも今まで以上のキレのある動きでサムライを披露し、一進一退のヲタ芸の応酬という壮絶なバトルが繰り広げられた。

もちろん、本来の目的の5pb.の応援も忘れずにという条件付きで。

 

そして、俺と白ジャージさんのヲタ芸合戦は三曲目まで続いた……。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……やるな、白ジャージさん」

 

「ふぅ……ひぃ……少年くんこそ、腕をあげましたね」

 

肩で息を繰り返す俺たちは、やがて互いに歩み寄るとがっしりと固い握手を交わした。

 

 

 

「ねえ、宗谷はいったい何をしているの?」

 

「………さあ?」

 

 

 

みんなの目線なんて、今の俺にはどうってことないぜ。

それほどに、今俺と白ジャージさんの間に燃える打ち師としての熱い情熱は燃えたぎっているからな!

だからいくら冷たい目線を送っても無駄だぞ、ノワール、アイエフ!

 

「おやおや、今日はみなさんお揃いのようですね?」

 

「ああ、まあな」

 

「よきかなよきかな、みんな一緒はいいことですよ」

 

白ジャージさんはそういうと、楽しそうな笑顔を浮かべて両腕を腰に添える。

 

「……ほんと、揃ってくれて何よりです……」

 

一瞬、彼女が何かを呟いたような気がしたが、周りの歓声に紛れてしまってよく聞こえなかった。

 

「そういう白ジャージさんは、どうしてここに?」

 

「イベントあるところ、私は必ず現れる、それが私です!」

 

「はあ…さいでっか」

 

今にも爆発しそうな胸の双丘をえへんとはって言い放った白ジャージさん。

……あ、そういえばこの人直ジャージがデフォだったっけ?

胸を包んでいるはずの下着がないから、ジャージの上でも胸の形がよく分かってしまう……。

すると、俺の視線に気づいたのかライラさんはにやりと小悪魔な笑みを浮かびて両手を組み、押し上げるようにして自身の爆乳を強調してきた。

 

「……おやおや、少年くんはやっぱりこういう熱い展開よりも、こっちの方がお好みですかにゃ?」

 

「なっ、違う! 間違ってはいないけど、そうじゃない!」

 

「どっちなんですか?」

 

「あ……う~む……どっちも?」

 

俺の曖昧な答えに、ライラさんはくすりと笑った。

 

「まったく、最近の男の子は欲張りですねぇ~」

 

「いや、別に欲張ってるつもりは……」

 

「え、でも好きなんでしょ? ほら、ほら♪」

 

そう言うと、彼女は自身のジャージのファスナーに手をかけてゆっくりとそれを下し始めた!?

おいおい、いくらなんでもこれは……!

 

 

「ほらほら少年くん、ありのままの私を………見て?」

 

 

ゆっくりと下ろされていくファスナー、やがてその間からこぼれんばかりの胸のふくらみが……

 

 

「ストップ! それ以上不健全ダメゼッタイ!」

 

慌てて彼女の手を掴み、彼女の暴挙を済んでのところで中止させる。

それでも、下ろした分彼女の胸の谷間が視界にちらつき、俺は目線をそらすことを余儀なくされた。

畜生、やるのはいいとしても場所を考えろよ白ジャージさん!

……いや、了承もなくやっちゃいけないことだけどね!?

 

「むふふ……やっぱり、いいですねぇ、その慌てぶり♪」

 

「からかうのも大概にしてくれ、こっちには健全に生きるという決意があるんだからさぁ……」

 

「いやはや面目ない、おもしろかったのでついつい魔が差してしまって」

 

反省の色なしの白ジャージさんはそう言って、へらへらと笑う。

まったく、この人は恥じらいというよりものがないうえにからかうのを楽しんでいるからタチが悪い…。

 

 

―――――わあああああああああああああああ!!

