学校に通い始めてはや一週間、ようやく環境に慣れてきました(笑)
そんななか帰ってきて少しづつ書き溜めてようやく書きあがりました!
今回は、アニメ四話の終盤!
それでは早速お楽しみください!
日はすっかり暮れ、女神が捕らわれてからもう丸一日が経過した。
状況は変化することなく、女神の四人はアンチクリスタルの結界に捕らわれたままだった。
しかし、変化が訪れることがない結界の中で時間が経過するごとに唯一、徐々に変化するものがあった。
「ずいぶん溜まってきたわね………」
ノワールが見下ろす先にある、黒い液体状の何か……。
時間が流れるにつれて、自分たちに迫ってくるこの物質である。
四人を捕らえた張本人、マジェコンヌ曰く自分たちを苦しめ、死に至らしめるこの物質は着々とその量を増やし続けていた、自分たちの足元まで来るのも時間の問題…。
「あれに飲み込まれたら……どうなってしまうのでしょう?」
「……こんなことなら、対策を研究しておくんだったわ……私は自分から遠ざけることしか……」
ノワールとネプテューヌよりも下の高さで捕らえられたベールとブランが不安げにその物質を見下ろしている。
しかし、今どれだけ不安に思っても何もできないのが現状である、いくら後悔の念を呟いても何も変わらない…。
変わるのは、今も尚溜まり続けている黒い物質の量だけ……。
「まあ、みんな元気出そうよ! 今のところ無事な訳だし、まだまだ希望はあるって!」
こんな状況でもいつもの楽観的な姿勢を崩さないネプテューヌだが、こうなっている今では、そうね、とは到底言えない。
「……あなたの前向きさって嫌いじゃないけど、こういう時はさすがに鬱陶しいわ」
「現実逃避ね……」
若干のイラつきを滲ませた返答を返したノワールとブラン。
「え~、だってわざわざ希望がないというよりはさ」
「可能性のない楽観だって役に立たないわよ」
ペースを乱すことがないネプテューヌにノワールがそう言い捨てる。
確かに彼女の言うことも一理ある。
現状、一番の力を持つ自分たちは何もできないのだ、この状況でどうにかできるかどうかを期待する方がお門違いと言うものである。
だが、
「可能性なら、ありますわよ?」
そんな中で唯一、ベールがはっきりとそう言った。
全員の視線がベールに集まる中、彼女はいつもの柔らかな笑みを浮かべた。
「いるじゃありませんか、あなた方の妹と、宗谷が……」
彼女の言う希望、それはまだ女神として一人前とは言えない、女神候補生の四人と宗谷のことだった。
それを聞いた三人はすぐに彼女の言葉に反論する。
「ユニ? ……あの子はまだ私抜きで戦ったこともないのよ?」
「ロムもラムも私が守ってあげなきゃいけない歳だわ……」
「ネプギアだって、しっかりしてるようで甘えん坊だし、無理じゃないかな……? 宗谷ならわからないこともないけど……」
「あんた……昼頃も言ったけど、昨日の宗谷を見なかったの?」
ノワールが再びネプテューヌに視線を向けてそう問いかけた。
確かに、今の彼は戦力としては有力な実力はあるが、昨晩の彼の異変を見たノワールは正直今の彼を希望と言いきることができなかった。
「あのただ事じゃない感じ……それに、あいつだって元は一般人なのよ、私たちの問題に巻き込むわけには……」
「それはあなた方のエゴじゃなくて?」
ノワールの話に割り込む形でそう言ったベール、ノワールはすぐに話を中断して彼女に目線を向けた。
「あの子たちは確かに可愛らしい……私だっていつまでもあのままでいてほしいと思っていますわ、でも……その思いがあの子たちを変身できない可愛い妹のままでいさせているかもしれない、そうは思いませんこと?」
「………ベール」
彼女の言葉に、三人は何も返せなかった。
妹たちはまだまだ未熟だから……、だから姉である自分が守らなくちゃ…。