 

 

俺が白ジャージさんの言動に困り果てていた時、さっきよりも会場の歓声が大きくなった。

 

ステージの方を見ると、5pb.がギターを取り出し、終盤の曲を歌おうとしているところだった。

 

彼女はギターを肩にかけると、マイクの前に立ちすぅっと息を吸った。

 

 

 

『それじゃ、ラストの前に………この歌をボクの夢を応援してくれた……大切なことを思い出させてくれた、ボクの恩人に贈ります! 次の曲は……“恋愛勇者”!!』

 

「っ!」

 

 

 

彼女の言った曲名を聞いたとき、俺は思わず驚きのあまり目を見開いた。

 

まさか、ここであの曲を彼女が歌うなんて……。

 

―――~~~~♪

 

躍動するリズムと、彼女の歌声がライブ会場を包み込む。

あの時、二人でセッションをした時のあの瞬間がふと頭の中に浮かび上がった。

 

「………5pb.」

 

彼女の歌声に乗せて響く、何か熱いもの、それが何となく俺の中に響いてきた気がする。

それが何なのかはうまく言葉にできないけど、たぶんこれが彼女が一番やりたいって言っていたことなんじゃないだろうか?

 

いや、きっとそうだ…、だって今の彼女、すっごく楽しそうだから。

 

(………てんきゅ、5pb.……最高の一曲だぜ)

 

胸の奥に感じる熱いものを味わいながら、俺は彼女の躍動するリズムを聴き続けた。

 

 

 

「おっと、そろそろ終盤ですか……それでは私は仲間のところに戻らなきゃいけないので」

 

曲も終盤に差し掛かったころ、ライラさんが突然そう言った。

 

「仲間って、シンシアか?」

 

「ええ、そんなところです」

 

俺の問いに答えた白ジャージさんはそういうと、こちらに背を向けて観客の雑踏の中に歩を進め始めた。

 

「なあ、白ジャー……ライラさん!」

 

「?」

 

呼び止められたライラさんは、振り向いて俺のことを見つめる。

 

「俺、最初はあんたのこと変な人だって思ってたけど、あんたのことそんなに嫌いじゃないみたいだ。 だからさ、またどこかで会おうぜ?」

 

俺は彼女と会話をしたり、こうしてヲタ芸合戦に身を投じたり、いーすんが熱を出した時などでこの人と関わっていくにつれてどうにもこの人が憎めない人だと思えてきた。

まあ、からかわれるのはいい気がしないが、人としてはそれほど嫌いな人じゃないのは事実だ。

 

去ろうとしていたライラさんは振り向いた姿勢のまま口元に微笑を浮かべる。

 

「ええ、そうですね……そう遠くない時に会えるかもしれませんよ♪」

 

ただそれだけを言い残し、さらには彼女の見た目の相乗効果もあって破壊力がとんでもないウィンクまで追加していった彼女はそのまま雑踏の中に消えていった。

 

「………?」

 

その時、一瞬だけ、本当に一瞬だけ、俺は違和感を感じた。

去り際に俺が見たライラさんの顔、なんだかいつものあの人とは違う、なんかこう……シリアスな顔をしていたような気がする……。

シリアスという言葉が無縁なように思えるあの人が、そんな表情をするとは思えないのだけど……。

 

「宗谷さん……?」

 

ふと、俺の肩に誰かが手を置いて俺の名前を呼んだ。

呼ばれたので後ろに振り向き、誰なのかを確認すると……。

 

 

 

「………見損ないました宗谷さん、あんな……あんなふしだらな関係の人がいたなんて……」

 

 

 

そこには、修羅の鬼がいた……。

船の上でのやさしい笑顔を軽く凌駕する威圧感を放つ、いーすんという名の鬼娘が……。

 

「あ、あの……いーすんさん……一応、どうしてなのか理由を聞きたいのだけれど?」

 

「人目も気にせずに服を脱ごうとする人と何をするつもりだったんですか?」

 

あ、なるほど、大体わかった。

どうやら、突然人目も気にせずジャージのファスナーを下し始めた白ジャージさんとそれを止めようとした俺のやり取りを何かいかがわしいことをしようとしていると勘違いしていたようだ。

 

 

………いや、いくらなんでもひどい勘違いすぎね?

 

 

「いーすん、これはただの誤解で……」」

 

「宗谷さんなんて……大っ嫌いです!!」

 

「お、鬼――――――!!」

 

 

俺の弁解もむなしく、本の角という金棒を持った鬼娘によって俺は危うく地獄めぐりをするところだった。

……これはさすがに理不尽すぎないか?

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ソウヤも大変だね……成仏してね、なーむー」

 

「勝手に殺したらダメでしょ……」

 

宗谷がイストワールの本の角で滅多打ちにされている様子を、ネプテューヌたちは離れた場所で静かに見守っていた。

助けを求めて泣き叫ぶ宗谷には悪いとは思いつつも、彼女にいつも怒られているネプテューヌを含めるプラネテューヌ教会のメンバーをはじめ、その場にいるメンバーはなるだけ今の彼女の怒りを買いたくないのだ。

 

「………」

 

「………」

 

ただ二人、宗谷とイストワールのやり取り複雑な思いの籠った眼差しで見つめるノワールとブランは例外のようだが……。

 

「あれ? どったの、ノワールにブラン?」

 

「え!? ……べ、別に何でもないわよ! あなたには関係ないことだし!」

 

「………右に同じく」

 

「え~、その割にはソウヤといーすんのこと、じ~っと見てたじゃん、You言っちゃいなよ~?」

 

こういう時に限って余計なことはしっかりと見ているネプテューヌの言葉に、二人は図星を突かれ、僅かにたじろいだ。

ただそれでも悟られまいと、ノワールは素っ気ないふりをしてそっぽを向き続ける。

 

一方、ブランはしばらく黙ったままだったが、やがて少し口を動かした。

 

「……あの二人、いつもあんな感じなの?」

 

そう問われたネプテューヌは、頬に指を添えて思い出すようにしばらく唸った。

 

「う~ん、まあ、最近はなんか変な感じだったけど……いつもは確かにあんな感じかな? 基本いーすんとソウヤって私から見てもすっごく仲いいし」

 

「………確かに、今はあんな感じだけど……頷けるわね」

 

それ以上は何も言わなかったブラン、そしてそっぽを向いたままのノワール。

その表情は何か複雑な思いを抱えているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、ライブに招待してくれたのはいいけど……肝心のベールが来ないってどういうことなの?」

 

「何か事情があるのよ、きっと……」

 

「う~………まだそこら中が痛い……」

 

「もう、誤解なら誤解と早くいってください……」

 

「言ってたよ、言ってたけど聞いてくれなかったじゃん!」

 

体中ボロボロになりながらもなんとかいーすんの誤解を解いた俺はみんなと一緒にライブ会場を後にし、リーンボックス教会に来ていた。

目的は5pb.のライブの後にベールが主催すると言って、みんなを誘ってくれたホームパーティーだ。

本来ならライブ会場で合流するはずだったのだが、結局彼女は現れなかった。

 

ライブの後の5pb.の握手会の手伝いに向かったケイブさん曰く、「なぜか手が離せないみたいなの……」、とのことらしい。

 

なので、俺たちが直接彼女のところに行くことになったのだ。

 

「………で、ベールの部屋はどこなの? あなたとイストワールは一度ここに来たんでしょ?」

 

なんだかご機嫌ななめっぽいノワールが俺といーすんの方に振り向いて聞いてきた。

なんで不機嫌そうにしてんだ?

俺は気になりつつも一か月前にこの教会に来た時の記憶を頼りに彼女の部屋の位置を思い浮かべる。

 

「ん~っと……たしか、このあたりだった気がするんだが……」

 

「あ、ここ開いてるよ~?」

 

俺の後ろでネプテューヌが一つの扉に手をかけて、それを半分くらい開けた状態でみんなのことを呼んだ。

どうやらいつの間にか通りすぎてたみたいだな。

 

……いや、別に忘れてた訳じゃないんだ、ここの教会、何気に同じような扉が多いから迷いそうになるんだよほんとに……。

 

「………」

 

「ん? どうしたいーすん?」

 

「いえその……なんだか身震いが……」

 

「………もしかして、この前のトラウマが?

 

「……かもしれません」

 

俺たちがこの教会に最初に泊まった日に起きたことを思い出したのか、僅かに青い顔をするいーすん。

何をされたか事情は知っているが、トラウマになるってどんだけのことしたんだよベール……。

そんないーすんを宥めつつネプテューヌが見つけた部屋の前にみんなが集まり、ドアノブを持ったままのネプテューヌがドアの間から中の様子を覗き見る。

 

「おおう!?」

 

「どうした、ネプテューヌ?」

 

何やら驚いたような反応を示した彼女に釣られて、俺たちは部屋の中に入った。

 

「うわぁ……」

 

「なにが……あったです?」

 

「荒らされた後みたい……」

 

ベールの自室はこの前来た時よりもひどい有様になっていた。

そこら中にゲームのディスクの山が積まれているだけじゃなく、そのゲームの付属品のタペストリーやらフィギュアやらがあちこちに置かれ、ゲームハードまでそこらに投げっぱなしというひどい有様だ。

 

……ていうかなんだ、この壁に貼ってあるBLのポスターは?