確かにそう思っていた節があったからである。
「それに、宗谷だってそうですわ……元は普通の人間、それでも誰かのために必死になるのはあなた方ももうわかっているでしょう? ……きっと彼は来ますわ………無茶をしてないか心配にはなりますけど……」
否定は、できなかった。
確かに、一概に言い切れない時があったからである。
彼は異世界から来たただの人間、だが時折その姿に何か必死さを感じる時があったからである。
それが時折危うく見えて、どこか心配になったことはノワールもブランも同じである。
「……それにもう、彼はただの人間と言うことは一概に言い切れないのではなくて?」
「……どういうこと?」
隣にいたブランがベールに問いかける。
「既に皆さん気付いていませんか? この世界に何か異変が起きていることを……」
「異変……それってどういうこと?」
「………私たちの前に現れたあの三人、そして以前ネプテューヌとノワールが戦ったという宗谷の世界の“物語の中の戦士”がこの世界に現れたこと………そして、“ヒーローメモリーの存在”……少なくとも、そんなものはゲイムギョウ界の歴史の中にはなかった」
「……それがどうしたというの?」
「そして、宗谷……“彼がこの世界に来たこと”、私はそれらすべてが何かあらかじめ用意されていた何かのフラグのように思えますの……」
真剣なまなざしでそう言ったベールは、虚空の彼方を見据えた。
「きっと彼は何か理由があってこの世界に来た……私はそう思えますの……」
「はあ? そんなの考えすぎよ…」
ノワールがすぐにそう言って反論するが、ベールは頑としてその意見は崩さずに首を振った。
「いいえ、私は……そう思ってます……きっと彼はなにか重要な役割を持っていると……それに、彼ならどんな苦難もきっと乗り越えますわ、宗谷はそう簡単にへこたれるお方ではありませんから」
一緒に戦ったことのあるベールだから言える、彼の本質。
どんな危機的状況でも諦めようとしない姿勢、そして、苦難を乗り越えようとする意志の強さ、それは間違いなく、“宗谷の強さ”なのだ。
例え、彼自身を苦しめる大きな苦難があったとしてもきっと彼なら大丈夫……。
そう感じさせるほどに……。
「………過剰評価しすぎよ、ベール」
「そうでしょうか? でも、あなたもちょっと気にしてるではありませんか……宗谷のこと」
「な、そ、そんなわけっ!」
すぐにそっぽを向いたノワールだったが、その時、彼女の脳裏にトゥルーネ洞窟での彼の姿が横切っていた。
エンシェントドラゴンにネプテューヌとともに立ち向かった彼の姿……。
物語の正義の味方、ヒーローのように見えた……彼の姿が……。
「………宗谷……無理しないでよ……?」
もうもうと立ち込める砂塵の中、死ぬ気の炎で上空に浮遊している綱吉は最大級の一撃を放った先を見つめていた。
手応えはあった、直撃したはずだが……
「………」
彼は臨戦態勢を解こうとはしなかった。
まだ、それは早いと感じたからだ……。
そして、徐々に砂塵が晴れ、宗谷が最後に立っていた場所の様子が見て取れるようになった……。
彼は………立っていた………。
『Skill Chain! Zeruda no densetu! Toaru majyutuno index!』
すべての攻撃を無力化する、強靭な盾を構えた状態で……まだ、倒れてはいなかった。
「まだ……倒れるつもりはねぇよ!」
赤剣を横に切り払い、綱吉と一夏を交互に見た宗谷は左手に盾を持った状態で再び構えた。
まだ、彼の修業は終わっていない。
彼の闘志は、意志の炎が、決意の光がある限り燃え上がり続ける。
「……なんか、熱いな!」
「ああ、確かにな………俺たちの力を受け継ぐ可能性がある奴なだけはある……」
彼の修業は、佳境を迎える……。