こんなの前に来た時はなかったぞ?

 

一か月の間にベールに何があったんだ……。

 

さすがに部屋がこんな状態だとホームパーティーもできねぇぞ?

 

「おお! これは18歳にならないと買えないゲーム!」

 

「ちょ、やめなさいよねぷ子! 小さい子もいるんだから…」

 

「わぁ~………」

 

「………ネプギア、お前まさか腐女子の気が?」

 

「えっ!? ち、違います! そんなのじゃありませんから!」

 

俺たちがこんな風なやり取りをしていると……

 

 

 

―――後方の部隊は何をやっていますの!

 

 

 

部屋の奥にあるもう一つのドアの向こうから聞き覚えのある澄んだ声が聞こえてきた。

何やら切羽詰っているようだが……。

 

俺たちはその声に導かれドアの前に立つと、ノブを回し部屋の中を覗き込む。

 

 

 

「私が援護に回ります、あなた方は先に行ってくださいまし!」

 

 

 

そこには真っ暗な部屋で頭にマイク付きのヘッドホンを装備し、マグカップで何かを飲みながらコントローラーを忙しなく動かすベールの姿があった。

部屋を明るくして、離れてゲームをプレイしてね? の注意勧告を完全にスルーした状態の彼女は一心に画面を見つめたままこちらに気づく気配はない。

 

 

「ああ! 早い! それは早すぎますわ!!」

 

「何やってるのよベール……」

 

「あっ、ちょっと……そこは……あ~ん」

 

「………完全にネトゲね」

 

「というか、なぜだただゲームをプレイしているだけなのになぜこんなに色っぽい声をあげるんだ?」

 

「おーい、そこの廃人さーん?」

 

 

俺たちがこの部屋に入ってきても気づかない彼女にネプテューヌが近くで声をかけるとベールはやっと俺たちの存在に気づいた。

 

「あ……あら、皆さんいらっしゃいませ。 今ちょっと手が離せませんの……」

 

ヘッドホンのマイクを手で押さえて俺達に振り返ったベール。

完全にいつものベールだけど……さっきの姿を見てしまうと違和感しか感じない……なんだこのギャップ?

 

ゲーマーだとは思っていたけど、まさか廃人レベルだったとはな……。

 

「手が離せないってゲームしてるだけじゃん……」

 

「約束すっ飛ばしてゲームってどういうつもりなの!?」

 

俺の半ば呆れ気味な言葉に続いてノワールがそう聞くと、ベールは申し訳なさそうな苦笑いを浮かべる。

 

「出かける前に一時間だけって言ってログインしたら、攻城戦が始まってしまいまして……抜けられなくなってしまったのですわ」

 

「………ライブの後はここでパーティーじゃなかったのかしら?」

 

「………あ」

 

「忘れてたのかよ!?」

 

忘れるほどのめり込むってどんだけ!?

せめてそれは覚えておこうよベール!

 

「………こういう人だったのね」

 

「ま、まあ、趣味はいろいろだから……」

 

「……ノワールが言うとなんか説得力あるな?」

 

「うるさい!」

 

「あだだだだだだだだっ!?」

 

俺の一言を聞いたノワールが俺の耳をつねる。

 

いや、だってそうじゃん! 俺だってお前のコスプレ趣味を知ったときはブランと同じような心境だったんだよ!

 

あ……でもみんなには内緒にしてるんだっけか?

 

「ダメ女神だね~、もしかしたら私よりダメかも?」

 

「「「それはない」」」

 

「ねぷ!? こんな時だけ息合ってる!? しかもソウヤまで!?」

 

調子に乗りかけたネプテューヌの意見を三人でバッサリ切り落とす。

これでもたぶんお前よりは仕事しているはずだと俺は信じているからな。

 

でも、これじゃあいつパーティーが開けるかわかったもんじゃないな……。

 

「も、もう少ししたら城を落とせますので、少々お待ちになっていただけたら……」

 

「……と言ってますけど、どうします? もうしばらくかかると思いますけど?」

 

「………そうねぇ」

 

アイエフの言葉にノワールはしばらく考えるとある決断に至った。

 

それは………

 

 

 

 

ベールがゲームをしている部屋とは別のグッズが散乱して荒れ放題の部屋、そこに俺たちは集まった。

 

そして、そんな俺たちの目の前にはいったいどこから待ってきていたのか、メイド服姿で箒を片手に持ったノワールがいた。

この前教会で見た時のメイド服とはまた違ったデザインだ、おそらくこれも彼女の手作りかと思われる……。

 

ていうかおい、秘密なんじゃないのかよ?

 

「さあ! みんなで準備するわよ!」

 

「ノワール、もしかしてお前今の状況楽しんでる?」

 

「またつねられたいの宗谷?」

 

「……勘弁してください」

 

俺は素直に引き下がると、ノワールはよろしいといって再びみんなに向き直る。

 

「え~、なんで私たちが準備~?」

 

「文句言わないの! せっかくここまで来たんだからきっちりパーティーして帰るわよ!」

 

俺に引き続いて文句ありげな発言をしたネプテューヌを一蹴したノワール。

まあ、確かにここまで来た以上しっかり楽しんでいきたいのは俺も同じだ。

背に腹は代えられないというわけか……。

 

「まず、ネプギア、アイエフ、コンパ、そしてイストワールの四人は食糧の買い出し!」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

「残りのみんなは部屋の掃除よ、はい、今すぐ初めて!」

 

手早く段取りを決めたノワールの勢いに押され、四人は潔く返事した。

ああ、なんだろう、なんかノワールが輝いて見えるよ?

 

「出た、こういう時に限って張り切ってるやつ……」

 

「変なスイッチが入ったわね……」

 

「まあ、たぶんパーティーが何気に楽しみだったからさらに張り切ってるんじゃないかな?」

 

「うるさい! ちゃっちゃと働く!」

 

ぶつくさ言っていた俺達を黙らせ、ノワール監修の元ベール主催のホームパーティーの準備が開始された。

本当は俺たちがするんじゃないんだけどな……。

 

でも、大変なのはそこからだった……。

 

 

 

 

 

 

「おい、ネプテューヌそこ気を付けっ!?」

 

「へ? ねぷぷぅ!?」

 

ネプテューヌが積まれていたゲームの山を盛大に崩したり……。

 

「………」

 

「あ、あの~、ブラン? 手伝ってくれませんかね? この本の山結構重い………」

 

「今いいところだから、邪魔しないで……」

 

ブランは部屋に置いてあった本に夢中になり……。

 

「そうやお兄ちゃん見てみて~♪」

 

「うまく描けた……♪」

 

「ん? おお、よくかけ……ってこれ描いちゃいけない本じゃないか!?」

 

ロムちゃんラムちゃん姉妹は、暇になって部屋に置いてあった大切そうな分厚い本にお絵かきしちゃう始末……。

 

はかどるとは言えそうにない現状だった…。

 

「………これ今日中に終わるのか?」

 

「た、たぶん大丈夫ですよきっと……あは、あはは」

 

「ユニちゃんがある意味救いだよ、きっちり仕事こなしてるから」

 

「ま、まあ、このくらいは………」

 

そう言ってユニちゃんは床に置きっぱなしのフィギュアの箱を移動させる作業に戻る。

 

うんうん、ノワールに似てしっかり者だぜ。

 

 

(言えない……さっき飾ってあったフィギュアを落としてひどいことになったなんて……)

 

 

俺ももっと頑張らないと、ユニちゃんに負けちまうからな。

俺は段ボールにまとめたタペストリーを移動させようと持ち上げる。

 

「こら、ネプテューヌ! サボってゲームしようとするんじゃないの!」

 

「あ、いやぁ…これはそのぉ……」

 

後ろの方でネプテューヌがサボろうとしていたのをノワールが注意する会話が聞こえてくる。

まあ、このくらいは想像できた。 いつかやると思ってたんですよ。

 

気にせずこの箱を部屋の外に置こうかと思っていると…

 

 

「………? ひっ!?」

 

「ねぷ? どうしたのノワー………るっ!?」

 

 

何やら後ろで妙な空気を感じた俺は箱を持ったまま後ろを振り向く。

見ると、なにやらノワールとネプテューヌの二人が固まったままの状態でその場に立ち尽くしていた。

 

「おーい、どうした二人とも~?」

 

俺がそう呼びかけると………

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」

 

「ねぷぎゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

二人は目に涙を浮かべた状態で絶叫をあげながら俺の方に向かって走ってきた。

その表情は恐怖に染まっている、一体どうしたんだ!?