地面に降りた綱吉が、一夏と並び立ち構えると宗谷もそれに合わせて赤剣と左手の盾を構えた。
互いに出方を伺い、睨み合う両者……。
そして、
両者は互いに、同じタイミングで走り出した。
「来たっちゅ、案の定女神の妹が仲間を連れて戻ってきたみたいっちゅよ?」
ワレチューが即席のレーダーに映った反応を見てマジェコンヌにそう報告した。
しかし、その報告を聞いてもマジェコンヌは眉ひとつ動かさず不敵な笑みを保ち続けていた。
「ふん、あんな者たちに何ができる……ここにたどり着くことすらできまい、そうは思わないか?」
マジェコンヌが皮肉気に後ろに並び立っていた魔進チェイサーにそう聞くが、チェイサーはアバレキラー、カオスウルトラマンとともに何も言わずにその横を通り過ぎ、ネプギア達が接近している方角へと向かっていった。
「……不愛想な連中だ……お前たちはどうだ?」
マジェコンヌは結界の中のネプテューヌに聞くが、ネプテューヌは何も答えずただ反抗の眼差しを向けるだけだった…。
(ネプギア……宗谷……)
その心中には最愛の妹と、異世界の友人である彼を案ずる気持ちのみ…。
イストワールの後押しを受け、遂にズーネ地区の廃棄物処理場に足を踏み入れたネプギア達。
その後ろには彼女たちに付き添ってきたアイエフとコンパ、そしてケイブの姿もあった。
ちなみに5pb.は、宗谷に彼女たちが先に向かったことを伝えるために教会に残っている。
人数は以前よりも増えたとはいえ、今はまだ心もとない……なぜなら…
「ギアちゃんたち、まだ変身できないのに……」
特訓の甲斐も虚しく、本来の目的である女神化を成すことはできなかったからだ。
やはり時間が足りなかったのか、それともネプギア達にはまだ女神化は早すぎたのか……。
それだけでなく、宗谷の修業もまだ終わっていない。
彼はまだ目を閉じてメモリーワールドの中にダイブしたままだった、いつ帰ってくるかもわからない以上、どうしても不安は残ってしまう。
しかし、何も悪いことばかりではない。
「女神が失敗しても、その妹たちが頑張れば国民は納得するでしょ、その方がシェアのダメージは少ないはずだわ」
「まだ影響は出ていない今は、シェアの低下を気にすることなく彼女たちは戦える……例え女神化は出来なくても、十分戦えるはずよ…」
「………そうですけど……それにまだ、宗谷さんも来てないです」
しかし、アイエフとケイブの考えとは裏腹にコンパの表情は冴えない。
そんなコンパを安心させるためか、アイエフは持っていた銃を一度下ろしてコンパの方に顔を向ける。
「それにね……私も信じたいの、ネプギア達ならってね」
「あいちゃん……」
「それに、宗谷はきっと来る……あいつは、こういう展開大好きだからね」
そう言ってアイエフは数歩前に出て武器を手に取るネプギア達の元に歩み寄る。
「……大丈夫、あの特訓は決して無駄ではないはずよ」
「ケイブさん……あいちゃん……」
ケイブもその後に続き、ネプギア達の元に歩み寄る。
すると、銃を構えたユニが並び立つネプギア、ロム、ラムにアイコンタクトを送った。
「みんな、いい?」
ユニの呼びかけに、三人は強く頷いてOKの意思を送る。
それぞれのやる気は十分だ、今は怯えるような様子は全く見て取れない。
女神化を目的とした特訓も、モンスターへの恐怖心を乗り越える点では有効となったのだろう。
自信を勇気に変えて、彼女たちは一歩前へと踏み出す……。
そして、
それを合図に、女神奪還作戦は幕を開けた……。
だが、彼女たちの決意の意思とは裏腹に、この突撃の先にあるのは困難と言う荒波だった……。
突撃から間もなくして、彼女たちの目の前には無数のマシン系モンスターたちが群れを成して襲い掛かってきた。
ざっと数を見積もっても数十など生半可な数ではないのは火を見るよりも明らかだ。
だが、ネプギアはそれでも臆することなくビームソードを片手にモンスターの群れに突っ込んでいった。
「はあ!」
ビームソードを素早く、立て続けに振るい、数体のビットを蹴散らすとそのまま足を止めることなく走り続けた。
「………覚悟してください!」
そして、ロムとラムの二人はお互いをカバーしながらモンスターと戦っていた。
ラムは攻撃魔法を主に使い、ロムは防御と回復魔法でラムをサポートする。
互いの長所を生かしたコンビプレーで、普段の二人には考え付かないほどの奮闘を見せる。
「ラムちゃんは……私が守る……!」
「うん! 私がどんどんやっつける!」
ラムの背中をロムが魔力の防御壁でガードし、ラムはロムの背中に周ってこちらに迫って来たモンスターを武器であるロッドを振るい撃退する。
唯一の遠距離線を得意とするユニは、ほかのメンバーからは離れた位置に移動し遠距離からの狙撃でモンスターを攻撃していた。
銃に備え付けられたスコープで他の三人の様子を見つつ、モンスターに牽制射撃を行う。
「………当たって!」
弾切れになったマガジンを素早く交換し、ユニは再びトリガーを引く。
スコープの照準の真ん中にいたR-4が銃口から放たれた弾丸に貫かれ、消滅する。
「痛いの行くですよ!」
「邪魔よ!!」
「手加減はしないわ……!」
そして、コンパ、アイエフ、ケイブの三人もそれぞれの武器を使ってモンスターを次々と倒していく。
コンパは巨大な注射器を躊躇なくモンスターに刺し、アイエフは拳銃とカタールを手に遠距離と近距離の両方を補った戦い方を披露し、ケイブは鋏のような剣ですれ違いざまにモンスターを切りつけていく。
それぞれがそれぞれの得意分野を生かした戦い方は最初は順調に見えた。
しかし、それは長くは続かなかった……。
走り続け、ビームソードで敵を切り続けるネプギア。
すると、彼女の目の前にそれは現れた……。
「っ!」
魔進チェイサー、カオスウルトラマン・カラミティ、アバレキラー……。
女神が苦戦を強いられた、異世界の戦士たちである……。
「そんな………アンチクリスタルには…こんな力が……!」
ネプギア達がズーネ地区に出発して数分後、アンチクリスタルについて一通り調べたイストワールはある重大な事実を知ってしまった。
アンチクリスタルが秘めた、最も恐ろしい力……。
シェアエナジーを力の源にする女神を取り込んだクリスタルがもたらす、最悪のシナリオを知った彼女は一人ベールの部屋で驚愕し、立ち尽くしていた。
「………急がないと、ネプテューヌさんたちが…それに、ネプギアさんはまだ変身できていませんし……」
焦りばかりが彼女の心に積もっていく、しかし、自分が今できるのは情報を収集することと彼が目覚めるのを待つだけ、一人でズーネ地区に乗り込んでも状況が好転するとは思えない。
「イストワール様、大丈夫?」
「あ……はい、大丈夫です」
ただ事ではなさそうな彼女を気にかけて5pb.が声をかける。
大丈夫と返したイストワールだが、その眼には焦りの色が浮き出ているのがまるわかりだった……。
「何が分かったの? それって、とても大変なことなの……?」
5pb.が気になって彼女にそう聞くと、イストワールはかなり思いつめた表情で首を縦に振った。
彼女が知ったことは、それ程までに重要なこと……。
少なくとも、このままいけばネプテューヌたち四女神が助からないということなのだから………。
「このままだと………ネプテューヌさんたちは……っ!」
その先を口に出そうとした時だった。
イストワールと5pb.しかいなかった部屋の扉が、勢いよく開け放たれた。
「遅れちまったな………行くぜ、いーすん?」
遂に、彼が目覚めた…。
切り札になる可能性を一番に秘めた………彼が……。
『Tune chaser cobra…』