 

「ソウヤーーーーーーーー!!」

 

「はっ!? えっちょ、待っ!?」

 

「いやぁぁぁあああああ!!」

 

「むぐぅっ!?」

 

パニック状態になった二人は俺に思いっきり飛びついてきやがった。

二人に飛びつかれたせいで俺は後ろ倒しに倒れてしまった。

 

お、おお……なんだこれは、この二の腕と足に当たる柔らかな弾力のあるものは……

 

まあ、それの正体は俺の腕につかまってぶるぶると震えているノワールが気づかぬうちに俺の腕に押し当てている彼女の形のいい胸の双丘だ。

足のほうのはとっさにネプテューヌがからめた彼女の内股によるものだ。

 

二つとも何とも言えない感触で俺はこのまま死んでもいいとも思いました、まる。

あれ? 作文?

というのはいいとして……。

 

「急にどうしたんだよ、二人共?」

 

俺がそう聞くと、ノワールが震えながらさっきまで二人がいた方の壁を指さした。

 

「あ、あれ!」

 

「ん? ………あ、あれはまさか!!」

 

そう、それは人類が生きているうえで何度も出会い、そして何度も戦ったとされる俺が元板世界、地球にも古来から存在した生命体。

 

奴らは弾丸の如きスピードで地を駆け回り、人間では到底追いつかないほどの繁殖力と恐るべき生命力を秘めているとされる。

どんなに戸締りをして侵入を拒もうとしても、それは現れる……。

どこからともなく表れて、俺達に恐怖と憎悪をまき散らす、その生物の名は!!

 

 

 

「Gが! Gが出たーーーー!!」

 

 

 

G、またの名を台所の黒い悪魔“ゴキブリ”………。

 

火星ではテラフォーマーと呼ばれ、数多の人間たちが恐れをなしてきた、人間の宿敵である。

 

「だ、だれか対G兵器持ってきてぇ! それかランキング9位の軍曹を呼んできてぇ!!」

 

「い、いやぁ……来ないで……こっち来ないでぇ…」

 

完全に取り乱している状態のネプテューヌと今にも泣きだしそうな顔でいやいやと首を振るノワール。

ノワールはなんだかかわいいけど、ネプテューヌ、お前はなぜそのネタを知っているんだ? もしかしてアイエフか? この前アイエフにあの漫画の話をしたからか?

 

それは後で聞くとして、このままゴキブリの好きにさせるわけにはいかないのは事実だ。

 

この教会の平和と全人類のため、俺は奴と戦うことを決心した。

 

「二人とも下がってろ、ここは俺が何とかする……」

 

「そ、宗谷ぁ……」

 

俺は二人の腕をやさしく払って、戦うための武器を手に取る。

正直、俺もゴキブリはそんなに得意じゃない、あの茶色い奴なんか特に嫌いだ……。

 

でも、それでもやらなければいけない……やらなければ、やられるからだ。

何をされるかは知らんが……。

 

俺が手に取った武器とは人間が確実に奴の息の根を止めるために使ったとされる古より続く必殺の武器。

 

そう、“スリッパ”だ!

 

 

「どこからともなく湧き出やがった虫けらが………人類をなめんなよ」

 

 

俺はスリッパを構えてこちらの方に近づいていたゴキブリを指す。

ひょこひょこと動く触角が俺の動きを確かめているように見える。 悟られるな、一撃で仕留めるんだ。

 

「おぉぉぉぉおおおおおおお!!」

 

先手必勝、俺はスリッパを思い切り振りおろしてゴキブリを叩き潰しにかかった。

 

だが、

 

 

 

「なにぃ!? 躱した!?」

 

 

 

奴は俊敏な動きを利用して、俺の一撃を回避しやがった。

そして、一目散に動き回り、逃げる道を探そうとあたりを駆け巡る。

 

くそ、ここで逃がしてたまるかよ!