“チェイサーコブラバイラルコア”をブレイクガンナーにセットした魔進チェイサーは金属製の鞭型の武装“テイルウィッパー”を装備し、ネプギアに襲い掛かった。
激しくしなる特殊金属の鞭が空気を切り裂きながら唸り、ネプギアに肉薄する。
「このっ!」
対してネプギアは果敢にもその攻撃をビームソードで弾き返しながら魔進チェイサーに迫ろうと試みる。
上から振り下ろされた初撃を何とか弾き、横薙ぎに振るわれた二撃目を飛んで躱す。
だが、
「ああっ!?」
三撃目、下から振り上げられた攻撃に対応しきれず手に持っていたビームソードを弾き飛ばされてしまった。
それにより怯んだネプギアに隙が生まれ、魔進チェイサーは迷うことなく追撃を開始した。
「あっ……! ぐぅぅっ……くぅ!」
彼女の体にテイルウィッパーを巻き付け、ぎりぎりと締め上げ始める。
何とか脱出しようとするネプギアだが、両手も一緒に締め上げられた状態では満足に抵抗することもできない…。
ネプギアから少し離れた位置では、ロムとラムも苦戦を強いられている真っ最中だった。
相手はブランを苦戦させたカオスウルトラマン・カラミティである。
『……ハッ!』
二人に目がけて右腕から破壊光弾を放つカオスウルトラマン、だがその攻撃をロムがラムの前に立って防御魔法を展開することで防ぐ。
だが、その一撃に留まらずカオスウルトラマンの攻撃は二度、三度と連続して放たれる。
「っ………お、重い…」
衝撃が、防御魔法を伝ってロムにも流れ込みはじめる。
だが、防御を展開しているロムにカオスウルトラマンが気を引かれている隙に、後ろにいたラムがロッドを振るい反撃を繰り出した。
「ロムちゃんを………いじめちゃだめぇ!」
爆発系魔法、“エクスプロージョン”。
強烈な爆風がカオスウルトラマンの足元から発生し、一瞬その姿を掻き消した。
「やった! やったよ、ロムちゃん!」
「待って、ラムちゃん………」
勝利を感じたのか、笑みをこぼしたラムだったがロムはじっとカオスウルトラマンのいた場所を見たままラムを落ち着けるようにそう言った。
やがて、爆風により発生した砂塵が晴れる……
カオスウルトラマンは健在だった…。
爆発系魔法を至近距離で浴びてもその体にはダメージが通っているようには見えなかった。
「そんな……うそでしょ~!?」
ラムの驚きの声に続く様に、カオスウルトラマン・カラミティは大きく身を縮めた後高く跳躍した。
空中で身を翻したカオスウルトラマン・カラミティは右腕を大きく引いた後、急降下しながらその拳を前に突き出す。
咄嗟に二人が互いの魔力を合わせて防御壁を張るが……。
「「きゃあああああ!」」
カオスウルトラマンの拳は、その障壁をまるで髪を破るかのようにいとも容易く打ち砕いた……。
他のメンバーよりも離れた位置にいたユニは、素早くこちらの位置を見つけたアバレキラーと戦闘を繰り広げていた。
「この………ちょこまか動き回って……!」
照準を合わせようとしゃがんでスコープを覗き込むユニだが、アバレキラーは得意の高速移動を生かした戦闘方法で彼女を追い詰めていた。
あまりにも俊敏すぎるアバレキラーの動きでユニは狙いを正確に定めることができずにいた。
「……っ、今!」
一瞬、アバレキラーが足を止めた。
それを見逃さなかったユニはすぐさまトリガーを引いて攻撃する。
だが、その銃撃は再びアバレキラーが動き出したことで不発に終わった。
まるであざ笑うかのように動いては時折立ち止まるという行動を繰り返すアバレキラーにユニは苛立ちを隠せずにいた。
「あー! もう、なんなのよ!!」
痺れを切らしたユニが立ち上がってスコープを覗き込むのをやめて銃を腰だめに構えて乱射しようとする。
正確に狙うのではなく、弾幕による攻撃に切り替えるつもりなのだ。
狙って当たらなければ、当たるまで撃ち続ける…。 一見無謀でも、この状況で有効な手段はこれが一番だと判断したのだ。
しかし、その狙いは外れることとなった。
「え……弾切れ!?」
すべてはアバレキラーの狙いだったのだ…。
時折高速移動の途中で失速したのも、彼女に弾丸を使い尽くさせるための布石。
そして、その狙いがうまくいったと判断したアバレキラーはすぐさま本格的な攻撃行動に移った。
短剣モードにしたウィングペンタクトを構え、ユニに一気に接近する。
対するユニは、接近戦でまともに戦うための手段は………持っていない。
「うっ……あぐっ…」
テイルウィッパーでなおも締め上げ続けられているネプギアは横目で奮闘する自分の仲間たちを見る。
だが、その目に映るのはその仲間であるみんながモンスターと魔進チェイサーと同じ異世界の戦士の手によって苦戦を強いられている姿だけ。
希望を見出すことは、なかった……。
「っぅ……あぁ!?」
一瞬、魔進チェイサーの拘束が緩み、テイルウィッパーが解かれるが……すぐに跳ね上がったテイルウィッパーの攻撃がネプギアの体を打ち据えた。
脇腹から胸のあたりまでの服がその衝撃で破れ、肌に痛々しい腫れと鈍重な痛みがネプギアの体に響く。
攻撃された個所を隠しながら、魔進チェイサーを睨み付けるネプギアに魔進チェイサーはとどめを刺そうとしているのか、ブレイクガンナーの銃口を向ける。
引き金が引かれれば、その銃弾が自分の体を撃ち抜くことになる……。
自分の脳裏を横切った光景に、一瞬、ネプギアの体が震えた……。
(どうしよう……私、間違ってた……)
遠巻きに、ユニの、ロムの、ラムの苦痛の悲鳴が聞こえる。
アイエフの、コンパの、ケイブの焦りの声が聞こえる。
この場にあるのは、苦痛と、困難に対する苦しみのみ……。
(戦いなんて……まだ無理だったんだ……私のせいで、みんなやられちゃう……)
頭に浮かび上がるのは、程なくして訪れるであろう最悪の結末のみ……。
この状況を覆すような、光は見えない…。
真っ暗な暗闇の中にネプギアは一人、取り残されている気分だった。
(何もできないよ……助けて……助けてお姉ちゃん……!)
助けを求める彼女の思いは、今は届かない…。
わかっている、わかっているはずなのにそう思わずにはいられなかった。
自分たちではどうしようもできない、あまりにも無力な自分たちでは……。
助けに行くと自分で決めておいて、結局は何もできなかった。
残るのは無念の思いと、悔しさと、恐怖のみ……。
やがて、ネプギアの前に立つ魔進チェイサーの指がゆっくりと動き始め………。
「最後まで諦めるな………ネプギア!!」
突如として、その声があたりに強く、そして大きく響き渡った。
驚き、顔を上げたネプギアがその声を頼りにあたりを見渡す。
すると、遠くの方で今まで聞こえなかったはずのある音が聞こえてきた。
バイクのエンジン音だ。 一台分だが、それははっきりと、そして徐々に大きくなってきた。
そして、
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」
裂帛の気合いと共に、岸壁の上を一台のバイクが猛スピードで飛び越えてきた。
その上には見慣れた黒髪の青年と、その後ろで彼の体に腕を回している見慣れた金髪のツインテールの姿があった。
二人を乗せたバイクは放物線を描きながら落下し、地面に着地しながらも走り続け、目前にいた魔進チェイサーを撥ね飛ばし、ドリフトしながら急停車した。
「……いーすんさん……宗谷さん!」
バイク、マシンヴィクトラーに乗ってやってきた宗谷とイストワールはネプギアの近くに停車した。
宗谷はネプギアをちらりと見た後、V.phoneを取り出して画面を素早くタップする。
『Skill Link! Metal gear Solid』
「来い、“ガンコンシューター”!」