 

だが、奴は素早い。

ようやく見つけても距離がある時がほとんどだ。

じょうじめ、まったく厄介な奴だ!

 

「うわわわわぁ!! こっち来たこっち来たぁ!!」

 

「や、やめて来ないで! 近づかないでぇ!!」

 

逃げ惑うゴキブリは怯えまくってる二人の方に向かっていった。

恐怖に慄くノワールとネプテューヌは一目散に逃げ出し、ゴキブリとの接触を回避する。

 

人として、というよりゴキブリが苦手な人なら当たり前なこの行動だが、時にそんな咄嗟の行動がハプニングを生み出すことがある。

 

 

 

ゴキブリを追いかけようと駆け出した俺と、ゴキブリから逃げ出したノワールが偶然ぶつかってしまうのもその一つだ。

 

 

 

「わっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

 

正面からぶつかった俺とノワールは二人纏めて転倒し、俺は地面に二度倒れることとなった。

 

ただ違うのは、俺の視界が真っ暗になり何やら息苦しい状態になったことだ。

 

(な、なんだ……これはさっきの胸とは違った鼻先に当たっているこの感触、それに……甘酸っぱいようなこの匂いは……)

 

俺はいったい何が起こっているのかわからず、反射的に首を動かす。

 

「いたたた……ひゃんっ!?」

 

その途端、俺の真上の方でかわいらしい声がした。

これはノワールの声だ、声がした途端俺の体の方に何かが倒れこみ、柔らかい感覚が体の上全体に広がる。

 

「ちょ、宗谷……どこに顔、あっ! だめぇ、宗谷の息が……あんっ!」

 

「ふぐぐぅぅぅ~~~!」 (よくはわからんけど…く、苦しい!)

 

苦しむ俺とは違い、何やら色っぽい声をあげるノワール。

ほ、本当に何が起こっているんだ…? すごく気になるけど、このままじゃ窒息しそうだ……。

 

「ちょ、ソウヤ!! ラッキースケベしてないで、早くGを!! Gを何とかして~~!!」

 

「ちょ、うわぁ!? こっち来ないでよ!! 撃つわよ!? 本気で撃つわよ!!」

 

「気持ち悪い~! お姉ちゃんなんとかして~!」

 

「ふえぇぇ……あれやだぁ…」(びくびく

 

「わ、私もあれはさすがに無理………」

 

「んっ……やっ、んあっ! そ……そう、や……うごいちゃ、らめぇ…!」

 

「んぐぅぅぅぅうううう!!」 (し、死ぬぅぅぅぅううう!!)

 

 

 

阿鼻叫喚のGパニックはその後も続いた……。

ベールの奴、一人ゲーム部屋に閉じこもりやがって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗谷達がゴキブリにより大パニックに陥っている中、買い出しに出かけていたネプギア、コンパ、アイエフ、イストワールの四人は順調に材料を集めていた。

 

一通り必要なものを買い集めたイストワールは道中、ネプギアと一緒になり、最初に決めていた集合地点に向かっていた。

 

「結構多いですね、買いすぎちゃったかな?」

 

「人数が多いから、多いに越したことはないと思いますよ」

 

果物の入った紙袋を持つネプギアと話しながら自分も食べ物を入れた紙袋を持ちながら歩き続けるイストワール。

 

そろそろ教会の方も片付いたころかと考えながら二人はコンパかアイエフが待っているかもしれない広場の方と向かう。

 

そろそろその場所が近づいてきたとき、二人はあるものを見つけた。

一つはコンパが何やらネズミの姿をした小さな人物に笑顔を向けている光景。 もう一つはネプギアの足元に落ちている十字架型の小さな赤い石。

 

(あのネズミのような方……どこかで見たような……?)