“スキル メタルギアソリッド”を発動させた宗谷は右腕を掲げると、その手の先に光が集まりある物体を生成させる。
それは銀色に赤のラインが施されたハンドガンだった。
ただ、ボディの部分が通常のハンドガンよりも広く、V.phoneと同じような液晶画面が施されている。
宗谷はそれを右手に持ち、素早く構えると左手で“ガンコンシューター”と呼ばれたそのハンドガンの液晶画面をタップする。
『Handgun mode!』
電子音が鳴ったのを確認した宗谷が、躊躇なく銃口を再び立ち上がろうとする魔進チェイサーに向け、トリガーを引いた。
そして、銃口から発射されたエネルギーの弾丸は魔進チェイサーの胸に見事に命中し、追撃のダメージを与えた。
更に宗谷はユニとロム、ラムを襲っていたアバレキラーとカオスウルトラマン・カラミティにもガンコンシューターの銃口を向けて発砲し援護射撃を行う。
注意を完全に眼前の相手にしか向けていなかった二人は横合いからの攻撃に対処しきれず銃撃を浴びてよろめいた。
「強くなれ、ネプギア!」
力強く発せられた彼の言葉に、ネプギアが反応した。
彼の方に顔を向けたネプギア、視線の先にいる宗谷はマシンヴィクトラーに跨りながらガンコンシューターのトリガーを引き続け周りにいるモンスターを攻撃し続けている。
「今あいつらを……お前の姉ちゃんを助けられるのは、他でもないお前達だ! お前達しかいないんだ! それなのにネプギア……お前がここで弱気になってたら、助けたくても助けられないぞ!」
「宗谷さん……でも……私だけじゃ、何も……」
「いつまでも誰かに守られてるだけじゃ、何も変わらないぞ!!」
今までで一番強い、叱咤する声がネプギアの耳に響き渡った。
宗谷はガンコンシューターを構えつつ、視線だけをネプギアに向けている。
「………怖がるなネプギア、強くなれ! 何かを怖がっていても、何も変わらない……何かを変えるには自分が強くならなくちゃダメなんだ! だから、立ち上がれ………強くなれ、ネプギア!!」
宗谷の呼びかけを聞いたネプギアは、はっと顔を上げた。
彼女がここに来る前、昨晩に特訓を始める前にユニと会話した内容にこんなものがあった…。
―――お姉ちゃんが言ってた……私が変身できないのは、自分の心にリミッターを掛けているからなんだって……
―――リミッター……?
―――何かを怖がっている…とかそういうことよ
(私が怖がっていることって………お姉ちゃんがいなくなること? お姉ちゃんの妹でいられなくなること?)
己自身に、暗闇の中のような静かな思考の中でネプギアは自問自答を始める。
自分が一番恐れていると感じること、一番嫌なこと、それらを上げてみる。
自分の一番憧れた存在、大事な姉であるネプテューヌがいなくなること……それが彼女にとって一番怖いこと……
(………違う、そうじゃない)
だが、それはすぐに違うということが分かった。
最も重要なのは、姉と言う存在がいなくなることではない…。
(私が……お姉ちゃんよりも強くなることだ!)
自分が一番恐れていたこと、それに気づいたネプギアの目に今までなかった力強い光が宿った。
その光は、優しく、それでいて強さを秘めた大きな輝き。
やがてそれは彼女の体からも溢れ出し、ネプギアの体を包み込み始めた。
(私……ずっと、ずっとお姉ちゃんに憧れていたかったんだ……強いお姉ちゃんのそばにずっといたかったんだ……だから、自分を弱くいさせようとした………だけど、もうそうは言ってられない)
徐々にネプギアの光が大きくなり、夜の闇に包まれた周りの風景を明るく照らし出すほどの強い光となる。
その光が映し出すのは、強い決意と、覚悟の意思……。
(お姉ちゃんを取り返すためなら………私は………)
「私、誰よりも強くなる!!」
その時、彼女の体から溢れていた光が大きく弾けた!