 

イストワールはコンパのことを何やら熱い瞳で見つめているネズミのマスコットのような何者かのことをどこかで見たような気がした。

しかし、どこで見たのかまでは鮮明に思い出せない。

 

一方のネプギアは、足元に落ちていた赤い石を手に取って拾い上げる。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

すると、どうしたことか。

急に彼女の体から力が抜け、その場に力なく座り込んでしまったのだ。

突然起きた出来事に、ネプギアは驚き荒い呼吸を繰り返す。

 

(な、なにこれ……体から力が……)

 

彼女の異変に気付いたイストワールはすぐにその場にしゃがみ込み、彼女の肩に手を置いてネプギアの容体を確認する。

コンパも後ろで起きた異変に気付いたのか、振り向き二人の存在をやっと確認した。

 

「ネプギアさん!? どうしたんですか!?」

 

「……なんだか急に……体が……」

 

苦しそうに息を繰り返す、ネプギア。

すると、コンパの前にいたネズミがすぐさま立ち上がり彼女が手に持っていた石を強引に取り上げ、どこかに走り去っていった。

 

「触るなっちゅ!」

 

「あっ……」

 

そのまま何処かに姿を消してしまったネズミ、するとそのすれ違いざまにアイエフも合流した。

ネプギアを心配して駆け寄ってきたコンパも含め、これで全員が揃ったのだが、何やら異様な空気が四人を包む。

 

「ギアちゃんどうしたです?」

 

「わかりません……急に力が抜けて……」

 

「………イストワール様、今のネズミ……」

 

「はい、どこかで見たような気がするんですが……」

 

この時、イストワールとネプギアは何やら嫌な予感を感じていた……。

 

 

 

 

 

「ちゅ~……危なかったっちゅ……まさか女神の妹とその仲間に出会うなんて…」

 

一目散に逃げ出したネズミは息も絶え絶えに路地裏に逃げ込んで、一息つけると小石をそっとバッグの中にしまい込んだ。

 

自分を雇ったある人物に愚痴を言われるのを避けるために急いでいたところ、転倒してしまい小石を落としてしまうという単純ミスには内心かなり焦ったネズミはそれで少し安堵しつつ、その時に偶然出会った“天使”に思いを馳せた。

 

「……コンパちゃん、マジ天使……」

 

ぽっと頬を赤くするネズミ、転倒した自分に優しく声をかけてくれた彼女。

擦りむいた腕に絆創膏を張ってくれたやさしい彼女。

自分に向けた花のように美しい笑顔が眩しかった可憐な名の彼女。

ネズミは自分が出会った天使、コンパのことが脳裏に焼き付いてしまったのだ。

 

そんなデレデレな顔をしている彼の後ろにある人物が現れた。

 

 

「ネズミも人並みに人を天使と思えるんですね?」

 

「ぢゅぢゅっ!?」

 

 

声をかけられたネズミは驚き、慌てて後ろを振り向く。

 

そこには白いジャージに身を包んだ白銀の長髪の女性、トランスとそんな彼女の後ろに隠れているシンシアの姿があった。

 

「な、なんだ白ゴスロリ娘の仲間っちゅか……驚かすなっちゅ!」

 

「そういうつもりはありませんでしたが、なかなか面白いものが見られましたので」

 

「………淫獣の目をしてる………」

 

「ちゅっ!? こ、こんな愛くるしいネズミに淫獣とは…何事っちゅか!?」

 

「ひぅ……」

 

ネズミに怒鳴られたシンシアは怖がってトランスの後ろに身を隠す。

怒るネズミをにやにやと見下ろしながら、トランスはまあまあと彼を宥める。

 

「彼女は独特な感性の持ち主ですから、気にしないでください……それよりか、もうこちらも準備は整いましたよ?」

 

「ちゅ? 見つかったっちゅか、強力な助っ人が」

 

「ええ、だから安心してください……集合地点で私の仲間がすでに待機していますよ、早くいった方がいいですよ?」

 

にこりという擬音が似合う笑顔を浮かべたトランス。

彼女の言う助っ人、それは自分の手に入れたデータを基にロボティックが作り上げたコピペロイドのことだ。

 

 

すべては、彼のため……。

彼がより力をつけるための布石なのだ……。

 

(お膳立てはしました……だから、きっちり強くなってくださいね、少年くん♪)

 

彼女の笑顔の裏にある、その本心の目的とはいったい……。

 

そして、日は暮れ始める……。

 

 

 




いかがでしたか?

ゴキって、本当にどこにでも湧いてきますよね?
まあ、引っ越してからはまだ見ていませんが、実家にいたときはしょっちゅう出会いましたよ…。
家結構田舎だったんで……(汗

さて、次回はあの事件が………。

次回でお会いしましょう、それでは……
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