「宗谷さん、ネプギアさんが……!」
「ああ、やったな………ネプギア!」
光の中、徐々にネプギアの姿が変化を始めた。
淡いパープルとピンクが混じったような色合いの髪は鮮やかなライラックに染まり、セーラー服とワンピースを合わせたような服も純白に淡い紫の光のラインが走るボディスーツに変化した。
そして、背中には扇状に広がるウィングユニット……。
遂に女神化を果たしたネプギアが、手に持った巨大な銃剣を構え、モンスターに強烈な一撃を浴びせかける!
次々と群がってくるモンスターたちがネプギアの放ったビームに貫かれ、消滅していく。
その攻撃が何者によるものか、傍にいたユニたちはすぐに気づいた。
「ネプギア!」
「ネプギアちゃん……」
「すごーい!!」
遂に変身した友人の姿が弱気になっていた三人の目に希望の光を照らし出した。
上空に浮かび上がったネプギア、いや………女神パープルハートの妹、“パープルシスター”がゆっくりと宗谷の隣に降下し、彼が乗るバイクの横に並んだ。
二人は何も言わずに互いに視線を交えて、頷いた。
「………行くぜ、ネプギア……もう、俺も怖がるのをやめた……だから、助けに行くぞ!」
「はい! もう、引くことはできません……だから」
そうやりとりする彼らの前に魔進チェイサーたち三人の異世界の戦士が再び立ちはだかり臨戦態勢を取る。
だが、もうすでに宗谷とパープルシスターの二人の瞳に、恐怖や怒りと言った感情は見えなかった。
あるのは、たった一つの闘志だけ……。
「やるしか………ないの!」
「さあ、ゲームスタートだ………コンティニューはない、狙うのは一発クリアのみ!」
『Perfect trans!』
赤剣と銃剣、互いの刃を構えた二人の強い意志の言葉が目前の敵を見据えた……。
「少年くんが……戻ってきたみたいですね」
遠巻きに今起きている現状を見ていたトランスを筆頭にした四人が再びこの地に舞い戻ってきた宗谷を見つめていた。
まだ心配そうに彼を見ていエネミー、端末で冷静に分析を行うロボティック、そして、何も言わずにじっと彼を見つめるレヴォリューション……シンシア。
「………今のところ、おかしいとこはないみたいやけど」
「……システムそのものに異常、なし……安定、を確認……」
ロボティックの言葉を聞いたトランスが、ぴくりと眉を動かしてから再び宗谷に視線を戻した。
「………乗り越えた、と言うことですかね」
それは彼女たちにとっては今の状況で一番安心できる答え。
彼があの時のように、怒りに身を任せ強制的にリミッターを解除しかけたこと事実をなんとかなかったことにできる唯一の答え。
「………怖く、ない」
トランスの隣にいたシンシアが小さく呟いた、もうその体が小刻みに震えることも涙を浮かべていることもない。
それを見たトランスは、想定外の事態は避けられたと一安心し胸を撫で下ろし――—
「おいおい、まさかこのままあいつが大活躍して終わり……なんてつまんねー展開を望んでるわけじゃねぇよな?」
突然聞こえた声に、その場にいた四人が動揺しながらも周りをすぐに見渡してその声の正体を探った。
この声は、彼女たちにとって最も注意すべき存在の声だったからだ。
そして、その声の主は隠れることもなく彼女たちの後ろに立っていた。
「どうして………あなたがここに……!」
「まあ見てろよ、本当におもしれーことになんのは、ここからだぜ?」
悪戯好きな子供のような笑顔を浮かべるその少女は、左手に黒い炎のようなものを灯して四人にそう言った。
その顔は、イストワールと瓜二つ……。
彼女の名は………
「“クロワール”………!」
絶望の時計の秒針は、まだ止まらない……。
いかがでしたか?
原作よりも多少アゲアゲな展開ですけど……
問題は、ここからです……
次回、クロワールの思惑とは……
それでは、また次回でお会いしましょう……。